「COSMOS Collector's Edition」(2004/01/05〜01/12号)
{DVD紹介}

        「COSMOS Collector's Edition」

        http://www.carlsagan.com
        7枚組
        1話 約60分*全13話+α
        $166.95(税はなし、送料$28.56別)

今から20年以上前(1980年だと思う)、COSMOSという全13話の
科学ドキュメント番組が放映された。もともとはイギリスBBCのものだったと思うが
(制作は英、米、西独、日本、日本共同になってはいる)、日本では
横内正さん(当時の水戸黄門の角さん)が吹き替えをして朝日放送系で放映された。

もともと天体に興味はあったが、この番組が当時の私の与えた影響は計り知れない。
地学が非常に得意になったのはもちろん、
出来ることならコーネル大学(カールセーガン博士がいた大学)
に行って教えを請いたかった。学力と意志の弱さに依って見事に
粉砕されたが(T_T)。

朝日新聞社の単行本COSMOSはもちろん買った
(ただし下巻はすべては読んでない)し、旺文社のCOSMOSも買った。
これはTV映像の写真を中心とした写真集で、4冊各140頁ぐらいの本であるが、
当時の私の小遣いからすれば非常に高額(各¥1800)だったが、
なんとか手に入れた。
そういえば、確かOMRONの招待でカールセーガン博士が来日したことがあったが、
その招待券も応募した。
これははずれてしまったが、それほどの熱の入れようであった。

当然のこととして本放送(確か平日14日連続夜10時から)、
および後で行われた再放送(1日2話で7日連続夕方5時から?)は見たし、
本放送の後半の話からはテープに録音した。
1話は50分(CM込み)であった。

いきなり余談であるが、本放送時のCMはIBMとSONYであったが、これもまた
秀逸であった。SONYは大ヒット家庭用VTR機ベータマックスJ9で、
IBMは何の宣伝であったかは忘れたが、「一、十、百、千、万・・・
不可思議、無量、大数」という数字の単位をあらわすものであった。
いやだから何だと言われると困るのだが、印象に残るCMである、ということである。
(このころβは全盛期だったわけですな。2002年に生産中止になったけど。)

再放送はもちろんすべて録音してある(一部失敗しているのが残念なのだが)。
当時はカセットテープも(私にとっては)高かったので、90分テープに、
LL(わかるかな?)が使えるテープレコーダーを使って片面2話、
両面4話入れるという高等というかアクロバット録音をしていた。
今もこのテープはあるが、保存性に難があるのでMDに録音し直してある。
当時は家庭用VTRなんぞは金持ちの家の一部にしかない物で、
当然うちにはなかったので、このようにするしかなかったのだ。

その後、VTRが家に来てから、もう一度再放送が行われることを切に願ったが、
一度だけ総集編が放送されたきりで再放送はなかった。
(この総集編は録画してある。でも今見ることが出来るかなぁ。)

再放送されなかった理由は、著作権の問題もあろうが、
「科学的に事実とされることは時間を経るごとに変わる」ということにあろう。
要するに新事実がわかると、以前正しいと思われていたことが
そうではなくなるのだ。
COSMOSも例外ではなく、その中で語られていたいくつかのことが
後に事実ではないとされた。総集編ではその当たりがばっさりと
削られていた。

でもCOSMOSの神髄はそこにはない。
COSMOSは科学的事実を伝えることよりも、
科学を学ぶ姿勢を教える科学思想啓蒙のための番組だったのである。
地球の未来を科学の目から指摘した番組であったとも言える。
「このまま進めば地球はこうなってしまう」。
であるなら、もう一度それをそのまま見ることは無意味なことではない。

このような思いも持ちながら、その夢は叶えられずに20年経った。
インターネットが発達したとき、「COSMOS」で検索すると
ある事実が判明した。
「COSMOSのDVDがある。」

実はCOSMOSはVHSでも発売されていたが、
こちらはかなり高く、私の手の届く範囲ではなかった(確か9万くらい)。
いくら欲しいとはこれでは買えない。
(ただ、このVHS版は日本の会社も出しているので入手は楽そうであった。)

そしてもう1つ、DVDももうすぐ出るということも聞いた。
当然海外が先行であろうが、日本語吹き替え版が出るかもしれない、と
淡い期待を持って待っていた。

しかし、いつまで経っても日本ではその発売の話は聞かなかった。
結局、日本でそれを扱う代理店はなかった(インターネットを含め)。
また、日本語字幕はあっても、吹き替え版は出そうもなかった。
そこで半ば仕方なく、直販サイトというか大本である
carlsagan.comで買うことにしたのである。
しかたなくではあれ、海外の物が簡単に買えるようになったのであるから、
すごい時代である。

DVD7枚組でおよそ170ドル。1ドル130円(購入当時)とすると
170*130=22100円くらい、これなら手が届く。
(このホームページで買うと、3ドル割引される。たった3ドルだけなんだけどね。
あとamazon.comでも買うことは出来るようだ。amazon.co.jpはだめだけど。)

もちろんこのサイトは英語なので、注文にはなかなか苦労したが
辞書を片手に何とか読んで注文完了したら、1週間ほどで物が届いた。
(特に、一度カード番号の入れ間違いをすると、その日1日再発注できなくなるので
苦労した。結局後で住所を間違えていたことに気が付いたんだけど、
まあ、それはなんとかなったようだ)。

箱がかなり大きかったので「これはいろいろとおまけが入っているに違いない」
と思ったのもつかの間、実はほとんどが緩衝材で、
実態は普通のDVDケース3つ分ほどの大きさしかなかった。
しかも中身は純粋にDVDだけ。説明書も何もない。
―寸残念ではあるが、まあ値段を下げるための策であろう。

では実際の内容である。

やはりCOSMOSは良い。
科学的「事実」がどうであるということよりも、天文学とおもしろさ、
奥深さを紹介してそこへの導きとし、人類が誕生以来ずっと宇宙と関わっている
事実から、そこへ興味を持つこと、研究することの意義を教えている。
ともすれば、宇宙の研究は夢物語のようにとらえられがちだが、
決してそうではなく、身近な生活に関わり合っているのだ。

また、当時のことを思い出して少し涙してしまった。
(当時の家庭環境なども思い出した。)
知識を得ようとする意欲も戻ってくるようだ。
このような偉大な科学者であり啓蒙家を早くになくしたということは、
人類にとって大きな損失であるといえる。
個人的には是非、アメリカ大統領になって欲しかった人、No.1。
まあ、政治には向かない人であったろうけど。

このCOSMOSはCollector’s Editionとあるので、
放送当時の物とは違う。
どこが違うかといえば、大きく3点ある。

1,音楽が差し替えられている
2,1話60分である
3,科学的事実に反してしまった部分などに対する補足映像がある

1は、DVD(たぶんVHSも)を作るにあたり、著作権の問題で
元の音楽が使えなかったということによるものらしい。
実際には、あの有名なCOSMOSのメインテーマ、バンゲリスのCOSMOS
はそのままであるが、後の音楽は元がクラシックでない物は多くが
差し替えられている(効果音だけになっている場面もある)。
これだけを見る人には問題ないだろうが、
元の放送を、せりふを全部覚えるくらいに聞き込んだ私にとっては、
やはり違和感がある。

2は何を意味するかというと、日本での放送時に、実は10数分
カットされていたのか、このDVDを作るにあたって元々カットしていた
部分を戻したかどちらかである。
どちらなのかはわからないが、見ていてどうも記憶にない場面があると
思ったらこの時間の違いに気づいたのである。

多くは決して無駄な追加(?)ではないのだが(極一部長ったらしくなっただけと
思う部分はある)、50分(CMをカットすれば45分未満)で慣れている(?)
番組が60分になると、かなり重たく感じてしまう。
COSMOSはもともと気楽に見る番組ではないので、
1日1話以上を見ることはつらい(英語+字幕で見るつらさもある)。
だから、全部見るのに数ヶ月かかってしまった。

3は、本編はそのままに、その後にカールセーガン博士自身が出て
現在の最新事実(もしくは見解)について述べている映像が追加されているのである。
ということは、この編集は博士が生前に進められていたと言うことを意味する。
(博士はかなり年を取っているので、放送終了後だいぶ後のことであろう。)
もちろんそのような更新があった話だけなのですべての話に
それが付いているわけではない。

後細かいことを言えば、映像が今見るとちゃちな部分もあるとか
少し汚いだとか音声はドルビーデジタルだけど動きはほとんどないとかあるけど、
まあ、そこは元が20年以上前の番組ということで仕方ない。

        おすすめ度      COSMOSに影響を受けた人には95%
                        そうでない人でも80%

−5%は日本語吹き替えがないのと日本で買えないこと位か。
(カード決済の必要がある。)

1つ書き忘れていたが、このDVDはリージョンフリーなので
世界中どこでも見ることが出来る。さすがである。

やはりCOSMOSの神髄は科学的事実を伝えているかどうかではなく
どのように今の科学が成り立ってきたかという歴史と、
それをふまえて、どう考えていくべきなのかということを
知る姿勢を教えていることにあると思う。
そのことは、第7話あたりで博士が直に語っている部分もある。
「結論が重要なのではない。そこに至る過程が重要なのだ」と。

一応日本語字幕はあるが、英語の台詞内容とはちょっと違う。
かなりはしょられている。
難しい単語もそれほど多くはないので英語でも何とか聞けないこともない、
というよりやはり英語で聞けるようになるべきなのかもしれない。

今の私にはまだだめだが(違うということは解る位)、こういうことのためなら
英語を聞けるように勉強しても良いかな、などと思う(仕事のため、というのは
まっぴらごめんだけど)。
まあ、私の場合はTV日本語版のせりふを暗記しているので、
それに置き換えて聞いているような感じであるが。
(TV日本語版の訳はかなり正確だと思う。あからさまな間違いもあるけど。)

また、1枚目のディスクの最初に博士の奥さん、アン・ドルーヤンのこのDVDへの
メッセージが入っているが、この部分には全く字幕がない。
ここに関しては無理でも英語で聞くしかない。
まあ、聞けなくても本編には関係ないが。

そうそうこのDVDセット、古い版では第1話で日本語字幕が台詞とずれる
という問題があったそうだが、今は送り先を日本にすると自動的に修正版を
追加してくれる。そう、送り先にちゃんと日本があるのだが、
その場合には7+1枚送られてくるのだ。
(古い版を持っている人については、名前を書いて知らせれば修正版を
送ってくれるらしい。詳しくはホームページ参照のこと。
これについてだけはちゃんと日本語でも書かれている。)

これを見た後に博士原作の映画、コンタクトも見ると、
より良いのではないかと思う。
(「コンタクト」の紹介も、第8話の後のUPDATEの中で自身でなされている。)

最近の科学ドキュメンタリー番組は、映像こそCGを使いまくって至極綺麗だが、
COSMOSのような「訴え」を持っているものは少ない(全くない?)と思う。
だから最近の科学番組には引かれるものがなく、いつまでもCOSMOSを
追っているのかも知れない。

やはり、「どう見せるか」という結果ではなく「何を伝えるか」という過程と、
それを最初から最後まで貫くホストもしくは原作者の重要性を感じずにはいられない。

合掌。
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