「線材の違いによる音の変化について」
(2000/09/01〜09/08号)

以前に発表したオーディオの実験シリーズの続編である。
今回は電線の種類による音の変化にしぼった。
若干専門的になってしまったが、ご容赦願いたい。

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線材の違いによる音の変化があるかどうかは、間違いなくあるといえるが、
どういう線にすればどういう結果になるかはやってみなければわからない。
が、ある程度傾向は掴めた。

以下は、いろいろと実験してみた結果+他の人の意見+理論的な考察からの
結論である。

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結局、線による音の変化は、以下の要素によって決まるようである。
        ・太さ
        ・本数/構造
        ・材質
        ・長さ

それぞれを分けて語ることは難しいので、混ぜて書く。

線をいろいろと変えて実験した結果、太い線(ただし実際は細い線の複数束ねで
その本数が多い)では音が大きく出やすくなると同時に音に厚みが出る。
ここでの「厚み」とは、低音の出やすさと考えてもよい。
同時に、本当に微妙であるが、音がのんびりというかやわらかくなる。
一方、細い線では・・・
細い中でも単芯で耐えられるほど強度を持つものとして直径0.4mmの
線では、音量はほとんど変わらずに音は繊細=高音がはっきりする、
かつ反応よく出てくる。
が、低音は弱く感じる。決して出てないということではなく、
高音がはっきりするために相対的に聞こえにくくなるだけである。

電流は、線材の表面を流れやすいといわれる。
ということは、多くの表面を持たすほど電流が効率よく流れるわけである。
また、単芯の方が効率が良いそうだ。
家庭用電源の配線は全て単芯で太い線だ。

でも一般機器の配線用ケーブルはほとんどが細い線の多芯だ。
その理由は・・・線が柔らかくなるからだけだとか。
家庭ではいろいろなところにはわす必要があるからな。

比較的大電力を通すべきスピーカーには細い線は向かない。
逆に、それ程大電力を伝えない機器間の接続には向くだろう。
特に微小信号であるアナログプレイヤーには有効かもしれない。

これは以前に述べた実験結果にも合致する。
少数細線の電話線をスピーカーケーブルに使った場合、音が小さくなった。
これは電力が損失しての結果だろう。

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一方、多芯の場合は線と大地の間に電気を一時的に溜める特性が多く出てしまうため、
電流の流れが遅れる可能性がある(線の1本1本と大地の間に発生するから)。
この遅れが音ののんびりさを出していると考えられよう。
(電流が複数の経路を伝わるので速度の差が出るということを言う人もあるが、
電流=電子の伝達速度は光の速度とほぼ同じであり、
線の中を伝わる距離が若干変わったところでその変化が表面化するとは
思われない。)
また、電線に電流を流すと必ず磁場を発生するが(フレミングの右手の法則だ。
高校物理を思い出せ。あれ?左手かな?)、線毎に発生するため、
ある線に発生したそれが他の線に影響を与えてしまう。
その結果が音に出ることも考えられる。

単芯は全くこの逆である。
電気を溜める特性はほぼ無いのですばやく音が出る。
また、電磁波の影響も内部的にはほとんど無い。
だから音に色が付かない。
しかし、単芯は間違いなく力学的強度は弱いので、何度も曲げ伸ばしするとか、
引っ掛けたりすると切れてしまうだろう。

多芯の線ではシールドされているものも多いが、単芯の線ではまずない。
シールドとは、先の回りを袋状の線で包むことだと思えばよい。
シールドすると、外部からの電磁波による影響を受けにくくなり、
逆に内部から外部へのその放出も押さえられる。
身の回りの線で言えば、テレビアンテナの太い線はシールド線である。
これは、テレビ電波信号のように高周波ほど影響が出るからである。

単芯の物はシールドされていないので、電磁波ノイズは受けやすいだろう。
従って、長さは最小限にし、デジタル機器や電源線に出来るだけ近づけない
必要があろう。CDは最大のデジタル機器なので扱いには注意が必要である。

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線の材質は銀か銅線が良いと言われる。
銅線と言っても、表面がメッキされている場合もあるので、
一応紙やすりでそれを出来るだけ剥いで使っている。
その効果がどうであるかは不明である。
が、理屈で考えれば電線はその抵抗値が少ないほうがよさそうなので、
銀の方が良いと思われるが、銅でも抵抗値は大差はないし、
価格の差を考えれば銅で十分だろう。

先の素材から酸素=錆びる要因を排除した無酸素ものもあるが、
この効果も不明である。ただし、年を経て錆が出てくると差が出るだろう。
まあ、そういう時期には作りなおせばいいような気もするが。
私は無酸素ではない銅線しか試せていない。

また、これも実験の結果から、音への影響は線材が一番で、コネクタ部分や
ハンダはあまり影響が無いようなので、安いコネクタ(金メッキでない)や
普通のハンダ(鉛合金の物。銀が入っているものが高級)で接続しても大丈夫の
ようである。実際、そこの高級かどうかでの音の変化はあまり感じない。
(が、安いコネクタは経年変化が大きい=錆びてくるので、金メッキの方が
長持ちする。)

線とコネクタをつなぐところをはんだ付けするべきか圧着するべきかであるが
(圧着;簡単に言えば挟んでとめる方法)、多芯線の場合は圧着した方が
線毎に接触する面が大きくなるのでよさそうだし、単芯では強度の問題から
ハンダの方がよさそうである。
電気工学的にはハンダ付けすると特性が変わるので良くないと聞いたが、
実際のところ、同じ素材によるケーブルを用意出来ないので、
双方における音の違いがあるかどうかはわからない。

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以上をまとめると、一番影響が大きいのは線の数であり、
        細=少ない線ほど音への色付けはない=音を出す機械の元の音そのもの
        太=多くの線ほど色付けが大きい
という感じあろうか。
結果を簡単に言えば、すっぴんで勝負するか、厚化粧できれいに見せるかである。

多くのマニアの人は一般に「高いケーブルの方が良い」と言うが、
それと同時に「この線ならこういう色が出る」と言う。
これは間違いなく、線の色が出てしまっている証拠である。
本来、線によって音が変わるのは良くないと考えると、
こういう言い方は化粧の仕方の善し悪しや好みを言い合っているだけのように
思える。この2つはどちらかが良いのではなく使い分ければよいと思うが、
どうも世間的には「高級」思考だけが目につくので、
一度原点に戻る必要があるのでは?とも思う。

以上のことから、現在うちでは一番よく聞くCD−AMP間の接続ケーブルに
ついては、金メッキコネクタ+手に入った最も細い銅線+最適長さで作っている。
ハンダは手持ちがあったので銀入りを使っている。
これは、CDに記録されている音をそのまま出したいためである。
逆に、太い高級ケーブルをMDに使っている。
これは音が元々弱いというか良くないMDの音を線で色付けして
見栄えよくしてやろうということである。

幸いなことに、細い少ない線材の方が「安い」。
従って、いろいろと試せるし、自作も容易である。
物理的な素材の善し悪しもあまり出ないようである。
これからも幾つか作って試してみよう。
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