「暖かい履き物の考察」(2003/03/17号)
「人生皆実験」。
これが私の人生訓である。
そう、人間生きている間は全て実験であり、その結果が経験となりその人の
価値となるわけである。
こういうネタこそがオタクラの真骨頂であるとも言える。

この実験のためには少々の恥ずかしさなど吹き飛ばしてしまわなくては
ならないこともある。
今回は、「ストッキング系の暖かさ」についての実験である。

ストッキングをはいた時の温度については、以前「足の毛の話」で少し述べた。
夏にストッキングをはくと暑い。
しかし、冬にはこれが有効ではないかと考えられる。
となれば実験である。
本当に冬にストッキングを履けばぬくいのか。

ここで実験の環境である。
まず、上に穿くズボンは夏物のスラックス。要するに生地が薄く、それだけだと
寒いと「普通」思う(この書き方に注意)。
上半身はウインドブレーカーを着て寒く感じないようにする。
この出で立ちで冬場の田圃のど真ん中=周りに風を遮る物のない場所を朝夕歩く。
(要するに私の通勤路である。)

その下に何を穿くかで条件を分ける。

        1,何もはかない(ズボンだけ)
        2,色がベージュ系のサポートパンスト(サイズLL)
        3,色が黒のサポートパンスト(LL)
        4,黒のタイツ(ぴったり系/LL)
        5,黒の網タイツ(M)

本当はベージュ色のタイツも入れるとよかったのだが、無かったので省略である。
メーカーは特に統一していない(網タイツ以外はフクスケだと思う)。
価格は500円くらいの物で(網タイツ以外)、そのときあったものである。

タイツも男性用ではない。理由は、高いくせに耐久性がないからである。
(一応買って試してはいる)。
1回穿いただけで伝染というか縫い目から破砕するなよ。

また、今回はそれぞれが履きやすいかどうかとか、歩きやすいか・きつくないかなどの
暖かさ以外の点については一部を除いて評価していない。

なお、当然(別途)パンツは穿いているので誤解の無きように。
また、実験中の様子を思い描いたりしないことが寛容である(^_^;;)。

まず、いきなり結論である。
冬の野外では、暖かく感じる寒く感じるの体感温度だけで言えば、

        網タイツ>何もはかない>黒のタイツ>黒のパンスト>ベージュパンスト

という結果になった。風が全くなく立ち止まっているという条件を付けると

        黒のタイツ>黒のパンスト>ベージュパンスト>網タイツ>何もはかない

となった。ある意味意外な結果である。
なぜそうなるかを検証したい。

        ・・・

ここでまず、どうすれば人は暖かく感じるのかを科学しなければならない。

暖かい・寒いの体感は、周囲の温度との相対温度差によってもたらされる。
ゆえに、実温度とはあまり関係がない。
たとえば20度は、夏は寒いのに冬には暑いと言うことである。

また体の感じる温度は、体表面における周囲温度との差によっても感じ方が異なる。
全体的にはぬくくしている中で、ある一点だけ相対的に温度を下げると、
過剰に寒く感じてしまう。

次は保温についてである。
人間には体温があるので、その表面から発せられる熱がそのまま体の回りに
保持できれば暖かい。というよりも、体表面の温度を奪われなければ暖かい。
冬場の服という物は、そのためにある。

保温において重要なのが「空気」の存在である。
空気は熱をためやすいかそうでないか。もしくは温度を伝えやすいかそうでないか。

実は空気の層という物はかなり温度を伝えにくいのである。
それが証拠に、最近の魔法瓶は軒並み空気断熱である。
あのステンレスの2重構造の中には空気しか入っていない(真空の場合もあるが)。
これでも十分保温が可能なのは、空気が温度を伝えにくいためである。

そこで、実際に冬場によく着る保温着の構造を見てみる。
毛糸系の物は、そのふわふわの中に空気の層を作る。
これが外への温度の伝達を妨げる。ゆえに暖かい。
あの中に暖かい空気を保つというのもないことはないが、基本は断熱である。

ウインドブレーカーはもっと直接的に冷たい空気が直接肌に触れるのを防ぐ。
あんなに薄い生地なのに暖かいのは、あの生地が空気を通さないために
中に空気の層が出来、このおかげで体温が外に伝わっていかないからである。

        ・・・

これらの基礎知識を基に今回の実験結果を見ると、ある程度理解できると思う。

本来ぬくいと思われたタイツやストッキングが意外にも寒く感じるのは
・空気の層が薄い
・温度にむらがある
ということによる。特に後者が大きい。

これらを穿くと、うっすら汗をかいているのがわかる。
と言うことはそれだけ体表面温度は高くなっているはずである。

しかし、空気の層が薄いため、ちょっと風があったりするとすぐに
その温度は逃げてしまう。すると、そこが風の当たらなかった部分に対して
相対的に温度が下がるため、過剰に寒く感じるのだ。
風は別にあからさまに吹いている必要はない。歩くだけで風は起こる。
風がなく立ち止まっている時に順番が逆転するのはこのためである。

ストッキングはタイツより生地が薄い。
また、ストッキングは肌をまんべんなく覆っているように見えて
実は、60%ほどしか当たっていないらしい。
後は空気に触れているわけである。
ゆえに余計に温度が下がりやすくなるのである。

タイツとストッキングの違いについては詳しくないが、厚さと編み方の違いだと思う。
この厚さが重要で、これが毛糸のように糸自体が空気の層を作るためぬくくなる。
タイツも、ぴったりしたものではなくかなり厚めの物なら結果は違ったかも知れない。

色の違いによる温度差は、黒が赤外線を吸収するからである。
正確には、人体が発する赤外線をその生地が吸収して発熱するからである。
赤外線を吸収すると暖かい。
ゆえにタイツも黒の方がより暖かいと言える。

しかし、ストッキングやタイツには共通の欠点がある。
それは暖かい場所では暑くなりすぎる点である。
特に暖房が効いていている場所ではつらい。
出来れば、通勤時にだけ穿いて、屋内では脱いだ方がよい。

逆に何もはかないのがぬくく感じるのは、そもそもズボンと足の間に空気の層が
あることと、寒いなら寒いで全体がそうであれば温度差が無く、
後は慣れによってそれ以上に寒くは感じないためである。

では網タイツが一番暖かく感じるのはなぜか。

網タイツは、非常に目が粗いのでそれ自体が空気の層を作ることはない。
しかし糸自体はタイツと同じで太いのでほんの少し空気の層を保つ
=ほんのちょっとだけぬくい。
また、網タイツをはくとズボンが直接肌に触れる確率が減る。
そのため、ズボンが肌に当たって体温が外に逃げる確率が減る。
ほんのちょっとだけぬくいのと、熱が逃げる確率が減るのと、
相対温度のむらがないことにより体感的にぬくいと感じるわけである。

今回使った網タイツは、私が穿くとかなり目が粗くなり(Mを無理矢理伸ばして穿くから)、
だいたい5ミリ角以上の網になるのだが、これをもう少し細かく
できれば、もう少しぬくいのかも知れない。

網タイツの良い点は、過剰に暑くなりすぎないことにもある。
暖房の部屋でも暑くならないのだ。
これは意外な利点である。

結局冬場に一番良いのは、編み目のある程度細かい黒の網タイツなのかもしれない。

        ・・・後日補足・・・

その後の実験では上記予想通り、網タイツよりいわゆる柄物タイツの中で編み目系、
しかもその目が1〜2ミリ角ぐらいの物が一番温かった。
繊維素材の太さとしてはタイツに属し、また編み目の大きさが適度であるため
空気の層が出来やすくかつ保持されやすいのがその理由であろう。
ちょうど毛編みのセーターに似ている。

        ・・・

いやまてよ、野外での暖かさだけを追求した場合、
空気の層+ズボンに当たらなくして熱の逃げ=むらの発生を防げば良いんだから、
タイツ+網タイツが良いのかもしれない。
でもそうなると暑すぎるかもしれないので、黒のストッキング+網タイツで
追実験してみた。

結果は、予想に反して良くなかった。
最初の結果と上記の推測に少し間違いがあったようである。
ストッキングだけを履いた状態で、無風で歩いていない状態でも
膝少し上、内股付近に冷たさを感じるのだ。

これは、この部分が元々冷たい部分であり、
ストッキング着用により周りは暖かくなるがここは冷たいままなので
相対的に冷たさが強調されるのではないかと思われる。

この理屈から言えば、ストッキングやタイツはそもそもだめと言える。

それ以上に、この黒ストッキング+網タイツはきつすぎるのが難点である。
やはり2枚履きはだめだ。おなかが痛くて、あからさまに血行が悪いのが感じられる。
これでは体温が上がらず逆効果だ。
(この実験時も、すぐに脱いだ。)

        ・・・

今回の実験は、ズボンの下に穿くという条件であったが、
これがスカートの場合はどうなのであろうか。
さすがにスカートでの実験はしてないが、コートで同様の条件は作ることが出来る。

スカート部分の中はよほど下から空気が入り込まない限り=風が下から吹かない限り、
中に空気の層というか熱気のたまりがあると思われ、
しかもズボンと違い両足の発する熱が1カ所に集まるのでよりぬくいと思われる。
(熱は上にこもるので、下が開いていても逃げないという予測である。)
もちろん、空気を通しにくい生地のスカートの方がよかろう。
コートはまさにこの空気を通しにくい生地である。

しかしそれより下は逆に常に空気の層がないので、ここに相対温度の差が生まれ
余計に寒く感じる。

ということは、スカートの中は特に何も履かず(エッチな響き^_^;素足という意味だぞ)、
スカートから出る部分だけ黒系のハイソックスなどで覆ってやれば温度が
均一&空気の層が出来て良いと予想される。
そう、タイツやパンストをはくより、長めの靴下の方が良いわけである。

さらに上記の追試験の結果から言うと、膝上内股付近までが入るスカートを穿き、
その下をハイソックスで暖かくするのが一番良いのではないかと思われる。

事実、コートと夏ズボンでも意外に寒くないという結果が出たが、
是非とも女性読者の実験結果をいただきたいところである。

        ・・・

今回はストッキングやタイツを使ったが、そもそも、もっと厚手の
ズボン下やスパッツではどうなのかというツッコミは出そうである。

そう思う人は自分で実験して頂きたい。
私の手元にはスパッツもズボン下も「無かった」のであるが(買うにも高い)、
さらにズボン下は「かっこわるい物は却下」というあったと書いておこう。
女性には適応できないと言う理由もある(一応じゃないぞ)。

なんにしても、「体感の暖かさ」を正しく科学し、
より暖かく冬場を乗り切ろうではないか。

・・・と、書いたのはこの冬の初め。もう春間近だけどね。

(2006/12/06:やたらアダルトサイトからリンクされるのでちょっと対策&名称変更)
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