「センサーの話」(1998/10/16〜11/25)
最近はいろいろなところに「センサー」というものが使われている。
「なんじゃい、それ?」という御人もいるだろうが、簡単に言えば
「何かを感じとる装置」である。
いやぁん、えっち・・・違うぞ。

        ・・・

人間には五感というものがあって、
        触 味 臭 聞 見
である(あってるよね?)。
この他に、人間には姿勢を感じる器官(三半器官)等もある。
いくつかの器官を組み合わせることで速度や加速度を感じることも出来る。
温度も感じられる。
それらを代行する物が「センサー」である。

一番身近なのはこたつの自動温度調節かな。
温度が上がったら電気を切って、下がったら入れる。
あそこには温度を関知する温度センサーがある。
最新式のは赤外線センサーかも知れないけど、昔のものはサーモスタット
(バイメタル)という純粋に温度に反応するものだった。
詳しくはこたつの中を覗け。

たとえば、車のバックソナーと呼ばれる物。
車がバックするときにぶつからないように調べて、危ない時には
ブザーを鳴らすものだ。これは距離を調べるセンサーを使っている。
「見」に相当する。

光学センサーは、オートフォーカスカメラの中にもあるし、最近の自動ドアを開く
のは赤外線センサーだ。ほら、ドアの近くの天井に丸いものが付いてるでしょう。
あれ。
人間の体というか、熱を発しているものはすべて赤外線を発しているが、
これを「見る」のが赤外線センサーだ。
(昔の自動ドアはスイッチを踏むタイプ。これはいわば体重センサーだな。)

たとえばガス漏れ警報機。大阪ガスなら「ぴこぴこ」かな。
これは「臭」になる。
大気汚染計もそう。大阪市内では淀屋橋の駅の真上にある。

広義で言えば、テレビカメラもマイクもみんなセンサーと言える。
光や音を感じるのだから。
秤はさしずめ重さ(触)を感じるセンサーか。
でも、普通はこういったものはセンサーとは言わない。
センサーと呼ばれる場合、それ単体では意味をなさず、なにかと組み合わせて
はじめて意味をなすもの、という感じがする。
感じる部分とそれに応じて動く部分があって初めて意味をなすので、
感じる部分=センサーだけでは意味がない。
従って、それ単体で意味をなすものはセンサーとは言わない。

ということで、各センサーの基本原理を少し話しておかねばなるまい。
物が物だけに、簡単な説明では済まなかった。
以前の表示板よりさらに難しい。仕方無いものとして諦めていただきたい。
なお、これから書く原理はすべてうろ覚えであるので、
間違っているかも知れない。もっと詳しく知りたい人は
自分でその筋の本で調べるように。

各センサーの利用例も書くけど、全てがそれで出来ているわけではないし、
他のセンサーでも実現されている場合もある。
センサーの応用例は無限に近いのだ。

        ・・・温度センサー・・・

温度センサーには大きく3つの種類がある。
1つは金属の温度による膨張を使ったもの、1つは半導体の温度による電流値の
変化を使ったもの、もう1つは物体の出す赤外線を感知するものである。
赤外線のは光センサーの一種になるので、また後で書く。
(絶対0度でない物質は、その分子振動によって必ず赤外線を発生する。)

金属は、温度によって膨張と収縮が起こる。
この温度による長さの変化の割合を膨張率というが、
この膨張率が異なる2つの金属を張り合わせると、
温度によって曲がるものが出来る。

膨張率は温度によって一定なので、膨張した長さから温度を知ることが出来る。
そんな金属でも膨張するが、余り膨張率の小さな金属では役にたたないので、
膨張率の高い金属が使われている。
実際には、この金属の伸びによってスイッチをon/offして制御する。
これが温度センサーとなる。
「バイメタル」というものを聞いたことがあるかも知れないが、これは
バイ=2つの金属を張り合わせたものという意味である。
金属を使った物は安価であるが、細かい温度を計るのにはあまり適さ無い。

半導体を使った温度センサーは、主にトランジスタの温度による電流値特性を使った
物である。細かい言葉は抜きにして、トランジスタのある部分に流れる電流は、
温度による関数になる、という特性がある。これを使って温度を計るのが
このタイプである。

        ・・・

半導体温度センサーでは0〜150℃位の範囲をかなり正確に測定出来る。
しかし、それ以下/以上になると半導体そのものの物理的破壊につながるので
使えない。それ以上の温度範囲では真空管(のような物)が使われたり、
赤外線による間接的センサーの利用となる。

あっ、今まで何気なく書いてたけど、「半導体」ってわかる?
中学か高校の物理を思い出して欲しい(技術家庭かな?)。
電気を通す物質が導体で、通さないものが絶縁体であるが、その中間が
半導体と思えば良い。
半導体は、条件によって電気を通し(やすかっ)たり通さなかったりするものもある。
この半導体の代表例は、シリコン(珪素)やダイオードがある。
元素の周期率表を見ると同じ区分にあるからわかるぞ。
(炭素も一応同じ部類。)
ただし、半導体は純粋な物質だけとは限らない。複数の物質の化合物からもできる。

トランジスタとかダイオードとか呼ばれる電子素子はこの半導体を使っている。
ICはトランジスタがたくさん集まった物、と思えば大体あっている。
トランジスタはラジオやパソコンに中だけでなく、およそ現在の家電製品には、
ほぼ全てに入っていると考えて良い。まさに20世紀最大の発明がトランジスタ
である(事実、その発明者にはノーベル賞が与えられている)。

そういえば、昔「トランジスタ」=「ラジオ」とした歌があったけど、
あれはあまりにも俗称過ぎて、こういうことを知っている人には、恥ずかしく
聞くに耐えない言い方である。「トランジスタ」は聞くことはできない。
(もっとも、中近東当たりではラジオのことを「ソニー」と言う、ということも
聞いたことがある。「最近のパナソニックのソニーはいいね」などという、
日本人にはさっぱり解らんような会話も向こうでは成り立つのである。
一般化した名称と言うものは、時として妙なものである。)

温度センサーの利用場所は炬燵(こたつ)の中を始め、クーラー等の空調設備、
自動消火装置(ビルのそれもあるが、最新型の台所コンロでもそういうのがある)、
最近流行の電子体温計もこれである。
さらに最近はパソコンの中にも有って、内部温度が上がりすぎていないかどうかを
調べている。すごいもんだ。

        ・・・光センサー・・・

光センサーにはいろいろとあるようだが、基本原理は似通っていて、
光が当たることで電気を発生する素子を使っている。

半導体や一部の化学物質は、その表面に光が当たると電子が放出されたり、
原子内の電子がエネルギーレベルの高い核に遷移したりして、
電気が発生するか電流が流れるようになる。
太陽電池も原理的には一緒だ。
その量は光の強さや波長によって一定なので、それにより
光の量を測定できるのである。

昔は真空管を使ったものが主流であったが、消費電力が大きいということもあって、
最近はほとんどが半導体タイプである。
フォトダイオードとか、フォトトランジスターと呼ばれる半導体素子は、全て
光センサーである。まぁ、読んで字のごとくであるが。

もう少しくわしく原理を書いておこう。
半導体にはN型と言うものとP型と言うものの2種類がある。これは、半導体の中に、
極微量の不純物を入れることで作り分ける。
純度テンナイン(99.99999999%)という高純度に精製したシリコンなどの
中に何かP型はリン、N型は?(忘れた)の原子を混入することで作る。
・・・こらこらそこの君、寝たら駄目だぞ。

        ・・・

で、このP型とN型の半導体を張り合わせるとダイオードとかトランジスタとかが
出来るのだが、この張り合わせたものに光を当てると、P型では+の電荷が、
N型には−の電荷が発生し、その両方に電極を付けると電流が流れる。
この電流値が光の強さに比例するので、光センサーとなるのである。

このような光センサーは、人間が見える範囲の可視光線領域以外も検知できる。
一般的な半導体であるシリコンでは200〜1000nmという光の波長領域を
検知可能である。人間の目に見える領域=可視光線領域が400〜700nmなので、
人の目より少し広い範囲まで「見ることが出来る」わけである。

で、700〜1000nmあたりは近赤外線領域で、物質が熱を持っていると
必ず発生している。また、温度の高さと赤外線の波長・強さは相関関係があるので、
この領域の光の強さを検知すれば温度センサーになるわけである。

感度で言うと、10のマイナス4乗からプラス6乗ルクスまでというと極めて広い
範囲をカバー出来る(ルクスと言うのは光の強さの単位ね)。
解りやすく書けば、夜の星明かりから、真夏の日差しまでという感じである。

これ以上の感度が必要な時には、光電子増倍管という別の仕組みのセンサーを使う。
簡単に書けば、放出される電荷(電子)の量を増やすことが出来る仕組みを持った
ものである。光によって放出されたある1個の電子が、別の物質に当たって、
複数個の電子を放出することで「増倍」させるのがこのものである。
私の知るのは真空管式のものだけであるが、最近は他のもあるかも知れない。

        ・・・

光センサーの応用例は、純然たる光センサー、温度センサーの他に、
放射線センサーもある。

放射線と言うのは一種の光なので、このセンサーで検知出来る。
(放射線とか電波とか光りを総称して「電磁波」と呼ぶ。)
ただし、いわゆる「光」は物体に当たるとそれより後ろにはいかない=遮られる
のであるが、放射線は透過力が強く普通の光センサーではとらえきれないので、
放射線を吸収する力の強い物質を使う。ゲルマニウムとかテルル化カドミウム
という材料を使うらしい。

おっと、これを書いてしまうと、透過するのになぜ放射線が光と同じだ?
ということについても少し書かねばなるまい。

光には2つの性質が有って、一般的に私たちが認識出来るのはその1つの側面である
波動性だけである。波動性=波の性質であり、これは、物体に当たるとそこで
遮られてそれより後ろには届かない性質である。これは私たちに日常の体験からも
すぐに理解出来る。

ところが光にはもう1つ性質が有って、それが粒子性と言われるものである。
壁の後ろ側にも光が届くのである。壁が透明ならまだしも、そんなことがあり
得るのか?ということなのだが、有り得るのである。

        ・・・

簡単な例なら、強い光の当たっている壁の反対側は熱くなる。
これは、いわゆる可視光線は遮られたが、赤外線は通り抜けたと考えることも出来る。
(厳密には間違いだけど、認識としてはこれでも良い。)
壁と言うものは、可視光線にとっては遮断物であるが、もっと他の波長では
遮断物ではなくなると考えれば良いだろう。
放射線と言うのは、この透過性が非常に強い光なのである。
(これを量子理論といい、かのアインシュタイン博士がノーベル賞を取ったのは、
実は相対性理論ではなくこれであるといわれる。逆に、電子の波動性と言うのもある。
江崎れおな博士がトンネル効果でノーベル賞を取ったのはこれである。)

放射線について書いたので、もう1つ余談。
透過力の強い放射線と、弱い放射線とどちらが人体への影響が強いのだろうか。
答は、おそらく多くの人の想像に反して「透過力の弱い放射線」である。

「透過」は、その放射線の持っている透過力が無くなるところまで継続する。
ある物質を透過する時に、放射線はその力を物質に奪わる=物質に与えていく。
そしてその力が0になったところで透過が終了する=吸収される。

透過力が強い放射線は人間の体をつっきって反対側へ出る。
だから、実はあまり人体に影響を残さない。逆に透過力の弱い放射線は
人体の中にその透過力によるエネルギーを与えてしまう。
これが人体に悪影響を与えるのである。
従って、透過力の弱い放射線の方が人体への影響が強く出る。
放射線にはα、β、γ等の種類があるが、そのうち一番透過力の弱いα線が
実は一番危ないのである。もっとも、α線は紙1枚位の厚さの空気をつっきるだけで
エネルギーをなくすので、一番恐いのはアルミ板で数ミリ、水なら数センチの透過力を
持つβ線ということになろうか。

ここで間違ってはいけないのは、透過力の強さと放射線そのものの強さというか放射量
である。放射線がたくさん出ている場所にいれば、例えそれが透過力の強い放射線で
あっても影響は出る。くれぐれもご注意を。

もっと放射線の話を書いても良いけど、今回はセンサーの話ので、
また別の機会にでも。

光センサーの利用場所は新型の自動ドア、人が近づいたらライトが点灯するものや
「いらっしゃいませ」というやつ、入場者数を自動的にカウントするものなどがある。
そうそう、今や家の中に散乱しているリモコン類、あれも皆光センサーである。

おまけ;一応電磁波の非常におおまかな区分はこんな感じ。

        〜100m〜1cm   700nm              200nm  10-8乗m〜-10乗m  それ以下
        電波・・・・・赤外線・可視光線・紫外線・・・・X線・・・・放射線

そう、全ては基本的には同じ物で、波長だけの違いによって呼び分けられているもの
なのである。

        ・・・接触センサー・・・

接触センサーは、接触するものが動物かそれ以外かで大きく分かれる。
相手が動物の場合は多くは半導体を使い、それ以外は一番単純な接触センサーは
機械的なスイッチが多い。

動物の体は基本的には絶縁体だが、実際には微弱な電流を通す。
これは、体内は体表面の水分とナトリウム分によってである。
この微弱な電流を関知することでセンサーになる。
相手が物の場合はそうはいかないのでスイッチを使う。
ほら、エレベーターのスイッチで触れるだけで点灯するものがあるでしょ、
あれはこのタイプ。あのスイッチを物で押してもなかなかつかないのはこのため。
汗をかいている時はつきやすいが、乾燥しているとつきにくいのも同じ理由。

FETというトランジスタの一種がある。
Field Effect Transisterの略であり、日本語で言えば電界効果型トランジスタと
なる(トランジスタは英語だけど)。
これは単純に構造を書くと、下図のようになる。

           半導体               半導体の棒を、別の半導体で挟んだような形
              |                 である。くるんだ半導体に電圧をかけることで、
        ---======---            真ん中の半導体に流れる電流の量を制御できる。
--------  [半導体]  -------     
        ---======---            回りからかける電圧によって電界が発生し、
             |                  その効果によって電流を制御するから
          半導体                「電界効果型」である。

この回りの半導体の代わりに動物の体を相当して考えた物が
半導体接触センサーである。わかった?

別の接触センサーもある。
光センサーの応用だが、光を出す物と受ける物を対面に配置し、
何かが間を通ることで光が遮られたことを調べることもできる。
正確には非接触式の接触センサーとなる。
ややこしいけどね。

このあたりのセンサーで1つ難しいのは、感度の調整。
余り敏感にしすぎると人の接触以外でも反応したりする。
例えば野外なら雨、雪、虫などである。
このため、センサーの内部にマイコンを入れて信号をチェックし、
ある状態の信号が来た時だけ反応させるようになっている。
このあたりの話は奥が深いので、また別にまとめて書こう。

接触センサーの利用例は先のエレベーター等のスイッチの他・・・
あれ、思い付かんなぁ。
最近の薄型スイッチ、触れるだけで動くタイプは全てこのタイプであると思って良い。
そう、本当はあれはスイッチではなくセンサーなのだ。
(だから動かすために常に電気を必要とするし、スイッチとしての状態を
記録する電子回路が別に必要である。)

余談であるが、(どこに)触れたかどうかを知ることは出来ても、どのように
触れたかとかは直接は検知出来ない(複数のセンサーを並べて、その触れられ方を
調べれば、経験的調べることは可能かも知れないが。)
従って、「俺はテクニシャンだから・・・」という会話は現存センサーで作られた
体に対しては無効である。
女性の体ほど敏感なセンサーは当面は出来そうにない・・・って何の話だ(*^_^*)。

        ・・・音波センサー・・・

距離センサーの話を書こうと思ったが、距離センサーは音波センサーの
応用例なので、もっと一般的に音波センサーとして書く。

音というのは、言うまでもなく空気(など)の振動である。
そしてその振動が何かの物体に当たって、振動エネルギーが物体に移る。
人が音を聞くことが出来るのは、音の振動が鼓膜にそのエネルギーを与えて
鼓膜を振動させるからである。

物体が振動する、もしくはその振動によって物体が変形するということで、
エネルギーを発生させる、もしくはその変化を検知出来ればセンサーとなる。

このようなタイプには大きく3つのものがある。
1つはフレミングの左右どちらかの手の法則を使った発電機と同じ原理のものであり
(これは振動をそのままエネルギーに変える)、1つは音圧による静電容量の変化を
とらえるものであり、後1つは変形から電流を直接発生する圧電素子を使ったもの
である。

フレミングの法則は、磁場の中でコイルを動かすと、その運動と磁場に垂直な方向に
電流が発生するというものである。思い出した?(これが左右どちらの手の法則で
あったかは忘れた。)
簡単にいえば、スピーカーは音を出す物であるが、逆にスピーカーに向かって音を
出し、スピーカーの電極に流れる電流量を調べると、音の大きさに比例する。
ダイナミック型と呼ばれるマイクはこの方式である(歌用のマイクのほとんどは
これ)。そう、マイクは一種の音センサーなのである。

        ・・・

音圧による静電容量の変化というのは説明が難しいが、
ある極狭い空間があると、その間に静電気を貯めることが出来る。
その貯めておける量のことを静電容量という。
ほら、シートの付いた下敷きをはがすとパリパリいって静電気を発生するでしょう。
あれは、シートと下敷きの間にたまっていた静電気が、間の空間が広がることで
貯めておけなくなって放電されたために起こる現象だ。

ある微小空間にわざと静電気を貯め、その表面を薄い幕で覆っておく。
その幕が音で振動すると、空間の広さが変わるため、静電容量が変化する。
これをとらえるものがこのタイプである。

このタイプもマイクで使われることが多い。
ほら、10年ほど前までのラジカセには本体に小さなマイクが付いてたでしょう。
あれはこのタイプ。エレクトリックコンデンサーマイクという。
小さい割に広い範囲の周波数、小さな音にも反応するので良く使われた。
静電気を常に貯めておくために電源が必要ということが欠点かも知れない。
また、逆に大きな音には少し弱かったようで、だからちょっと良いボーカル用の
マイクには使われなかった。

圧電素子とは、物体が変形すると、その中に電圧が発生するという性質を持った物
のことである。セラミックや半導体が使われるが、原理的には塩などの結晶でも
起こる。圧電効果自体はありふれた現象なのだが、その発生する電圧がある程度大きく
ないと実用出来ないので、それが大きな物質が使われている。

ある物質の中で電荷(電子)が不均一に分布している場合、それに変形を加えると
電荷に片寄りが出来て電圧が発生する。変形が大きいほど大きな電圧が発生する。
振動で考えた場合、電圧の大きさ=変形の大きさ=振動の大きさ=音の大きさに
比例するので、電圧の大きさで音の大きさを知るセンサーとなる。

        ・・・

いずれの種類の場合も、振動という力学エネルギーを電気エネルギーに
変える仕組みそのものがセンサーとなる。
この変化は、実は可逆であるので、電気エネルギーを振動エネルギーに変えることも
可能である。
大さっぱにいえば、マイクの逆がスピーカーだし、圧電素子の逆がイヤホーンである。

音センサーの場合、1つのセンサーで広い周波数を全て網羅することは難しい。
(コンデンサーマイク方式だけはだいぶ広い範囲を追えるが、せいぜい聴覚範囲
周波数より少し広い程度。)
これは、基本的に振動が伝わること=共鳴することは、共鳴を起こす大きさ
が特定されるからである。ある波長によって振動する物は、ある大きさを持って
いなければならないということなのである。
従って、広い範囲を測定する時には、複数の音センサーが必要となる。
もっとも、そこまで広範囲に計る必要がほとんど無いのか、
そういった物は身近には存在しない。

また、音の大きさ(音圧という)に対しても、小音量から大音量まで網羅するのは
難しいが、振動する材質を変えることで音量に対する反応性を変えることで
区分けして対応しているようである。

        ・・・

さて、音センサーの利用法は、単に音の強さを検知するだけではない。
距離を計ることにも使える。これはコウモリの原理だ。

コウモリは口から超音波を発生させ、それが物体に当たって跳ね返ってくる
までの時間によって、物体との距離を知る。
距離センサーも同じで、超音波を発生させ、その跳ね返ってくるまでの
時間で距離を知る。
音の伝播スピードいうものは、気温と周波数によって大体一定である。
だから、時間から距離を逆算できる。
音センサーと時計があれば距離センサーになるわけである。

距離センサーといえば、音の代わりに光を使う場合もある。光の場合は非常に精度の
高い測定が可能である。

原理は超音波とまったく同じであるが、光の場合は単純な物体では反射しないので
相手が鏡(のような物)の必要があるし、距離が短いと光の伝播速度はきわめて
速いため時間が測定できない。
このため、装置を距離を計りたい2点間に完備した上で、
きわめて高精度の測定装置、かなり長い距離がある場合に使う。
具体的には断層のずれを計るとか、地球と月の間の距離を計るとかに
使われている(月の上にはそのための鏡が設置してあるのだ)。
・・・この話は光センサーで書くべきだったか。

距離センサーの利用例は、カメラのオートフォーカスや車のバックソナーなどがある。
特にカメラはこの実現のお蔭で大幅に進歩した。
カメラのオートフォーカスはほぼ全てがこのタイプである。
人の耳に聞こえない超音波(40KHzほど)を出して、それを聞いているわけ
である。(もっともこの場合、音の大きさは問題ではなく、聞こえたか聞こえないか
だけでいいが。)
ピッチャーの投げるボールの速度を計る装置もこの応用例である。

そうそう、純然たる音センサーでの応用例としては、
一部のカーステレオにあるような、外部の音の大きさにあわせて音量を変化させる
物とか、録音する時の音量を一定にする物などがある。

        ・・・ガスセンサー・・・

ガスセンサーは極最近になって出来たもので、
そういう意味でも、一番実現が難しかったセンサーである。

半導体やセラミックなどの電子素子の表面にガス成分が吸着すると、
その抵抗値が変わる。ということはE=IRのオームの法則から
電流値が変わるので、これでガスがあるかどうかが検知出来る。
この時の抵抗値の変化はガスの濃度の関数となる。

問題は、電流の変化はガスの成分にはよらないことである。
従って、ガスに特異に反応する物質を作る必要があることである。
濃度の検知は簡単だが、種類の判別は難しいわけである。
だから、都市ガスだけとか二酸化炭素や一酸化炭素だけとか、
そういう物は作れても、人間の臭覚のように万能に近い物は出来ていない。

また、一度吸着したガス成分を取り除かないと連続で検知出来ないので、
ヒーターでセンサー表面を加熱しておく(ガス成分を蒸発させるため)などの
工夫も必要である。

この利用例は、いうまでもなくガス漏れセンサーである。
排気ガスを調べるセンサーは、淀屋橋のたもとにある
大気汚染系などにも入っている。
また、新しいタイプのアルコール検知器もこれである。
風船式アルコール検知は純然たる化学反応だが、こちらは電気を使っているのである。
くわしくはお近くの警察へ行って聞いてみよう(オイオイ)。

        ・・・磁気センサー・・・

磁石の強さ=磁場の強さを計るセンサーにはホール効果と呼ばれるものを使った
半導体センサーが一般的である。(そういう半導体センサーのことをホール素子
という。)

ホール効果とは、
             C                  ちょっと図が解りにくいが、半導体のA−B間
         _____             に電流を流しておき、これに垂直な方向に
    A---|\ ___\---B       磁場を与えた時、C−D間にA−B間の電流量と
         \|____|          磁場の強さに比例した電圧が発生するという
                D               現象である。
                ↑
                ↑磁場

フレミングの法則に似てないことはないが、フレミングの法則が運動を
必要としているのに対し、こちらは不要である(たぶん)。

たしか、モーターの回転数を正確に制御するのにもホール素子は使われている。
モーター内には磁石があるが、それのホール素子上の移動速度によっても
電圧が変化するから、それで制御をかけるのである。
ちなみに、時計のモーターはこれとは違う。
(あれはステッピングモーターという、回転を角度単位で正確に制御出来る
特殊モーターに対して1秒毎に60/360°だけ回るような電流を流している
ものである。)

磁気センサーは昔のカーナビゲーターに使われていた。
今はもっぱら人工衛星からの地形データに頼っているけど。
医療に使われるMRIというものは人間の体内にある微弱磁場を検知する物で、
磁気センサーの固まりである。
あっ、羅針盤は一種の磁気センサーかも。

        ・・・

その他のマイナーだが少しは身近なセンサーをいくつか上げておこう。

電波は光の一種であるが、センサーという意味では構造が大きく異なり、
ずっと単純に出来る。ラジオだって一種の電波センサーだもんなぁ。
コイルさえあればいい。

流量センサーという物もある。物体の流れる速度を計る物だ。
今は距離センサーを使えば非接触で測定も可能だが、
昔は単純に羽を回してその先に発電機を付けて発生する電流量で調べていた。
そう、風力発電機と同じ。

        ・・・

これらセンサーという物は、感度だけで言うと人間の何倍も優れた物が作り出せる。
特に見る・聞くに関しては人間よりもよく見え、広い周波数で聞こえる。
またこの2種類の物は比較的容易に作り出せたため、
昔からある。

しかし、後の3つ、触、味、臭に関しては最近まで出来なかった。
それらを機械的に調べるのは難しいのだ。

人間にの感覚器官では1つで多くの情報が得られるが
(正確には、センサーが1つ場所に集約していることが多い)、
センサーの場合には1つで1つしか感知出来ないことが多いので、
複数のセンサーを設置する必要が出てくる。
1つ1つのセンサーも大きいので、1カ所へ集約も難しい。
そのため、総合的なものが作れない。
感度は優秀だが、現在においても多くの場合広がりという面では
人間に及ばないというわけだ。

でも、一番大切なのは、感じることだけではなく、その感じの先にある。
感じて、反応して、対処するの3つがつながらないと無意味である。
例えば、たとえば温度を感じてもスイッチを切らなければ意味がない。
温度を感知するだけでは意味がないのだ。

人間も同じ。単に感じるだけでは意味はない。
感じて、感動して、自分なりに表現するとかが出来て、初めて記録に残る。
単純に「ああすごい」だけでは感じとった意味がなくなってしまう。

何かを知った時に、それを何かしら自分のものに出来るかどうか。
そこでいわばセンサーの固まりである人間の真意が問われる。

        ・・・余談・・・

そういえば、おばはんにも特殊なセンサーがついているように思える。
特に、
        「座席隙間感知センサー」
はすごく優秀である。
電車には入った瞬間、座席のどこに隙間があるのか感じとり、
そこに入り込むのである。

しかし、この場合、1つの欠点がある。
それは「自分の大きさを認識していない」ということである。
座席に隙間があるのを感知すると、そこに自分の体が入るかどうかの判断をせずに
突進してくるのだ。

このためにまわりにいる人間が大きな迷惑を被ることがあるが、
いっこうにお構いなしというのがおばはんの強さである。
さすが人類史上最強の生き物・・・いや、妖怪か。
負けるもんか(^_^;)!・・・勝ってどうする?

あっ、一度おばはんの体の分析をしてもいいか・・・と思ったけど
気持ち悪くなりそうなのでやめ。

・・・実は一番最初に思い付いたのがこの話。これが書きたいがために今までの
センサーの話を長々と書いてきたのである。ネタの発想なんて、そんなもの。

        ・・・

何の話しだったかな。
そうそう、そううわけで、センサーは身近にいろいろと使われて、
われわれの生活を陰で支えているわけである。

やっぱり感じることは大切なのである。

        「あっ、あぁ・・・・いやん♥」

・・・違うって(^^;)

参考文献;Oh!X 1991/1  P60〜61 ソフトバンク
        ;Oh!X 1990/12 P78〜84 ソフトバンク
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