「ときめきの科学講座−1」(1999/12/08〜12/15号)
突然始まってしまうこの講座は、巷にあふれているさまざまな現象を
「局長なりに」考察して解説してしまうものである。

「局長なり」なので、ひょっとすると厳密には間違っているかも知れないが、
取り合えずの認識には差し支えないと思うので押し切るのである。
ちなみに、これを書くにあたっては、よほどのことがない限り
覚えていることだけで書く。ということは改めて本などを見ることはない
ということで、「これはおかしいのでは?」と思った人は、自分でちゃんと
調べるのが正しい行動である。
そうこのシリーズは、読者に疑問を抱かせ、自ら学ぶ姿勢を持たせることが
目的なのである(素晴らしい言い訳^_^;)。

という前置きをしながら始まり始まり。

        ・・・凝固点(融点)と沸点・・・

琵琶湖西部、比叡山より北に行くとそこは北陸地方である
(注;これを書いたのは1999年の2月ごろである)。
従って、冬場にはよく野外の水たまりが凍り付くのである。
「氷を割るのは快感!」というのはともかくとして、
オラクラの読者であればここで、「なぜ水は凍るのだろうか」
「そもそも凝固点とはどういうものだろうか」ということを
疑問に思わなくてはいけないのである。

ではなぜ水は凍るのであろうか。
氷の状態とはどういう状態なのであろうか。

世の中にある分子や原子は、絶対零度(−273度)でない限り
必ず振動や運動をしている。逆に言えば、運動していることが即ち熱なのである。

物体を動かし続けるにはエネルギーが必要であり、
それは通常の場合はその源が温度なのであるが、温度が低いとその分子を動かすのに
十分なエネルギーが得られないのである。
この状態が「凝固」している状態であり、水で言えば凍っている状態である。
水が凍っている状態では、水分子は運動できない。

ということは、分子によってはその運動を持続出来る下限の温度と
言うものがあるということである。
これが凝固点である。

        ・・・

逆に運動するに十分なエネルギーがあるのが液体であり、
エネルギーがあり余って分子間の結合すら切ってしまうのが気化であり、
そういう状態が気体なのである。

重い物体を動かすには大きな力が必要なのと同じで、
一部の例外を除き、重い分子や原子ほどそれを動かすのに大きなエネルギーがいる。
だから、常温では、軽い分子を持つ水素や酸素は気体だし、鉄などは固体なのである。

異なる分子・原子だけではなく、水に何かが溶け込んでいる状態でも
凝固点は下がり、沸点は上昇する。
これをモル凝固点降下とかモル沸点上昇とか呼ぶが(モルというのは分子の
数を表す単位である)、これも同様の考え方で理解出来る。

すなわち、水の中に他の分子が混ざると、その分子の運動まで止める必要がある。
その分子まで十分動かす必要がある。この余分なエネルギーが必要となるため、
いっそう低い温度で凝固するようになるし、いっそう高い温度で沸騰するように
なるのである。

海の水には塩が溶け込んでいる。だから、その分余計に凝固にエネルギーが必要なので
なかなか凍らない。流れている川は、温度だけでなく、「流れる」と言う
力学的エネルギー(多くの場合、それは高いところから低いところに流れる位置
エネルギーの変化したもの)も持っているのでその運動を停止させるのに
多くのエネルギーが必要であり、だからなかなか凍らないのである。

わかったかな。これが凝固と沸騰の正体だったのである。

        ・・・

この原理の応用(?)が温泉のお湯はさめにくいである。
温泉のお湯にはいろいろな成分が含まれている。
そのため、最初に温度を上げるのには成分分子(イオン)を動かすだけ
余分にエネルギーが必要だが、一旦温度を上げると成分の持っている運動
エネルギーがある間は温度が下がりにくい。

一般にはこのことは比熱の違いといわれるが、その本質は運動エネルギーに
ほかならない。

        ・・・

言い忘れていたが、何かが凝固するときには、その凝固する物体は
まわりにエネルギーを放出している。正確に言うと、持っていた運動エネルギーを
外部に熱として放出するので回りの温度は上がる。
逆に、何かが溶けるときはまわりからエネルギーをもらう。
すなわち、まわりの熱エネルギーをもらってそれを運動エネルギーに換える。
だから、まわりの温度は下がる。

氷に塩をかけると温度が下がるが、その時氷は溶けてしまう。
その現象はまさにこれなのである。

凍る時に温度が上がり、溶けるときに温度が下がる。
なんとなく逆のように思うかも知れないが、事実はそういうものである。

また、今まで書いてきたことが、どこかで聞いたことがあろう
「エネルギー保存の法則」と言うものそのものなのである。

        ・・・

と、書いたところで、例外も書いておかねばなるまい。
実は、純粋な水でもある状態にすると0度以下になっても凍らない現象が起こせる。

水に振動を与えずに冷却し続けると、少なくとも零下15度までは
凍らないで液体のままで存在することがある。
何でそうなる?といわれる実は説明出来ないのだが、そうなのである。

これを過冷却状態と言うが、そこにちょっと波を立てたり不純物を入れると凍り付く。
この状態の水は氷になるはずなのだが、氷を作るためには「核」となるものが
有った方がなりやすいのである。その核を中心として氷の結晶が成長して凍り
付くのだ。その核として波=泡や不純物がなるわけである。

実は雪雲もこの過冷却状態の水分子の集まりから成っている。
この雲内部がもっと冷えれば雪が降るし、何か不純物が入れば雪が降るのだが、
ちょうど零下15度位の雪雲は、水が氷にならないために雪を降らせないまま
消えていくこともある。
この雲に不純物(ドライアイスの粉など)を入れて人工的に雪を降らせるという
実験がすでに行われている。

こういう状態はもちろん小学校の授業では教えない。
例外を説明する難しいからだが、実は例外こそが科学のおもしろさではないか
と思うのである。なぜ例外が起こるのか、それは今一般とされていることが
本当は正しくないからではなかろうか、真実はどこにある。
その思いこそが科学者への第一歩だと思うのだが。

科学のおもしろさを説けない教師など不要・・・と、教師論を書き始めるのも
良いけど、場所が違うのでいつかまた別の時にでも。

        ・・・

さてさて、あなたは今回の話は十分理解出来たかな?
わからないままほっておくのは良くないぞ。

わかるまで局長に聞くか、自分で調べていこう。
科学的事実と言うものは、知れば知るほど面白いものだぞ。
<戻る>