「HDDの話」(2003/06/16〜07/28号)
たまには技術系の話を書いておかないと頭が錆び付いてしまうので、
今書けそうなネタの中で探してみた。
で、出てきたのがHDD=ハードディスクである。
(最近出した「アルカリイオン水」のネタも技術系だけど、
あれはインターネットで調べた情報の方が多かったから、独自ネタとは言いにくい。)

「ハードディスク」という名前を今時知らない人はもう少ないだろう。
PC等の内部で大容量のデータを保存しておく装置のことである。
日本語で書けば「固定ディスク」。その名の通り、他のディスク、
たとえばフロッピーや光磁気(MO)やCDは取り出し可能な「可搬ディスク」
なのに対し、HDDは基本的にPC内部に固定されている。
今でこそノートPCに入ってPCと一緒に持って歩けるから一種の「可搬」であるが、
その昔のHDDは非常に大きくて、本当に固定しておくしかなかったので
この名が付いている。
ちなみに、世界初のHDDが出来たのは1956年、
1.7*1*1.8mもの大きさがあり、ディスクは24インチの物が50枚で、
重さはなんと1t。それでも5MBしかなかったそうな。
もっとも、その当時は5MBでも無限に思える空間だったのかも
知れないが。

少なくとも、PCを使える人なら名前くらいは知っているはずである。
カタログにも必ずその容量が書いてあるから。
最近の機種なら、デスクトップで80〜160G、ノートで20〜40G位が
主流だろうか。
「大きいとバックアップが大変だぞ」「常時必要のないデータはCD−Rにでも
焼いておけばそんな大容量は要らないはず」などと危惧しながらも、
世の中はどんどん大容量化の道を走っているようである。

HDDの名前自体は一般的になってきたけど、その中身について知っている人は
一体どれだけいるだろうか。その特性について、メーカー別の差異について
知っている人はいるのだろうか。

ということで今回は、私が知っていて、たぶん書いても大丈夫と思われる
情報を公開するのである。

ただし、私の触ったHDDの量は個人の比ではないが、
HDDメーカー(販売も含む)の人間ではないので情報には不確かな部分もある。
これを書くに当たって、一部は資料の見直しをしたが、覚え書きの部分もある。
ゆえに、内容に保証はない。
ユーザーだからこそわかる情報が主である。
また、あらかじめ断っておくが、内容についての実務的質問には一切答えない。

また、HDDの進歩やメーカーの統廃合も早いので、ここに書いていることが
すぐに古くなる事も考えられる。したがって、あくまで参考程度にとどめ、
万が一自分の製品にHDDを使おうとするならば、改めて確認することを
強要しておく。

        ・・・基本構造・・・

HDDはアルミ削りだし(大きなアルミの固まりから削って形を作る)のケースに
納められている(違うメーカーもあろうけど)。

ケースは完全密閉ではなくて小さな空気穴があり、ここにフィルターが
付けられている。
HDDの動作に空気は必須だからである。
また中には湿度を一定に保つ(と思われる)物が入っている。
最近あまり聞かれなくなったが、「HDDは埃に弱い」というのは、
この空気穴から埃が入って故障するからである。特に「あの煙」に弱い。
今はフィルターの性能が上がって大丈夫なのだろうが、そういう場所では使わないに
超したことはない。なぜ埃に弱いかは後述する。

このケースの裏面には制御基板と端子がある。
それはいいとして、中身である。

表蓋を特殊工具で開けると、意外にも見える部品は少ない。
ディスク、ヘッド、アーム、アクチュエーター、回転軸(モーター)と先の
フィルター&調湿剤だけである(ねじとか配線もあるとか言わないように)。
(本当はここで写真を見せたいところだが、見せるとメーカーがわかる人にはわかるし、
言葉だけで使えるのがオタクラの基本だからやめ。
このあたりに(http://home.att.ne.jp/red/OSAKOH/HDDbasic.html)に写真があるので
参照されたい。ただし、今回のネタを書くに当たって、ここはほとんど参照
していない。)

ここで個別の部品について少し説明しよう。

*ディスク
言うまでもなくハードディスクの中核をなす部品であり、ここにデータを記憶する。
磁気ディスクというとフロッピーのように茶色の磁性体の円盤のイメージがあるが、
HDDのそれは全く違い、鏡のようにきれいな金属円盤である。
(冗談ではなく、私は手鏡の代わりに使っている。それほど平滑なのである。
大昔のHDDは茶色だったようだけど、少なくともここ1〜2年のディスクで
そんな物は存在しない。)
これが容量によって異なるが、1枚から4枚ほど入っているはずである。
この片面もしくは両面が記録に使われる(素材的には両面使えるが、後述の
ヘッドの数により片面しか使わないことがある)。

ちなみに、日本語(?)では「ディスク」と書くが英語では表記が2種類ある。
        DISK        記録読み出しとも磁気
        DISC        光
と方式によって使い分けるのが慣例となっている。
だから、
        フロッピーディスク      Floppy−Disk
        ハードディスク          Hard−Disk

        光磁気ディスク          Magnetic Optical Disc
        ミニディスク            Mini Disc
        コンパクトディスク      Compact Disc
        DVD                  Digital Versatile Disc
なのである(全角半角の違いは特にい意味はない。書いた時のFEPの設定の違い。)

このディスクのことを「プラッター」とも言う。大皿という意味である。
というよりも、1枚1枚のディスクのことをプラッター、HDDに入っている
全てのプラッターをまとめてディスクというような気がする。
「1プラッター何Gバイト」とか言い、これが大きいほど記録密度が高いことを
意味する。
同じ40GのHDDでも、1プラッターなのか、2プラッターなのかによって
記録密度が違うわけである。ちなみに、最近(2002年10月現在)では、
1プラッター80G(ただし両面)が最新である。

HDDには大きく分けて3つのサイズがある。
一番一般的なのが3.5インチと呼ばれる物でデスクトップパソコンや
いわゆるHDDビデオレコーダのたぐいは全てこれである。
次が2.5インチで、ノートパソコンに入っている。
後はそれ以外。1インチとかがあるが、一部ポータブルパソコンやデジカメで
使えるようになっている程度である。
使われている数的に言えば、3.5>>2.5>>>その他である。

なお、以下の文章は、主に3.5インチの物についてである。
それ以外のサイズについてはその都度サイズと共に書く。

        ・・・

*ヘッドとアーム
ヘッドとはそのディスクにデータを記録したり読み出したりする物である。
カセットテープのヘッドと磁気で記録するという意味では原理は一緒だけど、
高密度化のために垂直磁化とかいろいろやっているので、かなり違う。
ディスクの上を滑るような構造で金属のへらというかピンセットみたいな物がある。
これがアームで、その先に小さく付いているものヘッドである。
もっと正確に書けば、先に付いているものはスライダーと呼ばれるもので、
その先に非常に小さくヘッドが付いている。∩型であるそうな。

ヘッド(当然アームも)はプラッターの片面もしくは挟み込むように両面に対して
存在する。複数プラッターの場合は、ヘッドもそれだけ多くなる。
あるHDDにおけるその関係を表にしてみる。

        容量            プラッター      ヘッド
        80G          1枚            2本
        120          2              4
        160          3              5
        320G        4              8

1枚のディスクで両面書き込めるので通常はヘッドはその両側に2本ずつの
2本である。が、160Gの様に一部片面しか使わない場合もある。
1枚のディスクでどれだけの容量を持つか、その記録密度の向上が
HDDの機種変更と思えばよい。

ヘッドとディスクはくっついているように見える。
実際にはディスク上にはヘッドが接触しても傷が付きにくいように潤滑油が
塗布してあるので、完全に接触することはない。
また、ディスクが回り始めると、ディスク面上で起こる空気の渦によってこのヘッドが
わずかに浮き上がる(正確にはスライダーが空気を受ける羽のような役目である)。
その幅はわずかに0.1ミクロン。髪の毛や「あの煙」の粒子よりずっと狭い。
それをわかりやすいたとえで言うと、ジェット機が地上30センチのところを飛ぶ
くらいの精度である。このことがどういう意味を持つかは振動の項目で後述する。

ヘッド(しつこいようだけどアームもね)は、電源断時にはシッピングゾーンという
ディスクの最内周に移動するようになっている。ここだけはヘッドが
降りても良い場所である。ゆえにランディングゾーン(着陸場所)と言われることも
ある。
HDDを分解するとわかるが、使い込んだHDDのディスクではこの部分には
盛大に傷が入っていることがある。非動作中に振動を与えられた結果である。
ディスク面上には潤滑油があるので、完全にヘッドがディスクに接触することは
ないので、ここにも傷が付くことはないはず。ゆえにランディングゾーンといえども
傷が見えるのは良くないと言える(分解するとためにあるが)。
ちなみに、HDD動作中に電源が切れた時にヘッドを自動的にランディングゾーンに
戻して固定する機構はQuantum社のエアロックという特許だそうな。


*アクチュエーター(actuattor)
アクチュエーターはアームを動かすリニアモーターみたいなものである。
単語の意味からしても「動作させる物」である。
ロータリ・ポジショナと呼ぶこともある。
アームの根本に付いている。
アームの終端(ヘッドと逆側)にコイルがあり、これを1つまたは2つの磁石で
上下または片側から挟んでいる。
回転まではしないが、おおよそ45度の範囲で扇形に動く。
(この動きからすればロータリ・ポジショナの方が合っているように思う。)
この動きも正確にミクロン単位である。

ここの磁石は超強力で、一端くっつけると剥がすのに苦労するほどである。
が、それ故に分解して取り出すといろいろと使い道がある。
(この言い回し、覚えておくと良いかも。)
ただし、誤って磁気カードやフロッピーなどにくっつけるどころか近づけようもの
なら、あっという間に読めなくなるので要注意である。
(分解できる奴は少ないので事実上大丈夫だけど。)
そんな強力な磁石が入っているHDDそのものを近づけたらどうなるか。
一応磁束が漏れにくいような対策はしてある(2つの磁石をSN=くっつく方向で
向かい合わせに配置しているのはそのため)のでおそらく大丈夫だけど、
気を付けた方が良いのかも知れない。

*回転軸(モータ)
ディスクの真ん中にはそれを回す回転軸が当然ある。
(当然であるがいわゆるダイレクトドライブである。)
3.5インチディスクの場合、おおよそ直径2センチ強。

HDDの場合、モーターの回転数は一定で、5400rpm(Rotation Per Minutes)
とか7200rpmとか10000rpmの物もある。
(ちなみに、CDは等速線速度なのでモーターの回転速度が内周ほど速く、外周ほど
遅くなる。HDDは等速角速度。)

基本的には高速回転の方がデータ読み書きが速い。
そのこころは、以下の通りである。
ハードディスク上では512バイトごとにセクターと呼ばれる領域に分割されている。
これには番号が付いているが、どのセクターに対して読み書きするかはOSが管理して
いる。パソコン側からは1バイト単位で読み書き可能であるが、ハードディスク上では
この1セクター=512バイト単位でしか読み書き出来ない。
HDDのディスクは常に回転しているので、あるセクターに書き込もうと
すると、そのセクターがヘッドの下に来る一瞬にアクセスする必要がある。
回転数が速いほどヘッドに下に来るまでの時間が早くなるので、読み書き速度も
上がるわけである。

回転軸はただのモーター・・・と思いきやすごい高度の精度で作られた
モータである。特に軸のぶれに関してはミクロンオーダーでも許されない。
先に述べたとおり、ディスクとヘッドはミクロン単位の幅で間隔を保っているため、
もし軸がぶれてディスク面が斜めになるとすぐにヘッドにぶつかって壊れる。
コマのように軸を中心に斜めに回ることは許されないのだ。
そのため、軸受けがとても重要視され、現在ボールベアリング軸受け方式と
流体軸受け方式の2つがある。

ボールベアリング方式は、これまた非常に高精度で真球に近いボール
の円形に並べ、これで回転軸を受ける方式である。
従来の物はほぼすべてこの方式だと思って良い。
これに対し流体方式は粘性を持った一種の油によって軸を保つ方法である。

ボールベアリングは想像付くと思うが流体がわからないかもしれないので
もう少し説明しておく。ある丸いケースの中に、ある程度粘性を持った
油を注入し、その中で回転軸を回すとちょうど真ん中で安定して
回るようになる。なぜそうなるかと言うことまでは知らないが、そういうものなのだ
そうだ。

最近はこの流体軸受けがはやりである。その主な理由は低騒音と
高寿命にある。ボールベアリングは金属のボールの上で回るため、
どうしても音が発生する。軸もボールも金属なので、それが擦れることで
すり減ってのを防ぐため潤滑油が入れてあるのだが、
この油自体が摩擦熱や空気中の湿気で劣化してくる。
(昔のHDDは特にこれがひどく、湿気の少ないアメリカでは正常に
動いていたHDDが湿気の多い日本では動かなかった、という逸話もある。
もちろん今はこんなことはない。)

ボールベアリング式のHDDの寿命は50000時間もしくは5年と言われるが、
これは電源を入れていてもいなくてもあまり変わらない。
(むしろ、時々回転させた方が長持ちする。)
逆に、HDDの周囲温度が一定以上になると急速に劣化が早くなる。
それはすべてこの潤滑油の変質によるものである。

流体軸受けは潤滑油ではない別の油(系の物)であることと
金属の摩擦がないため温度が低く抑えられるため高寿命になると
思っている。ボールベアリングとの比較を表にしてみると次のようになる。

                流体軸受け
騒音            35dB←40dB(ベアリング)
寿命            2倍
耐衝撃性        向上
耐温度性        同じ(でも低温時は弱いと考えられる)
立ち上がり電流  3〜5%Upだがほぼ同じ
電流温度特性    温度が上がると電流が減る(オイルの粘性が減るから)

多くの点でボールベアリングより優れているのがわかる。
気を付けなければならないのが、立ち上がり電流といって
電源投入直後、モーターが回り始める時に必要な電流量で、
このときにボールベアリング式よりほんの少しであるが電流を食う。

電源に余裕がある機器なら問題ないが、ぎりぎりの設計をしている場合には
最悪立ち上がらないなどの現象が起こる可能性がある。
従って、100%置き換えが可能とは言えない。
特に低温時の立ち上がりが問題になるかも知れない。
逆に言えば、流体軸受けHDDは立ち上がり電流さえ気を付ければ良いと思われる。
ちなみに、HDDの消費電流は最新の3.5インチ80Gモデルクラスでは
最大7W(読み書き時)くらいである。ただし立ち上がり時には3倍ほど食う可能性もある。

静粛性も高いのだが、これゆえに音が出るのを嫌う家庭用のAV機器の中で使われる。
最近増えている民生品のHDDビデオレコーダーの中のHDDは、調べたわけでは
ないが、ほぼすべてこのタイプだと思う。

そうそう、寿命が2倍とあるが、これは軸だけの話であって、
アクチュエーターや振動による磁性面の破壊は考慮されていないので
単純にHDDの寿命が倍になると思ってはいけない。
事実、HDDメーカーの出している仕様書上では寿命は変わっていない。

3.5インチのハードディスクはボールベアリングが主流であったが、
最近流体に移行してきている。
2.5インチはすでに流体がほとんどであるが、流体が先にも書いたとおり
低温に弱いため、温度条件の厳しいところ向けにごくわずかボールベアリングが
残っている。

        ・・・特性・・・

HDDは、いろいろな特性を持っている。
性格と言っても良いかもしれない。いくつかは構造の項で書いたが、
他の特性について、また先に書いた特性ももう一度見てみよう。

*振動
HDDはとにもかくにも振動に弱い。理由は先に述べたとおり
ヘッドとディスクの隙間が狭いためである。
記録を効率よく行うにはこれ以上離すわけにはいかないのでしかたない。

それくらい弱いかと言えば、たとえば動作中のHDDを机の上に置こうとして
ことんと倒したとする。これでもうだめである。

すぐに動かなくなるわけではないが、中ではヘッドがディスクにふれてしまい、
まずその部分のセクターは読めなくなる可能性がある。
また、そこから微細な金属粉が飛び出し、それがヘッドとディスクの隙間に
入り込むとそのままディスクをこすることになり、さらに傷を広げてしまう。
しばらくすると全体が読めなくなる。この段階になってHDDを
分解しても、多くの場合肉眼ではディスク上に傷すら見えない。
でもだめだと言うことは、それだけ微細な傷にも弱いと言うことである。

たとえば、いわゆる普通の電動ドライバでHDDをケースに止めたらそれで
だめである。HDDを固定する時は、低衝撃ドライバーという特殊な
電動ドライバーを使う必要がある。

ヘッド待避位置なら傷が付いても良いと書いたが、本当はこれも危ない。
そこから金属粉が出てしまうからである。ディスクが回っている時には絶対に
ヘッドを落とさないようになっているから、通常は大丈夫なのではあるが。

で、HDDの電源が切られた場合は、ヘッドは自動的にシッピングゾーンへ
移動するようになっている。
昔はかならずCTRL−Cを押してから電源を切れと言われたが、
今は自動シッピングなのでそういうことはない。
が、書き込みの真っ最中に電源を切るとうまくいかないこともある。
だから、基本的には読み書き中に電源を切るのは御法度である
(これが何を意味するかは秘密)。

対振動・衝撃性がどれ位あるのかを一応数値で示しておこう。
メーカーによって若干異なるが、

                        衝撃            振動
        動作時          20G          1G
        非動作時        250G        2G

位の数値になっている。ここでのGというのは重力加速度である。
この20とか250とか言う数値、大きいように思うかもしれないが、
先ほど書いた机の上でことんと落とすだけでゆうに100G近く行くこともある
ので、決して大きな数値ではない。
(振動の1〜2Gというのは結構大きな振動である。周波数にもよるけど。)

HDDをPC店で買うと適当なプチプチにくるんで適当な段ボール箱に入れるが、
あれはいわゆるバルク品=横流れ品(海外逆輸入ものとか、サンプルとか、
メーカー在庫の流れ品)だからこそ許される暴挙であって、あの程度では
振動・衝撃共に全く防げない。
まして、そのHDDを重ねておいているなんて壊しているようなものである。
正規のルートで買った物はしっかり振動対策した箱に入れられてくる。
1個物でも複数物でも。

ここでバルク品と正規品の違いを書いておくと、
                                正規品                          バルク
        故障時の保証            あり                    初期不良は店で保証
                        (1〜3年以内同等品で無償交換)
        ファームアップデート    やってくれる                    なし
        輸送時対策              あり                            なし
        値段                    高い(若干)                    安い
        入手先                  決まっている                    PC店
という感じである。このほかに、バルク品は品質的に劣っている場合もある。
PCでの通常の利用では問題ないが、それ以外の用途で利用すると
問題が出てしまう可能性がある物などである。
急にあるメーカーのHDDの値段が下がってで回るようになったら、
それには何らかの裏があると思った方がよい。先日も(以下検閲により削除)。

なお、名のある周辺機器メーカーはちゃんと正規品を使っているようだが、
大手PC店で買ったから正規品、と言うわけではない。
入手先であるが、たとえばMaxtor社のHDDなら一次代理店としては
国内で(ほぼ)2社からしか購入できない。
そのほかの会社から買ったつもりでも、大元は全てこの2社を通している。
また、OEM用のHDDは最終的にどのユーザーに渡ったかも知られているので、
どのルートで買っても「基本的に」同じ価格になる。大元が、
どのメーカーがどれくらい買っているかをつかんでおり、それにより価格を決めるのである。
が、これは「基本的」なので他社HDDとの競争があれば(以下秘密事項により削除)。

実機において振動対策というと、振動吸収ゲルを挟んだらいいのではないかと
思われるかもしれない。たしかにHDDが台座に対してねじ止めされる場合は
効果がある。

しかし、いわゆるリムーバブルケースなどに入れると効果は出ない。
リムーバブルケースの中ではHDDは完全固定されないため、
ゲルを入れるとかえって動きやすくなるからである。
そもそもリムーバブルケースはその抜き差し時に大きな衝撃が加わるので良くない。
あれはあくまでPC向け、ユーザーが責任を持つゆえに許される、
HDDにしてみれば暴挙である。

また、HDDをしっかり左右2点の4点止めをしておけば
多くの場合問題ないのだが、これを片側止めなどすると一気にだめになる。
あるメーカーではスペースの関係から片側止めで製品を出したのだが、
2年で全てのHDDが壊れたそうである。

台座固定の場合にしても振動吸収ゲルはあまりよくない場合もある。
理由は、振動吸収ゲルを入れても振動エネルギーを吸収せず単に
共振周波数をずらすだけに場合があること、
ゲルが劣化すると固定の場合より悪くなることなどからである。
もっとも、ゲルの選択をちゃんと行い、メンテナンスもすれば
それなりに効果はあるし、動作時はともかく非動作時のショック吸収には
大いに効果があるので、そのような環境では十分な考慮が必要であろう。
(車搭載型のHDDには当然のこととして振動吸収ゲル他、耐震機構が
備わっているが、それらは企業秘密である。)

数値的にはDVDドライブの方がずっと振動・衝撃に弱いのだが、
DVDではヘッドがディスクにふれたところで破壊することは
ほとんどない。だから復帰可能だし、他へ影響を広げることもない。
HDDでは確実に破壊し、他へも影響を与える。

念のため述べておくと、衝撃と振動は異なる。
簡単に言えば衝撃は一過性、振動は周期性である。
また振動では、周波数によっても強さが異なる。
一端だめになったらその後(電源を入れ直さないと)絶対に復帰しない機種と
その周波数を抜けると復帰する機種がある。

一般的に言えば、大容量ほど振動に弱い。30G(このGは容量のギガバイト)
の方が80Gより強い。それは、
        機械的構造が複雑(アームが多い)
        記録密度が高い=1セクターの面積が狭いので、破壊時の影響セクター数が多い
だからである。

振動によって破壊が起こった場合、どうなるのか。
ちょっとぐらいの傷なら表面上は何の問題もなく動くだろう。
HDDのケース止めでも、リムーバブルケースの抜き差しをしてとたんに壊れることは
まずないし、机の上で倒してもそうである。
ほとんどの場合はそれで動かなくなることはない。
しかし、寿命は縮んでいるはずである。

外部に影響が出たときには、もうはかなり重傷だと思われる。
多くの場合、読み書き時のエラーとして報告される。

        読み出しが出来ない時    特定セクターだけなら、そこに書き込みを行えば
                                セクター交替が起こって復活する。
        書き込みが出来ない時    たぶんもうだめ。
                                (セクター交替すら出来ないと言うことだから。)
        一時的な動作不良        原因を取り除き電源を入れ直すと戻ることがある。

セクターの交替とは、あるセクターが読み書きできなくなったとき、
予備セクターを使ってそこを見かけ上交替して問題ないようにすることである。
昔のHDDは歩留まりが悪かったので、製品出荷時からセクター交替が起こっていた
ようだが、最近はほとんどないと聞いている。もっとも、起こっていたとしても
それをユーザーが知る術はない。交替は通常書き込み時に行われるようである。
当然、交替領域を使い切ったらもうエラーを出すしかない。

HDDは、起動時は基盤上のメモリーからプログラムを読んで動作し始め、
後はディスク上に書かれたプログラムを読んでパソコン等からの
命令に応答できるようになるという2段階を経るのだが、
このディスク上のプログラム領域が破壊されるとHDDでは動かなくなる。
モーターは回転するのにその後動かない、という故障の場合は
このディスク上のプログラム領域の破壊が原因であることも多い。
(なお、このディスク上のプログラムとはWindowsのことではない。
もっと基本的なプログラムであり、PCのプログラムとは一切関係ない。)

時々、「HDDを使っていると不良セクターが増えて・・・」
ということを書いている人が居るが、昔のHDDならともかく、
最近のHDDはなかなか不良セクターは出来ない。
出来るほど振動を与えたらHDDそのものが破壊される。
現在のHDDは非常に高信頼性がある。

振動・衝撃に対する強さ、それを与えた時の結果は、
メーカーによってかなり異なる。いきなり物理破壊される物と
復帰する物などいろいろある。
メーカー別の傾向については、少しだけ後述する。


*温度
HDDはだいたい表面温度(実際には軸上の温度)が5〜55度くらいの
範囲で使う必要がある。これ以下だと潤滑油が効かなくなり、
それ以上だとそれが化学変化を起こして劣化する。
3.5インチのHDDでは寿命は温度25度、湿度60%位で5万時間または
5年位であるが、温度が上がると急速に劣化が進む。PCではCPUの冷却は
良くやられるが実はHDDの冷却も重要なのである。
件のHDDレコーダーが、全て後ろに大きなファンを付けているのはこのためである
(と思う)。

通常HDDの動作時には0度以下と言うことはないだろうから下限は良いとして、
上限の55度は結構厳しい。
HDDを製品に組み込むと、だいたいではあるが、周囲温度+10度が
その表面温度となる。
ということは、周囲温度45度までということになり、
これは真夏の炎天下では容易に達する温度である。

ノートPCなら人間が気を遣うが、最近出てきている車載HDDナビゲーション
システムでは非常に危ないと言える。多くの場合ファンを付けて空冷するが、
これも空気の流れが悪いと冷えないし、雰囲気温度が
55度を超えてしまうとどうにもならないのでやはり車載は危ない。
いったいどうやっているのだろうか。

ちなみに、3.5インチの方が大きい分放熱が容易で温度条件も緩い。

高温だけを書いたが、急激な温度変化も良くない。
内部で結露が発生するからだ。これもヘッド破壊の原因となる。

ちなみに、非動作時なら-40〜70度位まで大丈夫になる。


*寿命
HDDの寿命は主に回転軸のグリースの劣化によって起こると言われる。
またそれは高温になるほど劣化が早いので、HDDを使う製品では
特にファンなどで通気をよくして温度を下げる必要がある。
これについてはすでに書いたが、他にも要因がある。

1つは電源入り切り回数というか、正確にはSTARTSTOP回数である。
HDDに対してSTARTSTOP命令で停止をかけると、ヘッドをシッピング領域に戻す。
シッピング領域ではヘッドをおろすため、あまり頻度を高くすると
ここに傷が付いてディスクを傷める。このためSTARTSTOP回数にも
上限が決められている。

ディスクを傷めると言えば振動によっても寿命は大きく変わるが、
これはそれくらいの振動でどれだけ縮まるかというデータはない。

またこれは隠れた条件であるが、ヘッドの移動幅と速度も寿命に影響することが
ある。ヘッドを非常に高頻度で動かしなおかつその幅が大きい場合、
HDDが動かなくなるまでの期間が短くなるようである。

このような動きの時にディスク内に何らかの原因で傷が付いた場合、
この傷の破片をヘッドが引きずる格好となり、他の部分も傷つけてしまう。
これにより不良セクターが急激に増えることがある。

また、このような動かし方ではアクチュエーターそのものが正常に動かなくなる
事もあるようである。この場合、アクチュエータが異常な動きを示したあげくに
反応しなくなる。

経験から言えば、3000万回ぐらい動かすとヘッドが指定したセクターに
動かなくなる現象が出やすくなる。
(この回数は多いようで、ソフトの組み方によっては容易に起こる回数である。)
また、容量的には大容量の物の方がおかしくなるまでが早い気もする。
(1セクターの面で気が小さくなるので位置特定が難しくなるからであろう。)

HDDのヘッドの移動速度は速いので意識することが少ないが、
あまり動かしすぎる記録方法には問題があると言うことである。

ヘッドの動かし方だけでなく、モーターが回転している時間や
ヘッドをあまり動かさない読み書きの頻度にも条件が存在する。
3.5インチの場合、基本的に24時間通電で、24時間読み書き動作が
可能であるが、2.5インチの場合はそうはいかない。
これも放熱の問題からであるが、普通の2.5インチHDDでは
かなりの制約が付く。読み書きに至ってはモーター回転時の20%以下では
なかったかと思う。そう、2.5インチHDDは基本的に
常時動作環境では使えないのである。


*設置方向
3.5インチは基本的には360度どの方向でも設置できる。
DVDは水平もしくは垂直から±5度というけっこう厳しい条件がある。
それに比べれば楽であるとは言える。
もっとも、垂直水平以外に設置することはまずないだろうが、

2.5インチは、これも放熱の関係上水平垂直方向にしか置けない。


*サイズと制御規格
HDDには主に2つのサイズがあり、それぞれに特徴を持つ。
3.5インチは基本的に常時回転している。
止めた方が寿命が長くなると思われるかもしれないが、実際には
そんなことはない(温度さえ適正なら)。むしろ、保存時もグリスの劣化があるので
止めても寿命は延びず、むしろたまに回した方がよい。
PC系では主にデスクトップやサーバーで、そのほかの組込用機器でも、
振動があまりな居場所に使われる物は3.5インチタイプである。
容量的にも大きく、価格的には一番安い。

2.5インチは基本的には常時回転不可である。
理由は、熱で流体軸受けがだめになるからである。
(一時あるメーカーが24時間動作可能と称して発売した事があったが、
すぐに回収された。)
本当はこのあたりもう少し情報があるが、今はまだ書いて良い時期ではないので
また後日機会を改めて書く。

2.5インチは多くの場合は消費電力を減らしたいノートPCで使われるため、
まめに自動スピンドル停止とヘッド待避がある。
また、2.5インチにも軸受けにボールベアリングと流体とがあり、
流体が今後の主流らしいが、車載用で使われる物は全てボールベアリングである。
理由は、流体では低温時に油の粘度が高くなりすぎて回らないからである。
これが見た目の耐振動性向上にもつながっている。
価格はまだだいぶ高い(低容量・高価格)。

これ以外のサイズもあるが、特殊用途である。
1つ例外は、IBMの作っているマイクロドライブで、
コンパクトフラッシュカードと同じさ(およそ4センチ角)の大きさに1G位の
容量を持っている。また東芝が1インチのHDDを作っていると思う。

2.5インチはATAという制御規格の物しかないが、3.5インチには
ATAの他SCSIという物がある(それぞれ物理規格とソフト規格を持つ)。

先に書いておくと、IDEとかATAとかよく聞くと思うが、
IDEが古い呼び方、ATAが新しい呼び方だと思えばよい。
IDEはメーカーが決めた当時の呼び名で、ATAはそれをANSIという
アメリカの規格協会が追認した時に付いた名前である。

ATAはいわゆるPCで安くHDDを繋ぐ規格と思えばよい。
基本的にはHDDだけをつなげられる。これを無理矢理CD−ROMやDVD系を
つなげられるようにしたのがATAPIという規格であるが、
いずれにしてもディスク媒体しか接続できない。
現在は接続ケーブルが40ピンのパラレルATAのみだが、
近い将来には数ピンのケーブルでつながり転送速度も速いシリアルATAが
主流になるであろう。

SCSIはもともとはSmall Computer System Interfaceの略で、
HDDだけでなく、かなり広範囲の周辺機器をつなげられるように
決められた規格である。実際に出たのはHDDやMO/CD/DVD、
磁気テープ等記録メディア系、
スキャナーくらいではあろうと思うが(プリンターも発見!!)。
つなげられる数は、普通で8台、LUNというものも使えば、
(たしか)8*256台までつながる。
電源を入れたまま取り替えられるホットスワップという機能もある
(これはサーバー本体側の補助もいるが)。
イニシエーター(制御を要求する機械)が1台でなくてもよい等の特徴を持つ。
(ATAは最大4台まで、イニシエーターも1つである。実際には
PCでHDDと他のディスクが2台までになっているのが多いが、
これはATAの制約ではなくPCのボードというかチップの制約である。)

現在もSCSI機器はあるが、大容量HDDやCD/DVDが内蔵され、
また外付け機器もUSBでつながる昨今、SCSIで繋ぐ外付け機器は減りつつある。
という言う中でのSCSIとATAの棲み分けは、サーバー対端末もしくは
個人PCという形になりつつある。

SCSIのHDDは、実はメカ的にはATAのそれとそれほど変わるものではない。
若干回転数が速いとかそれだけである。
事実、ATA用の物の中から良い物をSCSI用にしているという話も聞く。

SCSI用はサーバー用途であるため、何よりも信頼性が求められる。
したがって、容量的には一世代前の物であるが、枯れた技術で安定している物が
使われる。
このため検査が厳しく、価格的には同容量の物でATAの倍くらいすることもある。

最近のPC用SCSI-HDDでまともにSCSI用HDDを使ってるものは
無いと言ってよい。SDATと呼ばれるSCSI-ATA変換基板を入れて、
見かけ上SCSI機器にしている。ただし、あくまで疑似SCSIなので
耐久性はATAのままだし、イニシエーターも1台しかもてない。

このSDAT基板はPC用途だけではなく、昔の機器でSCSI-HDDを使っている
物に対してHDD交換で安いATAのHDDを使うためなどにも使われている。
この場合、容量を見せかけ上減らしたり(古いソフトで対応させるため)、
転送速度を抑えたりする機能を持っている物もある。
HDD用=ATAのSDATは複数の会社から出ているが、ATAPI用の
物は数少なく、特にDVD−RAM(要するに書き込み)に対応できる物は、
私が知る限り2社しかない(うち動作確認しているのは1社)。

ATAの3.5インチははとことんまで安くなっていて、メーカーも少なく、
残っているところも体力勝負状態であるが、2.5インチ以下とSCSIの
3.5インチはまだ利益があるので、作っているメーカーがある。


*速度
HDDの速度は主に回転数とヘッド移動速度と転送規格によって決まっており、
ヘッド移動速度以外はメーカーごとに速い遅いは事実上ほとんど無い。

回転数についてはすでに述べたとおり。
ヘッド移動速度は、目的のセクターにヘッドを動かすのに必要な時間である。
ヘッドの動かし方についても現在は最適化処理が行われているのであろうが、
平均的には10ms近辺だと思う(移動距離によるので一定ではない)。
最近のHDDには先読みバッファーなどがあるので連続読み込みの時には
ヘッドの移動時間が表面上見えないこともあろが、ランダムアクセスが多い時には
差が出てくることがある。

DVD−RAM等でもミクロン単位のヘッド位置制御が必要だが、
ディスクが可搬であるがゆえに面の偏心(そり)があるのでファジー制御で
学習している=だから遅い。
HDDではそういうことはないので速い。
HDDを使った機器ではヘッドを動かしてもいいが、DVD−RAMではそうは
いかないので、大量のバッファーを使ってヘッドを出来るだけ動かさないように
設計する。
可搬ディスク媒体は、基本的にランダムアクセスが苦手というわけである。
(出来る出来ないではなくて、行うとどうなるかである。)

転送規格についてはATAなんぼと言うもので決まっていて、
これに対応しているかどうかで決まる。
このあたりの細かいことは知らない。
(なぜかというと、私はATAではHDDを制御したことがないため。
詳細は答えられないが。)
転送制御方式としてはPIOとDMAという方式があり、
簡単に言えばPIOがCPUによる転送、DMAはCPUに依らない転送である。
PIOの方がハード的には簡単になるがCPUがその間他のことが出来ない、
DMAはその逆である。速度的にはつい最近までは上限は両方で同じだったが、
最近はDMAの方が速いようである。

ということで、現在のHDDはかなり速いので、よほど速いCPU出ないと転送に
時間が取られすぎる。また、エラー発生時の処理などにはノウハウもあるので、
CPUで直接制御するより間にコントロールチップをかますのが
一般的であるらしい。

        ・・・容量・・・

HDDの物理的な容量は、1プラッターあたりの記録密度と、
プラッター数とヘッドの数で決まる。
これはすでに書いたとおり。
いろいろな磁化技術や磁性体の開発によって記録密度は飛躍的に上がってきているが、
一方でそれを使うPCのBIOSやOS側の制約により、その全てが使えない
状況があった。

たとえば、
        PC/XT                              10M
        FAT16                              16M
        DOS  3.x                           32M
        DOS  4.x                           128M
        DOS  5.x                           512M
        ATA−BIOS(拡張なし)            528M
        Win95(FAT16)/Human68K       2.1G
        CHSアクセス                          4.2G
        BIOS24ビットアドレッシング        8.4G
        BIOS                                32G
        ATAインターフェース                  137.4G
        Win95OSR2(FAT32)他      2.2T(テラ)
                                                ただし1ファイル2G
        (Linix/MacOS9/Windows95/98/ME/NT4.0/2000/XP)
        ATA/ATAPI−6(48ビット)     144P(ペタバイト)

        1G=1000M、1T=1000G、1P=1000T

書いた本人もわからないで書いている部分もあるが、簡単に言えば、
セクターの数が増えてきたが、それを指し示すために必要な変数のビット数が
足りなくて制約が出来た、と言うことである。

この中で、OSやBIOS側の制約はソフトのアップデートだけで何とかなるが、
インターフェース側=ハード側の制約だけはそうはいかない。
ごく最近ではATAインターフェースの制約で137Gの壁が大きく問題になった。
結局、これはMaxtorという会社が独自の方法を発表、これを
規格委員会が追認するという形で決着が付くようである。

ただ、制御方法が変わるため、従来のHDDに対してそのまま置き換えても
137G以上の部分は使えないという問題が出ている。
特に、ATA(IDE)のHDDをSCSIで使うための変換基板(SDAT)
ではそれに対応している物が少ないため、SCSIの規格上は
まだ余裕があるのに使えないという現象が起こっている。

容量と言えば、HDDの世界では1Kバイト=1000バイトという変な理屈がまかり
通っている。コンピュータ系では全て1K=1024(2の10乗)、1セクターは
512バイトであるにもかかわらずである。
誰が最初に言ったはわからないが、非常に見苦しい。
(昔、ゲーム機で乗っているメモリー容量をビット単位で書いた=バイトの8倍に
なったのと似ている。)

で、同じ公称容量でも、1K=1000で計算しているこそくなメーカーと
ちゃんと1K=1024でも大丈夫なメーカがある(メーカーは1K=1000とは
言っているが)。
同じ買うなら、1K=1024である。80Gクラスともなると2Gも差が出てくる。

余談であるが、組み込み機器にメモリーカードやHDDが使われている場合、
その内部フォーマットは、FATが多い(完全に閉じた機器の場合は独自フォーマット
もあるが)。
なぜかというと、FATは構造が簡単なことと、ファイル本体が連続領域に配置
できるからである。
これは、機器がOS(というかファイルシステム)を積んでいなくても、
ダミーのファイルを作っておいてその中にセクター単位でべた書きすれば
よいと言うことである。
まあ、FATの構造を熟知していないと作り出せないが。
なお、これらは常套手段なので、これで特許はとれない。

        ・・・メーカー・・・

HDDは実はかなりの過当競争状態にあり、昔はかなりのメーカーがあったようだが、
多くが撤退し、今では数えるほどしか残っていない。
その中でも、3.5インチATAでは競争がひどく、残っているメーカーですら
赤字ぎりぎりである。

ここ2〜3年のメーカーの特徴をまとめてみた、

Quantum(クァンタム)
        アメリカの会社で、実は中身を作っていた(製造じゃなくて設計)のは
        日本の松下寿。
        性能は良く、特に対振動性能が優れていた。
        30Gを最後に撤退、HDD部門をMaxtorに売却した。
        (そのため、一時期40Gで設計Quantum、製造Maxtorという
        モデルがあった。)
        内部構造は、結構部品が多くコストアップの要因が多かった。

富士通
        マニュアルも丁寧でかつ情報が豊富で、しかも当然日本語で
        わかりやすかった。
        対応も良かったのだが、価格競争に負けて2002年に3.5インチATA
        モデルからは(急に)撤退した。非常に残念。
        (うちは富士通製に交換を予定していただけに余計。)
        現在は2.5インチと3.5インチSCSIを作っている。
        最近チップの不良で問題を起こす事が発覚し大問題となっている模様。
        (チップは富士通製じゃないんだけど。)
        2.5インチでは世界第3位である(というより、事実上世界で3社しか
        作ってないんだけどね。)

IBM
        他のメーカーに比べいつも価格は高めであったが、特に対振動性能が
        優れていた。
        最近日立にHDD部門を売却した(というより両者のHDD部門を統合、
        将来的に日立の子会社にする。HGST社)。
        元々3.5インチATA/SCSIと2.5インチ、1インチという
        物を作っていたが、今後どうするのだろうか。
        2.5インチでは東芝に次いで世界第2位である。

Maxtor
        アメリカの3.5インチIDE専門メーカーである。
        大容量化には一番熱心である。
        HDDの内部構造が一番美しい。少ない部品で構成されており、
        分解も比較的楽である。
        80Gといったら、1K=1024バイトで計算しても80Gあるのが潔い。
        対振動性は悪い。振動試験をするとよく物理破壊が起こる。

        ここの会社の最大の問題は供給面かもしれない。
        特に最新の機種では歩留まりが悪いらしく物がなかなか出てこない。
        これでどれだけ苦労したことか。
        SMARTに関する情報を開示しないなど、メーカーとしての信頼性に欠けるところが問題である。

Seagate
        たぶんアメリカの3.5インチIDE専門メーカーである。
        ここは1K=1000バイトで数えないとだめ。
        対振動性は良くないが、物理破壊はない。
        (振動を止めて再電源投入するとると復帰する。)

        ちなみに、以前紹介のRD−XS30のHDDはここの。

WesternDigital
        ここもアメリカの3.5インチIDE専門メーカー。
        これも1K=1000バイト。
        対振動性は良くない。物理破壊もある。
        ジャンパーピンの設定(配置)が、他社と異なるので注意。
        筐体が妙に軽いと思う。
        最近2.5’HDDも始めた。

東芝
        3.5インチ系はやってない。
        2.5インチでは世界No.1。

この他、韓国のサムソンも作っているような気がしたが、扱ったことがないので省略。

このように、規格とサイズとメーカーで一応棲み分けが出来てきている感じではある。
何度も言うようだが、3.5インチATAはもう赤字ぎりぎりで、
体力勝負状態である。いずれ残り3社のうちどこかが消える可能性もある。
ごく最近も、保証期間を3年から1年に短縮した。これも管理コスト削減につながる。
まあ、事実上問題ないが。

        ・・・その他・・・

HDD上でどういった風に記録されているかは磁気記録なので目に見ることは
通常出来ないが、ここ↓
http://goto.fc.u-tokai.ac.jp/~toru/mfm.html
に特殊な装置でそれを見た写真がある。なかなか興味深い。

バルクと正規品の価格の違いというか物の違いについてはすでに述べたが、
では、このHDDの元の価格自体は何によって決まるのか。

HDDの値段も容量も全てPCの世界によって決まる。
それ以外の世界で使われるようになったのはごく最近であり、
また量もPCに比べ圧倒的に少ないのでまだ影響力が少ない。

ある電子機器を作る場合、PC用の部品を使えば値段が下げられることが
わかっていても、供給の問題から使えない事がよくある。
PC用部品の供給期間が短すぎるのだ。
PCを同じはずなのに高い、と言われることがあるが、仕方ないのだ。
今の世界は、本当に1つの物を長く作るという考え方がない。
よく家電やPCのモデルチェンジが激しいと怒る人がいるが、
長く作りたくても作れない事情もあるのである。
(部品を買えてまで同じ製品を作り続けるのは実は難しい。)
販売台数を計画して、その分の部品を先行購入しておく場合もあるが、
はずれると怖いので在庫はあまり持たないようにしているのが、
現在のメーカーの事情である。

もうATAでは価格が下がりきっていて各メーカーとも赤字で
メーカーの統廃合が進むし、残っているメーカーも体力勝負中である。
大容量化の声は強いが、容量を増やしても価格はそれほど上げられないのが
実情で、実際には新しいモデルで倍の容量になった物が
同じ価格になると言うこともある。

その中で、安いIDEに見切りを付けSCSIやAV−HDD、
ノートに使われる2.5インチのような高度高価格品に特化するメーカーも出てきた。
これらはまだ高いので利益が出るからである。
余りやすさばかりを追求すると、やがて作ってもらえなくなると言うことを
消費者が知るべきである。正当な労働には正当な対価を支払わなければならない。
(この件についてはまた別のネタで。)

今までは、早いものでは3ヶ月に1回機種変更があったが、
最近はやはり記録密度向上に限界が見えつつあり、また歩留まりも悪くなってくるので
次期製品開発までにかかる期間が伸びているようである。
そのため1シリーズが6ヶ月ほど続くこともある。
使う側からすれば、あまり早いモデルチェンジは、それにあわせて
社内外の登録やら試験やらをし直しなのでやめて欲しいところではある。
もうこれ以上の容量も要らないので、長く作り続けてほしい。
どこぞのメーカーが古いモデルの版権(?)を買い取って作ってくれんだろうか。

        ・・・

ということである。
一口にHDDといってもいろいろな側面を持っていて、またメーカーによって
特性が異なるので、選択する時には気を付けた方がよいのである。
全般的に「安かろう悪かろう」なのでわかりやすいとは言える。
もっとも、PCの場合は、中にどのメーカーの物が入っているかはわかりにくいが。

HDDは非常に繊細な部品なので、取り扱いには要注意なのである。
とりもなおさず、データの保護は個人の責任になるので、
バックアップはこまめに取らなければならない。
大容量だと言って、喜んでいる場合ではないのである。

出来るだけ用語には説明を入れたつもりだが、それでも難しい部分はあっただろう。
でもたまにはこういうものも読んでおくと頭の体操にはなるのでは無かろうか。

書く側とすれば、技術の話を書くと一応下調べが必要だから大変かな。
(評論家が書かないような)技術ネタが多いのがオタクラの特徴ではあるけどね。

        ・・・おわり・・・
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