「電車、運転出来ます?」
(1997/03/10〜03/11、04/16号)

再び、京阪の秘密を探ろうと先頭車両の一番前に乗った。

「おぉ、この列車は、京阪にしては珍しくワンハンドル・マスコンじゃ!」

ワンハンドル・マスコン(マスターコントロール)とは、
最近の電車に付いている運転台の形式で、詳しいことは説明しにくいのでしないが、
かっこいい方式なのだ。
阪急なのでは20年ほど前からすでに京都線6300系特急車両などから
採用されているが、京阪では、比較的新しい車両でも旧型であった。
しかし、このとき乗った車両(95年型)ではそうなっていたのでうれしかった。

それはそうと、それをじっと見ているうちに、電車の運転方法というものが
なんとなくわかってきた。

電車の運転方法は、自動車とは異なるので、その既成概念があると、
わからなくなる。「ほっといたら加速力がなくなる」ということを
基本にした自動車とは全く異なる運転をするのだ。

ここで電車の速度の制御について簡単に原理を述べておこう。

基本的に、電車では電流の量を変化させることによって速度を変化させる。
京阪など、多くの私鉄/JRでは直流1500Vが多い。
(私鉄では線路の幅は1435mmの標準軌が多いとか、JRは1067mmの
狭軌とか、そういう話はここでは省略。)
そして、電圧が一定の場合、電流の量を変化させるには、抵抗値を変えればよい。
E=IRのオームの法則だ。

電車の運転は、どの抵抗とつなぐかによって速度を変える。
そして、そのつなぎ替えは、運転手が強制的に行わない限り行われない。
すなわち、いったんある電流量に調節したら、替えない限り変わらないのだ。

実際には変化しないのは速度ではなく加速の力といってもいい。
いったん速度が出るとそのままのスピードで走り続けようとする。
抵抗値が変わない=一定の電流が流れていれば、モーターは回るのだ。
ここにおいて減速をかけるのがブレーキの役目となる。

自転車では、アクセルをはなせば速度は落ちる。
アクセルの踏む量によってガソリン供給量が変わり、
しかもアクセルはワイヤーによって、離すと戻るようになっているからだ。
アクセルを踏み続けることが一定速度を保つことになる。

この概念を頭に入れて、電車の運転方法を具体的に見てみよう。

        ・・・

で、具体的な運転方法である。

電車では向かって左のレバーが抵抗値変化、右がブレーキである。
ワンハンドル・マスコンでは、左は手前が抵抗値減、向こう側が抵抗値増、
ブレーキは、手前が弱、奥が強である。
        抵抗  ブレーキ
         増    強
         I    I  <- レバーのつもり
         減    弱
(抵抗増=加速少、抵抗減=加速大)すると、電車の運転は次のようになる。

*発車時
 抵抗値を減らし、ブレーキを弱くする。
        V   V

*定速走行時
 加速無し、ブレーキ弱
        A   V

*減速時
 加速無し、ブレーキ強
        A   A

*停車中
 加速無し、ブレーキ弱
        A   V

これを見ると、停車中が不思議かも知れないが、よほど坂にある駅でない限り、
列車はいったん止まると動くことはない。あの重い車両はいったん止まると、
ちょっとやそっとの力では動かないのだ。従って、ブレーキをかけ続ける
必要もないので、弱くしておく。

列車のブレーキはほとんどが空気圧で制御するので、かけ続ける=圧縮空気を
作り続けるということで、もったいない。そこで、必要時にのみかけるのだ。
ほら、駅に着いた電車の下の方から空気を圧縮している音が聞こえることが
あるでしょう。ポンポンというような音が。あれが圧縮空気をためている音だ。

さあこれで、君も今日から電車の運転が出来る・・・とは思わないだろう。
自動車や自転車のように感覚でわかりにくいところがあるので、
覚えなければならない。これが結構大変そうである。

実際、電車の運転免許をとるには3年以上かかるはずだから、
素人には無理なのである。
まあ、簡単に出来ないからこそ、お金を出して乗せてもらう価値があるんだけど。

というところで、今回の研究は終わり。

*京阪豆辞典1
 京阪の車両は川崎製鉄が多い(全部)。
 4月からラッシュ時に特急が枚方市に停車する。
 新型車両は急行タイプで、側面に青のラインが入っている。
  実はこれを特急でも使うらしい。

*京阪豆辞典2
 京阪も1999年を目度にスルット関西を導入する予定。
 しかし、その前に人類が滅亡したらどうする?
 某ドラクエ7もそうだけど。

        ・・・「電車の運転パート2」・・・

先日の電車の運転方法を書いた後、もう一度電車で先頭に乗って運転し方を
見たのである。(こういうことをする時には、人の少ない夜10時以降が
いい。他の乗客は疲れているようで、私のような物好きには気が付かない様子で
寝ているのだ。)

そうすると、ちょっと書き間違いがあったことに気がついたので、
もう一度、今度はワンハンドル・マスコンではなく、普通型運転台の操作方法も
併せて書くのである。

普通型の運転台は左右に回転型のレバーがある。下図は初期(停車中)の
レバー状態である。

        O−  −O
        ←      →

左が速度調節であり、右がブレーキであり、それぞれ矢印の方向に回すのである。

電車の速度調節は「一定速度までの加速」と「減速から一定速度走行」というのが
基本操作である。加速は車などでも同じなので分かりやすいが、
「減速から一定速度走行」が車などにはないのでわかりにくいであろう。

これはどういうことかと言うと、

        電車はいったん加速し、ある速度になったら、
                        加速を止めてもその速度で動き続ける。
                (加速を止めてもスピードは落ちない。)
        減速はブレーキによる
        減速してあるスピードになった時に減速を止める(ブレーキをはずす)と
                その速度で動き続ける。

なのである。この「外から力が加わらない限り、その速度で動き続ける」という、
何か運動量保存の法則のような動きをするのである。

そこで、実際の運転を見ていくと次のようになる。

発進  −O  −O
(加速) 加速on ブレーキoff
                                        こんな感じで運転するのである。
定速  O−  −O              実際には、途中で加減速が
        加速off ブレーキoff        繰り返されるので、定速−減速−加速
                                        が何度も行われる。
減速  O−  O−
        加速off ブレーキon         さあ、先頭車両に乗って確認するのだ。
停車中 O−   O
                /
        加速off ブレーキ軽くon

これで、どんなタイプの電車も運転できるはずだ。
今すぐ、陸運局の電車免許試験場(たしかそんなものがある)へGoだ!!
まあ、電車は運転だけ出来ても免許はもらえないだろうけどね。
(電車各部の構造、法規なども知らなきゃいけないからね。)
<戻る>