「CPUの話」 (1995/06/05執筆)
今回もコンピュータネタでいってみよう。

「世界で一番使われたCPUはなんですか?」

今の多くのパソコンに使われている8086?
いえ、いえ、6502というCPUである。
かの名作コンピューターappleIIからファミコンに使われたCPUである。
その数は1000万個を軽く越えるであろう。
発売から優に15年以上立つCPUであるが、未だにファミコンで現役である。

「今一番使われているのは何ビットのCPU?」

ビットというのはCPUの処理単位と思えばいい。基本的にはその数が大きいほど
処理能力が高いとされる。(これにはトリックもあるのだが、ここでは言及しない。)
先の6502は8ビットCPU。同じ8ビットではZ80も有名。
8086は16ビット。

で、今一番使われているのはというと、32ビット?
いいえ、4ビットCPUです。それもけた違いに多く。
先の理論でいえば、処理能力の低いCPUの方が使われているのである。

今や世の中全てCPU時代。コンピューターはもちろん、電子手帳、車、クーラー
冷蔵庫、炊飯器、子供用のおもちゃ、果てはアイロンにまで入っている。
電子手帳や車など、かなり複雑かつ高速に処理する必要があるものは
8ビット以上のCPUが使われるが、あまり複雑でない処理では4ビットクラスでも
十分なのである。普通の家電製品ではそれほど複雑な処理は必要ない。
アイロンではせいぜい温度管理さえすればいいのである。
小型で安い4ビットCPUが多く使われるのはこういう理由からである。
一般にCPUのビット数が多いほど周辺回路も複雑になり、その分高くなる。
原価レベルでのたった1円の違いも、売値では大きく違ってくるものなのだ。
企業というものは、それなりに販売価格を下げるために努力しているのである。
(もっとも、そもそも機能を複雑にして高くしていっているのではあるが。)

いまやCPU抜きでは生活できないような世の中である。
日頃はその存在に気づく必要はないが、たまにはああここにも入っているのだなあと
思えば、自分に直接関係ないと思っていた技術が、実は自分を支えているのだ
ということに気づけるであろう。

余談:
なぜ80486の後が80586でなかったか。
なぜ「Pentium」としたか。

表面上の理由は、ただの数字の羅列には独自性がなく、
商標として保護するに値しないという、アメリカ裁判所の判断に対応したもの
とされている。

が、実は、インテルは「5」という名をCPUに付けるのをいやがっている
という事実もある。インテルはかつて8ビットCPUとして「8085」というものを
出した。それは同社の名作CPU「8080」の後継として作られたものであったが、
インテルをスピンアウトした社員が作った会社、「Zilog」の作った「Z80」に
圧倒的に負け、一時は倒産寸前までいったのであった。
(Z80、8085ともに8080上位互換のCPU。)
そういう過去の経緯から、インテルはCPUに「5」という数字を付けるのを
いやがったと言われる。

今やインテルは世界1のCPUメーカーであるが、私の一番使いたくない
CPUのメーカーでもある。もっとも、そのことは本人自身も気づいているよう
ではあるが、過去のしがらみはなかなか絶てないようである。
ふくれあがった過去の異物は、時として未来への道を閉ざしてしまうものである。
「哀愁は罪である」
まあ、これについてもいつか語ることとなろう。
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