「ボーズのデモ」(1999/08/02〜08/20号)
        「会社でボーズのデモがあった。」

等と書くと、会社に比叡山の坊さん達が押し掛けてきたようにも聞こえるかも
知れないが(せえへんせえへん^_^;)、そうではない。
BOSEという、オーディオの筋では非常に有名なスピーカーの会社の、
(多分)新製品のデモが会社であったのである。

話によるとこのように会社に行ってはデモをすると言うやり方で回っているそうで
あるから、ひょっとすると、読者で聞いたことがある人がいるかも知れない。
(ダイハツ工業、武田薬品、三菱何とかという名が出ていた。)

このデモをしてもらうのには、実はもう1つ目的があった。
それは、「効果的なデモンストレーションのやり方を知る」ということである。
このデモでは、OHPや今はやりのパワーポイントなど一切使わず、話術と若干の
写真、後は音だけで訴えかけるというのである。
はたしてそれは可能なのか、そしてそれはいかようなものか。

        ・・・

先にスピーカーに付いて少し書いておこう。
これはもう「すごい」の一言に尽きる。

非常にすばらしい音と音像定位、臨場感である。
しかもこの効果が場所を選ばず聞けるというのであるからすごい。
(今までのスピーカーは、良い音で聞くには場所=部屋の構造を選んだのだ。)

その形、大きさ共に、従来のスピーカーの常識を覆すものである。
たった1個。私かも段ボール1個位の大きさの物でありながら、
そこから出てくる音は、とてもそこから鳴っているとは思えないものである。

本当にそこにオーケストラや歌手がいるようである。
CDってこんなに音が良かったんだ、と聞き直すこと間違い無しであろう。

ちょうどスピーカーが欲しいと思っていた私は、思わずその場で契約して
しまったのであった。ちょっと、というか相当高かったけど。
まあ、このスピーカーに付いては、現物が届いてから、じっくり紹介しよう。

        ・・・


今回のデモではまず会社の説明から始まる。

BOSEとはどういう会社か、である。
いやいや、私はBOSEは単なるスピーカーの会社かと思っていたが、
大間違いであった。音響に関する総合研究会社のようである。
音を出す方だけでなく、音を消す方も研究している。
知っている人は知っていようが、日産の高級車にはエンジンの音を消してしまう
装置のオプションがあるが、あれにもBOSEが関わっているようである。
ここでは若干の写真が使われる。こういう物を作ったとか、ここが会社だ、
とかいうものである

その後はスピーカーの説明であるが、まずは
そのスピーカーを隠して音だけを聞かせるところから始まる。

ところが、ここでは一切のスペックは語られない。
ここがすごいところである。
スピーカーがいくつ付いているとか、どういう素材を使っているとか、
周波数特性がどうだとか、そういう話は一切無し。
あっ、内部構造だけはちょっとあったか。パネル付きで。
まあそこはこのスピーカーの最大の特徴だからなぁ。

考えてみれば、スピーカーにしても映像にしても、
どれだけスペックを語っても、それが本当はどれ位の物なのか、
その音や映像が自分の好みの物なのかというのは解らない。
直に聞いてみて初めて解るものだ。
感性による物は、すべからくそうであるはずだ。

そういう意味では、こうして直に聞かせてもらえるのは一番良い。
お店で聞くのも良いが、お店の設備というのは実は一番良く聞こえるように
いろいろと細工をしてあるので、家に帰ったら「お店で聞いたのとは違う」と
いうことが多いのだ。私が今使っているスピーカーでもそう感じた。

家に近い環境で聞いて、そして、そこで「良い」と思ったら、
これはもう買っても良いと言うことである。
デモ機は特別で、市販品は駄目、と言うこともあるかも知れないが、
まあ、世界のBOSEであるから大丈夫だろう、多分。

        ・・・

実は、途中までスピーカー本体は隠してあり、途中で幕を取って見せるわけだが、
ここにも1つ仕掛が有って、棒のフレームを使って大きく見せていたのである。
実際のスピーカーを大きく取り囲むように枠を作り、それに幕をかけていたのである。
ここに驚きがあり、人の注目を引くこととなる。
最初は「あんな大きなスピーカーなら良い音も当然だろう」と思っていたのが、
「えぇ!こんな小さな物からあんな音がしていたのか!?」という感じである。
そしてそれは、それまで音が良くても遠い存在に感じていたそのスピーカーが
ぐっと身近に感じられた瞬間でもあった。

        「この位の物なら買えるかも知れない」

その後いくつかの特徴的な音を聞かせてそれぞれにおけるスピーカーの性能の良さを
示すわけである。普通のスピーカーでは危なくて聞けないような音や
動きのある音などである。

例えばガラスの割れる音は瞬間に大音量になるので、普通のスピーカーでは
壊れてしまうことがあるそうだ。そのような瞬間大音量にも耐えられる柔軟性。

例えばジェット機が飛び立つ音。
音の左右の動きと言うものは普通のステレオでも多いが、
上下の動きと言うものは、映画館等にあるスピーカーをたくさん使ったサラウンドと
言う物を使えばいけるが、普通の左右の2台のスピーカーでは難しい。
それをも1台で表現してしまう音像定位再現性。

今1台と書いたが、これは間違いではない。
このスピーカー、筐体としては1つしかないのだ。
その中に6つのスピーカーが入っているそうだが、見た目は1つである。
これでこの音像定位再現性。これは驚き以外の何物でもない。
実際、2スピーカーによる音像定位再現の理論を覆すような代物であるようで、
もっとすごいのは、これがどこにいてもそう聞こえるということだ。

        ・・・

音像定位=どこからどのような音がするか、
それはオーケストラの楽器に配置を考えれば解り易いが、
普通のスピーカーだとこれは2つのスピーカーから等距離=2等辺三角形の頂点に
いる必要がある。そしてまた、その1つのスピーカーも周りの条件、
壁やその材質が同じでなくては音像定位が崩れる。

所がこのスピーカーでは、真ん中でなくても良ければ、周りの条件も選ばない。
だから海辺のようなところでもよいと言うのだ(これに付いては後日実験する必要が
ありそうだが)。

このスピーカーの音の良さは世界の音楽界の有名どころにも
絶賛されているそうである。プロ用のスピーカーにも負けないと。
また、開発費に23億円かかっているとか。
まあ、お偉いさんがどういったかとか開発費用と言うのは、
実のところ余りあてにはならない。
他人と私とでは音の好みは違うのだし、結果としての物がどうかである。
だから、自分で聞いて良いかどうかだけが頼りである。

        ・・・

話はスピーカーの話から音全体の話になり終わる。
良い音=元音に近い音、良い音楽は人を癒すのである。

ここまでに話が実にスムーズに、しかも緩急入れて話される。
顔の表情、目線、声の音量の強弱も含め、実に考えられている。
見事なデモである。
一流のデモンストレーターや心理学者が考えて作ったものらしいが、
本当、良く出来ている。
これじゃあ、だまされるよなぁ・・・っておいおい(^_^)。

このデモは技術系の会社を回っているそうだが、
なるほど、このように感性に訴える物はその方が良いと思う。
技術系は純粋に音を捉えてみて「良い」と判断する。
営業さんにこのようなことをしても、なにせ日頃口はっちょう
手はっちょうで騙しているのだから(失礼?)勘ぐってしまいだめだろう。
「どこかで細工してんじゃねぇか?」と。

こういう音か映像に関する物は、実は一番宣伝がしにくい。
テレビやラジオで音を出しても、他のスピーカーで流れてしまうのだから
良さは伝わらないからだ。
また、このスピーカー、見た目空気清浄器かラジカセにも見える
(いや、実際、なぜかラジオも付いてるのでラジカセなんだけど)ので、
写真だけでも駄目。
だから、勢いスペック羅列に走るのだが、それがいかに無意味かが
こういうのを聞くと実感出来る。

私は常づねパワーポイントによるプレゼンテーションほど
見掛け倒しで内容がない物はない、と思っていたが、
こういうものを聞くと余計にそう思う。
パワーポイント等で綺麗なデモを作ること、それに時間を思いっきりさいている人が
ときどきいるが、あれは非常に恥ずかしいことなのである。

ここまで口がうまく表現方法もうまくなれるとは思わないが、
話に緩急を付け、自分の言葉だけで酔わせる。
これが出来ればすばらしいと思う。
はたして、オラクラでそれが出来ているかどうかわからないが、
ぜひ心がけるようにしよう。

        ・・・

最後にデモ(プレゼンテーション)の極意として3つ上げられたので、
箇条書きにて書いておこう。

        1、まず人の注意を引く
          話の内容とは全く関係無いことでも良いから、何かで気を引く
        2、息抜き出来るところを作る
          人は良い話でもずっと緊張したままは聞けない
        3、締めくくりを忘れずに

もし、読者の会社でこのデモがあると言うのなら、
スピーカーやオーディオに興味がなくてもぜひ聞くことをお勧めする。
音の良さとは何かということが解ると思うし、効果的なデモとはどのようなものか
ということも解るであろう。

        ・・・さて、気になるお値段は?・・・

ところで値段であるが。実際のところ、これはまだ市販されていないらしい。
もう直ぐヨーロッパで発売されるそうだが予価は4000ドルらしい。

        「えぇ〜それじゃ買えないではないか!!」
        「そんなに高かけりゃ良い音も当たり前」

であったが、どうも市場調査を兼ねてということと、口込み作戦をするために、
デモを聞いた人に「比較的」安価で出すと言うことであった。
「安くで分けるから知り合いにも宣伝してね」である。

しかも、
        「今ならこのキャリングバックとバッテリー(何と電池駆動が可能なのだ)
                もお付けしてお値段そのまま!!」
である。
売り方もテレビショッピング並みでうまいぞ。
これで家紋も入れてくれれば完璧(^_^)。

値段に付いてはとりあえず伏せておくが、安くはない。
実はその場で4人ほど注文したのだが(私が1番目)、
たまたま、私はスピーカーを買う予定をしていたし、
その時の予算と余り変わらなかったので買ったのであるが、いきなりこの価格では、
普通の人は買わんだろう。

本当に一般店(もちろんオーディオのだけど)で買えるようになるか、
その時いくらになるかは非常に気になるところだが、
コンピューターと同じで、こういう物は早く買って使った方が良い、
ということなので、決断したのであった。

しかぁし、これでTV購入計画は来年以降に延期である。
(でもTVがあげられなくなった、と言うのはこれとは別の理由。)

        ・・・

いやぁ、久々に良いものを聞かせてもらった。
早く届かないかぁ。
届いたらまた紹介しよう。
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