「アナログレコードプレイヤー」(1997/05/29〜06/09号)
MDデッキを買ったばっかりなのに、またもオーディオ製品を買った。
何とこの時代にアナログの、普通のLPがかけられるレコードプレイヤーを
買ってしまったのである。なぜかというと、これには例のMDが関係する。

以前からレコードを何かに録音して、永久保存しておきたいと考えていたのだが、
カセットはしばらく聞くと音が劣化するので、何度が始めたが途中でやめていた。

ここに、一度録音すれば半永久的に音の劣化がないMDの登場である。
これでようやく念願のレコードの全保存が出来る。
そう思い、久々にレコードプレイヤーを動かしたのである。

        ん、が。

LP1枚を録り終わり、2枚目の最後を録るという段で、何とプレイヤーが壊れて
しまった。先のMDの話の中でちょっと出てきた壊れたSONYのプレイヤーとは
これのことだ。ほんまにSONYはよく壊れる。

故障は大きく2つに分けられる。
このプレイヤーは15年ほど前の中級機種で(今同クラスのもの買ったら、
たぶん10万円はすると思う)、フルオートプレイヤーである。
しかし、もう何年も前からフルオートはほぼ効かず、マニュアルプレイヤーと
化していた。まあ、それでも使えるから、問題はないのでそのままにしていた。
しかし今度の故障はだてではない。

        ・・・

最初はモーターが回らない。これは、アームをおもいっきり左右に動かしている内に
回るようになる。なぜそれで直るかはわからないが、そうなのだ。
これでモーターが回ったら良いかといえば、もう1つ大きな問題があった。音が出ないのだ。

このプレイヤーは、針を落とした時のショック音が出ないようにミューティング回路
というものがあるのだが、これが効いたままで音が出ないのである。小さな親切が
大きなお世話になってしまったのだ。

これはどうにもならない。何とか回路をパスさせることは出来ないかと思ったが、
内部は複雑な回路で、とても手が出そうにない。
(単純に、アームから出る線をピンコードに入れるだけでいいのだろうか?)
修理に出すにもなにせ15年前の機種。かなりとられるだろうし、
そもそも部品があるかどうか。

結局しょうがないので、諦めて新しく買うことにした。
MDへの録音だけは何としてでもやっておきたいのだ。
しかも、買うなら消費税が上がる前がいい。それには今日一日しかない。
(そう、これは3/31の話だ。)
しかし、今レコードプレイヤーなど売っているのだろうか。

        ・・・

幸いなことに、一時期ほとんどなくなったアナログプレイヤーが最近復活しつつある。
これはLPが復活しているのに合わせたことだが、CDのあまりにはっきりしすぎる
音、直線的な音に嫌気がさした人がアナログプレイヤーのやさしい音を求めているから
らしい。(真空管アンプなども売れているのだ。)

そういう傾向こそ知っていたが、実際、どの位の価格でどの位の機種が出ているのかは
まったく見当が付かない。日本橋を歩いてみるしかない。

いろいろ歩いているうちに、わかったのは、
        たしかにアナログプレイヤーはある
        しかし、機種は少ない(店にもよるが、少ない店では2機種位しかない)
        かなり高いかおもいっきり安物かで、中級機がない
ということである。

2万円以下の簡単にステレオにつながる機種か、7万円以上のもので、
マニュアルものが多いのである。定価で3万から4万までの機種はない。
(普通、プレイヤーはそのままではつながらず、アンプ側に特別なPHONO
イコライザーという回路を必要とする。が、最近の安いステレオのアンプには
そういう回路はない。)

その中で、かろうじてDENONのDP−37Fという機種が(定価54800円)
売値で41000円位になった。例のシマムセンである。

この機種はフルオートプレイヤー(針の上げ下げはスイッチ一つでやってくれるし、
終わったらちゃんとアームを戻して回転が止まる)である。
もちろんカートリッジも付いている。アンプにPHONOさえあれば、買って
すぐに聞ける。MDに録音するまでなのでもっと安物でもいいとは思ったが、
あまり安いのでは、音が悪いと困る。使わなくても置いとくから、見た目も大切だ。
それに、後で書くが、カートリッジが交換出来ないのも困る。

        ・・・

予算は3万円だったが、3万円台の機種はないし、2万円以下は本当に安物だった
ので、しょうがなく、これにした。消費税グレードアップ前日だったので
思い切った価格にもしてくれたし。

帰って開けてみると、やはり値段なりの安っぽさはある。
筐体は見た目木目だが合板で、底が安物である。
インシュレーターという振動を吸収する足も只のゴムである。
最大の問題は、針を下ろした時にショック音が出てしまうことで、
必ず「プチッ」という大きな音が始めに出てしまう。
録音に入るのもいやだが、スピーカーへの影響が恐い。
まあ、それでも、とりあえずMDへ録音するまでと思えばこれでも十分である。

アームの動きなどはいい。操作性も申し分ない。
プレイヤーなんて進化していないのかと思ったらそうではなく、
針圧は電子式に変わっていた。アームはヘッドと錘(おもり)で水平になるようにする
だけでよく、針圧はダイアル1つで勝手にかけてくれる。
これだけでもかなり楽になっている。
まずは合格点である。

        ・・・

さて、このプレイヤー、もともとMM型というカートリッジ(針)が付いているの
だが、今回これを外して、MC型のものに換えた。
それというのも、何という偶然か、私がプレイヤー買いに行くというその日に、
某氏がいらなくなったものを持って来てくれたのだ。
(ありがとうございます。)

誤解交じりで簡単に言えば、MM型よりMC型の方が高級である。

MMというのは、Moving Magnetの略で、その名の通り、磁石が動く。
針に磁石が付いていて、回りにあるコイルに電流を発生させる。
(ほれ、フレミングの法則だ。右手は左手かどちらかは忘れたが。)
この方法はコイルを大きく出来るので、出力電流を大きい=大きい音が出るのでSN比
という音とノイズの差が大きくとれる。しかし、針に磁石=重たいものを付けるため、
レコードの溝に対する追従性が少し悪い。このため、細かい音が拾えなくなるらしい。
周波数特性がMCに比べ少し悪い。
針の交換が簡単に出来るのはこの方式だ。
PHONO端子があるアンプでは、この方法は必ず使える。

MCは、Moving Coilの略で、コイルが動く。針に付いているのはコイルで、
それが磁石の中で動く。この方法は、針に付いているのがコイル=軽いので、
溝に対する追従性がよく、細かい音を拾える。
しかし、出力電流が少ないので高増幅が必要であり、SN比が下がる。
また、この方式は針の交換が基本的には出来ない。
(まったく出来ないわけではないが、買い直すほどに高い。)
PHONO端子があるアンプでも、この方法は必ず使えるとは限らず、
MC対応でなくてはならない。幸いうちのアンプは対応しているので使える。
(昇圧トランスをいうものを使えばMM用のPHONO端子も繋げられる。)

        ・・・

最近はMCでも高出力型とか針交換が簡単に出来る改良型もあるし、
価格も下がってきているので、一概に高級品とはいえないが、
一般的にはMC>MMという評価である。

そこで、買っていきなり、元から付いているものを使わずに交換したのである。
説明書を見ながら何とかやってみる。難しいことはないが、
細かい作業だけに慣れていないと時間がかかる。
1時間以上かかった。

私の以前持っていたものもMM型なので、MC型の音を聞くのは初めてである。
で、その感想だがなかなかに「すばらしい」である。

言われている通り、MMより細かい音が出ているように思う。
その差は特に高音や小さい音の輪郭の差で現れる。
私の持っているLP、自慢じゃないが、ほとんどアイドルもの(15年ほど前の)。
こういうものでそんなに差が出るものかと思ったが、何のことはない、差ははっきり
している。苦労して交換したかいはあった。

逆に、ちょっと音の迫力が足りないような気もするので、
聞くソースによって変更するのが一番、というところだろうか。
クラシックならMC、ジャズやロックならMMであろう。
(うむ、もう1本シェルを買ってMMの方も付け替えられるようにするか。)

        ・・・

アナログ針を付けるときの注意は、取付をしっかりすることである。
アナログ針はわずかなねじの緩みでも共振(共鳴)する。
小さな針はその共鳴周波数が高いので、
女性の高音、特にそれを伸ばした声に共鳴しやすい。
なぜこれが出るのかに悩んだが、結局はねじをおもいっきり締めることで解決した。
レコードのようなわずかな音の発生でもこれほど大きな共鳴を起こすもんだと、
共鳴の力の大きさに驚いたのである。
・・・と書いても、わかる人にしか解らないだろうけど、
ようは音が濁るのだ。それもはっきり解るほど。
共鳴/共振といえば橋のそれが有名だが、これの話はまたすることがあればしよう。

なんにしても、これでMDへの録音は何とかなりそうである。
あとは、MDを買い集めるだけであるが、これが高いのが問題である。
全部のLPを録るにはまだまだ必要だし。
(ちなみに、MDを買うなら日本橋よりアサクラの方が安い。5%で消費税を
入れても。)

そうそう、MDへ録音するときに、以前書いたシンクロ録音を使おうと思ったが、
実は、
        針を置いたときのノイズまで入ってしまう
        LPが曲間が1秒くらいと短いので自動局番付けが効かない
などの問題があるので、余り使いものにならない。
結局、手動でとった後に手動で編集して局番を付けるのである。
もし、他にもやろうという人がいたら、このあたりは結構めんどうなので、
ご注意を。

持っているLP?
アバ(知ってる?)はほぼすべて、河合奈保子、松田聖子、斎藤由貴に伊藤つかさ
もあるぞ。中原めいこ(知ってる?)に森川美穂もなぜかある。その他COSMOS
サウンドトラックとかSTAR WARSなど。けっこうミーハーだったんだね。

ということで、しばらくはレコードざんまいである。
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