「Ys I&II Eternal」(2003/10/13〜27号)
{ゲーム紹介}

        「Ys I&II Eternal」

        PS2版
        DVD−ROM 1枚

        定価 6800円(税別)
        売価 6799円→5980円(税別)
        
        DigiCube
        (原作:日本ファルコム)

かつてPC用アクティブロールプレイングゲームとして一世を風靡した
Ys(イース)IおよびIIのリメイク版Ys EternalのPS2版。
もうすぐシリーズ最新作Ys6が出るので、その前に感動を新たにするため
買ってみた(これを書いたのはYs6発売;2003/9/27の前である)。

私はオリジナルPC版(SHARP X1版)で感動した世代であるが、
果たしてこのアレンジ版はその世代を納得させられるか。

以後の感想を理解する上でまず書いておかなければならないのは、
このゲーム(パッケージ)には2つのモードがあると言うこと。
1つはPS2版用に手が加えられたYsI&II Eternalモード
(以後PS2モード)で、1つはPC版YsI&II Eternal完全(Complete)版を
移植したモード(以後PCモード)である

PC用完全版に対して特にこのPS2に移植されたものを「PS2版」とする。
オリジナルのPC版のことは、以後オリジナルとする。

オリジナルについても、もう15年も前の話なので一応説明しておくと、
私のプレイしたSHARP X1はZ80という8ビットCPUマシン
(クロックは4MHz。今の1/1000程度だ)であった。
当時のPCはだいたいこの程度であり、
WindowsはもちろんMS−DOSもなく、フロッピードライブがようやく
標準となり、音源もFM音源が主流になりつつあった頃である。
(ただし、X1版のYs1はPSG音源という、FM音源より前の世代、
3重和音8オクターブの出せるハードを使った物だった。同Ys2は
FM音源になっていたが。)

X1は画面は640*200で8色、メモリーは64Kバイトである。
オリジナルは、今にして思えばこの貧素なハードの制約の中で、
感動を与えてくれた、非常に画期的なゲームであった。

早速結論である。はっきり言って、
        「昔オリジナルで感動した人にはあえてお勧めしない」
である。

Eternalはそのオリジナルを思いっきり改良したものである。
PCモードはYs1と2は分かれていて、別々にプレイする。
PS2モードはYsIとIIを連続でプレイできるようになっいる。
(EternalStoryモードという。)
実はPCモードとPS2モードの2つは、かなりの違いがある。

確かに映像は綺麗だしPS2モードではしゃべりもするし、これでもかと言うぐらいに
手を加えられている。
でも、今このゲームを見たら、やはりシステムが古いのは否めない。
一部アイテム集めや経験値稼ぎに奔走しなければならない部分がある。
迷路のマッピングが必須(Ys2は必須。Ys1は何とかなしでも可能)
なのも古くさい。
オリジナルが発表された当時は画期的であったが、今となっては
もっと親切なゲームが増えただけに、そう思うえてしまう。

しかし、それら以上に「やらない方がよい」と思わせてしまうのは
「バランスが悪くなった」という点につきる。
オリジナルは良くも悪くもバランスがよかった。それが崩れているのだ。

このPS2モード、というよりEternal版は、物語や基本的なアイテム、
マップ、敵の攻撃パターンなどは、若干の追加変更はあるがオリジナルと
ほぼ同じである。
ということは、オリジナルで物語を知っていると、それを思い出しながら
ということになってしまうので、おのずから物語を知ることよりシステムの
違いに目が向く。そして細かい粗が気になる。

特に気になった部分は以下の通り。

・BGMと映像が同期しない。
 オリジナルではデモの長さと音楽の長さが完全に一致していた。
 PS2版は音楽は何回もループして何度も演奏されているだけであり、
 デモの長さとも一致していない。だから、デモの最後の方でまた音楽が最初から
 演奏され初めてすぐ切れるとか言う場面がいくつもある。
 また、Ys1でレアがハーモニカを吹くシーンではその音楽が切れてしまう。
 オリジナルではデモの映像と音楽が見事に同期していたのにこれが無茶苦茶なのは
 許せない。

・PS2モードはYs1&2連続モードのはずなのに、1が終わったあとに
 スタッフロールは入るは妙な止め画面が入る。
 せっかくの連続モードなのに台無し。

・PS2モードでは一部キャラクターがしゃべるのだが、これが非常に遅いので
 いらいらする。
 特にYs1がひどい。設定で音声のON/OFFがほしかったところ。

・新キャラクターを使ったコレクションモードが雰囲気ぶちこわし。
 PS2モードには、いわゆるミュージックモード+イメージ画像表示を表示する
 モードが追加されているのだが、これがゲーム中から入るようになっていて、
 これが物語の流れをぶち切るのでだめ。完全に別モードとして付ければ
 良かったのに(ゲーム中でしかも体力が復活する場所からしか入れないから、
 結局全ての音楽は聴けないという中途半端な仕様になっているし)。
 はっきり言えば無くても良いと思う。
 また、ここで出てきている声優は子供向け特撮番組に出ていた俳優さんらしいが、
 声優としてはまるで素人。「やめぇい!」である。
 (鼻づまりの声が耐えられない。)

・画面真っ暗なまま数分止まる場所がある。
 PS2モードで顕著で、特にYs2の最初のデモが終わったあとなんぞ、
 ハングアップしたかと思ったくらいである。
 音楽すらならないこともある。

・特にYs2で動きが遅く感じる。
 先の件と同じかもしれないが、Ys2は面変更時の読み込みが遅すぎる。
 しかも読み込み中真っ暗というのが余計にいけない。
 これは物語以前の問題で技術的問題があるということ。
 Ysはテンポが肝心なゲームなので、こういうテンポを崩すところは
 なくさなければならない。
 (DVD−ROMの読み込み速度そのものが遅いという意見もあるようだが、
 昔の2Dフロッピーはもっと遅かったのに違和感はなかった。
 読み取り速度を考慮した作りをしていたからだ。そういう考慮が
 なされていないと言うこと)。

これらの問題点が、少々ではなくかなり気になるので、
「オリジナルを知っている人はやらない方がよい」と言い切ってしまうのである。

一方で、良くなった点もある。
武器やリングをキー一発で切り換えられるのはなかなか良いアイディア。
PS2モードの武器毎の機能(?)設定もそれなりに役に立つ。
ただしYs1での話。Ys2では余り使えなくなる(その余裕が無くなる)。

BGMもオリジナルでは未使用だった曲もうまい場面で使われており好印象。
(もともとYs1の未使用曲がYs2で使われている部分もある。)
音楽のアレンジも、極一部を除き良好。
(音楽に関してはここ http://homepage2.nifty.com/tkdate/ysmusic/index.html に
非常に詳しい。)
実はこのゲーム終了後、YsI&II EternalのCDを買ったのだが、
かなり音楽のアレンジが違っていた。
Eternalと完全版の違いなのか、PC版とこのPS2版の違いなのか。
少なくとも、このPS2版の方が、音楽はずっと良かったと言っておこう。

Ys1はやり直しを除き、かなり迷っても8時間以内には終わると思う。
(いわゆるマッピングをしないでやった時の話。それをすればもっともっと
早く終われる。PCモードではマッピングしたら4時間足らずで終われた。)
そこはそれ、昔のパソコン、2D*2枚で収まっていたものですから。

        ・・・PS2モード・・・

PS2モードのYs1でやっていて特につまずくのは廃坑地下のボス
(ヴァジュリオン)と最後のボス(ダルク・ファクト)との戦い、
およびダームの塔に入れないということでは無かろうか。

ヴァジュリオンはシルバーソードでないと倒せないと書いているサイトもあるが、
PS2モードではそんなことはない。店で買える最上のTALWARLでも倒せる。
ただし、かなり高いレベルが必要。
ヒットポイントは足、しかも左右から、コウモリが合体した瞬間だけという
狭き門ではある。
これで倒せる位になっておくと、ダームの塔の内部でかなり楽できる。
(というより楽勝。)
後で解るが、本当はここに来るまでに神殿、廃坑、ロダの木でSilver系の
装備一式を揃えておけるわけである。
これがあればヴァジュリオンは楽(と思う)だし、ダームの塔にもすんなり入れる。
(難易度Normalでの話。以後全て。)

ダルク・ファクトはかなり強い。
ここでは全ての装備をSilver系にする必要はなく、
SilverSwordだけ装備すれば倒せるが、
最高の防具を付けても、どのリングを付けても防御力は変わらない気がする。
(というか、Ys1ではボス戦中はリングは効かないし所持品も使えない。
Ys2では効くし使えるようになっているのだが。)

要するに敵といかに早く、何回ぶつかるかが勝負の決めてとなる。
いずれにしても花火攻撃が派手なだけに、半分まぐれでしか勝てない気もする。
敵の動きを見きってアドルを動かすしかない。
(Ysはやっぱりアクティブロールプレイングゲームというよりアクションゲーム
だと思う。)

このPS2モードではオリジナルに比べ普通の敵は同じ位であるが、
ボスは格段に強くなっている。
特にYs2のボスは格段に難しくなっている。

Ysのボスは攻撃のタイミングを計ること(敵の攻撃を避けることと自分からの
攻撃)が重要なのだが、そもそもタイミングが計りづらい上に、特にYs2は
敵から攻撃を受けた時のダメージがかなりというか異常に大きいからである。
このあたり、オリジナルに比べ明らかにバランスを崩しているところである。
従って、基本的にはノーダメージで攻撃を仕掛ける=敵の攻撃をほぼ完全に
見切ることが必要である。

特にYs2の神殿最初のボス(ドルーガー)は通常の方法ではほぼ絶対に倒せない。
・十分にレベルを上げる(39以上)と同時にお店で買える最上の防具と
 IRON SHIELDは持っておく
・ボス戦から脱出を不可にする(重要)
・所持品として薬草を持つ(2個以上)
・ボスが動き始めたら入口付近のくぼみに入って振り向きボスの口に向かってひたすら
 ファイヤーで撃つ(敵から攻撃によるダメージは無視)。溜め撃ちの方がよい。
・攻撃を受けてライフゲージが減ったら薬草で復活。
これで何とか倒せる。このボスはあたり判定が非常に小さいので普通の方法では
当たらないので、このようにして真正面からぶち当たるしかない。
このボスでどれだけ苦労したか。

Lv50以上あればダレス、ダームは楽勝。
ちなみにこの2敵だけは魔法は効かない。
ダームはそのままではダメージが大きいので
女神の指輪、シールドの魔法、そして途中で魔法が切れるので
セルセタの花を装備して魔法が切れそうになったら使う。
これで大丈夫。
そういう意味では一番苦労するのはドルーガーかザバか。

そしてこのYs2にはバグといえる問題もある。
女神の神殿(一番最後の神殿)の中で、画面が異常に揺れるのだ。
うちのTVはSONYのいわゆるプログレッシブタイプだが、
これとの相性だろうか、上下に小刻みに画面が揺れて見ていられない。
どうやら、画面処理が複雑すぎてPS2の処理が追いついていないようで、
このためやたら表示にもたつきがあり、これが揺れを生じさせている
ようである。
最近はこの手のテレビも多いはず。動作検証がなってない。
動作を削ってでも軽く、見やすくするべきではなかろうか。

エンディングのせりふの中で聞き覚えのある言葉が出てきた。
「もう女神なんて要らない・・・」
どこで聞いたかと思ったら、「ルナ2」だった。
正確にはYsの方が先の作品ではあるが、オリジナルではなかった台詞なので、
やはりルナ2の影響を受けているのだろうか。
そういえば、ルナ2の正式名称は「Lunar2 Eternal Blue」だから、
Eternalというのも一緒だぞ。きっとYs開発者の中にルナ2の
ファンが居たに違いない。

それにしてもこのエンディングはちょっと許せない。
音楽が非同期なのはもうわかっているとして、
最後に2人の女神が石に戻っていく画面をはずしたらいけないと思うのだが。
ここでもオリジナルが一番と言わざるを得ない。

いろんな意味で、このPS2版は出来が「悪すぎる」。

        ・・・PCモード・・・

今度はPCモードはどうなのか。
PS2モードがあまりに悪かったので、
お口直しとばかりに、それが終わった後にすぐこちらをやり始めたのであった。

これは、Ysの本家、日本ファルコムが作った「YsI&II完全版」を
忠実に移植したといういうふれこみである。

こちらも先に結論を書いておこう。
        「まだこちらの方がまし」
である。
さすがは本家が行った改良である。

残念ながら、ほとんどはPS2モードと同じであるが、
一部はまともになっている。特にバランスがかなり改善される。

前述のPS2モードとの主な違いは、以下の通りである。
・しゃべらない(ゆえに音声データを読み込まないので画面切換が少し早い)
・デモがすばらしい
・敵の強さのバランスが一部を除き絶妙(特にボス)
・ボスの名前が大きく出ない(Ys1のみ)
・武器とリングのクイックチェンジシステムがない(Ys1のみ)
・Lv10でMAXになる(Ys1のみ)

これだけなのではあるが、印象はPS2モードとはかなり違っている。

はっきり言って、こちらをやってしまうとPS2モードは
「くそ」移植だとわかる。PCモードYs2で採用された改良を
Ys1にも適応しただけならよかったが、要らないところまでいじって
その絶妙なバランスを崩したのだ。

特に敵の強さのバランスの面が大きく異なる。これに尽きると言っても良い。
残念ながらYs2のドルーガーの凶悪さはそのままであるが、
Ys1とYs2のこれ以前のボスに関しては、かなり印象が変わってくるはず。
実に絶妙である。さらに一部の敵では持っているアイテムによる制約が加わってくる。
というより、オリジナルの通りになる。

・ヴァジュリオンはシルバーソードでないと倒せない
・ダルク・ファクトは全てSilver系の装備でないとだめ

こうなると残りの問題が目につき残念である。
このPCモードでも音楽と画面の非同期部分がPS2モードと同じである。
(PS2への移植時のミスだと思いたいが・・・。)
エンディングもPS2モードで作り直されたのではと思っていたが、
PCモードも全く同じであった。
がっくり。

        おすすめ度      PS2モード    50%
                        PCモード      78%

残念ながら、これ以上の点は付けられない。
何度も書くように、PS2モードはバランスの悪さがひどい。
特にオリジナルと知っていると、懐かしさや改良のほどを堪能する前に
それが気になる。

オリジナルのバランスの良さを十分理解した上での改良なら歓迎だが、
こういうバランスを崩すのは許せない。原作者に対しても失礼である。

かといって、本家が行った改良版であるはずのPCモードも、いまいち納得できない。
特にエンディングの最後。あれはオリジナルが一番だと今でも思う。
いくら映像が綺麗になっても、そもそもの意味(物語の流れ)をはずしたらだめ。
(今回のエンディングが外しているとは言えないかも知れないが、
納得は出来ない。)
ちょうど、STARWARS特別版とオリジナルの違いに似ているとも言える。
(私は、STARWARSも全体的に言えばオリジナルが好きである)。

そういえば、なぜ売価を変更しているかと言えば、最初は
前に書いてある値段で買ったのだけど、家に帰ってパッケージに貼ってあった
値札を見ると後者だったので店に問い合わせたら値引きし忘れたと言うことで、
後日返金されたから。別に元の値段も定価なので文句を言う筋合いではないけど、
やっぱり値引きがあるのにされてないというのはねぇ。
大阪人は値引きが肝心(^_^)。

http://www.team-digi.com/ys/

追伸:
そういえば、ダームの塔に入るときにウイングというアイテムを
取り上げられるが、なぜそうなのか本当の理由を知っている人が、
今どれだけいるだろうか。

オリジナルはフロッピー2枚組だったが、1ドライブでも
実行できるようにディスクは入れ替えするようになっていた
(と思う。3枚組で1枚がシステム、1枚が物語で入れ替えだったか)。
その入れ替えタイミングがダームの塔の前後なのである。
従って、一瞬にして町に戻れるウイングをダームの中で使うと
ディスクの入れ替えが発生するのでいやがったのである。
せりふ上はいろいろと理由を付けられているが、事実はそこである。
あぁ、ゲームの世界をも支配してしまう現実は厳しいのう。

YsII Eternalの情報
http://www.horae.dti.ne.jp/~pukupuku/ie/ys2eternal/main.html

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