「ECJ−CH10」(2006/01/30〜03/06号)
{商品紹介}

        発芽玄米圧力沸騰炊飯器II

        「ECJ−CH10」(1.0リットル炊き)

        鳥取三洋株式会社
        買値 41790円(税込み、送料別)
        カタログハウス

2005年10月も末、三洋電機が白物家電から撤退するとか言うニュースが流れた。
ホームページでは「完全撤退ではなく整理なのにあのように書かれて心外」
というようなことも書いてあったが、いずれにせよ大手家電メーカーの
決断としてはかなり思い切ったことには違いないだろう。

調べてみると、うちにある三洋製品は洗濯機と電話だけだった。
過去にさかのぼって考えてみても電話以外余り三洋製品を買った覚えがない。
電話は2世代三洋製であるが、これはデザインと機能と価格が良かったからである。
洗濯機は一時期話題になった「洗剤の要らない洗濯機」である。

これらは他者を押しのけて選ぼうと思うものであったが、
残念ながら、他の分野では特徴的なものがなく、選択の土台にすら上がらなかった。
三洋製品には、どうもそういうイメージがある。

会社にあるデジカメの1台がそうであるが、デジカメの分野では
実は三洋はOEM(相手先ブランド出荷)をけっこうしており
隠れた大手である。

さて、通販生活という雑誌がある。
以前にも望遠鏡のETX-70ATやソフトクリームメーカーを買って紹介しているが、
この雑誌中で三洋、正確には鳥取三洋(以下トリサン)のこの炊飯器を絶賛していた。

うちの炊飯器はタイガー魔法瓶の「JNN−R100」という、もう10年ほど前の機種。
今でもご飯を炊くという機能においては特に支障はないが、
最近どうにも炊きあがりが美味しくない。

一方、圧力鍋を買ってからは「IHジャーをやめて全て鍋で炊くべきではないか」という考えもあった。
圧力鍋で炊いたお米はさすがである。
少々柔らかめになることが多いが、つやも味も申し分ない。
活力鍋なら炊きに必要な時間も短いが、そうはいっても手放しでは出来ない。
また、米の質や水加減によって炊きあがりにむらが出ることもある
(回りは柔らかいのに芯が堅めになったり)。
時々私がする分には良いが、これを毎日嫁さんにやれと言うのは無理である。

と言うような事情で、なかなか買い換えまでには至らなかったのだが、
今回三洋のニュースを聞き、これはなくなる前に買っておいた方が良いだろう、
と思い決断したという次第である。

        ・・・味・・・

炊飯器であるからには、まずは味で語るべきであろう。

届いてすぐ炊飯・・・は出来なかったので、タイマーで翌朝にセット。
炊きあがりに大いに期待したのだが、正直そんなに大きな差は感じなかった。
確かに粘りは少し強くなっているように思うが、
甘み他味に関しては格段の差は感じられない。

しかしである。
料理という物は、暖かいとその本当の味が分からない場合がある。
熱々でなければ意味がない食べ物もあるが、味の真価を知るには冷やした方がわかりやすい。
(逆に、マクドナルドのハンバーガーように、冷やすと食べ物とは呼べなくなるほど
まずくなるものもある。私はあれは味付き紙粘土だと思っている)

特にお米はその傾向が強く、研ぎや水の浸透が足りない米でもできたての熱々は食べられるが
冷やすと食べられなくなる事すらある。
お米や炊き方の真価を問うには冷やすのが一番なのである。
で、冷やした後の違いはどうだったか。

これはもう歴然である。
まず柔らかさが違う。実に柔らかい。
粘りも失われていない。
甘さも多い。

輝きの違いも特筆すべきだろう。
前の炊飯器ではふやけて弾けてしまう米も多かったのだが、
これはそういうことがない。1粒1粒形を保っている。
これがつやの違いになって現れる。
見た目にもおいしく見えると言うことだ。

その後毎日炊いているわけだが、炊きあがりでも甘みの差を感じるようになった。
お米だけで十分に甘くておいしいので、
ふりかけや他のおかずと合わせて食べるのがもったいないくらい。

もう1つ。最初は5合を炊いて今一の感じだったが、2回目は3合にしてみたら
炊きたての味が甘く感じた。
これはハッキリ分かるくらいの差がある。
お米や豆は大型の鍋で大量に炊いた方がおいしくなると聞いたことがあるが、
この炊飯器に限って言えば、余裕を持って炊飯させた方が良いのかもしれない。

初回の感想は、炊飯器自体が炊飯に慣れていなかったからなのかもしれない。
物にはしばらく使う内に調子が良くなるものがある。
これを「慣らし」とか「エージング」とか言うが、
炊飯器にも必要なのかも。

それでも14時間も経つとさすがに白濁するしつやも粘りも失われることがある。
いろいろやってみた結果、白濁は時間経過と共に仕方ないようだが、
粘りと味の低下に関しては、
・水に浸している時間が短い=高速炊きしている
・研ぎ方が悪い
が圧倒的に大きく、さらに
・無洗米では起りやすい
と思う。

米の種類(無洗米はあきたこまちで普通米はコシヒカリ)が違うので直接比較ではないが、
普通の白米ではちゃんと研いで水に浸しておけばなりにくいが、
無洗米ではそうしてもなってしまうようである。
炊きあがりのつやも悪い。
うちでは嫁さんも私も同じ見解となった。

無洗米はぬかを取ってある分どうしても水分が失われやすいので、
買ってから(正確には精米してから)時間が経てば経つほどこの傾向が強くなると考えられる。
保湿可能な米びつ(そんなのがあるかどうかわからんが)か湿度を保てる冷蔵庫の野菜室で保存する
等の工夫が必要なのであろう。
それか、そもそも十分ぬかが取れていないか。

今までは便利なので無洗米を多くしていたが、今後は普通の白米を中心に買うことになろう。
(ただ、半年間の配達を申し込んであるので、それが終わってからなのだが。)
いくら研ぎが不要で「とぎ水が出ないので環境に優しい」と言われても
おいしくない、おいしく保つには工夫が必要な米はよろしくない。
そもそも、とぎ水って肥料代わりに植物に与えることがある位なのに、
流さないことで環境に優しいと言えるのか?(富栄養化は防げるかも。)

米の研ぎのうまい下手もはっきり解る。
ぬかが残っている米は色が悪くてまずく、きれいに研げている米は
つやつやに輝いてうまい。

お米をうまくとぐこつは、
(1)最初3〜5回、水を入れて少しかき混ぜすぐ流すを繰り返す
   これでゴミや溜まっているぬかを取り除く
   この時点で水が完全な白濁から少し透明感が出るくらいにする
(2)水を入れ、米をつかむように、または押しつぶすように研ぐ
   押しつぶすように研ぐ方がよく研げるが、古いと割れる米も多いので炊きあがりに若干むらが出る
   水が白くなったら捨てて新しい水を入れて(2)を繰り返す。
   通常は3回まで。それ以上やると米が多く割れるしうまみまで流れてしまう。
   慣れると研いでいる内に米のさわり具合が変化するのが解る。
   (「ざらざら」から「きゅっきゅっ」)
(3)研いでも水が余り白くならなくなったら、水が濁らなくなるまで水を入れて捨てるを数回くらい返す
   これで残っているぬかを流す
   この時の水が透明になるまで研ぐ必要はない。
(4)この後最低30分は水に浸しておく
(5)炊く30分前にざるに上げ、一度水分を飛ばす。
(6)炊く前に新しい水を必要分量入れて炊く。
である。

なお、この過程では
・最初から最後まで浄水だけを使う
 米は最初に浸けた水を吸うので、炊くときの水だけ浄水にしてもだめ
・冬場でも絶対にお湯は使っちゃだめ
 どんなに水が冷たくても普通の水で(氷点下の水でやれとは言わないけど25℃以上はだめだと思う)。
 研いでいる間にふやけ出ぼろぼろになってしまうから。
・とぎは長くても5分以内(出来れば2〜3分)で終わる。
 水に長く浸けているとふやけて米が割れやすくなるし、うまみまで飛んでしまうから。
と言うことも注意すべきである。

無洗米といえども、いきなり水を入れて炊くのはだめ。
ゴミやぬかの残りがあるので、最低限水を入れてかき混ぜて捨てるを数回は行う必要がある。

「米を洗剤を入れて洗った」というのは笑い話だが、
世の中、米を水の中でかき混ぜるだけとか、「しゃかしゃか」で混ぜて
研いでいるつもりの人が少なからず居るようだが、あれは全く研いでいる内に入らない。
それでは米の味が台無しだ。
米は「洗う」のではなく「研ぐ」のだと言うことを忘れてはならない。
(そういう意味では「無洗米」は名前で失格と言えないこともない。
「洗」ではなく「研」なのだから。「無研米」ならあっているが。)
料理店ですらこんなことしている所を実際見たことがあるが、そんな店はメインの味がどうであれ、
その時点で失格なのは言うまでもない。
しかし米研ぎってそんなに大変かなぁ。確かに冬場は少々つらいけど、5分もかからんのだが。
そうか、冬場だけ無洗米を使うという手もあるな。

日本人なら米の研ぎ方くらい知っていて当然だと思うのだが、
学校の調理実習でもそういえば教わった覚えがない。
見目の良い料理の作り方より、包丁の使い方、米研ぎやみそ汁の作り方のような基本中の基本を
教えるべきだと思う。それが出来てない日本の調理教育は根本的に間違っていると思う。
(私も包丁の使い方は我流なのでだめなのだが。)

炊く前に浸けていた水を流し、最後にちゃんとした量にして炊き始める。
この炊飯器は水加減に敏感な気がする。
水の量はカップで量るのではなく、炊飯器の釜に書かれている量に「ぴったり」合わせる必要がある。
これが目視でハッキリ解るくらいの差があると炊きあがりが悪い。

あと、にがりを少々(20ml位)加えたり、入れたりするのもよい。
大分甘みや粘りがが増す。
先に書いたとおり米の質の違いもハッキリしやすいし、
こういう工夫も反映されやすい炊飯器であるといえる。

        ・・・その他・・・

*仕様
                鳥取三洋                タイガー魔法瓶
                CH10                R100
消費電力
 炊飯時        1200W              1005W
 保温時        28Wh                26Wh
大きさ(cm)      幅26*奥行34*高さ21      幅25*奥行32*高さ24
重さ(kg)        5.3                  4.4

大きさは、数値上は大差ないが、CH10の方が背が低く感じる。
釜は、R100の方が広く浅く、CH10は狭く深くである。
実はこの「狭さ」は数値以上に大きく感じる。
釜が分厚いからであろうか。
これを見ても解るとおり、重さに大きな差がある。
持ってみれば解るが、このほとんどが釜の重量の差と考えて良い。


*デザイン
これは思いっきり好き嫌いが分かれるであろう。
ヘルメットと例えられるが、おしゃれなデザインではなかろう。
私は全く気にならないが。
今までの炊飯器と同じ5合炊きであるが、ずっと背が低く感じる。
R100が白色の、いわゆる炊飯器の普通の形なのに対し、
CH10がステンレスむき出しのようなデザインだからかもしれない。
そうそう、CH10にはとってが付いてる。
私は炊飯器ごと移動させる習慣がない(過去に使った全ての炊飯器にもなかった)ので不要なのだが、
必要な人が居ると言うことだろうか。

R100には時計と炊き方などを表示する小さな液晶が付いていたが、
CH10のはこれでもかと言うくらいに大きい液晶である。
だが、表示できる内容はさほど変わりがない。
1つ1つの表示がでかくなっただけである。
後、バックライトも点いているので暗い場所でも見やすいかも。


*構造・洗いやすさ
CH10では圧力を掛けて炊飯するため、蓋がしっかり閉まる必要がある。
そのため、閉めるのにちょっとだけ力がいる。
ただそれはR100が軽々だったのに比べての話。

圧力を掛けるため蓋はちょっと特殊な構造をしている。
このため、炊飯のたびに外して洗うべき場所が4カ所もある。
釜、内蓋と上にある「おねばを蓄えるところ」が2分割。

「おねば」とは簡単に書けばお米の粘りのエキス。
羽釜で炊いていると途中にあふれ出る白いあれだ。
あぁ、もはや羽釜でお米を炊くところを見た人の方が少ないだろうから、
この書き方では解らないか?
R100では中央の圧力調整口から盛大に吹き出していたし、
活力鍋でも同様だった。
これをCH10ではため込んで、後で戻すのだそうだ。
だからお米に粘りが増すという仕組みだ。

外せるところの外し方は簡単だし洗うのも簡単だが、
実はおねばを蓄えるところの入り口は蓋に固定されているので取り外せない。
ここにもおねばの残りかすが溜まるのできれいにしたいのだが形状と大きさから結構難しい。
今のところ、指で汚れを取るくらいしかできないし、
それでも角の部分の汚れは取れない。
機器としては長持ちしても、衛生面で問題が出るのではないかと懸念している。
(まあ、高温にさらされる部分なので雑菌が繁殖するということはないだろうが。)

洗うという面では、R100が蓋中央にあった空調弁みたいな物だけだったのに
比べるとちょっとというかだいぶ面倒。
特におねばを蓄えるところは、原理上、きれいにしておかないと味が落ちる
可能性があるので忘れないようにしなければならない。

なお、付け忘れていると炊飯できないようになっているそうである。


*機能
この炊飯器は「しゃべる」。
無用な機能だと思ったが、これが妙に楽しい。
夜中に予約をすれば「午前何時に予約をセットしました。お休みなさい。」というが
これは昼間の予約だと「お休みなさい」は言わないなど、芸が細かい。
炊きあがれば音楽の後に「炊きあがりました。保温を開始します」と来る。
しょうもないことなのだが、何かうれしい。
最近の家電は至れり尽くせりだなぁと思った次第。
そういえば、うちにはAV系商品には新型のものが多いが、
実は一般家電は古い方が多い。
一番新しいのが3年ほど前に買った洗濯機だったのだから。

予約は2つ分が記録できる。
時間の設定はダイアルで出来るのでやりやすい。

機械音痴な嫁さん(カメラを、レンズを自分の顔の方に当てて撮影するほどである)最初抵抗感を示したが、
基本だけを教えたら後は使えるようになった。
だから、およそ機械が苦手な人でも使えるはずである。

まあ、炊飯器の基本は「いかにお米をおいしく炊くか」にあるので、
他の機能は予約以外、余り重視はしていないのだが。

声ではないが、炊飯中は圧力調整のために時々「ぽ〜」という音が出る。
これも何か面白い。

        ・・・

R100もIH方式で、その出たての頃のものだったと思う。
結婚前に買った物で、1994年製造と書いてあるが、
買ったのは1995年ではなかったと思う。
私がまだS社にいた頃、近所にあった安売り屋「アサクラ」で売り出しに出ていたものである。
1万円で買ったのではなかったか。
それ以前は三菱製のいわゆる「マイコンジャー」を使っていた。
IHはうまいという噂を聞いていたが、
その当時松下とかのは4〜5万していたので買えなかった。
それがこの値段だったので買ったわけだ。

機能はシンプルで、機械類がほとんどだめなうちの嫁さんでも使えていた。
本当は柔らかさや早炊き・炊き込み・寿司飯の選択、タイマーの設定も出来るが、
通常はファジー炊飯キーしか押さない。
この機能的シンプルさとパッキンがほとんどないという構造なので長持ちしたのであろう。
なんと、タイマーの電池すらまだ生きている。
10年間ほぼ毎日使われて壊れなかったこの耐久性はほめるべきであろう。

ちなみに、R100は新潟でさらに現役続行している。
(今までは、三菱マイコンジャーが使われていたが、さすがにパッキンがもうだめで
余りおいしく炊けていなかった。時計の電池もさすがに切れている。
でも15年以上、炊くことに関しては異常なしだったのだから、バブル期の物は
さすがに作りがよい。)

今回のトリサンのがどこまで持つことか。
決して安くはないので長持ちして欲しい。
なお、カタログハウスでは、3年間保証してくれる。
(部品は10年保管。)

        お勧め度        90%

これが届いた翌日、価格.comで炊飯器の所をいろいろ見ていたら、
三洋の炊飯器のところで「よからぬ」書き込みを見た。
まとめれば「三洋製の評価が高いのはさくらがつり上げているから」だとか。

それが真実かどうかは解らないが、1つ言えることは、
今の時代、消費者を騙すような行為をすれば必ずしっぺ返しを食うということ、
そして、それは大手企業でも傾けるくらいだということである。
雪印しかり、三菱自動車しかり、最近ならどこぞの建築会社しかりである。

そこから考えると、今の三洋の凋落ぶりはそのしっぺ返しそのものなのかも知れない。
だとすれば「さくら」説はあたりとなるが、果たして真実はいかに。

ちなみに、CH10は価格.comには上がっていない。
インターネットで検索してもほとんど引っかからない。
通販生活の2004年ピカイチ時点には「カタログハウスのみでの販売」とあるので、
一般には降ろしていないのか、カタログハウスのためだけに旧品の製造を続けているかどちらかであろう。
ただし、「発芽玄米機能付きはカタログハウスだけ」とあるので、その機能がない物は
一般売りしていると思われる。
元々は業務用の物をベースにしているようだ。
(これの1世代前の発芽玄米圧力沸騰炊飯器は少なくとも2002年春号に載っている。
値段は39800円。今の機種との違いは、デザインの他は不明。

ちなみにこの号では「三洋ホームアプライアンス鳥取」という会社になっているが、
2004年9月1日付で鳥取三洋電機が三洋ホームアプライアンス鳥取、三洋マルチメディア鳥取
を吸収、合併している。
(ではあるが、2002年春号では鳥取三洋電機となっているので、わずか数年の内に
変えてまた戻したことになる。無駄なことで。)

        ・・・実は・・・

通販生活の2006年春号で37590円に値下げされた。
買ってたった2〜3ヶ月で値下げとは「しまった!」という所であるが、
なんとカタログハウスでは1年以内に値下げがあった場合は値下げ額の30%を還元
してくれるらしい。さらに、今回のようにあまりに短期間での値下げの場合は
全額還元してくれる。ということで、値下げ額は郵便為替で返金してくれた。
実にあっぱれな対応である。少々高くてもここで買おうという気になる。
(他の対応も良いので、そもそもここで買う価値は十分あるのだけど。)

        ・・・

残念ながら、私に比較できるのはR100とCH10だけであり、
この2つでの差は上記の通りである。

お米の味の差というのは、粘りやつやまでは目視でも解るが、
甘みの差は個人の味覚の発達および健全具合にもよるので、解りにくい部分もある。
私個人の味覚を総合して言えば、上記のごとくである。
今は、御飯には何も付けないで良く噛んでその甘みを味わうのが一番と思っている。
(逆にふりかけなどを掛けると味が分からなくなってしまう、非常に惜しい。)

日本人にとってお米の味は基本中の基本である。
だからこそ、ブランド米を選んだり、新米と古米、農薬無農薬から天日干しかどうかまで吟味し、
研ぎ方、炊き方、水の量にまでこだわるのである。

であるにもかかわらず、それを感じる側の「舌」や「鼻」を鍛えない、
いやいや、鍛えなかったりわざわざ劣化させる輩が居るのが嘆かわしい。

味覚は訓練と鍛錬によって鍛えられる。
訓練はおいしい物を味わって食べることであり、
鍛錬は体調を整えることにある。
前者はお金がかかるように思われるかもしれないが、少量多種を十分味わって食べるだけ行える。
もちろん幅広くという面ではそれだけでは不十分だが、基本的感性は養える。
後者は、例えば「風邪をひかないこと」等と言うことだけではなく、
栄養的に偏った食べ方をしないとか(栄養不足は味覚を破壊する。特に亜鉛不足)、
悪臭掃き出して喜ばないと言うことも含まれる。

自分のそれらだけでなく他人のそれにまで悪影響を及ぼすともなれば、
もはやこれは基本的人権の侵害にも等しい。
悪臭人間は味覚の敵であるし、そういう人間が「味」に関する評価を行うなんど愚の骨頂である。

子供の味覚を育てるのは大人の責任である。
子供の頃から味付けの濃い物ばかり食べさせたり、偏食させたりすれば味覚はだめになる。
マクダーナルに連れて行けば行くほど味覚は破壊される。
人工香料と砂糖漬けのお菓子を食べても同じ。

私が食べると吐き出したくなるようなまずいお菓子が子供の通う児童保育所で平気で配られているのを見ると、
先生もそうだし、いかに親の多くが子供の口にする物へ関心を寄せていないかが解る。
面と向かって言うことはないが、そういうものを食べ浸けている子供の将来がどうなるか、
今から想像が付く。何とかしてやりたいが、今の世の中、他人の説教を受け付けない親が多く、
かつ注意するその親もご近所の年上連中もいないのがつらい。
子供の未来は親がその全てを作るものではないが、少なくともその道を閉ざすようなことはしてはいけない。

また、好き嫌いは味覚が鋭敏なことに由来する場合もあるので必ずしも我慢して食べさせる必要はないが、
頭で考えて拒否する「食わず嫌い」は許してはいけない。
正しい素材と料理法で作られた多くの物を味わわせる必要がある。

味の善し悪しを正確に見極めることは、ひいては自らの命を守ることになる。
食事は命の基本なのである。
食事をけちることは命を削ることに等しい。

そんなことを言うとお金のことを言う人が居るかもしれないが、
「今食費に使って満足も得る」か「将来治療費に使い、時間も取られるか」の違いだけである。
目先でけちると将来もっと多くの出費、それも費用だけでなく時間束縛をも強いられるだけなのである。

長い目で考える必要がある。

以上。
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