「書籍紹介2003〜04」
(2003/02/10号)
{書籍紹介}

        活力なべで作る「料理に幅が出る」料理集1/2
                2巻セット2500円(税別)
        活力なべ・ディナーパンで作る「料理に幅が出る」料理集3/4
                2巻セット2500円(税別)

        朝日軽金属工業


以前紹介した鍋の会社の出している料理本である。
当然のことながら、あの鍋を使った料理の本である。

あの鍋を使うと、比較的短時間に料理が出来る。
しかも失敗が少ない(無いとはいわない^_^;。)
と言うことで、いろいろとチャレンジしたくなるのであるが、
いかんせん私にはオリジナルの料理を考え付けるほどの
才能はないので(アレンジ位は出来るけど)、
鍋に付いていた料理本に書いてあった料理を一通り作ってしまうと
後は同じ物の繰り返しになっていたのである。

で、何とかレパートリーを増やしたいと思っていたところに
出たのがこの本である。
最初の2冊は活力鍋で作るそれぞれ野菜系と肉系の料理を、
後の2冊は活力鍋またはディナーパンで作る野菜系と肉系と
おかし系料理である。
(今年のおせち料理を作った時のネタはこのどちらでもない。
メーカーから送られた薄い冊子である。)

中には難しいもしくは材料をどこで買えばいいのだ?
という物がまだあるが、多くは簡単に実際に作ることが出来、
評判も良かった。
(ただ、家族人数にあった量の調節が難しい物もあるのだが。)

特に後の2冊はユーザーが考えた料理で、
豪華ではないがいかにも家庭で工夫した料理!と言う感じがして
おもしろい。
ただ、多くの作品を詰め込んでいるので、細かいところは
省かれていたり材料に誤植があったりする。
ある程度は製品添付の冊子や先の2冊でこの鍋での料理法を
覚えた人向けといえる。

        お勧め度        80%

もちろん、活力鍋&ディナーパンをを持っている人向けの度合い。
料理本としてはちょっと高いけど、フルカラーの写真一杯
なのでしかたないか。

チーズケーキとかプリンを作ってみたけど、
おいしい。はまってしまうかも。
(うちに来たら作ってあげるぞ。)
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(2004/06/14号)
{書籍紹介}

        「最長片道切符の旅」
        宮脇俊三
        新潮社
        ¥950

国鉄路線で、同じ駅を2度通らないいわゆる一筆書きの経路で最長距離を
走破した旅行記。

昭和53年10月から12月に、北海道の広尾という駅から鹿児島の枕崎まで、
13319.4Km(通過3186駅)と言うコースで、値段は乗車券だけで¥65000である。
もちろん当時の価格で。

これだけ長いと切符の有効期間も68日あるが、
この間を一気に行ったのではなく、他の予定との兼ね合いから
何回かに分割しての実行であった。
で、結局は1日オーバーしたので、その分は別途切符を買われたとか。
このほかに、特急・急行券や宿泊費、もちろん食費その他雑費も
必要だから、10万円以上かかっているだろう。

おりしも、NHK BS−hi AM7:45〜8:00(BS2でも再放送あり
;月〜木=PM7:45〜8:00、金=PM8:00-8:15、土=PM7:30-7:45)で
「列島縦断 鉄道12000kmの旅」という同様の旅をやっているので、
借りて読んでみた。

本の内容は、ひたすら淡々と状況を書かれている。
多くは状況描写を簡潔に。「感動した」などの感想はごく一部。
私の旅行記とはずいぶんと趣が違う。
それでも風景はおおかた思い浮かべることが出来る。

私も一度は行ってみたい。
今は当時と同じルートも列車も無理である。
NHKのコースも当然違う。
廃線になった線区も多いし、列車も特に急行がほとんどなくなっている。
一番大きな違いは四国がないこと。
当時は連絡船2本があったので四国がルートに入れられたが、
現在は四国への出入り口は瀬戸大橋しかないので無理なのだ。
(NHKの番組では特別に四国を回るそうだが。)

知っている場所や乗ったことのある線もあり、思い出した。
(柏崎も通っているし、大阪・京都も通っている。)
昭和53年と言えばまだ日本がまともだった最後の頃である。
文面からもうかがい知れるが、今はだめかもしれない。
みんながこういう旅をすれば日本も見つめ直され、
いろんな意味できれいになると思うのだが、
風景も、人の心も。

        おすすめ度      80%

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(2004/08/30号)
{書籍紹介}

        「武士道」

        新渡戸稲造
        奈良本辰也 訳
        三笠書房
        ¥495(税別)
        ISBN 4-8379-0563-3

500円札の肖像になっていた新渡戸稲造が武士道について述べた
本である。「訳」者があるところからもわかるとおり、
元々はこの本は英語で書かれている。
そう、元は海外に日本の道徳の基本「武士道」について説明した
本なのである。

海外に向けて武士道を紹介するため、海外の書物などの引用を
非常にたくさん行っている(日本の書物からの引用も多い)。
原作中の註に訳註を加え、1冊の実に1/3が注釈になっている事からも
その量のすごさがわかるだろう。

戦後生まれの私の世代では、もう武士道の精神はほとんど
直接語られることはないが、全く理解できないわけではない。
しかし、現在の若者には全く未知の考え方になるのかも知れない。
それは単なる物質文化の違いと言うより、根本精神の違いすら感じてしまう。
簡単に言えば、現代若者と私は異世界の者であるかのようだ。

現代文明は背骨を持たないタコ文明だ。
このままでは未来はない。

最近の若者に一番かけているのは「躾」である。
いや、若者だけではない。いい年扱いたおっさんも同じだ。
躾とは見てもわかるとおり「身」の「美しさ」である。
あっちでもこっちでも、だめと言われている場所でも平気で携帯電話をかける、
駅のホームや電車の通路で座り込む、ゴミをぽいぽい投げ捨てる。
本当に身が美しくない。


先日NHKでやっていた永平寺の104歳の門主さんの話にもあったが、
自分のやりたい放題、わがままにすることが自由だと思っている。
その方の言い分にはいちいち納得したが、
一般社会においてはその実践が難しいところもあると思った。
その点、武士道の方がまだ少し実践的であると言える。
(「永平寺 104歳の禅師」という名前だったと思うので、
再放送があったら是非見て欲しい。なんなら録画してあるので
家に来る機会のある人には見せてあげますけど。)

この書は武士道を全く知らない海外の人に対して、出来るだけ多くの例
をあげて理解してもらおうとして書かれているだけに、平易である。
まして、日本人ならある程度文化基底はわかっているので余計に理解は
容易であろう。武士道とは何であったかを。

武士道の全てが今の世の中に適合するとは当然思わないが
(新渡戸稲造も、明治の代においてそれを書いている)、
基本的精神のいくつかは時を超えて適応する。

この書物の中では武士道と、キリスト教など海外の倫理基底となる
宗教との比較もなされているが、その指摘がいちいち私の考えていることと
一致するのにも驚いた。

そもそもこの「武士道」は、外人から「日本の道徳は何を元に教育されているのか」
を聴かれた新渡戸稲造がよくよく考えて行き着いた、「それは武士道である」という
考えと、それについて解説した本である。
キリスト教圏では倫理(道徳)教育は、宗教=聖書の中にその原点を見ることが
出来る。日本においても仏教がその役割を果たしている部分もあるが、
やはり武士道の方が大きいと言えよう。
それは決してブシ階級だけの考えではなく、いや当然最初はそうであったものが
(おそらくは江戸の間に)一般庶民にも行き渡ったものである。

細かい内容は読んでもらうとして、そこで指摘されている
キリスト教の、私が考えてきた1つの真実がそこにまさに書かれていた。

明治に書かれた書物であるにもかかわらず、
すでにそこにおいて未来を予測しており
未だにその内容が陳腐化しないというのはすごいことである。

また、この本で特筆すべきは、その武士道を日本の進むべき道だと書いているわけ
ではなく、基本的には海外にその精神を理解してもらうべく書かれており、
同時に(自分自身を含む)日本人にもそれを見直してみるべきではないか、
問うているということである。
決して「あるべきだ」としているのではないのだ。
だからこそ、武士道をどう考えるかは読者にゆだねられていると言える。

いずれにしても、これからの日本を立て直す上で一体何が必要かと言われれば、
まずは倫理(道徳)の復活である。
その基本として、くだらん役人どもは「愛国心」などと言っているが、
そんな陳腐な言葉ではなく、その深層に潜むもっと基本的な心、
「勇」「仁」「礼」「誠」「名誉」などについて教えるべきなのではないか。

まずは日本人としての背骨が必要なのだ。
骨のない人間にいくら英語を教えても、それはタコに色の変え方を教えるがごとくで
ふらふらと周りに合わせるだけの人間を作るだけである。
その一番の具現化された例が「小泉」である。
ブッシュにべったりの奴こそ日本の恥である。
あんな首相、あんな奴を支えている政党を選ぶ国民もまた恥である。

学校で君が代を歌うのが愛国心教育であり、
それが日本を救うと考えているなら、それはあまりにも浅はかな考え方だ。
東京都知事なんぞ、言うなれば過去の遺物であり単なるパフォーマンスのうまいだけの
馬鹿だ。

戦後日本は天皇崇拝の教育を捨てた。それ自体は悪くないが、
同時にその中にあった道徳教育も捨ててしまったのはまずかった。
さらに昭和の終わりから平成に入ってからのやたら「個人の個性を重視」する
という方針が社会としての道徳を崩壊させた。
はっきり言うが、今の日本を堕落させた2大元凶は日教組と
文部省(文部科学省)である。

私はまずはこの武士道を読めと言いたい。
短い書物だし訳も良いので読むに困ることはないであろう。
(あえて難を言うなら、最初に書いたとおり海外の文献などの引用が
非常に多いので、その都度註を見ていたらなかなか先に進まないということで
あろうか。)
もちろんここに書かれているのは一種の紹介なので、
その神髄を知るにはいささか物足りないかも知れないし、
その神髄と手そのまま現代には当てはまらないから修正が必要だろう。
でも、それをやる価値はある。

        お勧め度        99%

読め。

あぁ、それにしても。
書かれていることは私の考えに多くの部分で合っているのに、
私の行動はどうにもそれに合っていないのが問題である。
私は「武士」ではないわけね。
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