「書籍紹介2000」
(2000/02/16号)
{書籍紹介}

        「スター・ウォーズ 最新科学読本」

        ジーン・カヴァロス 著
        石田享 監訳

        ISBN4-8124-0515-7
        竹書房 ¥1600(税別)

最近はやりのSFやアニメの科学解説本の一種である。
その対象がスター・ウォーズになったこともあって、原作者がアメリカ人
になっただけである。アメリカにはスター・ウォーズから映画や科学の世界へ
入った、もしくはそれから多大な影響を受けた人が多いようである。

あのような多彩な宇宙人はいるのか、ミレニアム・ファルコンは高速を
越えられるのか、C−3POやR2−D2は作れるのか、
フォースとは何なのか。まあ、他にも細々としたことを科学的に証明しようと
しているのである。
どうすれば良いのか、今ならどこまで可能かを多くの科学者に聞いている。
おそらくは最先端の科学者の声だろうから、真実味がある。

日本にあるウルトラマン関係の本が、ウルトラマンが超人であるだけに
少し空想が強かったり、おちゃらけ的なのに対し、スターウォーズは
何か現実にそれがあるように見せられているだけに、本当に何とかしたい
という重いが強そうだ。

この本、今まで読んだ同種の本の中では一番文字数が多いといえる。
ページ数も多い。そんなもんで、今までの本は数日で読み切れたが、
今回は2週間近くかかった。お買い得といえばお買い得だが、
しんどいといえばしんどい量である。

また、書いているのが元のNASAの天文物理学者(女性)
だけあって、その内容はかなり重い。寝る前にこれを読むと一瞬にして眠れるか
頭が働きすぎて眠れなくなるかどちらかになる可能性もある。
しかし、特別に数式や科学式が多いわけではないので、
―寸科学に興味がある人には十分読み通せるであろう。

一番良いのは、今まで読んだ科学本ではあいまいにしか説明されてなかった
理論や現象が正確に記述されているので、大変勉強になった。
実は、科学もの連載を予定しているが(書いたのはもう半年ほど前なんだけど)、
それにも大いに影響を与えそうである(要するに、追記や補正が入るということ)。

近い未来にはスター・ウォーズの世界(星間戦争ということじゃなくて技術的なこと)
は実現されそうにないけど、全く可能性がわけでもなさそうなので、
遠い将来には出来るかも知れない。
そのときには、「スター・ウォーズ」は偉大な「予言」と賞賛されるのであろうか。

        お勧め度        80%

寝る前に難しい本を読んでも大丈夫な人で、
科学系ネタが嫌いでなければどうぞ。

そうそう、これを読んでからSTAR WARSを見ると、注目するところが変わって
面白いぞ。
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(2000/03/27号)
{書籍紹介}

        「保存版 2000年 特急大図鑑」

        JTB
        ¥1700(税別)
        ISBN4-533-03457-8

その名の通り、鉄道の特急車両の図鑑である。
ほぼ全ページがカラーで実に美しい。
しかも、3/11の時刻改正まで考慮した、ばりばりの新作である。
(だから、山陽新幹線のひかりRailStarなども載っている。)
内容は新幹線、JR特急、寝台特急、私鉄特急と分けてある。

私は実は鉄道好きで、時刻表を見るのも好きなのであるが、
その車両の動向を追いかけてたのは中学生までで、それ以降は
トンと御無沙汰していた。いわゆる「鉄ちゃん」であるが「元」だったのである。

それでも旅行先でいろんな車両を見かけたら喜んで写真は撮っていたが、
形式とかまで追ってはいなかった。
が、今回この本を見て名前と形式が一致して実にすっきりした。

旅行が好き、鉄道旅行が好き、その乗り物が好きと言うことだが、
自分の乗る物について知っておくことは、決して無意味ではない。
この本では残念ながら技術的なことはほとんど載ってないが、
マニア向けに、もっと濃いところまで載っている別冊などが出来たりすると
買ってしまうだろう。

特に鉄道好きな人でなくても、見ていて飽きない・・・と思う。
今の特急は種類が実に豊富で、形も色も綺麗だから。
国鉄時代の特急は色も少なかったし形も少なかったが、
今は本当に種類が多いことが再認識出来た。
もっとも、昔の統制された色具合の方が良いと言う人はいるだろうけど。
(阪急の列車の色のような統制感ね。)

特急と言えばJRがほとんどであるが、有料の私鉄特急も載せている。
結構いろいろあるもんだ。
この有料特急の中で、例外的に1つだけ無料だけど載っているのがある。
それが京阪特急の2階建て車両である。まあ、確かに無料特急としては破格の
設備ではあろう。

        お勧め度        95%

「保存版」の名前に恥ない実に良い出来である。

お蔭で、また旅行に行きたくなってきた。
いろんな特急に乗りたいな。

そうそう、大人が見ても面白いけど子供にもうけていた、
と言うことも書いておこう。
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(2000/11/01号)
{書籍紹介}

会社の入り口の所にポプラの木がある。
ふと見ると、1枚の葉がまるで紙飛行機のように舞降りた。
木に残っている葉ももう全て黄色で、
あと少しで冬の季節がくることを実感させる。
さて、それを見て思い出した本が「葉っぱのフレディー」である。

        「葉っぱのフレディー」
        −いのちの旅−

        レオ・バスカーリア作
        みらい なな訳
        ISBN4−88747−002−9
        ¥1500(+税)

ポプラの葉であるフレディーの体験を通じて、仏教の輪廻転生を
教える本だといえば、あっている。

子供に読ませたい本の中では、最近上位に来る本だそうで、うちにもある。
確かになかなか良い本ではあるが、仏教の「輪廻転生」の教えを知っているなら、
「そんな声高に言うほど良い本か?」とも思ってしまう。

キリスト教ではそういう概念はないようなので、
こういう考えに共感し大きく誉めるのだろうけど。
まあ、輪廻転生の教えを子供に解りやすく教えるのは難しいので、
そういう意味では良いのかも知れないが。

なんにしても、その本にある風景を現実に目の当たりにすると、
冬の訪れと共に、命の営みを感じずにはいられないのであった。

合掌。
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(2000/12/04号)
{書籍紹介}

        「地図から消えた古代文明の謎」

        著者    吉村作治
        発売    成美文庫
        ¥505(税別)
        ISBN4−415−06888−X

有名なエジプト考古学者の吉村作治の書いた、エジプト以外の考古学の本である。
世界各地(日本を除く)の考古学的トピックを、基本的には1ネタ1ページで
解説、というより紹介している本である。

「解説」ではないのは、すでに解析されたものの話ではなく、
今だ謎となっているものを紹介しているからである。
それ故すっきりしない部分はあるものの、世界にはまだこれだけの謎が残っている
というのが解ると面白い。
考古学とは、解れば解るほどまた新たなる謎も生まれてくるもののようだ。

        お勧め度        75%

読むに特に気構えることはないし、適度に知識を得られるのが良いかな。
電車の中で読むには丁度良いかも。
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(2000/12/20号)
{書籍紹介}

        「空想哲学講義」

        著者    富増章成
        発売    洋泉社
        ¥1400(税別)
        ISBN4−89691−468−6

1999年8月6日号に紹介した「空想哲学読本」の続編である。
今回もアニメや特撮(?)物、ゲームに当てはめて説明してしまおうと
いうものである。

今回の題材に上げられているのはマクロスからベルクソン、
電車でGO!2から現象学、タイムボカンからハイデガー、
アンパンマンからサルトル、キューティーハニーから論理学、
天才バカボンからウィトゲンシュタイン、スケバン刑事から密教である。

今回の元ネタは少しマイナーな物もあるかも知れない。
電車でGO!2はゲームとしては有名だが、私自身はやったことがない。
ほとんど解ると思うが、解らなくても今回も一応の説明も書いてあるので
大丈夫であろう。

哲学体系と人物名を合わせると次のようになる。
 生の哲学      ショーペンハウアー、ベルクソン
 現象学        フッサール
 実存主義      ハイデガー、サルトル
 論理学        ラッセル
 言語の哲学    ウィトゲンシュタイン
 仏教哲学      密教

特に最初の「生の哲学」のところに人生の悩みを一発で吹き飛ばすような
名文句があるので読んで頂きたい。
S社の実情を吹っ飛ばすことは出来ないと思われるが。

前作同様に内容は確かに面白い。自分の知っている事柄に哲学を合わせていくと
理解は早い。しかし、今回のは前作に比べると若干難しい。
前作との話のつながりもあるので、まずは前作を読んでおきたい。

ただこの作者、元々キリスト教信者と言うこともあって
(名前からして解ると思うが、トマス・アクィナリー、というのは
洗礼名であり、聖人の名前である)密教の分析に関しては
少々甘いというか掘り下げ方が足りない、―寸理解が足りてない。
この部分に関しては、若干不満に思うところもあるが、
そこ辺りを少し知っている人でなければそういうことは解らないかも知れない。

        お勧め度        72%

そういえば、「空想哲学読本」のことをとある場所で話題に出したことが
あったのだが、やはり「危ない人として避けられるようになった」という
感じがある。
この本、実は今年の新潟行く電車の中で読むための本として買ったのだが、
隣に座っていた人の視線が「やはり」妙な者を見るような感じであった、
とは書いておこう。

別にそれは今に始まったことではないので構わないのだが、
哲学書を読むことが、そんなに変なことか?
30才も越えて哲学に付いて何も知らぬ・語れぬようでは情けないと思うのだが、
そんなこと考えている間もないほど忙しいのだろうか。

そう言えば、今回「空想哲学読本」紹介の記事を読み直したが、
途中で文章が切れている部分があった。
きっと何かを書きたそうとして忘れたんだと思うが、
一応ここで書き足しておく。

>元ネタはほとんど解ると思うが、解らなくてもそれらの一応の説明も
>書いてあるので大丈夫であろう(私にとっては、今まで解らなかった
>それら元ネタに付いての情報も解ったことも大きい)。
>また、文面的にも面白く書いてあるので
読んでいて難しくて投げ出してしまうこともないだろう。

ということで、気になっていた方はこれで安心して眠ってほしい。
(いないって、そんな奴。)
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(2000/12/27号)
{書籍紹介}

        「オタク学入門」

        著者    岡田斗司夫
        発売    新潮OH文庫
        ¥714(税別)
        ISBN4−10−290019−5

オタクを知るための入門書とも言える書物である。
著者の岡田斗司夫という人は、アニメ系では結構有名な
「ガイナックス」という会社を設立した人らしい。
アニメ系では結構名の知れた人ではあるし、その手の番組でも時々出ているのを
見かける(NHKを含め)。

そういう人が書いた物であるから、結構的を付いているのではないかと思って
買ったが、実に期待通りにオタクを的確に解説した本であった。
そう、世の中には「オタク」についていろいろと述べている本はあるが、
ほとんどの場合的外れか偏見に満ちており、まるでいじめのごとく
おもしろおかしく書いているだけである。
しかしこの本は、言うなれば真正オタクが自ら解説した本なので「正しい」のである。
しかも、「ネクラオタク」ではなく、ちゃんと会社を起こして成功している
人なので、読むに耐えるのである。

内容的には、まずオタクの発生時期とその特性を紹介。
オタクとは社会通俗概念的価値感に捕らわれず自分の価値観を持っている人であり、
しかもそのためには努力を惜しまないのであって、
これからのように、価値が多様化する時代においては、一番注目されるべき
人種なのであると解いている。

一般人には、これだけ多様な価値が氾濫してくるともはやどれを選択して良いか
解らなくなるのが、オタクにはそれが出来るのである。
流行を追うだけしか出来ない一般人とは違い、自分の価値を信じて突っ走れる人
なのである。

このようなオタクの定義をしているのであるが、「おぉ!!」と思うような、
実に明確な定義であると思った。

後は、オタクの持つ3つの目に付いて書いてあるのだが、
いずれもおもしろおかしくではなく、かなり学問的に解説されている。
だからこそ、東京大学の「オタク文化論ゼミ」公認テキストにもなるのだろう。

それに付いては本編を読んで頂くこととしよう。
余り紹介してしまうと面白みがなくなってしまう。

        お勧め度        90%

残念ながら、私としては100%同調出来るとは言い兼ねるが、
しかし全体的に見ればオタクの実像にかなり正確に迫る稀有の書と見た。
安いし、通勤や出張時のお供にどうぞ。

しかし、「オタク」がNHK放送禁止用語とは知らなかったなぁ。
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