「SR4200/KAI」(2003/03/31号)
これも書いてからちょいと時間が経ったが、出さないと話がつながらないので
掲載する。いつ書いたものかは、最後の現在の構成表にある日付を見てもらうと
わかる。ちなみに、現在はこの構成からだいぶ変わっているが、それは
また別の機会に(ホームページなら、DVD評価一覧のページにある構成が最新)。

{商品紹介}

        「AVアンプ SR4200/KAI」

        逸品館(AIRBOW)&marantz
        日本製

        定価    ¥68000(税別)
        買値    同上

        http://www.soundweb-asia.com/abc_2002_06/kai_series/sr4200.htm

いわゆるサラウンドという音声形態(?)を再生するためのアンプ。
一般にAVアンプと言うが、説明書にはAV Surround Receiverとあるし、
ホームページにはAV Sourround Amplifierとある。どっちやねん。
まあ、そんなことはこの際どうでもよいが。

DVDプレイヤーを買ってから、DVDを買ったり借りたりして映画を見ることが
多くなった。この時、音は左右スピーカーだけの、いわゆる2CHピュアオーディオに
つないで聞いていた。

それはそれで良い音なのだが、最近の映画はほとんどが「サラウンド」というものに
対応しているので、その音が聞きたくなった。
サラウンドでは多くの場合、前左右、前真ん中、後ろ(正確には真横位)左右の5つに
超低域を受け持つスーパーウーハー(サブウーハー)の5.1CHを使う。
(スーパーウーハーは全音域の音を出さず、ひたすら極低音域だけなので
1CHとは数えず0.1CHという。)

私の持っているDVDプレイヤーには2CHのスピーカーで
仮想サラウンドが可能となっていて、実際にやってみると
心持ち音が立体的になるような気がするが、やはり仮想は仮想な気がする。
ということで、急に本当の5.1CHしたくなって買ったのがこれである。

買うとは決めたものの、最近はオーディオに注ぎ込みすぎなので
今回はそんな高い物は買えない。また、いろいろと試聴する機会もないので、
機種は一発で絞ってしまった。
最近機器を買っている「逸品館」の出しているSR4200/KAIか、
そのオリジナルモデルのMARANTZのSR4200である。

ということで、日本橋に行って試聴することにしたのである。

オリジナルは38000円と、AVアンプの中でももっとも安い部類で、
各社のこの価格対の物の中でも一番安い。
こんな程度なので、その改良モデルである/KAIについても
店が言うほど音は良くないだろう。そうたかを括っていた。

ところがどっこい、試聴室で聞いた音は驚愕するものであった。
少なくとも、私にとってはこの音が出れば十分すぎる。

本当はオジリナルのSR4200の音も聞きたかった。
オジリナルと/KAIの価格差は実売価格において倍以上。
私の使う構成・機能においてその価格差が意味をなすかどうかが心配だが、
でもこの音を聞いた後で安い方を買うのも気が引ける。
/KAIでも全く手が出ないわけではなかったので、
実はだいぶ予算オーバーではあったが即決定してしまったのであった。

        ・・・

「機種は一発で絞った」と書いたが、そうは言っても
やはり必要な機能がない機種は買えない。
なので、メーカー(マランツ)のホームページで基本機能についての
調査はしておいた。

オーディオ装置にとって重要なのはカタログ上にある歪み率や周波数特性ではない。
(そんなものは電源や部屋の環境、つなぐ装置・線によっていくらでも変わるし、
それらがある程度の数値以上であれば人間の耳にはわからないものである。)
それはこれまでの経験から解っているので、そういうところは見ない。

一番重要なのは入出力端子の数と種類である。
後に詳細を書くが、うちの場合はこのアンプだけでなく
従来の機器との接続が重要なので、「プリアウト」と呼ばれる
出力端子は必須であった。
この価格帯で全てのスピーカーチャンネルに対してプリアウトが付いているのは
珍しいかも知れない。そういう意味でもこの機種はお勧めである。

また、電源事情から消費電力も重要だし、置き場所の問題から
重さや大きさも考慮する。音声出力ワット数はその次位に見る。

この装置では、音声系は入出力とも数・種類とも十分であったが、
映像系は入力が貧弱かも知れない。
が、私は映像系の切り替えはテレビ自体で行うのでこれでよい。
(むしろ映像系が全く無くてもっと安ければ良かったと思う。)

端子だけではなく、なかなかどうして基本機能も結構しっかりしている。

「サラウンド」と一口に言っても実はいろいろと種類があるらしい。
ホームページではそのあたりに付いてはあまり良く解らなかったが、
とりあえずDVDでよくあるサラウンド、
「dts」「ドルビーデジタル」についてはサポートされているようなので
OKである。
また、2CHの音声を仮想的に5.1CHにするDOLBY PROLOGIC II
というのも付いているので、遊べそうである。

ということで、このアンプと足りないスピーカーと、
足りてるけど、店で試聴したのと同じスピーカーも買ってしまったのである。

        ・・・

で、後に書くような結構複雑な接続と設定、
ケーブルの自作などを全て終えて音を聞いてみた。
(結構時間がかかったんよ。)

出てきた音の感想は「ピュアオーディオ系とはめざす方向が全く違うなぁ」。
ピュアオーディオ系は、元音再生をもって至上とするが、
AV系は、いかに耳に良く聞こえるかという感じ。

通常の2CH音声にDOLBY PROLOGIC IIというものを掛けると
サラウンド的になるが、特にこの音を元の音と聞き比べると、
その傾向の違いがはっきりする。

音的には全体的にふんわりで包み込まれるような感じになる。
聞きやすいが、一方で細かい音は飛んでしまうし
音像定位も散漫、というかおかしくなる。
しかし、これはこれで悪いものではない。
音楽を聞くからと言って、いつもいつも緊張するほどの音の鋭さが
必要なわけではない。
傾向の違う2つの音が聞こえるというのはおもしろいことである。

曰く「コンサートホールの雰囲気を再現」とあるが、
広いコンサートホールでマイクとアンプででかい音を鳴らしている
コンサートなら、確かにその雰囲気が出ているかも知れない。
しかし、狭いホールでソロ演奏などを聞くという雰囲気は出ない。
こちらはやはりピュアオーディオ系の得意とするところ。

要するに、ソースによってちゃんと使い分けが必要ということである。

逆に、元々サラウンドの音声を2CHで聞いた時とちゃんと
サラウンドさせた時では、後者の方が全ての音声がはっきり聞こえてくる。

複数のCHの音を2CHに交ぜるので情報が落ちる、もしくは
音がごちゃごちゃになりすぎて聞こえにくくなるのだろう。
まあ、このシステムはこちらの使い方が本来の使い方なので、
この時に聞こえる音で評価すべきである。

そういう意味では、このシステムから出てきた音は満足出来る。
「こんな音まで入っていたのか」と関心することしきりである。
スピーカーの設置をしっかりしてやると音の移動感もずっと良くなる。
凝ったソフトでは音の移動もかなりあるのがわかる。
音の解像度的にも良好。

このアンプ、アナログ入力も音がよいが、デジタル入力も良さそうだ。
うちの場合、CDからアナログ出力はPM6100へ、デジタルはSR4200に入れているが、
この2つを聞き比べると、アナログ=CD側のD/Aは音に厚みがあって色っぽい音
なのに対し、デジタル=SR4200のD/Aは細かい音まで聞こえる高解像度である。
ソフトによって使い分けるのが良さそうであった。
一般的には、クラシック系はアナログ=PM6100で、電子音楽はデジタル=SR4200が
合っているようである。

ただ1つ難点を言えば、ノイズが大きい。
サーという音が常に付きまとう。
これは音の入力がない時から小音量時には特に気になる(残留ノイズ)。
(2003/04/14追記;これはマランツのSRシリーズ全般に言えるらしい。
最近の機種も含め。)
ヘッドフォンで聞いている時は特に顕著なので、
ヘッドフォンを良く使う人には不向き、と言えるかも知れない。
ついでに書いておくと、ヘッドフォンでは(仮想)サラウンド再生は出来ない。
常に2CH再生である(これは出来る機種の方が少ないだろうが)。

(2003/04/14追記)
また、これはマランツのAVアンプ一般に言えることだが、
デジタルで入力している時にそれがとぎれると、
一瞬プチッというノイズが入り、それから数秒音が出なくなる。
DVDでの1層目から2層目への切り替わり時とか、リジューム時とかが顕著である。
CDでもプレイヤー側がデジタル出力をプレイ中にしか出さない機種なら
(CH7700がそう)、無音部が全くなしに始まるものでは最初が欠けるかも知れない。
これは、マランツのアンプがプチ音消しの回路を持っていないためで、
これは音の劣化につながる回路は持たないという同社の姿勢によるものだそうだ。
(プチ音を最小限にするために電子ボリュームを一端絞ってまた戻すようにしているらしいが、
この際に最初の一瞬の音が出てしまう。)
私の使う範疇で、これが問題になったことはない。
逆に1層目から2層目への切り替わり時のプチ音はいつ切り替わったかがわかって
おもしろい。

        ・・・

ここでうちのシステム接続図。
何がどういう装置なのかは最後の「現在の機器」を参照のこと。

               [L/R:Yoshii9]                  [DS-103A]
                    ↑                          ↑
                [TimeDomain]←←←←←←←←←←┤
                    ↑                          ↑
        [L:IMAGE11] ↑  [R:IMAGE11]             ↑
                ↑  ↑  ↑                      ↑
                [PM6100SA/KAI2]←←←[Record]   ↑
                ↓  ↑  ↑  ↑                  ↑
                ↓  ↑  ↑  └←(A)→ [CD-R]    ↑
            ┌←┘  ↑  ↑              ↑      ↑
            ↓  フロント↑              ↑      ↑
            ↓      ↑  └←(A)←┐     ↑    センター
[CT-80]←[Selector] ↑         [CD]   ↑      ↑
            ↑      ↑  ┌←(D)←┘     ↑      ↑
            └←┐  ↑  ↓              ↑      ↑
        スーパー↑  ↑  ↓ ┌→→(D)→→┘      ↑
        ウーハー↑  ↑  ↓ ↑                   ↑
                [SR4200/KAI  ]→→→→→→→→→┘
                ↓    ↑↑
                ↓    ↑└←音声(D)←[DVD]→映像→┐   ┌←[GAME]
                ↓    ↑                          ↓   ↓音声・映像
                ↓    ↑                          [T V]
                ↓    ↑                          ↑   ↑音声・映像
                ↓    └←←音声(A)←[L D]→映像→┘   └←[VTR]
            サラウンド
                ↓
         [L/R:MenuetRoyal II]

今回の購入では、ピュアオーディオ系との両立が課題であった。
SR4200/KAIは1台でそれを両立させる音を持つ機種
というふれこみだが、私ははなからそれは当てにしていなかった。
ピュアオーディオは従来の機器を使う。
しかし、AV系のために新たにスピーカーを買うわけにはいかない。
(買っても置く場所がない。)
ゆえに、従来ピュアオーディオ系で使っていたスピーカーを
AV系でも使うように設定しなければならない。
そのための設定がこれである。

基本的にはアナログをピュアオーディオ系(PM6100)へ、
デジタル系をAV系(SR4200)へ入れている。

スピーカーはサラウンドとセンターをAVアンプで直接駆動し、
フロントはプリアウトを使ってピュアオーディオ系のアンプPM6100を使って
バイアンプ駆動している(それぞれのスピーカー駆動に独立したアンプがある)。
センターはAVアンプでも駆動しているが、TimeDomainでも音を
出せるようにしている(邪道だが、この方が台詞がききやすいことがある
通常はあまり使っていないが)。なんとなく豪華である。

TimeDomainはピュアオーディオの時はPM6100と同じ音を同時にならすことがある。
音が貧弱なソースに対してはこうしている。
(逆にTimeDomainをメインにする時もある。)
CT−80は超低音域担当。

ピュアオーディオ系とAV系では音量設定がぜんぜん異なる。
SR4200に入るソースを聞く時はPM6100等のボリュームは
かなり上げて固定しておく(現在はボリュームの半分ちょっと位まで)。
これに対し、PM6100に入るソースではせいぜい1/5位しか回さない。
そういうもんらしい。
切り替えが面倒と言えば面倒だが、たいしたことではない。
間違って、AV用のボリュームままピュア系で音を出してしまったら
大変だけど(大音量!!)。

そういえばAVアンプの出力はこの機械で70W、
他社の製品でもかなり高い。
ピュアオーディオで考えれば一般家庭においては無意味なほどに高出力な
数値なのだが、AV音声用として使う場合はこれでも普通ではないかと思えてきた。
実際に音を聞くと、サラウンドの音はかなり小さいのだ。
だから、かなり思い切ってボリュームを上げないと音が聞こえないし
迫力が出ない。

このように、SR4200はサラウンドプロセッサー&セレクターと化し、
アンプとしては余り使われていない。
そのために/KAIモデルを使うと言うのは、少々もったいない気もする。
通常モデルなら28000円程度で買えるからだ。

でもやはり/KAIモデルの音を聞いてしまうと普通のは買いにくい
(普通版の音を聞いてないのに言うのも何だけど)。
将来分離する可能性もないとはいえないし。

(2003/04/14追記)
上記の接続で、CDプレイヤーのCH7700Super2からの出力を、
アナログをPM6100に、デジタルをSR4200に入れた場合の音の
違いであるが、これは圧倒的にPM6100の方が良かった。
細かい音の出てき方が大きく異なる。SR4200では小さな音が落ちてしまう。
CH7700のDAコンバーターが優れていてアナログの方がよいのか、
SR4200のDAコンバーターがいまいちでデジタルが悪く聞こえるのか、
SR4200→PM6100間で落ちてしまうのかは
わからないが(SR4200にアナログ入力はしてない)この接続では
PM6100で聞くのが一番であった。

        ・・・

このアンプ、サラウンドの音の残量(いわゆるエコー音)を変化させるとかの
細かい設定が出来ないが、これも私には必要なし。
(その辺が廉価版というかピュアなAVアンプというべきか。)
AV系に究極の音は求めないし細かく設定を変えて変化を楽しむ気もない。
気楽に聞くことしか求めてないのだ。
CDならまだしも、元々圧縮音声のDVDではこれで十分である。

一方、サラウンドの形式の選択や音の残量の固定的設定については
かなりの種類がある。どの時にどれを選んだらいいのか
はっきり言って今もよくわからない。
通常はAUTO設定。

で、この設定における音であるが、サラウンド音声としては特に文句はない。
バイアンプ駆動についてはメリットもデメリットもない感じ。
あっ、デメリットは音量調節の難しさか。細かく設定出来るという意味では
これはメリットにもなるのだが。

結局、AVアンプと言えどもやはりスピーカーの距離や反響の調整など善し悪し
で音が変わるので、音が満足でない場合は、まずはそちらを疑った方が良い。
このアンプの実力はすごい。
(うちはまだ突き詰められてまへん。)

        お勧め度        80%

私のような使い方ではこれで十分。
AVアンプって高い物はとことん高いけど、
実のところ、この程度でも十分じゃ無いかと思う今日この頃。
ただ、サラウンドのモード切り替えと音の違いが解りにくいのが難点。

このAVアンプにはチューナーも入っているが、私は使っていない。
そもそもラジオを聞かないのと、
うちの環境ではアンテナをつながないと満足に電波が入らないのと、
電波を入れるとかえってノイズを拾いそうだから。

出力が5CHとも70Wあるため、発熱はそこそこある。
最初使い始めの時に少し焼けるような匂いがすることがあったが、
そんなもんらしい。むちゃくちゃきつくない限り、
故障ではない。

そうそう、このアンプの改良品、メーカーから店にオリジナルを入れ、
店の工房にて手作業で改造しているらしい。
私が買いに行った時ちょうど改良品在庫がなく、
「今日オジリナルと改良品の材料があるから作って送ります」ということであった。
(だから送料無料にしてもらった。)
メーカーのラインに特別ラインをもうけているのではなく、
手作業だから高いわけね。少し納得。

最後に1つ失敗談を。
最初の内、DVDからの音声がどうしてもサラウンドにならなかった。
いろいろやっている内に気が付いたのが、DVDプレイヤー側のデジタル出力設定。
ここの種類設定でサラウンド信号を出さないように設定されていた。
気を付けよう。

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結局のうちのシステム                            2002年09月10日現在
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アンプ1                        MARANZ/AIRBOW   PM6100SA/KAI Ver2
CD                            CEC/AIRBOW      CH7700 Super2
CD−R                        TASCAM          CD-RW700
DVD                          MARANZ          DV-3100
レコード                        DENON           DP-37F
スピーカー1(フロント)        AudioPro/AIRBOW IMAGE11/KAI             <新規
補助ツイーター                  AIRBOW          CLT-1

AVアンプ                      MARANZ/AIRBOW   SR4200/KAI              <新規
スピーカー2(サラウンド)      DALI            MenuetRoyal II          <移動
スピーカー3(センター)        DIATONE         DS-103A                 <復活

スピーカー4(サブウーハー)    Volodyne        CT-80
セレクター                      Maspro          DSW42E                  <復活

アンプ2                        TimeDomain      YA9
スピーカー5(センター)        TimeDomain      Yoshii9

TV                            SONY            KV-29DRX5
+BSアンテナ                  DXアンテナ      DSA353K
ビデオ                          Victor          HR-VX1
レーザーディスク                Pioneer         CLD-R7G

ヘッドフォン                    audio-technica  ATH-PRO6
ラック                          ADK          SE-5055NA+SE-OP50G
CD音質改善                      AcousticRevive  RD-1
音場改善(?)                     AcousticRevive  RR-7
電源改善                        熱電子工業      TVスッキリー(5台)

所有している物ではなく使っている物。
ケーブルは全て自作(音声・映像とも)。
スピーカースタンドも自作。
インシュレーターも全て自作(黒檀+キルト生地でジルコンサンドを包んだ物等)
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これは後で気づいたことだが、5.1CHサラウンドで今1つ音に迫力や臨場感が
足りないと思うときは、リアスピーカーの音量を少し上げると良い。
後ろの音が大きいと不思議と全体のつながりが良くなってサラウンド感が
ぐっと上がる。かなり劇的に。各スピーカー毎の音量が調整できないとだめだが、
可能ならお試しを(SR4200は可能)。
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