蝸牛月刊 第20号 1997年5月17日発行


ロシアSFニュース

大山博

ロシアSF出版情報

 旧ソ連時代から出版が始まったファンタスチカ叢書の共同出版だが,まだ継続されている.この度,ナウカに入荷したのは《諸民族の友好》出版社発行の第12巻『ベリャーエフ』第1〜2分冊及び第21巻『ストルガツキイ兄弟』の第1分冊で,ストルガツキイの巻にはいずれも邦訳のある『ラドガ壊滅』,『幽霊殺人』及び『滅びの都』が収録されている(如何なる選択基準なのだろう?).写真をコラージュ?した表紙デザインはなかなか力が抜ける代物なので,機会があったらぜひ手に取って見てほしい.
 モスクワの《テラ》出版社(サンクト・ペテルブルクの《テラ・ファンタスチカ》とは別の会社)からはアレクサンドル・ベリャーエフの3巻選集が,同じくモスクワの《テクスト》出版社からはストルガツキイ兄弟の3巻選集が発行された模様.エフレーモフ完全版(検閲による削除を復元)の出版等,旧ソ連時代の大御所もまだまだ完全に忘れられたりはしないようだ.
 群像社のニューズレター『群』第10号に,富田恵子氏の小論『ルィバコーフ 呪術師の呼び声』が掲載された.なかなかの好文であるので,ぜひぜひご一読願いたい.

ロシア映画情報

 長い歴史のある大衆映画雑誌《エクラン》が今年4月号から大幅な誌面刷新を図っている.サイズも一回り大きくなっている.また,映画,ビデオ,TVそしてマルチメディアを扱うと明記し,コンピュータゲームのページまでできている.ただし,ゲーム欄の内容がアメリカ合衆国産ゲームばかりなのは,いずこも同じとは言え残念な話である.
 その《エクラン》誌1997年4月号によると,ドストエフスキイ原作の『おかしな人間の夢』(日本国内での配給はアニドウによる)等の油絵アニメで知られたアレクサンドル・ペトロフ監督の新作『ルサールカ』のラッシュ上映が最近,モスクワで行われた模様.同誌に掲載されたスチールを見ると,あいかわらずこれが動くとはとても思えないすごい絵だ.日本での公開を期待したい.
 今年の3月,モスクワの国立映画保管所ゴスフィルモフォンドの実地検分に出かけたエイゼンシュテイン・シネクラブ代表の山田和夫さん他の話によると,ロシアを代表するアニメーション作家の一人,ユーリ・ノルシュテインの最新作『外套』の製作はまたも停滞しているようだ.さて,昨年の来日時に本人が明言した今年中の第一部完成はなるか? ちなみに,ノルシュテインは同クラブの名誉顧問となっている.他にも,モスクワの映画博物館館長でエイゼンシュテイン研究の第一人者ナウーム・クレイマン,映画監督のアレクサンドル・ソクーロフが名誉顧問となっている.『名誉顧問』とは,発言権はあっても,報酬はないと言うことである.
 今年7月に開催予定のモスクワ映画祭だが,一応,現時点では開催されるとのことである.そのうち,詳細がわかれば改めて紹介したい.

とっくに出た本

大野典宏

 ロシア・東欧の作家のもののみ。書名・作家名・出版社名・出版社所在地の順。


ロシア・ファンタスティカ系作家会議「ストラーニク」本年も開催

大野典宏

 昨年,第一回が開催された「ストラーニク」だが,今年も無事開催されるようだ。本年9月下旬(26日前後),サンクトペテルブルグのどこかで行われる予定。昨年のとおりであれば,ボリス・ストルガツキーをはじめ,ロシアの代表的なSF作家の多くが参加する。
 なお,昨年は当会の大山氏が出席し,開会挨拶を行うという偉業を成し遂げている。今年は大野が参加する予定だが,現在のロシアでの評判から考えると,たぶん酒瓶を出されてほっておかれるだろうと予測される。
 他の適任者が望まれるところである。