兄.1925年-1991年.
弟.1934年-.サンクトペテルブルグ在住. →近影(1995年5月6日撮影)
1997年に開催されたコンベンション「ストラーニク」でボリス・ストルガツキーが行った講演「未来の歴史」の骨子を掲載します。 |
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現在入手可能なストルガツキーの本 |
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以上,早川文庫 |
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トーキング・ヘッズ叢書のページに日本語のビブリオグラフィが収められています.
三十年前、ストルガツキー兄弟は二十二〜三世紀までには完璧な共産主義が出来上がると思っていた。だが、人の夢は終った。しかし、「未来の建設」は興味深い話題である。この話の要点は次の三つ。
まず第一に、兄弟は六十一〜三年頃、「共産主義の建設」のために働こうとしていた。
第二に、たくさんの人たちがソビエトに大きな期待をかけていた。兄弟が子どもの頃、数人の人々が兄弟の希望を作り上げた。共産主義はロシア人の夢であり、兄弟の夢でもあった。それは単なる夢ではなく、願いでもあった。数人の人々は善人たることができ、その人々が希望の創造を始めた。だが、創造はそれだけでしかなかった。
そして第三に、兄弟は光り輝くアイデアや理想の創造を記述しようとした。兄弟は、早く大人になるために夢見たのだ。
(1997年9月26日サンクト・ペテルブルグにて)
この講演の内容について
この講演で語られていることは、ストルガツキー兄弟が創作を始めるに至った動機の一端と「我々には未来の夢が必要だ」という二点のみである。
確かに、六十〜六十四年にかけて「ラドガ壊滅」や「よくできた惑星」などといった典型的な未来もののSFを書いている。また、当時の状況を考えるならば、共産主義が創作の動機だったというのも事実だろう。
だが、ストルガツキー兄弟は六十五年頃から未来の夢ではなく、現代的な問題にテーマを絞ったものを多く書いている。それにストルガツキー兄弟は、七十年代までには共産主義者ではなくなっていたはずである。それをわざわざ語るというのも奇妙な話だ。
以上のことを合わせて考えると、この文脈ではボリスが他の作家に未来に付いての話を書くように奨めているようにも解釈できるが、そうではなく、ボリスからの逆説的な問い掛けであると解釈できる。つまり、ボリスは自分たちの出発点と転換について語ることで、より現在の立場を明確にしようとしたのだ。これはボリスが普段から主張している「今日の問題を語る」という姿勢と一致する。