タイトル 清左衛門残日録
放映年 1993年
放映話数 全14話
藤沢周平原作。隠居した元用人の三屋清左衛門が淡々と日々を過ごす。NHKらしく丁寧な造りの秀作。見ていて、じんわりと心が温かくなる作品。金曜時代劇の枠は数少ないレギュラー時代劇。続けて欲しい

出演:仲代達矢、財津一郎、南果歩、山下真司、かたせ梨乃、佐藤慶、喜多嶋舞ほか

熊太という役名がチャーミングな財津さん。友情に篤い熱血漢。いいなあ、財津さんのこういう役。しびれる〜

 財津さんである。さびし〜、きびし〜と、頭の中で声が浮かぶ方である。彼が演じる人は、いつも味わい深いのだが、本作の佐伯熊太役もまた心魅かれる男である。仲代さん演じる三屋清左衛門の親友。清左衛門は隠居したが、彼はまだ現役、奉行である。頭も切れるし、度胸もある。それでいて繊細な気配りもでき、真面目で武骨一辺倒の清左衛門よりずっとイケている…と、思うのだが、料理屋の女将みさ殿@かたせ梨乃さんには片思いらしい。わたしがみさ殿ならば、ぜったい熊太(笑)優しいし、侠気はあるし、面白いし。清左衛門がもうひとりの親友にたばかられ、心傷つく話があった。その時、熊太はその男(河原崎長一郎さんが弱虫で情けない男を好演)を呼びつけ、一発喰らわした後「俺は、親友をだましたことが許せんのだ。お前が死んでも葬式には行かん。お前も来るな!」と言い放つ。ああ、こういう男が友達なら、どんなに心強いだろう。主人公の清左衛門は結局その男を憎みきれないのだが、熊太はきっと一生許さないのだろう。その男がした行為より、親友を騙したという心根が許せない。騙された男より熱く怒る熊太、好きだな〜
 本作では市井の人々が丹念に描かれる。ドラマチックなことは、隠居しながらも藩内の派閥抗争に巻き込まれる主人公と息子というくらいで、日常が淡々と過ぎていく。南果歩さんの嫁と、清左衛門との会話が心地よい。ああ、この時代は人に対する気配り、思いやりが溢れていたのだな…と、実感。美しい日本語での会話も堪能。よき時代の、よき人々のお話しである(2005.2.19)