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公的介護保険







1. 少子化対策で初の長期計画――高齢者対策、在宅介護を拡充。
97/ 4/24 日本経済新聞 地方経済面 P 15 676字 表写絵 FAX可

 東京都は二十三日、横断的な組織「少子高齢社会対策推進会議」を設置し、二〇〇五
年度を目標とする長期計画を決定した。高齢化対策では、公的介護保険制度の導入や都
の財政状況を踏まえて在宅サービスを拡充。少子化問題では働く女性の支援に力点を置
いた。都が少子化対策で長期計画を策定したのは初めて。

 地域福祉推進計画では、高齢者比率が二〇〇五年度に、総人口の一八・七%に上昇す
ると想定。相談からサービスプランの作成、ホームヘルパーの派遣まで一貫して行う「
ケアマネジメントシステム」を重視し、その機関として、高齢者サービスステーション
の創設を定めた。

 同ステーションは「在宅介護支援センター」や「訪問看護ステーション」などの事業
内容を統合し、六百カ所に設置。現行制度では福祉や保健、医療の各分野ごとに施設が
細分化しているが、統合で「窓口が一本化され、都民が利用しやすくなる」(福祉局)
という。

 また、在宅サービスの担い手となるホームヘルパーについては、新ゴールドプランに
基づく必要人数の約二倍の三万三千人を確保。二十四時間巡回型ホームヘルプサービス
も大幅に拡充し、「必要なすべての世帯に提供する」とした。

 一方、少子対策の「子どもが輝くまち東京プラン」では、「母子保健医療体制の整備
」や「子育ての心理的・肉体的負担の解消」など八つの課題を提示。仕事との両立、経
済的負担の軽減の必要性を指摘した。

 具体的には、相談から自助・互助グループの育成などを担当する「子育て家庭支援セ

ンター」の設置や、一時保育事業の充実などを盛り込み、「全区市町村での実施を目指
す」としている。


2. <図表>公的介護保険の費用負担割合(介護法案を問う)
97/ 4/22 日本経済新聞 朝刊 P 5 0字 表写絵


3. 介護法案を問う(1)国民は負担を覚悟したか――見えぬ保険料に不安。
97/ 4/22 日本経済新聞 朝刊 P 5 1528字 表写絵 FAX可

 国会で公的介護保険制度を創設するための法案審議が大詰めに入る。今国会で成立す
れば三年後の二〇〇〇年度から導入されるが、この時期に至っても国民の制度に対する
理解は十分とは言えず、関係団体からは異論が相次いでいる。法案が抱える問題を検証
する。

 「本当に保険料を払えるのか不安だ」。十七日、厚生省を訪れた日本婦人有権者同盟
の幹部は、江利川毅老人保健福祉審議官らに慎重審議を訴えた。紀平悌子会長は「強制
加入なのに国民に理解を求める努力が足りない」と不満をぶつけた。

 政府が提出した介護保険法案は、四十歳以上の全国民が加入、毎月介護保険料を納め
、寝たきりなど介護が必要な状態になった時に介護サービスを受ける制度で、利用時点
の実費負担は一割で済む。保険料は運営主体となる市町村が提供できるサービスの度合
いによって個別に決める。慎重論が根強いのは「保険料がどの程度になるかわからない
」いう不安が大きいからだ。

 厚生省によると、導入初年度の介護費用推計額(四兆円強)から逆算した一人当たり
月額保険料(単純平均)は約二千五百円。六十五歳以上の人は全額負担する。実際の保
険料は所得に応じて五段階に分かれ、最高三千七百五十円、最低千二百五十円となる。

 四十―六十四歳のサラリーマンは企業と、自営業者は国とそれぞれ折半で保険料を負
担する。中小企業向けの政府管掌健康保険と自営業者向けの国民健康保険の加入者の本
人負担(単純平均)は二千五百円の半分である千二百五十円。組合健康保険に加入する
大企業のサラリーマンは保険料が割高になり、同省が示した非公式の試算では三千四百
円(同)、本人負担は千七百円となる。

 保険料の徴収方法は、六十五歳以上で一定額(年間四十万円程度とする案が有力)以
上の年金がある人は年金から天引きされる。これよりも少ない人は市町村が個別に徴収
する。

 同省は「低所得で老齢福祉年金を受給している人は保険料を最低額にするなど、配慮
した」と強調する。それでも老人の大半が加入する国民健康保険は保険料の最低額が月
五百―千円前後だから、介護保険料が加わると二倍以上の負担を強いられかねない。国
保同様、保険料未払い者が増加する懸念はぬぐえない。

 一方、四十―六十四歳のサラリーマンや自営業者は医療保険料に介護保険料を上乗せ
徴収されるが、所得水準などにより最大いくらまで取られるのかは不明だ。

 そもそも、厚生省がはじいた保険料二千五百円については「そんな金額では済まない
」との異論が多い。厚生省は介護費用が二〇〇〇年度の四兆円強から二〇一〇年度には
約七兆円になり、六十五歳以上の保険料は三千五百円程度に上昇すると公表している。

 だがこの推計で用いているのは九五年度時点の介護サービス価格で、その後の物価・
人件費増などは見込んでいない。同省が毎年の単価の伸びを三%などとする前提でまと
めた「粗い試算」では二〇一〇年度の費用は十兆円に膨れる。単純に計算すると保険料
は六千円以上に跳ね上がる。

 六十五歳以上の人口に占める介護が必要な高齢者の割合についても「二〇〇〇年度に
は一五%前後に達し、厚生省試算の一一―一二%を上回るのではないか」(高橋信幸・
三鷹市保険年金課長)との指摘がある。

 現在、厚生省が正式に提示しているデータは当初三年間二千五百円という保険料だけ
だ。同省は「個々の介護サービスの単価である公定価格が将来どうなるか現段階では分
からない。これ以上のデータは出しづらい」(高齢者介護対策本部)と言うが、国民の
多くはそれで納得しているわけではない。介護施設の整備状況や運営コストなど条件変
化に応じた多様な推計値や対策を明らかにし、議論を深めるべきだろう。 (経済部 
矢沢俊樹)


4. 医療・介護法案、今国会成立で合意、自民・民主――薬剤費に歯止め案。
97/ 4/14 日本経済新聞 夕刊 P 1 554字 FAX可

 自民、民主両党は十四日午前、国会内で幹事長・政調会長級による協議を開き、後半
国会の焦点である医療保険改革、公的介護保険両法案の扱いについて、必要な修正をし
たうえ今国会中に両法案とも成立させることで合意した。医療保険改革法案の修正では
、新設する薬剤費負担(外来、一日当たり一種類十五円)の軽減や歯止め措置を取る案
などを軸に調整に入る。

 合意では両法案について「一方のみを優先して成立を期すことはしない」と一括処理
を明記した。医療保険改革法案を「制度の抜本改革に向けた第一歩」と位置付け、自民
、社民、新党さきがけ三党の医療保険制度改革協議会に民主党も参加、抜本改革案を今
年中のできるだけ早い時期にまとめることで一致した。

 沖縄米軍基地問題を巡る合意に続き、自民党と民主党の「部分連合」を推進する動き
で、同日朝の自社さ三党の幹事長・政策責任者の六者協議で、社さ両党は三党合意の基
本線を崩さないことを条件に民主党の三党協議会入りを了承した。

 民主党の仙谷由人政調会長は十三日のNHK番組で、薬剤費負担について「子供の風
邪薬でも三、四種類使われており、負担が大きくなる」と歯止めを求める考えを示した
。診療報酬制度では「急性医療は出来高払いでないと困るが、慢性疾患医療は定額払い
方式の導入を提起していきたい」と述べた。