執筆裏話
なんでホラーなの?

(第六話)なんでホラーなの?

  私は最近,ジュブナイルでもっぱら中世ホラーを書いています.
なんだか分類上はファンタジーでもない,SFでもない,ボーイズラブでは絶対ないし,よくわからないので結局少女小説なのかな,などと自分でもわけのわからない物を書いております.
たまに雑誌でホラー短編を書けと言われるのですが,なんでホラーを書けと言われるのかよくわかりません.活字になってないけど,デビューのきっかけになった投稿小説(中世ロマンだったはずなのになあ)の中にちょっと不気味なシーンがあって,死体が出てきたんですが,どうもそれがホラーっぽかったようです.
私は生き物が好きなので,死体にわいた**(皆さんの食欲が落ちるといけないので伏せ字)の描写に妙に熱が入ってしまったんです.ああいうものってよく見ると,結局カブトムシやクワガタの幼虫と一緒で内臓が透けて見えるんですよね.鼓動がその動きによってわかるんですよ.それで,ああ,こいつら,ちゃんと生きてるじゃないかって感動した記憶があって…….でもそれは生物への愛着であって,別に読者を気味悪がらせようと思って書いたわけじゃなかったのですが(ちなみに私はクワガタを6年にわたって飼育し,繁殖にも成功したことがあります.クワガタはカブトムシより成虫になるのに年月がかかるのです……そんなことはどうでもいいのですが). 
 そんなわけで,霊感もないのに死霊を描くのが大変なのです.でもリアルには書きたい.それでどうするかというと,死体をリアルに書いてしまうんです.書棚にはそれ関係のアヤシイ本が並んでいて,死亡時刻から何時間たってるこのシーンは死斑がどうなってるか,眼球の色はどうなってるか,硬直の様子はどうか……ということを調べながら書くので,きっと読者が読んで思うより怖い思いをしながら書いています.夜中にそういった写真資料を見るのはとても気味が悪いです,ほんとに.
 読者の人やお友達から,某大学で「拷問展」をやっているからぜひ見てください,などと言われてしまうし(もちろん見ましたが).

 ところで昨年末,パソコンとスキャナとプリンタを駆使してファンに出す年賀状を作ろうとしました.どうせなら宣伝も兼ねて自分の著作のタイトルを載せようと思ったんですが,「死者の告白」だの「剣を抱く……」だの,お正月にそりゃあないぜ,というようなタイトルばっかり(泣).今年こそはひとつ縁起のいいタイトルの小説を書こうと心に誓いました(でもきっと無理であろう).

 いつかどこかで吉田の小説を見かけた方,あるいは読んでくださった方,こんな怖い思いをして書いている吉田に励ましのお便りをください.心霊写真はいらないですけどね!

 (1998.7.7/季刊『QuickSand』1998年春号 Vol.18に掲載 )