「試練と憧れ」紅葉の早月尾根から剣岳
まさに試練と憧れを地で行くような山行であった。それは、高低差2200mの急坂を二日に渡って登り、山頂をピストンした後一気に麓(馬場島)まで下山するという計画である。このスケールの大きな尾根は、南は立山川の向こうに大日連峰、北側に小窓尾根、北方稜線の山々を眺めながら一本調子の登りが山頂まで続き、他のコースと比べものにならない体力が要求される。
しかもコースの途中に水場もない(早月小屋は有)のでテント泊の今回の場合、自ずと荷物の重量も増すというもの。
それだけに、訪れる人も室堂から比べれば比較にならない程少なく、静かな山登りが味わえるというものである。
そんな試練に対して満足度は120%であった。勿論素晴らしい好天に恵まれ、色鮮やかな紅葉に疲れを癒して貰い、山頂からの360度、いや720度の大展望に大満喫。遠く室堂に観光バスが連なり登るさまが見え、あの周辺は大混雑しているだろうな〜と考えるだけで楽しくなり、厳しかったけどこの早月尾根からの登頂をして良かった!でも、もうこのコースから登る事はないだろうと思えば思うほど感動がジワジワ湧いてくるのであった。良きパートナーに恵まれた事が何よりも感謝したい。
                                               (写真は一部皆さんから拝借しましたm(__)m)
【山  名】北アルプス、早月尾根から剣岳(2998m)
【日  時】2002年10月11日夜発12日〜13日
【メンバー】薫さん、DOPPOさん、BAKUさん、ごましおさん、森の音
共同装備】4人用テント、2人用テント、12日夕食、13日朝食
【個人装備】食料、飲み物、シュラフ、マット等山行必要品
【コース】
10月12日 快晴、雲ひとつ無し
 登山口 8:09 〜 展望台8:39、45 〜 標高1100m付近9:13 〜
 標高1400付近9:30、40 〜 標高1650m付近 10:13、34 〜
 標高1800m付近 11:06、15 〜 避難小屋跡12:3、12:15 〜
 早月小屋手前12:50 、13:20 〜 テン場13:30
10月13日 快晴
 テン場 6:26 〜 2400地点6:57、7:02 〜標高2600地点 7:20 〜
 標高2800地点8:05、10 〜剣岳山頂 8:56、9:42 〜 標高2600地点
 10:50、11:02 〜 2400地点 11:18 〜 テン場 11:38、12:40 〜
 避難小屋跡 13:06、14 〜 標高1600地点 13:55、14:00 〜
 標高1300地点 14:27 〜 展望台 15:02、10 〜登山口 15:27


画像をクリックして拡大して下さい。
そこにまた別の写真が内蔵されています。
10月11日(金)夜発
9時に待ち合わせ後、近くのコンビニで各自明日朝の食料を買出し。共同食は事前に薫さんが用意済み。そのまま一路名神高速、北陸自動車道を渋滞無く快調に走り立山ICにて下車。そしてR46に沿って約30分程で馬場島に到着。1時30分であった。先客の車が10台程停まっていたが、深夜の為その数解らず。早速仮眠のためテントを張り暫く宴会。満点の星空にオリオン座が輝く。3時まで小宴会をした後すぐシュラフに潜り込む。さして寒くもなく早月川の心地よい流れの音にすぐ寝入ってしまった。

10月12日(土)
合同慰霊碑。クリックで周辺写真あり。
翌朝6時30分に目が醒め朝の身支度に入る。綺麗なキャンプ地の様子が初めて明らかになり、軽い朝食を済ませる。
途中水場もないから、各自2リッター位の水を補給。結構な重さになった。約20キロくらいだろうか。ここで全員同じM社のザックであった事にビックリ。あれま〜(^-^)
雲一つない快晴、さあ〜出発だ。8時であった。
剣登山口の前に「試練と憧れ」の慰霊碑が建っていた。山男達への賛歌でもある。この剣岳は、過去から多くの山男達のメッカであり、それだけに厳しいけど楽しい処でもあると私なりに解釈した。勿論、厳冬期の剣にはこの尾根を使う事が多いと聞く。
暫くその近くで撮影会モードであった。
最初は緩やかな登りが始まるが、そのうち段々と急坂に入ってきた。私を除いて皆健脚揃い。ピッチも早い。
段々と私との間隔が開きはじめる。途中待ってくれていたが、そこで皆さんに「マイペースで登らせて頂くのでお先にどうぞ」とお願いした。彼らも快く私の気持ちを汲んでくれ、約30〜40分で1回の休息のペースで私の到着を待ってくれた。有難い。
大杉。クリックで周辺写真あり
登る途中、2年前の南アルプス「笊ヶ岳」と同じように思えた。荷物といい登る傾斜といい、しかも高低差2200mという長さも。
いや、単にそれだけではない、歳がいって馬力が無くなったのだろう(^ ^ゞ ポリポリ 事実以前だと引き離される事はなかった。
ごましおさんの後ろ姿を見ても、キック力は凄い。しかも約25キロのザックを担いで。若いっていいな〜・・・・。
途中樹齢1000年は下らないかと思われる大杉が鎮座し、1000m事に標識が立っている。段々と高度を上げていくと色鮮やかに色づいたダケカンバやナナカマドの紅葉が目の前に見えてきた。この時ばかりは疲れも吹っ飛んだ。1921m三角点付近で右手にようやく大日岳も見えてきた。
あと300m。真夏の早月尾根はさぞかし暑くて厳しいだろうな。風が涼しくて気持ちいいが、それでも汗がほとばしる。
やっと、早月小屋が真下に見えるところまできた。左に小窓尾根の荒々しい岩壁に圧倒され、小屋の廻りに色づく紅葉。
早月小屋。クリックで周辺写真あり
そして、右に大日連山と立山連峰の山々が。でも、何てったって正面に頭上高く聳える剣岳の頭だけがポッンと見えた。
暫くこのポイントで撮影会モード。小屋到着13:30。

小屋近くのキャンプ地にテント設置。一人500円。早速ビールで乾杯。DOPPOさんと薫さんが小屋で500ml缶700円で購入。
ごましおさんが担ぎ上げたビールと冷えの具合は変わらなかった。外気も結構下がっていたが、小屋の冷蔵庫?に電気が入っていなかったのでは?発電機は廻っていたが・・。二人ともがっかりした様子であった。(^-^)
テント場の景色は最高だった。夕焼けに真っ赤に色なした小窓尾根。それに映えるような真っ赤なナナカマドの実。
どれをとっても一級芸術品であった。こんな迫力ある景色は今まで見た事がない。暫く全員が見とれ、いつまでも眺め続けていた。その後、食事と宴会。色々四方山話に花を咲かせ、何時の間にかDOPPOさんとBAKUさんが居眠り状態に。更に、隣のテントから「静かにして下さい」とクレームが入り、そこでお開き。6時であった。
テント前から見た夜景。周辺写真多数あり
こんな早くから寝れないよ〜と思いつつ寝袋に入るとすぐ寝入ってしまった。ただ途中何回か目が醒めたが時間分からず。
DOPPOさんと同室だったが、何と恐ろしい体験を真夜中のトイレでしたと翌朝聞く。それは・・・・・、
『4時、目が覚めた。辺りはまだ暗い、ヘッデンを付けテントから少し離れたトイレに入り、三つ並んだ真ん中の扉から入った。誰も居ない。
用を足しているとき、誰も入ってきた様子が無いにも拘わらず、突然隣で用を足す大きな音が約30秒間。そこからまた音は途絶えた。息を凝らしじっと耳を澄まして様子をうかがう。そのあと物音一つ聞こえてこない。心臓が高鳴ってくる、しかし誰も出て行った様子はない。このままジットしているわけにもゆかず、私は思い切ってドアを開けて出た。音のしていた隣のドアは半開き状態。もう一度思い切ってヘッデンで中を覗いたが誰も居なかった。
こんな話、誰かに聞いたことはあったが・・・・・・まさか自分がこんな不思議な体験をするとは!!!』と。 (DOPPOさん記)

10月13日(日)
真下に早月小屋と馬場島方面
5時30分起床。薫さんがラーメン鍋を作ってくれた。色々食材を揃え担ぎ上げて貰い、申し訳ない。昨日全員で担ぎ上げた水も本日分を残して全て使いきる。今日も天気は快晴だ。無風で気温は5℃弱。山頂ピストンするため必要な物のみサブザックに移し替え、その他はテントにデポ。DOPPOさんがサブザック忘れたから私のザックに入れさせてと言ってザックを担いでくれた。私は何もなくなりえらい楽をさせて貰った。有難うね〜m(^^)m     全く手ぶらだとバランス悪いから1本ストックを持参したが(^ ^ゞ ポリポリ
6時30分出発。すでに明るくヘッ電は不要であった。
小屋を出るとすぐオオシラビソの樹林帯に入る。ここを抜けるとひねくれたダケカンバやナナカマドの潅木帯になり、尾根はクランク状に曲がっていく。後ろを振り返ると真下に早月小屋が見える。かなり高度を稼いだと実感できる。このあたりからハイマツに変わる。DOPPOさんはストックが邪魔だというので、このハイマツに隠していった。毛勝谷の源流を過ぎると2600m峰に立つ。足元から池ノ谷右俣上部の岩壁がそぎ落ち、剣岳西面の岩場が圧倒的なスケールで展開してきた。BAKUさんの目がランランと輝いてきたように見えた。何せ彼は、今年槍ヶ岳・北鎌を登攀した腕前で、普段からも大峰や台高の沢を主体に活躍されている。次回は北岳のバットレスかこの小窓尾根の岩壁か?そう言えば、昨日小窓尾根岩壁をシゲシゲ眺めていたな〜。
山頂からの展望。クリックで写真あり
今年に入り4回積雪があったらしい。岩場に比較的新しい雪が付着しており、滑らぬよう慎重に登る。要所要所に鎖もついているから安心だ。カニのハサミと思われる大岩の登りでは、池ノ谷側に長い鎖場があり、これを過ぎると難所は終わる。
幸いこのコースは人も少なく渋滞による待ち時間が殆どなかった。反対側の室道からきたコースのカニのタテバイ、ヨコバイでは渋滞しているのだろうな〜。極めてスムーズに山頂に立つ事が出来た。8時56分。雲一つない空に光の強さが痛いくらい。遠く山々の峰が霞みもなく鮮明に見える大パノラマが展望できた。山頂には多くの人で一杯。皆大満足した顔顔。多分このような大展望に遭遇できるなんて1年でも数回しかないと思う。見える山の名前を挙げたら切りがないくらい。携帯電話も通じたので自宅に山頂コールをしてみた。息子が出た。愛想ない声が聞こえ「お母さんは?」「出掛けた」「今、剣山頂」「あ、そ〜」
何と味気ない返事。もう少し感動してくれよな〜、ったく(ー_ー)
雪の斜面を慎重に下る。クリックで拡大
山頂で約40分、時の経つのも忘れるくらいゆっくりとして下山する。下りの時は、岩に付着した雪に滑らぬよう少し緊張した。
出来るだけ鎖を使って慎重に。無事早月尾根キャンプ地に戻りテント撤収。
12時40分、テン場を出発。
さあ〜、これから下りの長い長〜い道程がはじまるぞ〜。ザックも少しは軽くなったといえ疲れた足にはこたえる重さだ。
相変わらず後塵を拝した。膝がガクガクしだしてきた。ダブルストックで何とか体制を保つ。少し冷やりとした場面もあった。
幸いダブルだったから事無きを得た。昨年の苦い経験から下りにはダブルを使う。しかし、足のマメ対策が遅れたが・・・。
痛む足を引きずるようにやっとこさ馬場島到着。15時35分。全員、硬い握手で山の無事を祝福した。有難う御座います!

この後、上市町の湯神子温泉で汗を流す。温泉宿で一般客も入れ、大きな綺麗な温泉であった。500円。
ここで、今回の一括清算を行い、何と一人6300円であった。大阪から単独で来ると3万はかかるだろう。5人という誠に効率の良い人数な事よ(^-^)
そして、腹が減ったので近くの中華店で飯を食べ、一路大阪まで無事帰宅する。

楽しい山行、有難う御座いました。良きメンバーに感謝、感謝の気持ちで一杯です。
(PS)
後日談だが、二日後ひどい筋肉痛に悩まされ回復に4〜5日要した。皆も同じだったと聞き少し安心した(^-^)
若い時は翌日なるが、歳いくと二日後になる。反応が鈍くなるのだな〜(^ ^ゞ ポリポリ
   
                                                      (長文になりゴメンナサイm(__)m)


            ホームに戻る                              山行記録に行く