祖父・相良寿郎

 猪木の祖父(母方)の名は相良寿郎(さがらじゆろう)、幼くして父を亡くした猪木にとって父親代わりともいえる人物で、猪木の人生に最も大きな影響を与えた。たいへんな資産家で、金山を所有していたという。
 様々な事業に手をだし米相場で莫大な財産を得たが、その後は失敗の連続で、石炭商も石炭そのものが時代遅れとなっていたためうまくいかなかった。
 ブラジル移住を言い出したのも祖父であった。事業の失敗で財産も底をつき、日本を離れて、新天地を求めたのだろう。
 ところが、そのブラジルへの航海の途中で祖父が亡くなった。パナマ運河を抜けて最初の寄港地クリストバルに着いたとき青いバナナを買った。ベネズエラの沖で、そのバナナのシブにあたり、腸閉塞を起こしたことが死因であった。享年78歳。
 一家が最も頼りにしていた祖父の死により、猪木たちは見知らぬ土地で、大きな不安を抱えたままの新生活を余儀なくされた。