グリーンベンチ


オフィス・ランカダイ『GREEN BENCH』☆☆☆

 「三枝建起」の名前に引かれて、渋谷のジァンジァンへ行ってきました。昔、NHKで、唐十郎作、中島みゆき音楽の『安寿子の靴』を見せられた時には脳天をぶん殴られたかのような衝撃を受けたのを覚えています。以来、独特の映像美に魅せられ三枝さんのドラマを待ち侘びる日々が始まったのですが『匂いガラス』『戻り橋』など、感情のうねりをドラマ化する事にかけて稀有の才能を持つ三枝さんのドラマに裏切られた事はありませんでした。 映像作家が、カメラという武器を離れて舞台を演出するのは、いろいろな困難があるだろうと思いますが、三枝さんは感情の演出に優れているので、どちらかといえば舞台向きの演出家であると思われ、期待して出かけたわけです‥‥。

三枝さんのドラマを一口で云うと、現実と隣り合わせにある「異世界」=劇的空間‥‥そこは情念が全てを支配する世界‥‥が次第に現実を浸蝕(嘲弄)して来て、主人公は次第にその中に巻き込まれて行く‥‥、というパターンがありますが、今回は、その巻き込まれて行く主人公(観客の感情移入の対象)ともいうべき存在が見当たらず、その分、的が絞り切れてないかな、という印象もありました。

で、結論からいって、面白かったかどうか‥‥。う〜〜ん。分からない(^_^;) ごめんなさい。言い切る自信がない(_ _;) あまりにも、三枝さんの映像世界に惚れ込んでいるので、テレビだったらもっとよくなっていたろうなぁ〜と思ってしまふ‥‥。(あぁ、他の人の客観的な意見を聞きたい(^_^;)

でも、面白くないわけではない。異世界の構築には成功していると思うし、役者のテンションもかなりのレベルであろう。鰐淵さんも良かったと思う。(役柄の性格からいって、緑魔子さんで見たい気もしますが‥‥)エロティチシズム(ふ、古い(^^;))にも溢れていたし‥‥。そして、神野三鈴さん。趣味ですね(^_^;)。『安寿子の靴』の小林麻美似の女の子。90度違う角度から彼女を見るために、もう一度ジァンジァンへ行ってもいい(^_^;)。演技もしっかりしていたし、どういう経歴の女の子なんだろうか‥‥。女優二人に比べると、男優はちと弱い。でもしょうがないですね。というわけで、今回の感想は、

女の中にはもう一人の女がいる。
演劇は女に向いているのかもしれない‥‥。

ということになってしまった‥‥。う〜〜む、RESになってないなぁ‥‥。

オフィス・ランカダイ『GREEN BENCH』☆☆☆
原作:柳美里  演出:三枝建起
出演:鰐淵晴子、神野三鈴、西原純、井上智之
会場:渋谷ジァン・ジァン
期間:1992/8/5 〜 8/9
観劇:8/7 PM7:00(満席)

男子走り幅跳び決勝を見ながらの、時かけ、でした。



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