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県学労ニュース286号     2003/7/1発行
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どこまで切り下げれば済むんですか?
昇給停止年齢と退職金支給割合調整率

 県教育委員会は6月26日、組合に対して上記2つの切り下げ提示を提示してきました。

 昇給停止年齢の引き下げについては、昨年7月に提示してきた案よりは2年ほど繰り下げてきましたが、平成20年までには国並みに55歳にしたいというものでした。 これで前回の昇給停止年齢改正の経過措置は解消すると考えられたのでしょう。
 
 教育委員会の言い分では、現在昇給停止年齢の55歳への引き下げは平成11年に国が実施しているのを始め、26都道府県がすでに実施を決めているので、愛知県もそろそろ決めておかなければ批判の矢面に立たされてしまうので、是非実施したいということでした。

 しかし実施を決めた26都道府県の経過措置はどうなっているのか尋ねても明確な回答はありませんでした。

 人事院勧告が政治的圧力によって調査母体を変更してまでマイナス勧告を出す時代です。あれもこれもベースダウンされるのは承服できません。さらに平成20年までの取り扱いについて、多くの問題が残されているので、更に検討しなければならないと考えます。拙速な結論づけをさけてほしいものです。

 もう一つ、退職手当支給割合の調整率の変更についてですが、国が6月に国会を通し、9月から実施するので、6月議会では提案できなかった県としては今度の9月議会に上程したいということでした。総務省からは遅くとも今年度中に変更するよう指導があったそうです。ですから周知期間を考えて、来年1月から移行したいと提案してきました。

 県の試算によれば、行政職(一)8級56号で今年度定年退職すると81万8千円ダウン、来年以降は163万6千円のダウンとなるらしい。現在25年以上勤務し、定年退職した場合、62.7ヶ月分、それを平成16年中に退職すると60.99ヶ月、その後は59.28ヶ月ということになる。
 定期昇給を止められ、人事委勧告で本給を下げられ、最後の退職金まで引き下げられてしまっては生涯設計はむちゃくちゃです。今年度退職者はなおさらでしょう。実施時期を延ばすなど要求していきます。
 
 
1.昇給停止年齢(一般職)現業職は2歳プラス
 
年度
15年度
16年度
17年度
18年度
19年度
20年度以降
現行
59歳
58歳
58歳
57歳
57歳
57歳
改正後
59歳
58歳
58歳
57歳
56歳
55歳

2.退職手当支給割合調整率
 
現行(平成15年12月31日まで) 110/100
平成16年1月1日から12月31日まで 107/100
平成17年1月1日から 104/100


 

具体的な理由はない!
顔 写 真 収 集

 26日の交渉について、もう少し詳しく報告します。

 今回の収集は、履歴システムの構築により、採用時に提出した顔写真は廃棄する。その替わりにデジタル写真をシステムにアップしたいということでした。 「何に使うか」と聞いたところ、「人事異動に使う」という。「顔を見て人事を決めるということか」と尋ねると、「そうではない。学歴や履歴、勤務評定、本人申告などとともに、顔写真を見てその者の人格を総合的に判断する」という。「人事はその者の職歴や研修歴などで判断されるべきで、顔で判断すべきでないのではないか」と更に尋ねると、「顔で判断するわけではない。履歴には学歴も書かれているが、私なんかはその方がいらないと思う」などとわからないことを言い出す。

 結局は「人事異動で、他部局から写真を請求されたときにないとは言えない」という県の人事課が決めたことに逆らえないというだけの理由もない収集理由でした。また履歴カードさえ作成されていない用務員等の顔写真収集は「行政職だからついでに」ぐらいな感じでした。

 「顔写真をとろうとしても、顔はその個人についているものだから、本人がいやだといえば、撮影できないでしょう。各人の意志に任せればどうですか」と言ってみたが、「総務課長名で文書を出した以上、全員の写真を集めようというのが総務課の姿勢だ」と言う。「拒否する者がでたらどうするのか」と言ったところ、「校長先生に再度提出するよう働きかけてもらう」とのことでした。

 今回の交渉をして感じたことは、顔写真の提出依頼は、単にシステム上顔写真の項を作ったので、集めたいとする開発者の思いつきでしかないということでした。

 県学労としては、顔写真を撮影するということは肖像権の侵害に当たるので、撤回するよう強く申し入れました。
 
 

「豊かさの条件」  暉峻淑子   岩波新書 740円
   
 以前バブル絶頂期に「豊かさとは何か」を書いた著者が今度は不況下であえぐ現在、生きる上での豊かさとは何か、人間らしく生きることとは何なのかを書いている。

 不況で増大するホームレスの数、学校を卒業しても就職できないという状況、そして労働者は賃金切り下げと超長時間労働を強いられている。私たち公務員の世界も「民間に比べれば」という言葉でどんどん労働条件が悪化させられてきている。

 そして国は一部のエリート校にはふんだんに金を使い、その他の学校には金は出さずに子どもたちに愛国心や公共の精神、道徳心を押しつけようとしている。小さなうちから子どもたちは競争を強いられ、差別、選別の結果、「できない子」は切り捨てられていく。学校では助け合いや共感能力、個性を認め合うこと、地球市民としての責任は軽視されている。

 そのような中で著者はNGO活動の中で変わっていく学生たちの姿や、NGO活動を通じて多くの市民や公務員が助け合いの精神を発揮していく姿を紹介して、競争と戦いの社会を助け合いの社会にしていくことが必要だと言っている。

 有事法制の成立、力による支配をごり押しするアメリカに無条件に追従する日本、目論まれている労働基準法の改悪や教育基本法の改悪等々、国民を豊かにする方向とは全く逆の方向に進もうとしている最近の動きの中で、是非一読をおすすめする本である。(た)

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