県学労ニュース231号     2001/3/21発行

センター試験激励に10数名
     教員が会場に出かけて何するの?

  昨年は県下全校に対して大学入試センター試験の応援に行った職員の調査を行いましたが、今年は昨年度実績で多くの職員が応援に行った学校10校に対象を絞り、行政文書開示請求を行いました。

 結果は下記の通りです。センター試験会場が2つに分かれた一宮高校、豊田西高校の出張人数が多くなっています。五条、知立東も15人以上の職員を出張させています。また、津島高校、一宮西高校では日曜日にも出張を命じており、その代わりに代
休を与えていることは本末転倒ではないかと思われます。また、他の学校が日曜日に激励に行っていないということではなく、私費で費用負担をして、代休措置をとらないということも考えられます。

 センター試験応援の復命書を見てみると、用務の内容は出席状況の確認、健康状態の把握、諸注意、激励というもので、中には不測の事態への対応というものまでありました。センター試験の不測の事態に対して、高校側が現地で対応しなければならないことがあるのでしょうか。

 また、いくつかの学校では校長、教頭までもが率先してこの激励出張に参加しています。

 さて、昨年いくつかの学校を回ってセンター試験の応援に県費旅費を使って出張で行くのはおかしいと指摘しましたが、生徒のことを思う教員の親心だという学校がほとんどでした。そもそも、大学受験というのは高校の学校行事ではなく、(もちろん大学に入ることが高校の教育目的ではありません。)高校教育で学んだことをもとに各個人がひとつの選択肢として大学への進学を選ぶものです。高校では大学受験のための調査書作成や大学選択の相談にのることもあります。しかし、生徒一人一人が大学を受験するということは、その取り扱いが公欠扱いであることからも明らかなように、学校行事、あるいはそれに準ずるものではありません。生徒は個人として大学受験に行くのです。

 職業高校で言えば、会社の入社試験、面接試験に行くのと同じです。そのようなときに職員が大挙して試験会場に押し掛けて、出欠の確認をしたり、健康状態を確認したり、注意を与えたりするということは世間の常識から著しく逸脱したものです。しかもそれを県費旅費を使って出張で行くというに至っては県民感情を無視した県費の無駄遣い以外の何もでもありません。

 また、これらの学校では多くの3年生の担任、副担任、進路指導の教員が公欠で休んだ生徒の応援に行っている間、残っている生徒の授業はどうなっているのでしょう。休んだ生徒のために教員が出張し、出校してきた生徒は自習させているというのでは、生徒の授業を受ける権利はどうなるんでしょう。本末転倒です。

 そもそも、18歳にもなった生徒、しかも大学に進学しようという生徒に試験当日、会場で出席確認をしたり、健康状態の確認をしたり、注意を与えたりする必要性があるでしょうか。中学生でさえ高校受験に来るとき、生徒だけで受験に来てちゃんと試験を受けて帰れるというのに。過保護の保護者が心配のあまり子どもの受験についてくるというのなら笑い話ですまされるかもしれませんが、公務として校長、教頭はじめ3年の担任全てが過保護の保護者と同様のことを行うというのは問題です。

 昨年いくつかの学校を回ってこのような県費の無駄遣いを止めるように言ってきましたが、一向に改善されていません。

 また、県外の大学へも生徒の激励のために出張している学校があり、さすがに気が引けたらしく、大学視察を用務に付け加えていましたが、入試の当日に大学視察に行く非常識さには開いた口がふさがりません。今年も県外大学への激励出張、非常識な大学視察については該当校に対して行政文書の開示請求を行っていきます。
                                     
                                                                                        

                                                             

書評  地方自治体壊滅 NTT出版 神野直彦著 950円

 3月2日、財政課の職員から財政説明を聞いたが、いまいち釈然としたものが残った。

 富裕県と言われていた愛知県がなぜ財政破綻を起こしてしまったのか。なぜ県債がこれほどまでに膨らんでしまったのか。将来的に改善される見込みはあるのか。

 そんな疑問に答えてくれる本があった。表記の「地方自治体壊滅」である。

 第1章では、地方自治体が陥っている惨状を述べられ、第2章では富裕県であるはずの東京、神奈川、愛知、大阪が財政破綻を起こす理由について語り、第3章では東京をはじめとする大都市圏の自治体の破綻は、3年ぐらいすれば景気が回復すると考え、一九九五年頃回復基調にあると勘違いして、県債などを発行して景気浮揚策として公共投資を推し進めた認識間違いによると断じている。
そして第4章では、財政再建団体とは何なのか、自治体運営についてどうなるのかを語り、第5章では「財政再建団体」にならないためにはどうしたらよいのかのヒントを書いている。そして、第6章で歳入歳出を国の支配から開放することが地方自治体再生への道だと提言をしている。

 そのすべてが正しいのかどうかはわからないが、財政を財政課任せにせず、職員一人一人が理解しなければ、財政再建はおぼつかない。

 素人が読んでも読みやすく書いてあるので、考える土台として是非読んでほしい1冊である。

                                                       
   
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