愛知県職員措置請求書
                                2000年5月24日
 愛知県監査委員 殿
                請求者 名古屋市千種区若水2丁目3-17
                    サンマンション千種公園A-208
                                     田 口 龍 司   地方公務員

                    岡崎市羽根町鰻池97-2
                    渡 辺 研 治   地方公務員

                    名古屋市名東区平和が丘2-169
                    アーバンドエル平和が丘102
                    国 枝 利 満   地方公務員
                    
 地方自治法第242条の規定に基づき、下記のとおり住民監査請求をします。
                    記
1 請求すべき事柄
 愛知県立豊田西高等学校において企画、実行された平成11年度学習合宿期間中に、
校長伊藤稔、教頭安藤茂、教頭祖父江義信、教諭宮本尚道の4名が日帰りで合宿先の
岐阜県大野郡荘川村まで学習合宿連絡及び指導の名目で出張したことはその目的、往
復の時間、人数の多さを考えると不必要な出張であるので、上記4名の職員に当該旅
費の返還を求めるものである。
 仮に、当該出張が必要な出張であったとしても現地までの往復の所要時間及び人数
を考えあわせると、自家用車1台に4人が同乗して現地まで往復していると考えられ、
旅費条例にもとづいた正当な旅費との差額の返還を請求するものである。

2 請求する理由
 1999年8月21日から8月25日までの4泊5日の日程で愛知県立豊田西高等
学校太田正樹始め16名は第3学年生徒258名を引率して、岐阜県大野郡荘川村に
おいて学習合宿を行った(一号証)。
 公文書公開請求により入手した引率者の旅費請求書(二号証)によると、全日程参
加した職員は太田正樹始め10名であり、8月21日から23日まで3日間参加した
職員は白井剛輝始め3名、8月23日から25日までの3日間参加した職員は小木曽
健治始め3名であることが判明した。また8月22日に日帰りで校長伊藤稔、教頭安
藤茂、教頭祖父江義信、教諭宮本尚道の4名が合宿先へ出張していることが明らかに
なった。
 引率者16名については学習合宿の指導監督に従事しているが、校長伊藤稔始め4
名については旅行復命書(三号証)によると「学習合宿連絡及び指導」としか復命さ
れておらず、「平成11年度学習合宿」という冊子(一号証)にも当該4名の職員に
よる指導については記載されていない。連絡事項については電話、ファックスでも用
は済むと考えられ、4人もの職員が出張する必要はない。校長伊藤稔を始めとする4
名の職員が合宿先の岐阜県大野郡荘川村「オハヨーサンホテル」に到着し、出発する
までのわずかな時間に有効な指導があったとは考えられない。
 次に4名の職員が勤務する愛知県立豊田西高等学校から学習合宿を行っている岐阜
県大野郡荘川村までは貸し切りバスを利用しても片道3時間半もかかり、公共交通機
関を利用して行くとすれば更に長い時間がかかるものと思われる。仮に現地での正当
な用務があったとすれば、とても公共交通機関を利用して往復したとは考えられない。
自家用車1台に乗れる4人という人数、管理職3人と教諭1名という人員構成から見
て、宮本尚道の運転する自家用車に管理職3人が同乗して行ったと考えられる。自家
用車で出張する場合は、事前に自家用車使用承認簿に必要事項を記入し校長の承認を
受けなければならないことになっているが、その手続きはとられていない。同乗者に
ついては、運賃は支給されず、日当のみが支給されることとなっているが、公共交通
機関を利用した額が支払われている。


                監査追加理由書
                          2000年6月5日
                            田口龍司
1、旅行目的の正当性について
 本件学習合宿先への校長伊藤稔、教頭安藤茂、教頭祖父江義信、教諭宮本尚道の4
名に対する旅行命令については、平成11年7月30日に4名全員になされており、
用務は全員「学習合宿視察」となっている。(四号証)ちなみに「視察」とは小学館
大辞泉によれば「現地・現場に行き、その実際のようすを見極めること。」である。
しかし、豊田西高校では1997年から岐阜県荘川村の「オハヨーサンホテル」で第
3学年の夏季学習合宿を実施しており、昨年(1999年)はすでに3年目である。
校長、教頭2名と教諭1名がわざわざ日帰りでちょっと見てくるだけの出張をあらか
じめ計画すること自体が問題である。学習合宿の視察という目的で行くのであれば、
全期間あるいは5日間のうち少なくとも2〜3日間は現地にとどまり、生徒の生活を
見ることが必要である。更に、どうして4人もの職員が視察に行かなければならない
のか。その理由が明らかではない。もし仮に、校長伊藤稔、教頭安藤茂、教頭祖父江
義信、教諭宮本尚道の4名が行かなければならない理由があったとすれば、各個人毎
にその理由を明らかにされたい。
 また、旅行後9月1日に復命記事として「学習合宿連絡及び指導」としか書かれて
いない復命書が教頭安藤茂、教頭祖父江義信、教諭宮本尚道の連名で提出されている。
校長伊藤稔にあっては復命書すら作成しておらず、当該出張についての報告義務を怠
っている。8月21日から23日まで3日間出張した教諭白井剛輝始め3名は8月2
4日に、また8月23日から25日までの3日間出張した教諭小木曽健治始め3名は
8月31日に、そして全日程出張した教諭太田正樹始め10名は8月30日に復命書
を提出している。わざわざ8月22日に日帰りで「学習合宿連絡及び指導」のために
出張しておきながら、その復命が生徒全員が帰ってきた6日後(当該出張の10日後)
になされていたというのは、校長伊藤稔、教頭安藤茂、教頭祖父江義信、教諭宮本尚
道の4名の出張が不必要であった事を裏付ける一つの証拠である。また、校長伊藤稔
にあっては復命書すら作成しておらず、このことも当該出張が不必要であったことを
裏付けるものである。
 復命書に記載された「学習合宿連絡及び指導」という復命記事では、具体的にどの
ような連絡、指導をしたのかが明らかではなく、復命記事の記載について瑕疵がある
と言わざるをえない。公務員のカラ出張問題がマスコミ等で報道されたことは記憶に
新しく、県外旅行については出張後速やかに復命し、用務遂行の結果・成果等を報告
する義務があると愛知県教育委員会は県立学校を指導しているところである(五号証)。
にもかかわらず、復命書の記載がこのように簡単にしか記載されていないというのは、
本件出張については、記載できるような連絡、指導がなかったことを裏付けるもう一
つの証拠である。
 また、もし仮に連絡、指導があったとしても、連絡については電話やファックスで
用が済んだのではないか。指導についても現地にいるわずかな時間にどのような有効
な指導がなされたのか疑問である。生徒はスケジュールに従って学習しており、その
合間をぬって4名がそろって、あるいは個別に指導できたのか、はなはだ疑問である。
もし本当に指導をしたと主張するのであれば、いつ(時間帯)、誰が、どこで、どの
ような指導をしたのか、しかもその指導はわざわざ日帰りで往復8時間もかけて行っ
てまで行わなければならない指導内容であったのかを明らかにされたい。

2、自家用車出張について
 校長伊藤稔、教頭安藤茂、教頭祖父江義信、教諭宮本尚道の4名の出張が仮に正当
なものであったとしても、現地で一定時間滞在し、「連絡及び指導」を行うためには
公共交通機関を利用して往復したとは考えられない。もし公共交通機関を利用して往
復したと主張するのであれば、学校(あるいは自宅)を何時に出発し、どのような経
路で岐阜県大野郡荘川村「オハヨーサンホテル」まで行ったのか。現地に何時に到着
し、用務を済ませた後、何時に現地を出発し、どのような経路で学校(または自宅)
に何時に帰ってきたのかを明らかにされたい。
 

追加提出した証拠
四号証 校長伊藤稔、教頭安藤茂、教頭祖父江義信、教諭宮本尚道の4名の
    当該出張にかかる旅行命令簿
五号証 「県外出張に関するガイドラインについて」という愛知県教育委員
    会の通知
六号証 当該学習合宿にかかる復命書(校長伊藤稔、教頭安藤茂、教頭祖父
    江義信、教諭宮本尚道の4名以外の職員のもの)
七号証 「自家用車の公務使用に関する取扱要領の制定について」
八号証 「自家用車の公務使用に関する取扱要領の留意事項について」


                追加意見書                                   2000.6.5
                                                                                              措置請求者 渡邉研治
    私としては、学習合宿そのものが教育活動といえないので、出張命令自体間違ってい
ると思っています。
 しかし、平成8年8月9日付8監査第45号で畔柳、宗本、大竹、飯田の4名の愛知
県監査委員が連名で示した結果によれば、『(2)判断ア(イ)教育活動としての位置づ
けー学校行事の一つである旅行・集団宿泊行事については、「学習合宿は、平素と異な
る生活環境にあって、見聞を広め、自然や文化などに親しむととも、集団生活の在り方
や公衆道徳などについての望ましい体験を積むことができるように活動を行うこと」と
規定していることを踏まえ、検討すれば、前期事実認定のとおり、学習合宿は、生徒
及び保護者の要望を踏まえ、希望者を対象とし、長期休業中に、平素と異なる生活環境
にあって、集団生活の在り方等についての望ましい体験を積むとともに、学習習慣を定
着させることを目的とすることから、学習指導要領に規定する旅行・集団宿泊的行事に
準ずる性格を有すると認められる』として、「両校における学習合宿は、教育課程外の
教育活動に当たると解するのが相当と判断されました。
 そう判断された監査委員の意見からしても、少なくとも学習合宿は「野外活動の指導
とこれに関する事故防止について(愛知県例規集2212ページ)6野外活動」の指導基準に
合わせて実施されなければいけません。そうした理解の上で、豊田西高等学校において
も実施2週間前には実施計画書が提出されているはずです。
 然るに、その基準を超えて校長ら4名がさらに参加するということは県教育委員会の
指導からも逸脱する行為であることが明白です。よって、この出張行為は不当、不要な
出張と言わざるを得ません。


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