過熱する受験競争を更にあおり、
    予備校化する高校教育にメスを!
県学労は大学受験競争をあおり、予備校まがいの缶詰め、長時間学習を県立高校で行うの
はおかしいと、愛知県教委高等学校教育課にその縮小、廃止を各県立学校に指導するよう
要求してきました。しかし半年間も検討中だと回答を引き延ばした挙げ句、「学習合宿は
各学校長の判断でやっていることであり、教育委員会がどうこう言うつもりはない。個人
的には学習合宿はいいことだと思う」という回答にあきれ、住民監査請求を行いその不当
性を追及することにしました。

***************************************************************************
              愛知県職員措置請求書
                                1996年6月10日
 愛知県教育委員会殿
                   請求者 名古屋市千種区若水2丁目3-17
                       サンマンション千種公園A-208
                                        田 口 龍 司   地方公務員

 地方自治法第242条の規定に基づき、下記のとおり住民監査請求をします。

                    記
1 請求すべき事柄
 愛知県立岡崎東高等学校及び愛知県立木曽川高等学校職員の参加した平成7年度学習合
宿は学校長の管理下で行われておらず、勤務時間内に勝手に職場を放棄しており、地方公
務員法第三十五条「職務に専念する義務」を怠った。
 更に、高校生の健全育成に反し長時間の拘束を強いる学習指導要領に基づかない教育外
活動である「学習合宿」を県立高校において行わないように勧告するとともに、給与に関
する条例第二十九条に基づいて職場放棄した時間に相当する当該職員の給与の減額分の、
愛知県が被った損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請求する。

2 請求する理由
 (1)1995年7月27日から8月1日までの5泊6日、愛知県立木曽川高等学校小池弘見始
め7名は第3学年150名余を引率して、三重県三重郡菰野町にある三重勤労福祉センター
「希望荘」において学習合宿を行った(一号証)。また、同校教諭小森敬久始め5名も第
2学年50余名を引率して、7月28日から8月1日までの4泊5日、岐阜県羽島郡桑原町に
ある「羽島かんぽ保養センター」において学習合宿を行った(二号証)。しかし、9月19
日に公文書公開請求(三号証)をしたところ、そうした公文書はないとの回答があった
(四号証)。よって学校長の命令や許可なく職場を放棄したことは明白である。また、一
号証の届けのうち経費欄を見ると、指導費9,000円を生徒から徴収しており、これを引率
教員小池弘見始め7名で按分すると198,000円もの収入を得ていることになる。小森敬久
始め5名も134,400円となる。

 (2)1995年8月7日から8月10日までの3泊4日、愛知県立岡崎東高等学校教諭畔柳正
弘始め15名は第1学年340余名を引率して、長野県大町市にある中綱湖畔梁場民宿におい
て学習合宿を行った(五号証)。また、同校教諭南島雅彦始め15名も第3学年130名余を
引率して、8月9日から8月12日までの3泊4日、愛知県刈谷市にある「NTT研修セミナ
ーセンター」において学習合宿を行った(六号証)。しかし、9月19日に公文書公開請求
(七号証)をしたところ、そうした公文書はないとの回答があった(八号証)。よって学
校長の命令や許可なく職場を放棄したことは明白である。
 よって、給与に関する条例第二十九条に基づいて職場放棄した時間に相当する当該職員
の給与の減額分の、愛知県が被った損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを請
求する。

****************************************************************************
1996年6月26日、上記の監査請求に対する意見陳述を行いました。
次の文書は当日提出した「請求理由追加資料」です。

/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
              請求理由追加資料
(1)  学習合宿の目的について
  本件学習合宿の目的は「学習習慣の確立と学力の向上を図るため」、「学習習慣の確立、基礎学
 力の充実を図る」(以上木曽川高校)、「自主的に学習計画を立て、実行する態度を養う」、「長
 時間の自学自習により、集中力・持続力を養う」、「自主的な学習生活を身につけ、長時間学習に
 耐える学習習慣を養成する。同時に基礎力・応用力をつける」(以上岡崎東高校)となっており、
 これらの目的は学習指導要領に定めるものではなく、本来個人個人に任せられたものである。いか
 なる学習習慣を形成するかは個人個人で違っており、一律に特定の学習習慣を強制することは公教
 育としての高校教育において行うべきことではない。
  また、請求者の属する愛知県立学校事務職員労働組合(以下「県学労」という)と愛知県教育委
 員会との交渉において高等学校教育課小田指導主事は「名古屋市などの都市部は予備校があるから
 、補習や学習合宿も少ないが、郡部では塾もないので学校が(予備校の)代わりをやっている」と
 述べており(県学労ニュース111号1面参照)、学習合宿は本来の高校教育とは関係なく、いわ
 ゆる大学進学のための塾代わりであることを如実に語っている。
(2)  学校休業日との関係について
  愛知県立高等学校学則の第四条では、「次に掲げる日は、授業を行わない日とする。」とし、第
 三号で「夏季休業日 七月二十一日から八月三十一日まで」と規定している。学校経営質疑応答集
 では「休業日とは教育課程に基づく教育活動が行われず、児童・生徒が学校で授業を受ける必要の
 ない日のことであると解される」としている。ところが6月10日の県学労と愛知県教育委員会と
 の交渉の席上、高等学校教育課小田指導主事は学習合宿について、特殊勤務手当支給の可否にかか
 わって「(学習合宿は)修学旅行や部活動とは違って、日常の教育活動の延長線にある活動なので
 出ない」と述べており、林間学校や臨海学校などのような特別活動ではないと規定している。つま
 り学習合宿は日常の教育活動を休業日に行っていることになり、県立高等学校学則に反することと
 なる。
(3)  学習合宿の費用及び性格について
  もし、仮に百歩譲って学習合宿の目的が高等学校の教育活動の一環だとしても、 本件学習合宿
 に参加しようとするものは、予め交通費、宿泊費等の費用を納めなければならず、その額は木曽川
 高校3年生の場合で52,000円、同校2年生で39,000円、岡崎東高校1年生で35,0
 00円、同校3年生で36,000円となっていた。この額は、修学旅行費用の上限が45,00
 0円と定められている現状に照らし合わせてみるに、かなりの高額と言える。修学旅行の場合、2
 年生の秋以降に行われるのが通例であり、その費用は1年生の時から積立金として1年以上にわた
 って徴収し、保護者の経済的負担を少しでも軽減しようとの配慮がなされている。しかるに、本件
 学習合宿の中には修学旅行の基準費用をも上回っているものがあり、それが1〜2カ月で徴収され
 るということは、保護者にとってかなりの負担である。また本件学習合宿は全員参加の学校行事で
 はなく、希望者だけの参加である。つまりかなり高額な費用を負担できる経済的状況の家庭の生徒
 しか参加できないというものである。公教育において、経済的理由により特定の生徒にだけ特別の
 教育を行ったり、行わなかったりすることは平等性の原則を逸脱したものであり、このような行事
 は公教育の現場ではあってはならないものである。また本件学習合宿が公教育とは関係のない、私
 的なものであるとするならば、県立高等学校の教員がその正規の勤務時間中に特定の生徒を引率し
 、指導をおこなうことは公務員の職務専念義務に違反するものである。

(4)  学習合宿に参加した教員の服務上の問題点
  木曽川高校、岡崎東高校の学習合宿を引率、指導した教員の当日の服務上の取扱は出張ではない
 とのことが既に判明している。では出張命令もなく、各自勝手に、あるいは組織的に職場放棄し特
 定の生徒の学習指導にあたることは公務員の職務専念義務に違反するものである。さらに、これら
 両校の教員たちは、参加した生徒から指導費、運営費等の名目で徴収した費用の内から学習合宿引
 率のための旅費、及び指導に対する報酬を受け取っていた疑いがある。特に木曽川高校においては
 3年生の生徒からは一人9,000円、2年生の生徒からは一人8,000円もの指導費を徴収し
 ており、これは地方公務員法第24条第4項(職員は、他の職員の職を兼ねる場合においても、こ
 れに対して給与を受けてはならない。)の規定及び同法38条1項(任命権者の許可を受けなけれ
 ば、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規
 則で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事
 業若しくは事務にも従事してはならない。)の規定にも違反するものである。
(5)  生徒の健全育成について
  本件学習合宿について、その日程表を見ると木曽川高校、岡崎東高校ともに10時間以上の学習
 が計画されており、このような長時間にわたり生徒を拘束し、学習を強いることは生徒の健全な成
 長を阻害するものである。修学旅行等においては、健康や安全への配慮のため保健関係者を引率者
 に加えるようにしているが、学習合宿においては拘束時間が長いにもかかわらず、何ら配慮されて
 いない。また高等学校の教育において、このような長時間にわたり生徒を学習活動に拘束するよう
 なことはなく、本件のような学習合宿はいわゆる一部進学塾において行われている夏期講座と相似
 している。この点からみても、学習合宿は公教育とは言えず県立高等学校においてこのような行事
 が行われることは問題である。

/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

県学労のトップページに戻る