2001年4月6日
愛知県監査委員 殿
請求者 名古屋市千種区若水2丁目3-17
地方自治法第242条の規定に基づき、下記のとおり住民監査請求をします。
サンマンション千種公園A-208 田 口 龍 司 地方公務員 愛知県立豊田西高等学校長及び愛知県立一宮高等学校長がそれぞれの学校職員にセンター試験受験指導のため、平成13年1月20日に大学入試センター試験会場(豊田西高校職員は愛知工業大学及び東海学園大学、一宮高校職員は名古屋女子大学及び名古屋工業大学)へ出張を命じたが、この出張は公務といえず、校長の裁量権を逸脱したものであるので、当該出張にかかる旅費の返還を各学校長及び職員に請求するものである。 2 請求する理由
|
2001年4月25日
田 口 龍 司
出張は公務員としての職務遂行の一形態であり、勤務場所では職務が果たせないときに限り、職員が目的地に赴き職務を行うことであり、旅行命令権者の職務命令の一種である。出張は職務遂行の一形態であることから、その用務の内容は当然出張者の職務として位置づけられていなければならない。
本件出張については、3年生の生徒が大学入試センター試験を受験する際に、校長、教頭を始め3年生の担任等が大学入試センター試験会場に出張し、受験生の直前指導と激励(豊田西高校教諭)、点呼確認、諸注意、激励、女子の東海学園大学と情報交換(豊田西高校教頭)、センター試験受験指導(一宮高校教諭)を行ったとするものである。 先ず本件出張が職務と言えるのか。生徒が卒業後の進路の一つとして大学進学を選択し、そのために大学入試センター試験を受けることは生徒個人の問題であり、当該生徒一人一人の試験に高等学校の教員が出張して直前指導や諸注意を与えることは高等学校教員の職務とは到底言えない。大学入試センター試験受験に当たっての注意、激励は事前に高等学校内でも十分できるものであり、点呼確認については、高等学校として現地に赴いて点呼する必要性が認められない。なぜなら大学受験は生徒個人個人が自らの意志で大学入試センター試験の受験を申し込み、個人として受験するものであるからである。当日欠席した生徒については受験する意志がない者として処理されるだけである。名古屋市内では中学生が高等学校の受検に来るときに中学校の教員が受検会場に来て、注意を与えたり、点呼をしたり、激励したりはしない。高校受検と大学受験との間にどれほどの違いがあるというのであろうか。中学生に比べるとずっと大人に近くなった高校3年生に対して、大学受験当日に教員が受験会場で注意を与えなければならない理由が見あたらない。わざわざ校長、教頭を始めとして多数の教員が大学入試センター試験会場に赴いて行わなければならない職務とは一体何なのか明らかにされたい。旅行命令簿によれば「センター試験受験指導」(一宮高校)、「センター試験、生徒の指導、激励」(豊田西高校)という用務でそれが具体的にどのようなものか、当該職員は理解しているのであろうか。復命書にも「センター試験受験指導」(一宮高校)、「直前指導と激励」(豊田西高校)としか書かれておらず、第三者には現地で何をしたのか全く分からない。復命書の記事だけでは到底職務とは言えない。 また、各大学の入学試験や就職試験、予備校への入塾試験にまで高等学校の教員が出張で受験会場に駆けつけ、受験指導や激励をしているだろうか。これらの試験にいちいち出張して現地で受験指導や激励をするということ自体が高校の教員の職務とは言えないし、もしこれらの試験全てに出張し、指導、激励していたら本来学校内において行わなければならない職務の遂行に支障がでるであろう。また、両校においては1月21日(日曜日)にも同じ用務で職員がセンター試験会場に行っているが、この日は出張ではない。同じ用務を行いながら、ある日には出張で、ある日には個人的にという使い分けが許されるはずがない。1月20日に行った用務も、個人的に生徒思いの先生が行ったという性質のものであり公務とは言えない。 このような公務性のない受験指導、激励については、たとえ校長から命令されたとしてもそれぞれの職員はその旅行命令の正当性について自ら判断し、断ることが公務員としての責務である。 また、仮に本件出張に公務性があったとしても、20人前後の職員が出張する必要性があったのか。愛知県立学校事務職員労働組合の調査によると、昨年度大学入試センター試験会場への試験当日の出張は別紙のとおりである。豊田西高校と一宮高校で、他校に比べて異常に多い職員を出張させなければならない理由は何なのか。 さらに、豊田西高校及び一宮高校では3年生の担任、副担任などがこぞって出張しているが、3年生で大学入試センター試験を受けない生徒の授業はどうなっているのであろうか。欠席した生徒の激励に職員がこぞって出張し、出席した生徒の学習権が侵害されているという点から見ても、本件出張は適当ではない。 また1月21日に同じ場所へ、同じ用務で出かけているにもかかわらず、旅行命令もされず、旅費も支払われていないし、週休日の振替も行われていないのは重大な瑕疵があることになる。 校長には職員の出張について大きな裁量が認められている。しかし、このことは校長が出張を命令すれば何でも職務であるとは言えない。最初に述べたように、その用務の内容は当然出張者の職務として位置づけられていなければならず、勤務場所では職務が果たせないときに限り、職員が目的地に赴き職務を行うものでなければならない。本件出張については校長は裁量権を逸脱し、命じるべきでない出張命令を職員に発し、また職員も公務員倫理に照らして本件出張の妥当性を判断することなく、命じられるままに出張したことは重大な過失であり、校長及び出張した職員に対して旅費の返還を求めるものである。
|