デイリーウォッチング
多村栄輝の無責任早耳情報

ExpandedBook Attendant を名乗る多村栄輝が電子出版にまつわる新鮮な情報やメッセージをつれづれに綴るデイリーページ(ほぼデイリー、ひょっとしたらウィークリー(^^;) )。


000927.水曜日

【低額決済システムあれこれ】

プロジェクト電脳神保町ではずっとQQQ(サンキュー)というオンラインでの決済システムを検討してきました。ここは商品券(といってもバーチャルなもので物理的な券ではありません)を購入して、加盟店の買い物をする仕組みになっています。手数料が商品価格の10%〜30%と低額のため、販売する側にとっては店を出しやすいのが特徴です。ただ、利用できるサーバーにいろいろと制限があるため、みんなで共同サーバーを借りようというのが電脳神保町の始まりでもあったわけです。そんな中、いろいろと新しい低額決済のシステムが登場しつつあります。そのひとつがバナーキャッシャー

こちらはクレジットカードによる支払いが可能ですが、ドルだて決済になっているのが特徴です。手数料もQQQに負けず劣らず低く設定されており、なかなか魅力的です。

お客さんにとってはわざわざ商品券を購入する手間が省けますから、たった一冊だけ買いたい、という方にも便利でしょう。これは販売する側にとってもなにかとメリットがありそうです。ただ、ドルだてということで相場の変動に影響されるのがネックです。反対に、そのおかげで経済の動きに興味がもてるようになるかも(^^?

うきうき書房さんが、さっそくバナーキャッシャーを導入しました。ぜひいちど利用してみてください。一方、QQQのほうはグーテンベルク21さんや電子書店パピレスさんがいち早く導入しています。こちらもお試しあれ。


000924.日曜日

【理想書店の理想を受け止めよう】

9月21日、ボイジャーの理想書店がスタートしました。あるウェブページで「8月18日オープン」と書いてあり、まだかまだかと心待ちにしていた諸兄もいらっしゃったことでしょう。

理想書店という名前は歴史があります。何年前だったか忘れてしまいましたが、マックワールドエキスポで、ボイジャーは他数社と合同で理想書店を開きました。そこには紙の本、デジタルの本(当時はほとんどCD−ROMだった)の区別なく販売されていました。当時はCD−ROMは書店では鬼子として扱われていて、いや取り扱いを断られることが多かったのです。取次は「ニューメディア商品扱い」という枠にCD−ROMを押し込め、仕切り値からすべて別扱いにしていました。コンピュータと紙の本は敵同士だと思われていたのでした。すぐれた紙の本とすぐれたCD−ROMコンテンツが同じ棚に並んでいる…それだけでも、当時としては画期的なことだったのです。

やがてCD−ROMは奇妙なバブル現象の中で駆逐されていきます。いまも書店ではCD−ROMは鬼子のように棚の一角でほこりをかぶり、くすぶり続けています。

しかし、所詮CD−ROMは入れ物に過ぎません。電子出版、電子本はしぶとく生き残り、クラッシュ渦中の出版業界は一縷の望みをそこに預けていいものかととまどいながらも、電子本の世界に手を出し始めています…。

マックワールドエキスポの理想書店が終わってまもなく、ボイジャーはウェブサイトで自社商品の直販を始めます。この直販ページが理想書店の名を襲名しました。まだDiVOも始まっていなかった頃のことです。書店では鬼子扱い、パソコンショップではスグにワゴンセールで処分されて姿を消してしまうCD−ROMコンテンツたち。理想書店のおかげで、これらのコンテンツをいつでも購入することができるようになりました。

そして2000年、オンラインでの立ち読みとセキュリティを実現したドットブックの登場によって、理想書店は新たなステージを手に入れたのです。

理想書店はあの日の理想書店の志を受け継いで、紙の本とデジタルの本がいっしょにならんでいます。

立ち読み用にまるごと一冊のものだけでなく抜粋版が用意されているのは、10分間という制限時間を考慮してのことでしょう。抜粋版は T-Time で読むこともできますから、こちらは接続を切ってからでもじっくりと読むことができます。


000919.火曜日

【大食い姫】

浮世絵太郎氏の『大食い姫』を、遅ればせながらようやく読み終わりました。人身売買、幼児売買春、性差別、国際化と人種差別、リストラ、都会の温暖化、マスコミの過剰反応…浮世絵氏はこれでもかこれでもかと重いテーマを投げかけてくる。が、その文体はあくまで軽やかだ。辛い現実の中でも大食いの姫様はくじけないし、浮世絵氏も人間に絶望したりはしない。自分にできることは何か、自分は何をするべきなのか、その答えは物語の中にある。

大食い姫、うわばみ嬢、すなおさん、堅実さん…登場人物たちのキャラクター造形が楽しい(後半ではもっとたくさんの人物が大食い姫のまわりにあらわれるのだが、それはこれから読まれる方の楽しみのためにとっておこう)。読み終わったとき、彼女たちの生活をもっともっと見守りたい!ぜひ続編を書いてほしい!そう思った。ある意味で著者の勝利なんじゃないかなぁ。たとえば『クリスマス異文』のチャッピーのおちゃめな失敗ぶりをもっと読みたいかというと…それはそれで読みたいけど、別に読まなくてもいいかな(失礼)って思ってしまう。でも、大食いの姫様と居酒屋「大黒」の面々の活躍を描いた続編が出たら、ぼくはすぐに飛びつくだろう。

ところで物語の中で T-Time があるシーンで登場する。しかもそのユーザーはよりによって○○さん。しかも T-Time を使い終わったその直後、彼はとんでもないことに…。その結末はあなたの目で確かめてほしい。

→『大食い姫』は「うきうき書房」でダウンロード販売中。


000917.日曜日

【電子文庫パブリ・スターター・キット】

昨日とどきました。インストーラーはディレクターで作成されているようです。「DFパブリフォント」は間に合わなかったみたい。残念。

CD−ROMに「電子文庫出版社会」って書いてあって、「電子文庫出版の社会なんて、8社そろうと言うことだけはデカイね」と思ったのですが、よくよく考えるとこれは「電子文庫の出版社の会」ですね(^^;)


000915.金曜日

【http://www.ne.jp/asahi/possible/book/】

というわけで、URLが変わりました。前よりも(少しだけ)分かりやすくなったでしょ(^^?


000913.水曜日

【スポンサーモードという考え方】

電子メールソフト「Eudora」が、フリーで使えるスポンサーモードを用意したことはご存じでしょうか。会社のイントラで Eudora Pro にはおせわになっていますが、つい先日、スポンサーモードを搭載した「Eudora 4.3-J の正式公開のお知らせ」というDMがうちにも届きました。広告収入によって、ソフトウェア自体は無料で利用できるそうです。スポンサーモードの Eudora は、メールの送受信時に広告データが取り込まれて、ウィンドウにバナー広告が表示されるしくみになっているのだとか。興味深いのが次の点。1つのパッケージに3つのモードが用意されていて、広告が表示される「スポンサーモード」、広告は表示されないが有料の「ペイドモード」、無料で広告も表示されないが機能の制限がある「ライトモード」と、ユーザーの使い方によってモードを選択することができるようになっています。

この考え方を、電子書籍にも応用するとどうなるでしょう。想像してみよう。

たとえば、ダウンロード時点で「広告あり」「広告なし」が選択できるようになっていて、「広告あり」を選んだ場合は無料だけど何らかのカタチでブックの中で広告が表示される。「広告なし」を選んだ場合は、有料でブックを購入する。そんな仕掛けを組み込むことになるのかもしれません。ドットブックはオンラインで立ち読みが可能になっていますが、このときにバナー広告を表示させることもできるでしょう。

紙の本には巻末にたいてい自社商品の案内が挿入されています。また「新刊案内」などのリーフレットが挟み込まれていることもありますね。しかし他社の広告が入っている…という本はみたことがありません。ただし、雑誌は広告収入で成り立っている媒体だから、他社の広告が全体のページ数の半分以上を占める場合もあります。

そんなわけで「他社の広告が入る本」というのは、紙の本でもデジタルの本でも違和感を感じるかもしれません。何人かに聞いてみたところ、「メールや電子本に広告が入るのは好ましくない」という意見が強く感じられました。なんというか、「本の純潔性」のような幻想があるのかなぁと思いました。しかし、反対にその感覚をうまく刺激すれば、「広告入りの本」も「広告の入らない(いわば従来イメージされている)本」も、ビジネスとして成立していく可能性は大いにあるのではないでしょうか。

そういった読者の立場からの反応を別にすれば、スポンサーモードを電子書籍に取り入れていくときに問題になるのは、誰が広告をあつめて、誰がどうやって広告を挿入していくのかという部分だと思われます。どこかが代理店業務をつとめる必要がでてくるでしょう。どの時点で広告が挿入されるのかという問題もあります。広告は鮮度が要求されるだろうから、本が制作される時点で広告を埋め込むのでは、読者に届けられるときとタイムラグが生じることになります。ブックがダウンロードされる時点で、データに広告が埋め込まれるような仕組みが必要になるでしょう。サーバーにあるブックデータは半完成品の状態にしておいて、ダウンロードされるときに広告が埋め込まれて最終的なブックデータがジェネレート(造本)されるようなイメージ。そのためには、TTZファイルのジェネレートプロセスがサーバーの中で自動化されなければならないでしょうけど、それ自体はそれほど難しい問題ではないだろうと楽観しています。

追記:本の送り手にとっては、自分のブックにどのような広告が掲載されるかが気になると思う。これはバナー広告の代理店などの例にならえば、ある程度はコントロールできるようです(アダルト不可など)。しかし読者にとっては選択の余地はあたえられないと思う。オンスクリーンにかぎらず、広告ってそういう性質のものなんですよね。


000912.火曜日

【PC Success 28号の青空文庫・解決編】

ポシブル堂店長のアドバイスで、ブックをハードディスクにコピーしてから開くとバッチリOKでした。なぁんだ、気が付いてみればカンタンなことですね(^_^)


000910.日曜日

【PC Success 28号の青空文庫】

8月下旬に発売された PC Success 28号(付録CD−ROM「青空文庫 小説500選(上)」)をようやく入手したので見ています。ウィンドウズ専用なので、マックではマウントもできないかもと思っていたけど、いちおうファイルにアクセスできるみたいです。

青空文庫はアスキーの雑誌にも付録で毎月のように収録されるようになっているけど、PC Sccess 版の特徴は、ファイルがドットブック形式になっているということ。マックでマウントできるならと開いてみたら「v.2.1以上が必要です」なんて書かれていて表示できない。いちおう v2.2.1 なんですけど(^^;?

しかたないので Virtual PC で開いてみました。ちょっと気になったのが、海野十三が「うんのじゅうぞう」となっていたこと。「じゅうざ」じゃなかったっけ(^^?


000901.金曜日

【電子文庫パブリは、本は買えるけど書店ではない?】

いよいよ始まりましたね。とりあえず登録はしたけど、IDもパスワードもパブリが発行するものなので覚えるのがたいへん。パスワードだけは変更できるけど、どうせならIDもユーザーが指定できるとさらに使い勝手よかったかも。

複数の出版社の作品を同じサイトで購入できるのがパブリの売り。ただ、いまの見せ方はオンライン書店というよりは、8社共同の倉庫みたいな雰囲気がなきにしもあらず。シンプルだけど、それだけにそっけない。一冊ずつの本との出会いみたいな仕掛けはまったく用意されてないんだよね。

bk1に行った安藤さんだったらどうするかな、なんて思う。ご存じのように彼は「書店とは編集である」をテーマに往来堂という「まちの書店」を復活させ、いまはオンライン書店の在り方を探求している人だ。

これは、「オンラインで人は本をどのように購入するか」の実験なのかもしれないね。既存のオンライン書店は、「今週のオススメ本」とか、ヘンなライターのヘンなエッセイを載せるといった周辺から本を買わせる仕組みを作っているけど、今のパブリは完全に単なるデータベースで、作家別、ジャンル別に本を探していくしかない。それでも人は本を買いたくなり、ほしい本を購入するのか。それともオンライン書店的な「つい本を買ってしまう」仕掛けが必要なのか。半年後ぐらいにははっきりするんじゃないかな。

会員登録すると、「電子文庫パブリ・スターター・キット」っていうCD−ROMがもらえるそうです。これには各種ブラウザやツールが一式入っているのだけど、ちょっと気になるのが「DFパブリフォント」っていう専用フォント。“テキスト形式とCXT形式のデータで外字をサポート”ってことだけど、タイプフェースとしての完成度が気になるところ。でも現在開発中ってことで間に合わなかったみたい。やれやれ。