ExpandedBook Attendant
−99年06月のテキスト−


990630.水曜日

【モバイルプレス、リニューアル。しかし…】

なんで Newton Letter に書かないかというと、電子書籍と読書端末の話だからである。ちなみに Newton はもはやこの雑誌においても存在しないものとなっている。きわめてオレサマな価値基準であると思う。

184ページから藤本一男氏の HP-200LX で日本文学を「読む」という記事が掲載されている。エキスパンドブックや津野海太郎さんの『本はどのように消えてゆくのか』などを取り上げながら、HP-200LX の縦書き表示ソフト Jupiter について紹介している。よしよし、分かってるな(にこにこ)と笑顔で読み進めるうちに、この藤本氏はとんでもないことを書き始める。藤本氏は『新潮文庫の100冊』を Jupiter で読むために大きなサイズのフォントを用意したり、いろいろと苦労するわけだが、あろうことか『新潮文庫の100冊』をテキスト化しているのだ。しかも、そのために『新潮文庫の100冊』をテキスト化するツールを使うのだが、これがまたシェアウェアで公開されている。金をとっているのだ。あぁ、忘れていた厭な記憶が蘇ってきた。よりによって『新潮文庫の100冊』を例に持ち出すとは!藤本氏はまったく気がついてないようだが、これは困った著作権の侵害なのである。

『新潮文庫の100冊』は、100冊分の文学作品を収録するにあたって、プロテクトをどうするかでさんざんもめたらしい。著作権が切れている作品もあれば、著者が現役で執筆活動を続けているものもある。当然、著作権に関する扱いも十人十色、いや、百人百様だったのだ。そこで新潮社は、その中で一番厳しい基準にあわせたのである。すなわち、“本製品のレンタルでの使用、全部または一部の複製、第三者への販売、譲渡、通信での頒布を当社に無断で行うことはできません。”というきわめて厳しい条件である。その結果、ボイジャーは通常のエキスパンドブックと違い、ブックも特別な暗号化を施し、ファイルのコピーを不可能にし、通常の方法ではテキストファイルの書き出しさえできないような専用の仕様にしたのであった。だから『新潮文庫の100冊』は、必ずCD-ROMをマウントしないとブックを開くことができないし、ブックをハードディスクにコピーすることもできないようになっている。

さすがに不評だったのか、その後のシリーズである『明治の文豪』ではブックのコピーも可能になったし、一部の作品にはテキストファイルも別途添付されるようになった。もっとも、なにしろ明治時代に活躍した文豪たちである。著者が亡くなって50年経っているため著作権が切れているものがほとんどだったという理由もあるだろう。

『新潮文庫の100冊』の強固な著作権の主張に基づくプロテクトのガチガチぶりには、ぼくも納得いかないし不便に思う。しかし、著作権をみだりに侵害するのは本意ではない。まして、それをテキスト化するツール、しかもシェアウェアである。著作権をバシバシ侵害するためのツールで身銭をかせいでいる人がいるのだ。正直度し難い。どう考えても立派なプロテクト破りツールである。極めて民度の低いツールなのである。あまりに忌まわしいのですっかり記憶の彼方に葬っていたそれを、藤本氏が呼び覚ましてくれた。困ったことだ。

百歩ゆずって、そういうツールがあることを受け入れたとしよう(それで金を稼ぐ輩がいることは受け入れ難いが)。藤本氏がそれを利用したことも受け入れるとしよう。しかし、しかしである。それを雑誌の原稿にして紹介するのはどういうことか。たとえばこれが、「友人からソフトを借りてきたのだがプロテクトがかかっていてコピーできない。そこで、コピーを解除できるシェアウェアがあったのでそれを試したところばっちり成功」なんていう記事だったらあなたはどう思うか。編集者は、そんな原稿でも平気で採用しただろうか。

さて、著作権侵害で目くじらたてるのも疲れるが、藤本氏の原稿はさらにぼくの疲れを増大させてくれる。青空文庫を「ボイジャーが運営している」と書いているではないか。URL は http://www.aozora.gr.jp/ と表記しておきながら、である。このサイトのどこに「このサイトの運営は株式会社ボイジャーが行なっています」と書いてあるのか。事実関係を誰一人確認していないのである。これは藤本氏にも問題があるが、きちんと校閲していない編集者にも問題があるのではないか。

揚げ足とりをしているように思われるかもしれないが、書いていることは著作権侵害ツールの紹介や事実と異なる記述である。厳重抗議とはいかないまでも、次号でおわび及び訂正文を掲載するよう、新潮社、ボイジャー、青空文庫は忠告するべきだと思う。穏やかに指摘すればいいから。ただ、やれやれと笑って済ますのは新潮社とボイジャーが『新潮文庫の100冊』をそのようにせざるを得なかった事情と、彼らの選択をなおざりにすることだ。青空文庫も、何のためにボイジャーのサイトから独立したのか分からなくなってしまう。

とにかく『新潮文庫の100冊』は鬼門なんですよ。どうして『明治の文豪』から書き始められなかったのかね。HP-200LX を「読む」ツールとして使おうとする藤本氏の主張自体は共感できるものだけに、このうかつさが残念でならない。

次のページから「電子書籍の現在と携帯情報端末の未来」という記事が始まるのだけど、これについては明日紹介します。こちらがメインディッシュだったのになぁ。


990629.火曜日

【最後の公開アルファ版 v2.0a8 登場】

印刷機能の改良、テキスト変換ツールが実装などが今回の目玉です。テキスト変換ツールは半角カナを全角カナに変換したり、英数の前後にスペースを挿入したりできる。基本的に範囲指定した部分に作用するので、「すべてを選択」してから変換をかければファイル全体を処理できるし、部分的な処理も可能になる。これはなかなか便利なツールかも。アルファ版では機能限定状態のため変更内容の保存ができないが、果たして変換結果は読み込ませたファイルに反映されるのか気になるところ。

今回は 68K 版も公開されているので、68K マックや Mac OS7.6.1 ユーザーもぜひ試してください。てっきり 68K は切り捨てられると思っていただけに、これはうれしいですね。

【アップグレード受け付けは7月1日から】

すでにパソコン雑誌などでは、登録ユーザーは v2.0 へのアップグレードが受けられる旨、記事が出ているが、 T-Time のホームページにはいつになってもアップグレードの案内が掲載されない。どうやら7月1日から受け付け用ページが公開されるらしい。詳しいことが分かり次第、また報告するつもりなので刮目して待つべし。

【電子書籍コンソーシアム、11月からようやく実験開始】

朝日新聞、読売新聞など、大手新聞でも記事が掲載されていましたね。読書端末は当初の見開き型へのこだわりはあきらめて、ザウルスのようなスレート型になるようです。記憶媒体はアイオメガ社の Click! がまさかの採用。スマートメディアもメモリースティックも落選。インターネットでも配信してパソコン端末でも読めるようにするということだけど、たぶん専用ソフトのマック版は提供されないんだろうなぁ。


990628.月曜日

【デジ・クリ、明後日からですよ】

作品発表、展示を通じたデジタルクリエイター・CG・映像プロダクションのためのビジネスチャンス獲得イベント、それがDIGITAL CRETORS' WORLD。ポシブルブック倶楽部も、我らが販売部長田辺さんの尽力のもと、電子本即売会としてがんがん販売攻勢をかけますぞ。


990627.日曜日

【日刊デジクリに田辺さん登場】

先日の投げ銭ワークショップ、電子本即売会で田辺さんに出張してもらったわけですが、そのときに「日刊・デジタルクリエイターズの柴田さんも出てるから、そのあたりの大御所連中に宣伝してきてください」という司令をまぎれこませておいたところ、どうやら結果が出てきたようです。田辺さんからは何の報告もなかったので「柴田さんに無視されたかな?」と思っていましたが、そうでもなかったようで。

田辺さんの「電子出版奮闘記(前編)」が読めるのは日刊デジクリの No..0358です。

この記事ではすでにポシブル堂書店の存在が URL 付きですっぱ抜かれていたりする(苦笑)

しかしこのテキスト誤植が。田辺さん1996年生まれですか(笑)


990624.木曜日

【ワンダースワンでアクセスする日】

ワンダースワンでウェブブラウジングとEメールが使えるようになります。ということは、青空文庫にアクセスして、ワンダースワンで梶井基次郎を読むこともできるようになるということです。ウェブからミニゲームをダウンロードできるようFTP機能も持たせるそうです。

haramasaさんが開発したTTVの登場で、シャープのザウルスシリーズは快適な読書端末としての魅力を発揮しつつあります。アイゲッティの広告には、TTVを活用した電子本としてのザウルスがはっきりと取り上げられているくらいです。ワンダースワンが発売されてすぐ、ポシブルブック倶楽部ではワンダースワンを読書端末として活用できたら…という話題が盛り上がりました。バンダイはザウルスとTTVの関係に気が付いているでしょうか。ワンダースワン用の縦書き表示できる読書ソフトが登場することを、願ってやみません。ここはひとつ、思い切って開発環境を公開するべきです。そしてワンダースワンのプログラムコンテストを開催するのです。そうすれば、きっと第2第3のharamasaさんが、ワンダースワン用のTTVを開発してくれて…。

うちにあるワンダースワンはスケルトングリーン。昨日、淀屋橋の交差点近くでワンダースワンしているOLを見かけました。女性向けにパステル調スケルトンのツートンカラーで新色3タイプが発売されるっていうし、バンダイもけっこうがんばってるなぁ。あとはソフトの充実だけだよ。いや、それがキモなんだってば。べつにメール端末でもいいんだけど。

なんだ、俺が送った時は無視したくせに、rikiさんだったら乗せるんじゃん…ぶう。そのおかげでボイジャーはあわててミラーサイトを用意したってわけね。


990623.水曜日

【v2.0a7】

T-Time v2.0 のアルファ版、最新版は v2.0a7となった。(でもじつはアバウトを見ると a5 になってる(^_^))印刷機能のチェック、ウィンドウズ版でのEBKファイルの対応などに合わせて、細かなバグフィックスも行われているという。

個人的にはクリッカブルマップ対応を評価したい。以前、マンダラートをピクトに落としてTTZ化をこころみたことがあったのだが、クリッカブルマップに対応してなかったので完成しなかったということがあった。あれが日の目を見ることが可能になったと思うとうれしい。

【印刷機能に思う】

EBKファイルは一律印刷不可の扱いとなった。「制作者(著作権者)が、印刷にたいしてどのような意向を持っていたか、プログラム上で判断することができないため、一番無難な仕様を取らざるをえなかった」というのがその理由。ぼくは納得できた。ボイジャーらしいとも思った。君はどうか。

アルファ版のダウンロードページには「この機能は、印刷許可の設定がなされているTTZファイルのみで利用できます」とあります。つまり、TTZ化のさいに印刷可・不可の属性を設定することができるようになると思われます。

【IceTea vol.2】

ウェブページのデザインも一新です。「全部入り」のファイルも用意されました。今回のテーマは「貧乏」。貧乏をおそれ、ハゲをおそれる人はいまもゴマンといます。ぼくは貧乏だし立派なハゲですが、大好きな Newton から大切なことを教えてもらったので平気です。「足るを知る」、ただそれだけで大丈夫。


990621.月曜日

【a5 が待ち遠しい】

いまのところマックユーザーだけが享受できる便利な超整理法フォルダ T-Pot。古いTTZ ファイルをうっかりダブルクリックしてしまって、いくつか v2.0a4 で開いてしまいました。正規バージョンがリリースされればそちらに乗り換えていくのだから問題ないといえばないのだけど、「v2.0a4 で開いたファイルは v1.13-r3 以前で開けなくなる」という現象はやっぱり不便。次のテスティングバージョンでは解決するらしい。一日も早く公開を待ちたいところです。週末には v2.0a5(?)がお目見えかと期待していたんだけど、少し遅れているようです。がんばれボイジャー!


990616.水曜日

昨日報告したv2.0a4で開いたTTZがv1.3-r3以前のバージョンで開けなくなる件だが、どうやらこの週末のバージョンで解消されるようだ。

13日に報告した「Shift+スペースキー」でページ戻りがうまくいかない件は、どうやらMacVJE-Deltaのキーアサインとぶつかっていた模様。さっそくキー編集ユーテリティで変更するも、なぜか変更が反映されなくて困ったん。


990615.火曜日

【テスティングに使うTTZはバックアップをとってから】

ポシブルブック倶楽部やニフティのボイジャー・サロンでも続々と報告が集まってる。ボイジャーにもレポートが多数寄せられているようだ。ところで、v2.0a4 でTTZファイルを開くときは、必ずオリジナルのバックアップをとってからにしよう。どうやらこのバージョンで開くと、以前のバージョンでは開けなくなってしまうらしいのだ。無理矢理開いてみると、まっ白のページが表示されるだけだ。正式版がどうなるかわからないが、少なくともテスティングに関してはバックアップはかかせない。なにしろまだαバージョンなのだから。

ちなみに、週末には次のバージョン(v2.0a5?)が公開されるらしいぞ。


990613.日曜日

【T-Time2.0書籍版パッケージ】

2.0の文字がまぶしいです。

【T-Time2.0α版テスティング開始】

これから数段階にわけてテスティングされるようで、重点チェック項目が指定されています。このバージョンではまだ実装されていない機能もあるということです。今回のバージョンは2.0a4。2.0の新機能の予定仕様が発表されていますが、間に合わない項目については見送ってリリース期日を優先するという考え方かもしれません。このあたりの見切り方も、とても今日的でボイジャーの意欲がうかがえます。

さて、チェック用のサンプルブックではなく、今回手持ちのブックで実験してみました(もちろんファイル破壊の可能性を考えてコピーを使ってます)。

スペースキーによるページ前進はばっちりOK。茄子RやNetscape でスペースキーのオペーレーションに慣れた人も、これからは違和感なく使えますよ。ところが、Shift+スペースでページがなぜか戻らず。

ページ先読み機能は、環境設定のページ先読みの項目にチェックが入れられなくて焦りましたが、メニュー「表示/オプション」のページ先読みにチェックが入っていればちゃんと機能します。アンチェックの状態と比べてみると、ページをめくったときのレスポンスの違いがはっきりと体感できました。これって、ようするに処理の順番を人間の行動に合わせて入れ換えたということだと思うんですが、たったそれだけのことで相当な効果をあげていると思われます。マシンパワーだけに依存しない解決方法として、高く評価すべきです。

じつはうちの環境(Mac OS 8.5+NetscapeCommunicator4.06[ja])では、ネスケ終了後にダウンロードしたTTZファイルが自動消去されてしまうという困った症状を抱えていまして、おかげで昨晩ダウンロードしたサンプルファイルも今朝立ちあげたときにはすでになくなっていたというマヌケな事態…。

ダウンロードページで T-Time Attendant のページが紹介されていました。5月はまったく更新してなかった自分の怠慢を反省。


990609.水曜日

【投げ銭レポート】

ポシクラの即売会実行委員長、田辺さん(猫乃電子出版)のレポートはこちら。青空文庫の富田倫生さんのレポートはこちら

その他にも、レポートや記事を見かけられたかたは、ぜひご一報ください。


990607.月曜日

【投げ銭ワークショップ+決起集会】

無事完了、だと思う。投げ銭ホームページの拍手ボタンがひっきりなしに押されているようだから、たぶんそうなんだろうね。でも、まだ結果報告をどなたからも聞いてないんだよね。レポートお待ちしてます。


990601.火曜日

【ただいま増刷中!】

6月6日の投げ銭ワークショップ+決起集会にて、ポシブルブック倶楽部が出張即売会を開催する! もう知ってるよね。今回、美しい暦の全作品を一挙に増刷、絶版状態だったタイトルもバッチリ登場。買い逃さないようにね!


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