ExpandedBook Attendant
−98年04月のテキスト−


980428.火曜日

【エキスパンドブック五つの誓い】

先日は古いメモからノートブックについての考察を掲載しましたが、他にもエキスパンドブックでパッケージを作る際の約束事みたいなのが出てきました。たとえば「サムネイルは付けましたか?」「ハイブリッド版は、両方のマシンでテストしましたか?」「フロッピーのウィンドウはなるべく開いておきましょう」とか、そんなことです。気付いてみるとすごくあたりまえのことなんだけど、気がつくまではまったく無神経に通りすぎてしまうことばかり…。こんなノウハウをまとめて紹介したらっていうことで、LUNA CAT さんが名付けてくれたのが「エキスパンドブックの壺」だったりします。ごめん、まだ少しも手をつけてない(^^;)


【大盛況、メーリングリスト】

ポシブルブック倶楽部のメーリングリストが大盛況。はじまってまだ二週間程度なのに、すでに250発言を超えています(!)。メンバーもプロアマとりまぜてじつに多彩な顔ぶれです。エキスパンドブックの作り方から文字コード問題、おすすめ書籍紹介など、読んで楽しく、発言してうれしい話題が続出です。この爆発状況がいつまでも続くと、息切れする人もあらわれるだろうから、そろそろ収束していくと思われますが、このメーリングリストは読んでおいて損はない、と断言できます。メーリングリストについては、12日の書き込みを参照してね(このページの下のほう)。


980416.木曜日

【昔の本、電子の本、未来の本】

『季刊・本とコンピュータ』、創刊二号の対談に出演したとき、田山花袋の『蒲団』をエキスパンドブックで初めて読んだと語ったところ、創刊三号で北村薫氏が「びっくりした」と書きました。本コの編集部は抜け目ないですね、さっそく北村薫氏に『新潮文庫シャーロック・ホームズ全集』を渡してレポートさせます。で、氏は「結論から言うと、とても面白かったのです」と答えたわけ。そんな氏が素朴にこんな夢を語っています。

“本にメモするように、画面自体に直接書き込みできたらいい。作品についての感想や、関連事項などが記録可能ならどうでしょう。世界に一つの、その人の全集が出来ます。その《後からの書き込み》も、パソコンならではの機能により、瞬時に呼び出し、整理出来るようなら素晴らしいですね。”

そうなんですよ、北村薫さん! そんでもって、エキスパンドブックがまだ HyperCard の上で動作していたころは、それが可能だったんです。あなたが“《とんちんかんな》ものであろう夢”と卑下なさっていることは、ずっと以前はできていたんですよ。

さて、以下は昨年1月にニフティーのボイジャーサロンに書き込んだものです。あれから一年以上経ったけど、あのときの「願い」はいまだ叶えられていません。


「未来の本」のひとつのありかたとしてハイパーテキストがありますが、ハイパーテキストの要素として、「読者が自由に加筆修正することができるようになり、読者と作者の垣根がなくなっていく」ということがあげられるんですね。また、ボルターの『ライティングスペース』によると、グーテンベルク以前の写本時代の本は、写本するときに注釈というカタチでどんどん文章が追加されていき、ページは真ん中にある本文から周辺へ向かって注釈がびっしり書かれていたというのです。

つまり、昔の本も未来の本も、作者と読者は同一レベルなんだということなんです。

ぼくは本を読むときは、かならずマーカーを携行するようにしています。気になるところはどんどんラインをひいて、容赦なくボールペンで書き込んだりもします。(読書家ですが愛書家でもあるので、ちょっと胸が痛みます(^^;) )このとき、ぼくは読者でありながら作者でもあるわけですが、残念ながらこの「ぼくの本」はどこにも出版もされないし公表されるわけでもないので、やはりぼくは作者ではありません。ぼくの向こうは袋小路になってしまっています。

エキスパンドブックはこの行き止まりを回避する、未来の本の第一歩なのではないでしょうか。

EBが書く(創る)環境と読む環境をひとつのものとして持っているということは、未来の本の姿を先取りしているのではないかと思うのです。

EBは、「誰もが出版することができる」という外にむけての解放を行いました。さらに「読むことと書くこと(創ること)は同一なのだ」という本との接し方の原点を提示しているのです。

津野海太郎氏は、自著の中で「エキスパンドブックはツールキットこそ本分である」と述べています。「創ること」こそが本のあるべき姿なのです。

ぼくは、本とは、書き込むことや書き加えることで作者とよりアグレッシブに対話するメディアなのだと考るようになりました。この考えからすれば、現在のエキスパンドブックに対する不満がいろいろと見えてくるのですね。

「ページ上に直接書き込む」。上記の考えに則れば、これは必須の機能なんです。ハイパーカード版のこの機能はすぐれもので、欄外のメモをテキストファイルに書き出すことが可能でした。しかもこのメモテキストは、同じタイトルのブックに再度読み込むことができたのです。マニュアルでも提案していたことですが、たとえばAさんが書いたメモを配布することで、他の人は自分のブックにAさんのメモファイルを読み込ませるだけで、Aさんの知識をブックに取り込むことができるのです。ここには読者が作者になるという、アグレッシブな本の姿が確かにあったのです。ぼくは夢想しましたね、タルホの研究をしたひとが、ライブラリにメモファイルを公開している世界を。じっさいにはそんなファイルはどこにも登録されなかったし、あろうことか EBT2 ではその機能は一切なくなってしまいました。

もともとあの機能は、ハイパーカードの柔軟な構造の上になりたっていたものだったのでしょう。いまの EBT2 に同じものを求めるのは無茶というものです。では EBT2 で失われた機能を手に入れるにはどうすればいいのか?

解決の糸口は、ノートブックにあると、ぼくは考えています。

EBT2 のノートブックは、マックのファインダーにも似た階層構造を持っていたり、検索結果とクリップとメモを同一レベルで扱えるという、ハイパーカード版から飛躍的な進化をとげました。

しかし、残念なことに、この超高機能ノートブックは共有することができないのです。ああ、テキストファイルの書き出し・読み込み機能があれば! このままではノートブックに蓄積されていく読者の知は袋小路にとぢこめられたままです。

ノートブックファイルを共有・交換できるような環境、これがこれからのエキスパンドブックにぼくが求める機能です。そこから発展すれば、たとえば BookBrowser に依存しなくても、ノートブックだけ閲覧・書き込みできるようなアプリケーションが出てきてもいいだろうし、ノートブックからEBを作成するようなコンバート機能が出てきてもおもしろい。

ノートブックはエキスパンドブックの最後の切り札です。最近は、他のオーサリングツールで作られたタイトルも、エキスパンドブックがそれまでアドバンテージとしていた特徴を備えるようになってきました。縦表示やアンチエイリアス文字などです。単に洗練されたインターフェースを作り込むなら、エキスパンドブックよりも、それら高機能オーサリングツールに軍配があがります。だけど、いかに優れたツールで作られたタイトルといえども持ち得ていないのがノートブック機能なのです(ノートを持っている例外もあります。たとえば『マルチメディア人体』はメモを書き込む機能があります。音声メモも撮れるそうです)。ノートブックの検索結果・クリップ・メモを同一レベルに扱えるという点、複数のタイトルで同じノートを扱えるという点が、何ものにも代え難いエキスパンドブックのアドバンテージなんだと思います。

将来的に、ネットEBの機能がウェブブラウザにインラインで表示されるようになるとしたら、そのときはノートブックには URL をクリップできるような機能があるといいですね。必要なときに出し入れできるような使い勝手(command + N で表示されるように、もう一度 command + N を押したらちゃんと隠れてほしい!)が確立されていれば、ウェブブラウザにとっても最高のノートブックが組み込まれることになるといえるでしょ。

ノートブックに話しが偏ってしまいました(^^;) ぼくにとって本とは、ペンを持って立ち向かうものです。エキスパンドブックが「ブラウザ」+「作成用ツール」であるということ、「本文ページ」+「ノートブック」であることを同列にとらえるのは筋違いかもしれませんが、そういう見方をする者もいるのだなあと考えていただければ幸いです。

〈 Ether Tamura / 97.01.24 〉


980415.水曜日

【雑記帳ブック】

とりあえず実験用の v0.1 です。ま、こんなこともできるということで。


980412.日曜日

【ポシブルブック倶楽部メーリングリスト開始!】

前から予告していたポシブルブック倶楽部(以下PBC)のメーリングリストが始まりました。ホームページはオープンな呼びかけがメインになっていますが、メーリングリストでは双方向のコミュニケーションをさらに強めて、プロアマ取り混ぜての情報交換を展開していきます。

このメーリングリストは PBC の会員オンリーです。年会費の徴収もしていないいまのうちに入会登録するのが吉ですぞ。いますぐ会員登録ページへ。


【季刊・本とコンピュータ創刊四号】

待望の創刊四号が発売されました。カラーページまで用意されて、ちょっとゴージャスな感じです。 T-Time についてボイジャーの北村礼明さんと祝田久さんのインタビュー記事が載っているので、そこから来年発売を目指して開発中というエキスパンドブック3の姿を想像してみるのもいいですね。

(というわけで「エキスパンドブックの次期バージョンはQT3.0日本語版の正式リリース待ち」という RIKI さんの予想はどうやらはずれそうですね。でも、有料でもいいから対応バージョン作ってほしいなぁと思う気持ちはいまでも変わりません。ボイジャーサロンに意見書を書き込もうかな)

オンライン版・本とコンピュータについての構想も公開されました。メールアドレスが公開されていたので、さっそく提案を送りました。驚いたことに、ほんの数十分でオンライン版の編集長を務められる室謙二さんから返事をいただきました。提案内容についてはまた後日あらためて。みなさんが感じたことなども聞かせてくださいね。


980406.月曜日

【New エキスパンドブックはいつか?】

今日は長いぞ。

もし私がジョブズ氏だったら、いますぐボイジャーの天才プログラマ祝田久氏にエキスパンドブックの QuickTime3.0 の対応を呼びかけるメールを送るだろう。

我が水の中のナイフ宛てに RIKI さんから新しいエキスパンドブックに関するメールが届けられました。

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えーてるさん、こんにちは。

今日はMac the Knifeよろしく、4月2日付のEBAを読んでの私なりの予想をお送りします。

EBのJPEGやGIFといった画像形式の読み込み・再生ですが、ポイントになるのはT-TimeとQuickTimeの関係だと思われます。ご存じの方も多いと思いますが、QTはインターネット上でよく使われるファイル形式を含め、30種類以上にものぼる、画像・音声・動画形式をサポートしています。

また、ver 3.0からはMac, Win, Linuxといった複数のプラットフォームでまったく同等の機能を提供していますし、今後の開発も常に複数のプラットフォームで同時にバージョンアップが行われて行くでしょう。

次にT-Timeの画像周りを見てみると、現在のT-Timeは画像の表示にQuickTimeを使っているわけです。

この二つを考え合わせると、次版のEBTはQT3.0日本語版の正規リリース待ちと考えるのが妥当ではないでしょうか?

QT3.0日本語版の機能を利用することによってMac、Win上で全く同じ機能がサポートされるわけですから、インラインでの複数の画像形式の表示、ムービーの表示、もっといえば、音声やストリーミングビデオの表示といったことも考えられるでしょう。

これは通常のExpanded Bookのみならず、Net Expanded Bookでの機能強化も考えられます。

おそらく、今まではQTの機能を利用しようにもプラットフォームによる差異があまりにも大きすぎた。しかし、今後はそれがQT側で対応されることにより、開発サイドとしては、アプリケーション自体をQTに対応させることさえできれば、なにも考えなくても複数のプラットフォームで同時に多数の画像形式を扱えるようになる。

そして、その足がかりは既にT-Timeでできている。

大方の予想では来週にもQT3.0日本語版が発表されると考えられています。
そして、その発表からそう時をおかずして、新しいExpanded Bookが発表されるのではないでしょうか?

T-Timeの一般販売は5月からのようです。そのころ、もう一つ、何か動きがあるかもしれません。

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なかなか鋭い考察です(^_^) しかしそう簡単に事は運ぶだろうか。あなたはエキスパンドブックの歩んできた歴史のことを忘れてやしないか。エキスパンドブックの歴史、それは QuickTime、ひいては Apple への愛憎の歴史に他ならないということを。(って、そんな歴史は知らなくても当然なんだけど)

エキスパンドブックにまだ Windows 版ツールキットは存在せず、マック版で作成したブックをなんとか Windows で表示するのがやっとだった時期がありました。そのときは、 Windows 版で画像データを表示させるためには QuickTime for Windows(以下 QT Win)が必要でした。ところがこの QT Win を再配布するためには、Apple とのライセンス契約が必要だったのです。これが何を意味していたかというと、わたしたちのような一介の個人版元は QT Win の再配布は事実上不可能だったということです。つまり、せっかくハイブリッド版が作成できるようになったのに、Windows ユーザーという「新しい読者」には挿絵ひとつ入ったブックを提供することさえできなかったのです。

ボイジャーはめげなかった。祝田久さんは負けなかった。自ら画像データを表示する部分をプログラムしてしまったのです。現在のエキスパンドブックは、画像データを BookBrowser 自身の機能で表示しています(動画はいまでも QuickTime を使っています)。

余談ですが、その代償が、JPEG データが扱えなくなるということでした。これには一部のユーザーから「困る」と苦情が寄せられたこともありました。しかし、QT Win のライセンスという Apple の呪縛から逃れるためには仕方のない選択でした。

以上のような歴史を鑑みるに、そう簡単に QuickTime のバージョンにボイジャーが歩調をあわせるとは思えません(^^;) 「ツールキットが AppleScript に対応してくれれば、ブック作りももっと自動化できるのに」という意見が寄せられたこともありましたが、いま思えばボイジャーがそうしなかったのも納得できます。

さて、時代は変わってインターネットが隆盛をきわめます。OS戦争は終わりを告げ、あたらしいネットワークの時代の幕開けです。エキスパンドブックも、ネットエキスパンドブックの仕様が決まり、やがてテキストビューワーが公開されます。エキスパンドブックは、単なる「本のメタファーを取り込んだソフト」から、「モニタで読むための環境」「オンスクリーンでの体験」にその意味が熟成してきました。いま、エキスパンドブックは非常に揺れていると思います。ネットワークという活路がひらかれたのに、PICT や BMP というサイズの大きな画像データしか扱えないエキスパンドブックは、どこか中途半端な存在になってしまっているのです。かといって、いまから BookBrowser に GIF や JPEG を表示する独自のプログラムを組み込むのはどうだろうか。それは、いたずらに BookBrowser のデータサイズを大きくするだけではないだろうか。この表示用のプログラムさえ無償で配布することを前提にしたボイジャーは、そのインストーラがフロッピーディスク一枚に納まることをいまも守り続けています。しかし、QuickTime に頼るのはできれば避けたい…。なぜならば、この数年、いままで以上に Apple 社自身が不安定になっているからです。ジョブズが返り咲いてからの Apple は、重要なテクノロジーの多くを放棄してきました。QuickTime がいつそうならないとも限らないのです。Apple は「QuickTime こそすべて」といったニュアンスの発言をしたことがありますが、現に開発スケジュールは遅れ続けています。Apple 自身の体力がどこまで続くかさえわからないのが今という時代なのです。そんな不安定な特定の企業のテクノロジーにその身をゆだねてよいものか…ボイジャーでなくとも迷います。しかし、QuickTime 3.0 は非常に多くのフォーマットをサポートし、業界の支持も良好のようです。あとはマックユーザー以外の支持を本当に得ることができるのか、です。いや、それこそがすべてなのです。

以上を踏まえて、再度ボイジャーにわたしからもお願いしたいのは、エキスパンドブック v1.7 の発表です。「すでにネットワーク時代である」ということを前提にすれば「必要なファイルはネットワークから入手する」という行動は、かなりあたりまえのことになっています。以前とはユーザーの意識が変わっているのです。QuickTime のファイルもオンラインで入手できます。ここはひとつ、ぜひとも大英断をお願いしたい。

T-Time for Win での GIF や JPEG 表示はどうするのだろう、という興味もあります。ひょっとして、QuickTime を再度取り入れるのではないか、と。「前」のような独自路線ではなく、いまだからこそ QuickTime を受け入れてもいいのではないでしょうか。

うん、この件については Windows ユーザーにとっての QuickTime 感をうかがってみたいです。

ところで、我が錆びたナイフには「その次」こと QTi に関するボイジャーの思念電波も伝わってきているのだが、それはまた別の機会に。


980402.木曜日

【いのうえさんへのコメント】

雑記帳でいのうえなおこさんとのやりとりが盛り上がっていて、つい文章量が増えてしまったので、こちらにまとめて書き込むことにします。元発言は雑記帳を参照してください。

【データを軽く!】

--今作っている絵本はペインターで絵を描いているんですが、
--単純な絵なのにたいへんな容量になってしまいます。
--なんとかならないかと思案しているのですが…。
--グラデーションとかが多いとだめなんでしょうね。

ペインターだとフルカラー(1670万色)のデータになっているんじゃないですか? PICT データなので容量を小さくするといっても限界があるけど、たとえば 32000色や 256色に減色させてダイエットする方法もありますよ。

画像データが多いと、容量の肥大化は避けられないわけですが、先日発売された T-Time では GIF や JPEG の表示に対応していることを考えると、来たるべき次バージョンではきっと対応してくれると思います。

ボイジャーさま、T3の開発なんて待ってられません。どうか現在の T-Time に実装された機能を盛り込んだエキスパンドブック v1.7 を発表してください! 有償バージョンアップ代金でもかまいません。ネットワーク時代に対応した GIF や JPEG への対応をご検討ください!

【テンプレートを改造しよう!】

--絵本にする場合、最初のテンプレートとかはかえって邪魔になります。
--それよりも画面にグリッドがつけられたらなあと思いました。

田辺さんもおっしゃっていますが、専用のテンプレートを自作してしまいましょう!

少しコツが必要ですが、表紙や目次のフローをはずしてしまうこともできますよ。

1.本文のフローを削除する。
2.目次ページのテキストオブジェクトをカットする。
3.表紙ページに移動して、目次ページでカットしたテキストオブジェクトをペーストする。

これで最初のフローの1ページ目から本文ページとなります。
今回のいのうえさんの話とは直接関係ないですが、参考までに。

それから、本文の任意の文字列に一色だけ別の色をつける裏ワザをお教えしましょう。注釈設定してしまうのです。それからスクリプトをちょこちょこっといじくって、注釈を表示しないようにしてしまえばいいのです。少し苦しいですが、注釈を使わないブックなら、悪くない方法だと思います。

ちなみにこの「任意の文字に色を付ける」というのも、 T-Time では対応していますから、次バージョンではきっと…(以下略)

【スクリプトサンプル集がほしい!】

--スクリプトサンプル集とかはないのでしょうか。
--考えると頭痛がするので…。
--アクションの組み合わせの可能性とかってすごくあると思うのですが…。

おっしゃるとおりです。新バージョンになってから「欲しい!」と切望したのがスクリプトを駆使したテクニック紹介本でした(^^;)

『オフィシャルガイドブック』がそうなるに違いないと思っていたのですが(そのころのニフティの「ほらふき国」のログを読むと笑いますよ(^_^;))、残念ながらそうはなりませんでした。その分ほかのところですばらしい一冊でしたけど。

Script.ebkにも『オフィシャル…』にも載っていないコマンドって、じつはけっこうあるんですよ。最近もマイナーバージョンアップしていくつかコマンドが追加されているし。

そんなわけでいのうえさんが求めているようなものはまだこの世にはありません。だったらどうする? そう、わたしたちで作っていくしかないのです。「これは便利」というスクリプトの使い方を発見したら、書きためておいてくださいね。

(じつはエキスパンドブックの制作でメシを喰っているような人たちの中には、ハイレベルなスクリプトの使い方を習熟している方もいらっしゃいます。ただわたしたちに公表する機会がないだけなんですね)


980401.水曜日

【ネットエキスパンドブックについて】

今日は「ネットエキスパンドブックとは何か」について少々講釈をたれるとしましょう。

まずこの鉄則を強く訴えたい。

「ネットエキスパンドブックが1メガ超えちゃいかん」(^^;)

ネットエキスパンドブックの考え方っていうのは、HTML 読み込むのと同じ感覚でブックにアクセスできるように、というものなんです。だから長時間かけて「ダウンロード」するものではないんですよ。

ネットエキスパンドブックは「エキスパンドブックをどのようにして届けるか」といったインフラの要素を持っています。フロッピーなどの物理的メディアに頼ることなく、ブックを配布できることは大きなメリットがあります。しかしそれは単なるデータ転送の手段ではないのです。ただデータを渡すだけならば、FTP やニフティのデータライブラリなどで圧縮した状態で登録しておいたほうがはるかに効率がいいのです。

日本初のネットエキスパンドブックである富田倫生さんの『パソコン創世記』にその答えのひとつが示されています。『パソコン創世記』は章ごとに分冊になっているのです。目次だけのブック、第一章だけのブック、といった感じです。読者はたとえば目次だけのブックにアクセスして、読みたい章タイトルをクリックする。すでにアクセスしたことのある章は自分のハードディスクにあるブックが開かれるし、そうでない場合は自動的にサーバーにアクセスしてくれる。そんなシームレスなアクセス手段がネットエキスパンドブックだと思うんですよ。

大容量のブックというのは、いわばデータの重いウェッブページと同じです。表示されるまでに待たされる時間は、表示をキャンセルされる数に比例するといっていいでしょう。

じつは、でき上がってしまったブックを分冊にするのは、かなりのテクニックを要します。たとえば「エキスパンドブックはフローの連続で構成される」という原則を守らないと、章ごとの分割はままなりません。リソースの整理や、分割されたときに不要になる表紙や目次フローを取り払うといった作業も必要です。

翻って考えれば、フローの原則とリソースの整理が把握できていれば、ブックの分割はできるということです。

ネットエキスパンドブックのシームレスな環境とは、ブックのデータファイルが自分のパソコンの中にあろうと地球の裏側のネットサーバー上にあろうと関係なく開くことができるということです。さらに、注釈として送り手が設定したリソースのありかも、ブック本体にとどめないということです。その文字列をクリックしたとき、あるときはどこかのホームページに接続されるだろうし、またあるときは別のブックが開かれるのかもしれません。ウェッブブラウザを介して音声や動画にアクセスすることもできるでしょう。あなたはそれがどこにあるデータなのかを意識する必要はなく、モニタ上に展開される〈オンスクリーン〉の出来事に集中すればいいのです。

これがネットエキスパンドブックです。


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