秋の園遊会で、山本太郎参議院議員が、天皇陛下に直接手紙を渡したことが波紋を呼んでいる。山本議員は 「原発事故での子どもたちの被曝や事故収束作業員の劣悪な労働環境の現状を知ってほしかった」とのことで、 天皇を政治的に利用するという意図はなかったという。だが、国会議員は与野党ともその行為を非難、ネット上 でも相当なバッシングとなっている。
日本には、請願法という法律があり、その第3条では、「天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければ
ならない」と記されている。天皇に対する請願は否定しないものの内閣を通して行わなければならないようだ。
天皇に直接何か請願を出すことは駄目なようだ。
今回、山本議員の手紙が請願に値するのかが問題であるが、それは手紙の内容次第であろう。
上記のようにただ単に原発事故の現状を知ってもらいたいという内容だけであれば請願とは言えず問題はない
だろう。請願というのは、何か具体的に相手にこうして欲しいという何らかの行動を要求するような
場合だ。例えば、「原発を止めるように国民の前で宣言して下さい」「反原発運動を行うのでスピーチをお願い
いたします」とか書かれていたらそれは請願になるだろう。今回の山本議員の内容では、天皇に具体的な何らかの
行動を求めたものではなく、単なる状況説明だけである。これは、そもそも請願とは言えないものだ。
「否、そもそも陛下にものを渡したこと自体が問題なのだ」との論調もある。だが、園遊会の規則では「中で写真を
撮るな」との規則はあっても「天皇にものを渡すな」との規則はなかった。「言わなくてもそんなことわかるでしょう」
という人もいるが、そんな日本人同士の暗黙の常識に任せるなどと言っているのでは、逆にそのことの方が
無責任だ。
天皇陛下を一般の人に合わせるならもっと規則を明文化して来場者に徹底する努力が主催側に足りなかったとも
言えないか?もし非難するとすれば山本議員ではなく園遊会主催者だろう。
アメリカでは、猫を電子レンジで温めて死に至らしめた人が猫が死んだのは電子レンジを作った会社が悪いと訴え、
裁判で「動物を温めないで下さい」と注意書きがなかったからと訴えを認め、会社に賠償金を払わせたということが
あったらしい。それは極端だとしても、天皇陛下を気遣うなら、何が良くて何が駄目なのかをもっとはっきりさせるべき
だっただろう。
また仮に天皇にものを渡すなという暗黙の了解があったとしても、今回、山本議員が手紙を渡したときに天皇の付け人は
何故受け取ったのか?
天皇の付け人が「そういうことはご遠慮願えますか」と言えば「あ、そうですか。失礼いたしました」で済む話だった
のではないか?
それにしても、国会議員のバッシングは常軌を超えている。「議員を辞めるべき」「辞めないなら議員辞職勧告決議案
を提出する」とまで息まいている。何と大袈裟な。「不敬罪だ!」などと叫んだ議員もいたという(現在は「不敬罪」などと
いう犯罪は法律上存在しない)。こんなことで寄ってたかって1議員を辞職させるなら、もっと
他に辞めさせるべき議員はいくらでもいる。
例えば、「天皇陛下には靖国神社を是非参拝していただきたい」などという右派系議員(石原慎太郎を始めとする)も
多くいる。こういう発言のほうが、余程天皇に対して指図がましく問題にすべきではないか。
高円宮妃久子さまを、日本国民にも外国人にも何の良いこともない東京オリンピック招致のスピーチに駆り立てた議員
(下村文部科学大臣が先導したらしい)も同じだ。まさしく、皇族の政治利用だろう。
今年4月の主権回復の日で、出席を渋る天皇陛下を無理やり引っ張り出して「天皇陛下万歳!!」を唐突に叫びだした
自民党議員も酷い(安倍首相も加わった)。
こういう人物こそ真っ先に議員を辞めさせるべきではないか?
山本議員が疑いを晴らすには、手紙の内容を公開するのが良いと思う。天皇に対して請願的なことを言っていないという 証明できるだろう。例え、天皇陛下を反原発に導こうという魂胆があったとしても、日本の現状を変えるための彼なりの 必死の覚悟があってのことだろう。例え議員辞職勧告が自民党公明党民主党維新などの圧倒的多数で可決されたと しても辞める必要は全くない。全ての国会議員を敵に回し嫌がらせも増えるかも知れないが、そこを耐えて、 これまで通り反原発を貫き頑張って欲しい。