しげぼうの言いたい放題


・モノ作りの心を忘れた日本人は今こそ江戸時代を振り返るべし!(2007年12月25日)

今年もまもなく終わろうとしている。今年を象徴する1文字の漢字は、「偽」に決定した。
今年は、不二家の期限切れ原材料使用問題やら、「白い恋人」や「赤福餅」など、食品の産地・原材料・賞味期限の 偽装・改ざんが相次いだ。儲かりさえすれば、消費者の健康に少しくらい被害が出てもわからないだろう、くらい の本当に杜撰で許し難い事件ばかりだ。

今年に限らず、ここ数年くらいモノ作りということで信じられないトラブルが多く起こっている。 2年前の、マンション建設の耐震強度偽装事件で欠陥住宅が相次いだ事件が記憶に新しい。
また、個人的なことを言えば、我が家の電化製品(洗濯機、炊飯器)はここ数年で買ったものが次々と故障した。 全体的に一昔前の電化製品に比べて多機能にはなっているが、耐久性ではかなり落ちているような気がする。 これらは、私の気のせいなのかも知れないが、商売的に考えると、モノを永続的に売り続けるには耐久性がない ものを作ったほうが、商品の回転が良くなり、売る側にとっては利益に繋がることは事実である。業界ぐるみで わざと耐久性がないものを作り、少しでも新しいものを我々消費者が買うように仕向けている、というのは私の 考え過ぎか?

だが、はっきり言えるのは、現代の日本では、モノ作りの心、基本と言ったものが忘れられてきていることだ。 共通して言えることは、どれもこれも「商」の論理に振り回された結果の出来事である。 今の日本の経済、社会は、いかに儲けを大きくできるか、という悪知恵の働く人間だけが評価され、現場で 汗水垂らしてモノを作る人間の評価が軽視されているのだ。昔と違って、モノを作るのは機械で簡単に生産 できる、あるいは外国人労働者に任せておけばよいという発想が根底にあるのだ。
モノ作りだけではない。こうした「商」の論理は、日本国民の価値観を単一化し、国土や産業構造の アンバランスを産んだ。 どいつもこいつも田舎で田畑を耕して働くのを嫌がり、都会に出て何だか訳のわからない夢とやらを求めて 一儲けしよう、という考えの人間ばかりが増えてしまった。口先だけ達者で中身のない、それでいて自分が 儲けるには他人を蹴落としても、という考えの人間も増えた。地方は過疎化し、東京などの大都市と その周辺だけに人が集まり交通などのインフラも都市部では動脈硬化状態、いつ破裂してもおかしくない状態に なった。食料に至っては、自給率が40%を切るまでに落ち込んだ。誰も彼も自分達では汗水垂らして 食料を作ろうとせず、外国から食料を買いまくっては食い、ゴミを大量に出して、一見贅沢な食生活を満喫している。 そのくせ、中国産の食品は悪い、だの外国に対する文句だけは言う。これは、もはや「日本病」と言っても 過言ではないだろう。

江戸時代の日本は、現在とは全く異なっていた。皆さんご承知の通り、この時代は、士農工商という身分階級 をはっきりさせていた時代だった。無論、偉い順に、武士、農民、職人、商人の順となっていたわけだが、 食料を作る農民、その他モノを作る職人は、モノを回すだけの商人よりも高い身分を与えられていたのだ。 モノがきちんと作られなければ、回すもへったくれもない訳だ。
こうした身分制度が必ずしも良いことだと言うつもりはない。が、はっきり言えるのは、当時の世の中は 食料やモノ作りをそれだけ大切にしていたことだ。しかも、当時は鎖国を行っていて、外国との交流が殆ど なかったにも関わらず、自分達の国だけで食料を賄い、無駄なエネルギーを消費して環境を汚すこともなく、 秩序ある社会を実現していたのだ。「商」の論理が強くなり過ぎることを牽制したからこそ、それが可能 だったのだ。
もう一つつけ加えると、当時の日本は世界的にも例のない軍縮を実現していたのだ。 戦国時代、ポルトガルから鉄砲が伝わってから日本全国の戦国大名が使用した。その他大砲なども使用されたが、 こうした戦争の武器というのはどんどん進化することはあっても、退化することは通常あり得ない。 ところが、徳川家康が天下を取り、江戸幕府を開いてからは、これらの武器の使用がなくなり、刀の時代に 逆戻りしたのだ。そして、徳川幕府の江戸時代は対外戦争を行わず巻き込まれることもなく日本の平和を 実現したのだ。これは、やはり凄いと言わざる得ない。

無論、江戸時代の全てがよかったわけではない。この時代は文明的な発達が乏しく、現代に比べれば、平均寿命 も短かった。汚職も現代と同じようにあった。「犬を殺すな」などと過度な動物愛護を強要する将軍もいた。 選挙で政治家を選ぶなどという民主主義もなかった。
だが、こうしたマイナス点もじっくり見た上で、改めてこの時代と現代を比較してみたい。 歯止めもなく無駄なモノを作り、消費し、環境を汚し、外国からの要求のままに軍備を拡張し、海外に 軍隊を派遣し、食料の自給率が減り、都市と地方の格差が拡大し、様々な問題を抱える現代社会において、 それらを解決する鍵がこの江戸時代にこそ隠されているのではないかと思うのだ。 一度この時代の人々の考えをみつめ直してみることはどうであろうか?


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