しげぼうの言いたい放題


・大いに問題あり!憲法改正国民投票法案(2007年05月13日)

憲法改正のための国民投票法案がまもなく成立する。 与党と野党の意見のすり合わせなどがないままの可決成立である。 はっきり言って、今回の法案には様々な問題点が存在する。

問題点1 国民投票の過半数とは、投票者の過半数でよいのか?
日本国憲法で、憲法改正の手続きを定めているのが第96条である。これに違反する国民投票法案であれば断じて認める ことは出来ない。
「憲法第九六条 (憲法改正の手続、その公布)
(一) この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその 承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その 過半数の賛成を必要とする。」・・・
この96条、後半部分の国民投票の過半数というところが実に曖昧である。国会での発議のところは、各議院の総議員の 三分の二以上の賛成が必要であると、具体的にわかりやすい。何故、国民投票の過半数という部分がこれほど曖昧に 記述してしまったのか理解に苦しむ。
だからと言って、投票者の有効投票の過半数をそのまま過半数にすることは大いに問題ありと言える。
今回の国民投票法案では、国民投票の投票率というものを一切考えられていないので、例えば投票率が40%であれば、 有権者の20%の賛成で憲法改正成立である。投票率が低かったり無効票が多ければ、過半数のボーダーラインは更に 下がる。これでは、国民(有権者)の過半数の賛成があったとは到底認められない。
投票率が一定以下であれば無効、不成立としてしまうという方法も考えられるが、これも非合理的である。 仮に投票率が50%以下なら無効になるとしよう。投票率が70%で、改憲賛成票が40%、反対票が30%であったときは、 改憲成立である。ところが、投票率が50%丁度で改憲賛成票が40%、反対票が10%の ときは改憲は不成立となる。反対者が多いのに成立、少ないのに不成立となってしまい、これは明らかにおかしい。
ここは、有権者の過半数を持って可決成立とはっきり明記すべきだった。無論、投票率が50%を切れば、それだけ で改憲は不成立になるが、当然のことであろう。
これこそが、96条の趣旨に最も沿ったものではないか?各議院の総議員の三分の二以上の賛成が賛成という手続 きの流れから言うと、国民投票も有権者の過半数と考えるのが自然であろう。投票率の下限が明示されていないで 只漠然と過半数と言っているなら尚更そうとらえるべきだ。
政府与党は、とにかく憲法を改正したいからと過半数の定義を緩くしていい加減な国民投票法案を通してしまおう、 という魂胆がみえみえだった。

問題点2 投票方式についての曖昧さ
今回の国民投票法案では、憲法改正すべき項目が複数の条項についてあるとき、一括して賛否を問うのか、 個別に賛否を問うのかを意図的に曖昧にしているフシがある。
個別に賛否を問うならまだよいが、一括して賛否を問うと例えば、環境権を定めることには賛成だけど9条変更には 反対だという人の意見が無視され民意がゆがむ。そのような方式は断じて許してはならない。 憲法改正の場合は各条項ごとに賛否を問う、というようなことを国民投票法案に具体的に盛り込まなかったのは 重大な落ち度と言ってよい。

問題点3 国民投票運動に対する規制が酷すぎる
今回の国民投票法案は、投票運動期間中、マスコミの虚偽報道は禁止することを定めている。だが、憲法改正という 点についての虚偽報道とはどういうものを言うのか、私にはさっぱりわからない。
例えば、通常の国政選挙などであるマスコミがある候補者のありもしないスキャンダルを報道した、というなら明らかに 虚偽報道である。だが、憲法改正の場合、そこにあるのは憲法の原案だけだ。あるとしたら、それらを記載するときの 誤字脱字というレベルのものしかないのでは。
憲法x条を改正したらどのような事態が想定される、というレベルの話が虚偽かどうかなどは判別が難しい。 そこまで規制されるようでは問題だ。 それでは、マスコミの言論封鎖に繋がり、我々国民も情報集めが出来なくなり、改正内容の検討すら出来なくなる。
また、公務員の運動は事実上禁止、国・地方の公務員、特定独立行政法人・公団等の役職員、学校長・教員は、 国民投票運動での「地位利用」を禁じている。 これもまた、胡散臭さが感じられる。特に、教育関係者の場合は、憲法や国民投票法案自体を教育として教えること もある。多少の個人的な主観が入ってしまうのは当然だ。どこまでが許されどこから許されないのか、という境界線が 極めて曖昧であり問題がある。
また、地位利用云々と言うなら、民間企業の上層部のパワハラ的圧力、その他宗教的な圧力などはどうなのか? こうした組織に対する規制などは全く触れていないのだ。 「憲法改正に反対する奴はリストラだ!」などという企業があったとしても、 「憲法改正に賛成票を投じろ、そうしないと地獄へ落ちるぞ!」などという宗教団体があったとしても、 それは規制の対象にはならない。こんないい加減な話があるか?
これは、政府与党側から見て、日教組や労働組合など自分達と反対の立場の人間を 封じ込めようとしているのが明らかである。

結論をまとめると、今回の政府与党の考えは至って明確である。
・日本をアメリカと一緒に戦争を出来る国にしたい。
・そのためには憲法9条を変える必要がある。
・但しそれだけだと国民の反発が予想されるため環境権などとセットで行う。
・マスコミや労働組合、教育関係者には意見をなるべく言わせない。
・創価学会などの組織票を期待するため、宗教団体の関与には規制を加えない。
・国民にはあまり深く考えさせない。
・投票率はどんなに低くても成立させたい。
これがホンネだ。こんな政府与党の薄汚い陰謀は断じて許すことは出来ない。 一から審議をやり直せ!!!


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