週刊現代6月21日号に、政府が新しい税金の検討を始めたことを報じている。 その名も財産税。「あなたの預金に財産税をかける」などと大きな見出しをつけており、 読む者を仰天させる。
我々に馴染みのある税金と言えば、所得税のように給与など所得にかけられるもの、消費税 のような消費にかけられるものに大別されるであろう。しかし、貯蓄というものにかける税金というのは 恐らく聞いたことのない人が多いであろう。所得税というのは、その名の通り所得の多い人からたくさんの 税金を取ることが出来るものである。ある意味では所得の不均衡を是正し、貧富の差をなくすことにも役立つ。 消費税は、お金は使用してこそ価値があるという考えが元になっている。1万円の服を買えば1万円分の 充実感が得られる、2百円の交通費を使用して遠いところへ早く行ければ2百円分の充実感が得られる、 だから5百円、あるいは十円を税金として収めなさいという理屈である。カネの力でモノを買いあさる人間 からは沢山の税金を取ることが出来る。
これらに対して財産税というのは、所得から消費を差し引いた残りの部分、即ち貯蓄に対して税金を かける。何故こんな税金を設けようとしているのか。不況でモノが売れず、財政も大赤字になっている からだ。私にはピンときた。所得税を上げれば国民の勤労意欲が損なわれるし、消費税を上げれば消費は にぶる一方である。だから、貯蓄に関して税金を取るのが良いのだと考えているのであろう。為政者に とっては国民をビシビシ休みなく働かせ所得税をたんまりととり、なおかつ残った収入は全て消費に回させ 消費税を取れるというのが理想の姿なのである。このような状態を「景気が良い」と呼ぶのである。 財産税の意義は、所得税、消費税よりもはるかにいやらしい。
ところで国民の貯蓄から税金を取るといってもどのように取るのだろうか?タンス預金をしている人も 多いはずだ。国民一人一人の家に調査員が押しかけ、強引に部屋の中を探索するような質面倒くさいこと を行うというのか?その点についても週刊現代に記述されている。現在の紙幣をある時点で使えなくし、 新紙幣を発行し、通貨の切り替えを行う。こうすればタンス預金は、いやいやでも銀行などに預けら れる。そうなった後、銀行封鎖し、預金を下ろせなくし、預金総額を確定し一定率の課税を行う。 何パーセントかはわからない。唯、現在の財政大赤字や消費税が5%である以上、それ以上の税率をかけ る可能性が大だ。何ともえげつないやり方である。
財産税というのは、実は過去にも日本でやったことがあるらしい。戦後のGHQの指令で累進課税 の税率25〜90%かけられ国民の貯蓄を収奪し、戦争処理や国家の財政赤字の穴埋めにしたと言う。 当時の国民は戦争を起こして諸外国に莫大な被害を与えたという意味では、当然の報いなのかも知れない。 だが、我々の世代においては何の罪もない。単に貯蓄を持っている人間だからというだけで、一部のアホな 政治家やアホな企業の尻拭いをしなくてはいけないいわれはない。
ここまで書くとお気づきの方も多いと思う。そう、財産税とは形を変えた調整インフレ政策なので ある。但し、上記のような通貨の切り替えのタイミングで行うとしたら、それは一過性のものである。 インフレではあるが、それによる損失は財産税の税率によってのみ決まる。こうしたことが頻繁に行われる なら別だが、制御が利かずどこまでも果てしなく大きくなるハイパーインフレとは違う。いわゆるデノミと 言うやつだ。調整インフレだろうとデノミだろうと経済理論の上からは決して許されるものではない。 いみじくも来年は千円札以上は新札に切り替えられる。今の所、公式には偽造防止策が強化される、という 程度のことしか伝えられていないが、この際にと考えていていてもおかしくはない。
では、そういう事態を避ける方法はあるのか。いくらでもある。無駄な特殊法人やそこに天下りして高給を 得ている悪徳官僚、そうした組織や人間を追放することである。小泉内閣では本来そういったことを行うはず だったのに何の成果もあげられなかった。公務員の給与も高すぎるし、公共事業の無駄も多い。 が何と言っても、悪の張本人は、無駄なことに国民の税金を使った政治家、杜撰な経営や違法な経営で赤字を 招いた企業の経営責任者なのである。りそな銀行にしても、国民の税金で組織を存続させた。生命保険会社 では企業存続のために予定利率の引き下げも認めさせようとする。銀行のペイオフだって本来おかしな話だ。 このような事態を招いた政治家や企業責任者を吊るし上げることである。どんどん逮捕してブタ箱 行きにし、彼らの財産はカネ、土地、家はおろかパンツ一枚に至るまで没収し、競売にかけ大赤字の補填に することである。本当にそうすべきである。それが健全な資本主義国家である。 その他にも暴力団や悪徳宗教団体にもメスを入れ根絶し資産を没収することだって大きなことだ。 そのような努力をしないで、ただ貯蓄のあるものから取り、みんなを平等にしましょう、などと責任を 曖昧にすることは絶対に許せない。
今後、一年の間には必ず衆議院選挙がある。今度の今度こそ国民は目覚めないと大変なことになる。 貯金なんてオレにはないから、などと戯言をぬかすような人間は放っておくとして、 (私だって貯金をそんなに沢山持っているわけではない。自分がどうこうではなく、日本社会の悪しき体質が 許せないのである) そうでない人は人物を見極めて、必ず上記のようなアホな政治家を落とすような投票行動を行うことである。