風のささやき

春のように

ぶらぶらと
散歩が気持ち良い
寒さに前かがんだ背骨が
真っ直ぐに伸びる

枝先に神経を行き届かせて
春を感じとる
樹々の蕾が膨らんでいる

また春が来た

見慣れた風景に
光りと彩りの新しい驚き
冬に忘れた
陽ざしの肌ざわりを
また取りもどす

菜の花畑の空は
ひばりの囀りに澄んで

春のお彼岸に
桃色の花を添えて
手を合わせる
その ありがとうを
幼子は
見よう見まねで覚える

桜はまた吹雪くだろう
乳母車で通ったあの道を
駆けてゆく子供に
もう追いつけない

沈丁花の甘さで
膨らんだ胸には
また
泡沫のような
眩しさが生まれて

ありがとうを
繰り返したい

足元の犬ふぐりが
あどけない青さで
目を楽しませる

部屋に吹き込む風が
子供たちの新しい教科書を
ぱらぱらとめくる

やってきては去るものを
春のように穏やかに
心にこもるありがとうが
今日も そっと
肯ってゆきますように

穏やかな空には
シャボン玉が
虹色をまとって
ためらいながらのぼる

春に心はまた穏やかさを取り戻し。Last Updated 2026/02

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