風のささやき

落葉一枚

学校公開日
正門を出るところで
綺麗な落ち葉を一枚見つけて足を止めた
子供にそれを伝えようとしたが
まるで興味が無いらしい

男の子だなと苦笑いしながらも
「綺麗な落ち葉だよ」と
誰にも相手にされなかったその言葉が
僕の周りに二三回
少し悔しげにこだましてから移ろった

僕には綺麗に見える物を
伝えられない寂しさは
いつでも言葉の端切れを悪くする
淡い期待に生まれた言葉が届かないことを知り
口ごもるように後ずさるように消えていく
慌てて上書きをする言葉に置き換えられ

だから思いを一緒に出来た
ほんの僅かな瞬間も
例えば一緒に見上げた空の青さ
たとえ心の吸い込まれ方が違うにしろ
嬉しく思うのだろう
背筋を伸ばし
空の青さに染め上げられて
目を合わせた時の温もる感じに

だから人は歌い止むことができない
何度でも何度でも
それが言葉であれ音であれ色彩であれ
繰り返し己の見える所を届けるために
鋭敏になるほどに傷つき
鈍感になることとの間に揺れ動きながら

古い本の間に挟まれた
落ち葉の栞
遠い異国の風に染められ色づいた
僕への贈り物

それをくれた人の思い眼差しに
今でも重なり合おうとする
その飽きない試みに僕は
僕の色合いを深めているのかも知れない