風のささやき

風に

僕の腕を引きどこかへと誘う風よ

今さら何処へ連れて行こうとする
そんな無邪気なふうに
僕の腕にからみついてきて

楽しいよ確かに腕を引かれるがまま
このまま歩き出してしまえれば
けれど僕が今さら何処へ行ける

それに僕が憧れる場所は遠いよ
もしかするとこの世には
無いのかもしれないと
薄々と感づいてさえいるから

もう行けるはずがないじゃないか
こんなにもこの場所に
僕をつなぎとめる物も増えたから

だから今ここで腕を離すね
とても残念だけれど
そこにはほら子供が
僕と手をつなごうとして
待っているから