風のささやき

夏の旅路

2両編成の列車が
無人駅で止まり
すれ違う電車を待っている

待ち合わせの電車は
単線の線路に見えてこない
全てがゆったりとながれる

無人駅には心地よい風が吹く
サルビアが咲いている
青い峰の上の雲は止まっているようだ
持て余すほどのたくさんの時間

街にある僕ならば
そろそろとイライラとしそうだ
何度も時計を眺め
いつも追い立てられるようだから

そんなささくれ立つ心は
すっかりと解きほぐされる
蝉時雨が耳に心地よい

電車さえも陽炎に揺れている
僅かばかりの乗客も
穏やかな顔をして汗をかく

太陽の橙を写す花の名前を
頭の片隅から掘り起こし
いまだ見ぬ旅先の駅の
景色を心にゆっくりと広げている
旅の途上に 僕はいる