風のささやき

雨と大木と

雨に濡れている この幸せ
乾いていた樹皮もしっとりとする
朧な春の月の仄かさにも
たしかに心は 惹かれるけれど
優しく幹を伝う雨に
今は ひととき 身をゆだねていたい

雨の奥にひそむ
深い慈しみを
この体に感じ
染みわたらせている

雨は透きとおる樹液となり
枝の一葉 一葉に
大切な響きを届ける
力がみなぎるままに
空いっぱいに広がってゆけと

弾けるように萌え出す若葉は
震えていた夜の帳の心細さを
もう思い出すこともないだろう

日々の成長に
それぞれの若々しい緑で
光と風をその掌につかまえる
はやる命のざわめきに
枝先はこそばゆく震える

この不思議な恵み
空からの雨を
もたらすのが誰か 僕は知らない

ただ定められたこの場所で
大地にしっかりと根をおろし
青空の深みを目指す
僕に降りそそぐ 励ましの雨が
遥かなる時を生き抜く
確かな力をくれる限りは