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風のささやき

ひかりを重ねる

ゆっくりと
モノレールはすれ違い
その向こうに
空のひらけた空き地が見えた

枯れ草だらけの区画を
早春の夕日が
金色の馬の鬣に触れるように
愛おしげになでつけている

大地に枯れるまで
根を張ったものたちの
雨風にさらされ
逞しく凄絶な時間を
何度もいたわっている

次々に変わってゆく街
新しいビルの群れ
乾いたカラスの鳴き声
取り残された土地を
緑に染めて野草はひっそりと守る

空き地の砂利も
夕日を砂金のように照り返し
言葉にならない
感謝のように光る

慰めの涙のような夕日に
生の束縛から解かれて
空き地は
懐かしい絵のように
輪郭を淡くする

やがて生を譲り受けた
新しい命が
遥かに枯草を超えて
背丈を伸ばし
また大地を明るく染める

春は
名もないものたちの
ひかりを重ねる

その気配に
心が
ひとりでに弾みだす

春に再生するものたちに。 Last Updated 2026/02

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