凡 例


  1. 本辞典に収載する型式は縄紋土器の型式として提唱されたすべてである。しかしながら、これは究極の目標であって、当面は編者が名前だけでも知る型式を収載しようと努力している段階である。現在収載できている型式はおおむね前期の関東地方にすぎず、当面の目標に比べてすら数十分の一の完成度である。
  2. 型式名には「〜式」という名称のものの他に「○○遺跡〜類」というような暫定的な分類名称がそのまま実質的な型式名として用いられているものもあり、また、一定の時期・地域を占有しないものの特定の特徴をもって特定の時期・地域に分布する「〜類型」「〜土器」といったものもある。これらも当然収載の対象とした。「〜様式」とか「〜系土器群」というものは、基本的に対象としない。
  3. 各型式の解説には標式遺跡と読みを必ず記載した。しかし、標式遺跡は所在市町村のみ知られて遺跡が不明のものや現在別の遺跡名で呼ばれているものがあり、読みにいたっては、字名などの小地名に由来するものが多いだけに、正確な表記が不安定なもの、地元での呼称と学界で正式な呼び方とされているものが異なるといわれているものがある等、正確さを保証することは至難である。最終的には誰一人正解を知らないどころか元々存在しない地名だった場合もあることを御承知おき願いたい。もちろん編者の単なる無知や思いこみによる間違いも多いと思う。そういう場合は笑い者にされるのは覚悟のことだが、せめて一言御注意をいただきたいとは思う。
  4. また、型式名にはJISコードに含まれない漢字が含まれる場合がある。この場合、その字を横に分解するとコード内文字の組み合わせになる場合は次のように表記した。

     ほっけ  ま しき
    {魚花} 間 式

    上記の方法がとれない場合は次のように表記した。

    [セキ]山式 *[セキ]は門がまえに「咲」の右半分


  5. 固有名詞を用いた細分名(「〜段階」等)は努めて収載するが、数字を用いた細分名や「古」「中」「新」等についての説明は代表的なものにとどめたい。
  6. 用字は一般的なものに従った。設定当時「黒濱式」と書いたにしても「黒浜式」と記すのが適当であるということに、異論は少ないと思う。
  7. 型式名に複数の名称が有ってそれぞれがその名称の正当性を競い、あるいは、型式の範疇、独立性についても異論が絶えないことは、型式研究の隆盛として喜ばしいことである。しかしながら、解説を加える上では編者の理解の範囲で強引に判断せざるを得ない。基本的には、ある特徴で地域的・時間的に分離できても、多くの特徴を共有する場合は同一型式内の地域差・時間的細分として扱った。この辞典の趣旨をご理解の上、御意見や御指摘をいただければ幸いです。
  8. 各型式の解説には典拠や主要文献をあげるべきだが、収載型式数の充実を優先して、当分の間は留保させていただく。
  9. 収載されていない型式について、記載していただける奇特な方が有ればぜひとも御願いしたい。特に、西日本や北海道の学史に埋もれた型式名や最新の型式は編者の能力を越えており、協力をあおがねば収載不可能である。
  10. 「草創期」をめぐる大別に関しては多くの見解がある。ここでは、撚糸紋系型式群併行期以前を草創期とし、沈線・貝殻文系型式群併行期以降を早期とした。これは学史的経緯を尊重した上で、撚糸紋系土器の無紋化よりも、沈線文系土器の文様の成立こそ縄紋土器変遷史上きわめて重要であり、押型紋系土器群の九州への拡大がこのころに当たるという点でも、大別の境界として適していると考えたためである。なお、早期については沈線文系土器群と押型紋系土器群が終焉を迎える野島式併行期(口縁部充填鋸歯文の広範な分布)を境としてそれより前を前半、以降を後半と呼んだ。早期は他の大別に比べ型式数が倍近く、理化学的年代測定でも他の大別の2〜3倍の期間が与えられていることからも、大別に準ずる区別が必要と思う。
  11. 編集に利用したシステムmade_by.hymを御覧いただきたい。

 序 言   参考文献

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