一斗内松葉山遺跡(安達郡安達町油井字松葉山地内)
現地説明会資料

平成13年5月9日(水)午後1:30
安達町教育委員会

調査指導委員会 委 員 長 渡邊一雄(福島県考古学会)
        副委員長 藤原妃敏(福島県立博物舘)
        委  員 工藤雅樹(福島大学行政社会学部)
        委  員 早田 勉(古環境研究所)
        委  員 鶴丸俊明(札幌学院大学人文学部:日本考古学協会推薦)
        委  員 柳田俊雄(東北大学総合博物館:日本考古学協会推薦)


調査指導機関 岡村道雄(文化庁文化財部記念物課)
       大平好一(福島県教育庁文化課)
       小林雄一(福島県教育庁文化課)
       山岸英夫((財)福島県文化振興事業団)
       三浦武司((財)福島県文化振興事業団)

調査主体 安達町教育委員会

調査協力 東北旧石器文化研究所
     長友恒人(奈良教育大学)
     梶原 洋(東北福祉大学)

調査経緯

 一斗内松葉山遺跡は1999年10月に民間の考古学研究所副理事長をはじめとする研究者により発見されました。その際に、表面採集された石器1点のほかに、三つの時間差がある地層(地層番号11層、19層、22層)の断面から計13点、合計14点の石器が発見されました。また、2000年3月には、遺跡発見者を中心とした調査団により第1次発掘調査が実施されました。発掘調査では、1999年に発見された地層を含め、二つの時間が異なる地層(22層、34層)から石器が出土しています。発掘調査により石器が発見された場所は、1999年に石器が発見された場所とは異なる地点であり、22層の地層から12点の石器が直径60cmの範囲内に平面的に1つのまとまりを形成して発見されました。また、これより古い34層の地層からは、5点の石器が直径80cmの範囲内に平面的なまとまりを形成して発見されました。遺跡北側の斜面の19層の地層断面からは、1999年に石器が発見された地層と同じ地層から3点の石器が発見されました。
 一斗内松葉山遺跡は、発見当初、石器が発見された地層の年代が非常に古く(約60万年前)、原人達が生活していた前期旧石器時代に相当する日本最古級の遺跡として評価されていました。しかし、2000年11月に民間の考古学研究所の副理事長による石器発見のねつ造が発覚し、副理事長が関与した日本各地の遺跡の考古学的評価が問題となりました。一斗内松葉山遺跡も副理事長が関与した遺跡であることから、その発見成果に関する評価が問題となりました。
 一斗内松葉山遺跡は、2000年の調査団による発掘調査後に遺跡の土地所有者から個人住宅建設の申し出がありました。また、一斗内松葉山遺跡が、歴史的に重要な遺跡であることから、石器が発見された場所とその周辺の考古学的調査が必要となりました。こうした経緯により、本年4月9日より5月11日まで遺跡の試掘範囲確認調査を実施することになりました。
 今回の調査は、最初に1999年の石器発見場所や調査団による第1次発掘調査による石器発見場所を確認し、石器が出土した地層や石器が出土した状況を枚討しました。さらに、これらの石器発見場所周辺の地層中に石器が残されているかを検討するため、新たに調査区(1)から(12)までの地点(第1図参照)を発掘しました。
 調査の結果、調査団による発掘地点やその周辺から遺物は出土しませんでしたが、(1)地点と(8)地点間の19層の地層から1点(遺物No.1)、(4)地点と(7)地点間の11層の地層から1点(遺物No.2)の合計2点の石器が発見されました(第1表参照)。
 今回の調査で発見された2点の石器を検討した結果、以下のようなことがわかりました。

  1. 石器を地層から掘り起こした際に、地層に本来残るべき石器の型跡が確認されなかった。
  2. 包蔵されていた石器の裏面には、包蔵されていた地層と異なる土が什着していた。
  3. 石器の裏面に接する地層には、地層を人為的に掘ったと思われる痕跡が認められた。

 したがって、2点の石器は、長い間遺跡の地層に包蔵されていたと考えるには、きわめて不自然であることがわかりました。

遺物番号 No.1No.2
日時5月1日午後4時10分頃5月2日午前9時3分頃
発見湯所(1)・(8)トレンチ間(4)・(7)トレンチ間
出土状況調査範囲の南西斜面上の旧地表面を精査中に、19層表面に張りつくように出土 調査範囲南西の縁辺部で10層を精査中に、ロームが塊状で崩落した部分の直下から出土
出土層位19層(第2文化層)?11層(第1文化層)
原位置の保存状態 草削りに引っかけ原位置を移動している。作業員が推定出土位置に石器を保存 石器土面を覆うロームのみが剥落、石器は原位置を保存
石器の傷出土時に形成なし
石器の付着物ロームあり
写真記録ありあり

第1表石器発見時の記録

第1図(76KB)


掲載にあたって
  1. このページは、安達町教育委員会が作成・配布した一斗内松葉山遺跡現地説明会資料を転載した
  2. 転載元の資料はA4版3頁(本文2、付図1)であり、これをOCRにかけ、HTMLで整形した
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