夏の山旅迷走記

立山室堂〜なぜか北八ヶ岳 ・・1994.8.15〜18


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 嫁はんが子供を連れて実家に帰った(注:逃げられたんではなく、単なる里帰りである)。いつもなら、また、このチャンスに男のロマン、一人旅となるのだが、今回は慣れぬ海外旅行から帰ったばかりで、どうも体調、特に腰の調子そして財布の中も思わしくなく躊躇する。しかし、嫁はん子供のいないときにどこにも行かないなんて、損したみたいで、意地でもどっか行こうと思う。

 目的地はまずは、立山。室堂から剣沢を下り、欅平にいたるコースが今回の予定だ。主目的はもちろん温泉、露天風呂である。室堂の日本最高所のみくりが池温泉をかわぎりに、仙人湯、阿曽原温泉、名剣温泉、祖母谷温泉、ここまでは登山道沿いの温泉で露天風呂もある。そして欅平からのトロッコ電車の沿線には鐘釣温泉、黒薙温泉そして終点宇奈月温泉がある。このうち、いくつ入れるかはわからないが温泉、露天風呂のハシゴをしようという計画だ。

8/15(月)

 大阪から特急雷鳥で、富山へ。立山からケーブル、バスを乗り継いで、昼すぎに室堂着。早速、みくりが池温泉に行くが、ここは予約客でいっぱいだ。さすが、盆シーズン、室堂の小屋(というよりほとんど旅館だが)は、とびこみでは泊まれない。とりあえず温泉だけ500円払って入る。硫黄がたっぷりの白濁したお湯だ。

 でも安心、雷鳥沢ヒュッテという強い味方がある。わたしゃ、結局、いつもこの小屋に泊まることになるのだが、室堂ターミナルから離れているせいか、どんな混んでいる時期でもまず、泊まれる。そして相部屋といっても、かいこ棚のベッド式なんで、寝やすい。食事もボリュームがあり、風呂も温泉で、浴場はこの辺でいちばん広い。他にすることもないので、ここで2回風呂に入った。今日だけで既に入湯が3回。
 1日目からこんなんでは、下山したときは完全にふやけきってしまいそうだ。こんな軟弱な登山の姿勢でいいのだらうか?ま、いいか。【雷鳥沢ヒュッテ泊】

8/16(火)

 午前6時、雷鳥坂を登り始める。膝が痛い。それまでは腰の調子が悪く山でギックリ腰になったら笑い者だななんて心配してたのだが、もうひとつの爆弾膝の方を昨日、やってしまったようだ。温泉に入って一晩寝れば治るかと思っていたのだが宿の階段を降りるときでさえ痛い。

 登りは、そんなに痛くないので、しばらく雷鳥坂を登っていたのだが、考えてみると、今回のコースはほとんど下り坂だ。果たして膝が耐えられるだろうか?3分の1ぐらい登った所で立ち止まった。10分ほど考えて、決断。ええい、もう、やめた。そして、痛む膝をかばって慎重に降りていく。痛い。こんなに痛むとは・・やっぱりやめて正解だった。

 しかし、せっかく別天地に来たのに、あの猛暑の下界に帰る気にはなれない。室堂から美女平のあたりにずっととどまってバードウォッチングでもしたいのだが、このお盆シーズンでは、泊まるところはまずないだろう。というわけでいつものパターン、困ったときの八ガ岳の登場だ。北八ガ岳をぶらぶらしてバードウォッチングをやろうという算段である。北八つなら、北アに比べれば平地みたいな地形だから、あまり膝に負担もない。それに、ここは夏でも鳥が多い。さらに山小屋も多いから、足のむくまま、気のむくままに歩いて、気に入った小屋に泊まるという、私みたいな放浪タイプにはぴったりだ。実は、過去八ガ岳に行ったときって、すべて別の登山のついでに寄ったものだ。天気が悪くなったり、日程があまって早く帰るのがもったいなくなったりして、急遽立ち寄るんで地図も当然はじめから持っておらず、その都度地元で買うことになる。かくして、我が家には八ガ岳の地図ばかりたまっていき、現在6つもある。

 いきあたりばったりではあるが、決断すると切り替えが早いのが私の特徴で、さっさとアルペンルートの大町側に向かう。富山から上がって、室堂をうろうろして大町に降りるなんて、考えてみると完全に観光コースぢゃないか。ま、いいか。朝早いこともあって、意外に乗り継ぎはスムーズだ。逆コースの大町から室堂に向かうのなんてもう人、人、人ばっかしで、2、3時間待ち!さすがお盆シーズンである。
 ということで、乗物の威力はすごく、朝、雷鳥坂を登っていた私が、なんと昼すぎには、北八つの入口、麦草峠に立っていたのである。ここから、1時間少し歩けば、高見石小屋とか白駒池畔の青苔荘、白駒荘などに行けるのだが、やっぱり膝が痛くて、これ以上歩く気がしない。完全に気持ちが挫けて、結局バス停のある麦草ヒュッテに泊まることにする。
 ここは山小屋と言っても道路沿いにあるので、一般観光客も多く、予約が原則だと聞いている。泊めてくれるかなーとおそるおそる聞くと、意外や個室も空いていますよと言われた。昨日までは混んでいたそうだが、この日は、100人以上は寝られる大部屋に、たった4人だけ。小屋全体でも、15人ぐらいの客しかいなかった。
 今年は夏山でも水不足は深刻で、天水に頼っている小屋はもちろんだが、今まで雪渓の雪解け水で十分まかなえていた小屋まで水不足で、ヘリコプターで水を運んだり、閉鎖を考えている小屋もあるらしい。それにくらべると、北八つ周辺は、恵まれているようで、麦草ヒュッテはゆっくり一人で風呂まで入ることができた。

 到着が早かったので、小屋の前に広がる麦草園地というお花畑(もちろん高山植物が自生しているのだが)の中に建てられた四阿に、コンロと文庫本を持って行き読書と昼寝、そしてコーヒーを沸かしたり、おやつを食べたりという優雅な午後を楽しんだ。
 高山植物の方はもう秋の装いで、リンドウが主役だ。ヤナギランも咲いている。あのまま引き返さなかったら、今頃、痛い足をひきずって仙人池の坂を汗だくになって登っているんだろうなあとか、下界は、また35度以上の暑さなんだろうなあなんて思いながら、涼風の感触を楽しむのもまた格別だ。

 今年の猛暑は山にまで及んでいる。前述の雪渓が解けて水不足というのも暑いのが原因だ。立山でも、普段なら山スキーをやっているはずの雪渓がとけてなくなっていたし、最高気温もなんと22度まであがったと言っていた。そういえば、半そでシャツでもそんなに寒くない。とは言っても、下界に比べると断然涼しくて快適だ。極楽、極楽。ということで、夕方までずっと昼寝と読書。
 夏山登山のはずが、いつのまにか、えらい軟弱な避暑地風の過し方になっちゃった。【麦草ヒュッテ泊】

8/17(水)

 今日は、北八つを1日ぶらぶら散策するつもりだ。どこといってあてはないが、バードウォッチングは目的の一つなんで、とりあえず、あまり人が通らないようなコースを選ぶ。
 この北八つは、亜高山針葉樹林帯であるが、そこらの山の人工スギ林などと違って、いろいろな針葉樹もあれば、広葉樹も混在し、下草もたくさん、生えている。そして、なにより魅力的なのは、地面に、そして幹にもびっしりと生えたビロードのような苔である。朝もやにつつまれた、この苔に覆われた林の中で、小鳥の声を聴きながら佇んでいると、なんとも形容しがたい幽玄な雰囲気に、魂を奪われそうになってくる。ホントいいところだ。
 下界では真夏の鳥枯れの季節なのに、ここでは、いっぱい鳥が出てきてくれる。出てきてくれると書いたが、まさにその通りで、少し開けたところで待ってると、鳥の方から来てくれるのである。気がついてみると、あれだけ痛かった膝の痛みがほぼ消えている。しかしこんな素敵なところを黙々と歩くだけではもったいない。双眼鏡を手に、ゆっくりと目で耳で楽しみながら歩いていった。

 ここ北八つは、動物との出会いもなかなか多い。山小屋ではリスやオコジョ、モモンガなどがエサ場に来るのを売り物にしているところもある。最近は、どこの小屋でもやたら流行り出して、ちょっとやりすぎかなと思わんこともないけどね。人間と他の生き物との共生というコンセプト自体はいいんだけど、生態系の破壊ということになると・・・でも、もういい加減破壊されちゃってるから、いいのか?特に、リスは結構あちこちで見られる。

 さて、朝から全く人間と出会わないコースを歩いているとき、突然、ニホンカモシカとニアミス。登山道のすぐ横に仁王立ちしてるではないの。こちらが近づけば逃げるだろうなと思いながら歩いていっても逃げない。
 頭には立派な2本の角をはやしている。2,3mぐらいの距離になってとうとうこっちがびびって、立ち止まってしまった。相手はカモシカとはいえ、こんだけ近くではやっぱりコワイ。しかも、相手は逃げるどころか、こっちにガンを飛ばしてきよる。で、私もぐっと睨んでやると、数歩向こうに歩いて、モグモグやって、またこちらを睨んでくる。それを数回繰り返してとうとう山の奥の方に行ってしまった。
 至近距離だったから、ホントこわかったなあ。別に、近くに子供がいて守っているということもなかったんだけど。人間にニアミスしなければいけないほど、追い立てられているのかな?八ガ岳山麓って、かなり上の方まで別荘地になってきたしねえ。また、猛暑の影響で、食べ物がなくなってきたという心配もある。後から考えれば、カメラを持っていれば、最高のシャッターチャンスだなと思ったが、こういうときに限って、持ってないのね。ナントカの法則だな。

 今まで通ったことがなくて人がすくなそうなコースを選んでいると、しまいに、登山口のひとつに降りて行ってしまった。渋の湯という温泉があるところだ。そういえば、本来の目的は温泉巡りだった。ここは露天風呂ぢゃないけど、旅館の風呂に入って行こうかなと思ったら、生憎、掃除中だった。ま、いいや、茅野駅までのバスも出てるし、明日はここに下山して風呂入ってバスに乗ってもいいなとチェックしておく。
 そこから、また1時間弱歩いて唐沢鉱泉という別の一軒宿にも出たが、ここは入れてくれないみたいだった。ま、鉱泉っていうぐらいだから、沸かさなきゃいけないんだろうね。

 いっぺん麓まで降りていって、また登っていくというヘンなコースで、北八つ周辺を迷走して行く。でも、こういうコースのおかげで、鳥はいっぱい見ることができた。黒百合平まで出てきて、さて北か南かどちらに行こうかと迷う。本沢温泉に泊まってひと風呂浴びるかとも考えたが、何度も行ったことがあるので、まだ行ったことがない高見石小屋に泊まることにする。ここから昨日泊まった麦草ヒュッテはすぐで、結局ぐるっとほぼ1周したみたいになってしまった。

 高見石小屋はなかなか素朴な薪ストーブとランプの小屋で、天体望遠鏡が置いてあって、夜には天体観測があるらしい・・と思いきや、夕方からひさしぶりの雨。天水に頼っている小屋の人は喜んでいたけどね。 この小屋では、その日の泊まり客は、なんと私ひとりだけ。おかげで、夕食のコンロの上の鍋のシチューや、ポットのお茶、朝食のポットの紅茶など私一人で、独占飲み放題で、贅沢な気分。この小屋は素朴で雰囲気もいいし食事もなかなかよく、朝食はロールパン(食べ放題)にジャム、バター、ハムエッグ、サラダ、フルーツ、紅茶という洋朝食メニューで山小屋では珍しくうれしかった。南八ヶ岳に比べ、総じて山小屋の雰囲気がいいというのも私が北八つを好きな理由のひとつだ。【高見石小屋泊】

8/18(木)

 朝食後、小屋の前に荷物を置いて、高見石に登る。小屋のすぐ後ろに岩が小高く突き出ているところで、見下ろすと白駒池がとても綺麗ないい展望台だ。目をあげると、南アルプスや北アルプスも見える。

 しばらく、ぼーっと眺めを楽しんでいると、少し離れたところに十数人のパーティがきた。なかになんとギターを抱えてよじ登ってくるやつもいる。イヤな予感がしたがやはり、朝っぱらから、歌い出したねー。なんか、イエス様は神様だもの〜なんてやってる。おいおい。

 すると、今度は、はるか下方から、ダミ声の合唱(?)が聞こえる。3班はがんばるぞー、おーとか、もう少しだ、がんばれー、おーとか・・・。これって、樹林と湖と苔の北八つとは全く似合わないと思うけど。だいたい、そんながんばらなくっちゃいけないほどキツイとこなんておまへんで。
 まあ、私も含めて、山に登って楽しもうという人間は、程度の差はあれ、それぞれ自分なりに自己満足、自己陶酔しておるわけで、他人の趣味をとやかく言う権利はないんだけど、周りに迷惑をかけたり、自然の雰囲気を壊したりするのはヤメてほしいものだ。別にクマが出るわけでもなし・・・・。

 ダミ声の一団が通りすぎてから、彼らが来た白駒池の方に降りて行く。ここも鳥がとっても多い。あんなにのべつまくなしにダミ声張り上げなければ鳥の声や姿が楽しめたものを・・・・。 白駒池には池畔に2軒の小屋があり、貸ボートなんか浮かべてたりするし道路、駐車場から近いから、結構、観光客も来たりするみたいだが、そのわりには、荒れておらず、静かないい雰囲気を保っている池である。なにしろ池の水は飲料水にもなっているんで、小屋も神経を使っているんだろう。池の周りは1周できるようになっていて、苔むした樹林帯の眺めは最高だ。

 高見石小屋に戻ってザックをかつぎ、真っ直ぐ渋の湯めがけて下る。バス停の前の渋御殿湯という旅館で、バスの出発時刻までゆっくり温泉に入り、ヒゲを剃り、すっかり新しい服に着替えてさっぱりする。ここも硫黄の温泉で、武田信玄の隠し湯という伝説があるらしい。

 茅野駅まで行って発見したが、茅野−大阪間には、1日3便も直行バスが走っているではないか。料金も¥5500か¥6000。八ガ岳という山は、東京からだとごく気軽に行けるが、大阪方面からは鉄道を使うと、時間も料金もかかって不便だ。大阪からの夜行バスは知っていたが、茅野からも1日3便も大阪直行バスがあるとは知らなかった。これは関西から八ガ岳への行き帰りに非常に便利で安い!オススメね。  

北八ヶ岳の野鳥

今年の夏のあの猛暑に、鳥もなかなか姿を見せてくれないようですが
山に行けば、結構、姿も声も披露してくれます。


8/15,16:立山(室堂平、室堂山、浄土山、雷鳥沢周辺)

イヌワシ、ライチョウ、イワツバメ、イワヒバリ、カヤクグリ

8/17,18:北八ガ岳

キジバト、アカゲラ、オオアカゲラ、コゲラ、イワツバメ、ビンズイ、
ミソサザイ(声)、コマドリ(声)、コルリ、ルリビタキ、クロツグミ(声?)
アカハラ(声?)、ウグイス、メボソムシクイ、キクイタダキ、エナガ、
ヒガラ、ゴジュウカラ、キバシリ、ウソ、ホシガラス


 北八つでは、登山道を歩いているだけ、広場で休憩してるだけで、鳥の方から、やってきてくれます。真夏に、これだけ鳥が見られるとは幸せの一言です。久しぶりに、亜高山帯の小鳥に、いっぱい出会うことができました。
 クロツグミは、過去、いろいろだまされてるので、自信ありません。アカハラも声を聴いただけなんで、他のツグミ類の可能性もあり、自信ありませんなあ。

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