夏の山旅迷走記


白根三山縦走之巻1990.8.2〜8/4

 野鳥、高山植物リストへ


 関西在住の者にとって、南アルプスは、北アルプスにくらべて交通の便が悪く、かなり遠いなあというイメージがある。これは、一念発起して青春18切符(買うのが恥ずかしかった)で南アルプス初体験の旅に出発したときの記録である。8/1松本到着までは、各駅停車の旅つまり普通の観光旅行なので省略。

8/2

 

 前夜、松本に泊まり、始発で甲府へ。そこからバスに乗ること2時間15分、やっと登山口の広河原に到着。アルペンプラザというこぎれいな施設で昼食後、大樺沢二俣まで歩く。
 コマドリ、ミソサザイの声が頻繁に聞こえてくる。今年は雪渓は少ない。二俣でザックを降ろし、一帯の高山植物の写真を撮りまくる。その後、白根御池小屋に向かうが、このコースは、高山植物も多いし、鳥も多く、カメラや双眼鏡を持ち替えるのに忙しい。小屋に荷物を預けた後、もう一度、双眼鏡を持ってバードウォッチング。(白根御池小屋泊)  

8/3

本来なら、白根御池小屋から小太郎尾根まで直登するのだが、もう一度二俣まで引き返して、早朝バードウォッチング。結局、このコースは3往復したことになる。おかげで、亜高山帯の鳥、ルリビタキやメボソムシクイを至近距離で見ることができた。このへんの鳥はあまり人を恐れず、ルリビタキなどずっと道案内をしてくれた。鳥に関しては、あまり期待してなかったのだが、予想外の収穫だ。ほかにキクイタダキ(カワユイ!)、オオアカゲラともひさしぶりに対面する。

 二俣からは、右俣コースを登る。樹林帯あり、雪田あり、明るく広いお花畑ありのとっても楽しいらくちんコースで道草したくなるようなところがあちこちある。肩の小屋で標高3000メートル。今までと違って岩礫地特有の高山植物が多い。 それまで、ハンドブックをめくって名前を調べても、結局名前がわからずにとりあえず写真だけ撮ってきた場合が多かったのだが、ここで、救世主の熟年おばちゃんグループが現れる。一人、やたら詳しいおばちゃんがいて、解説してくれるのだ。しばらく、そのおばちゃんについて歩いたおかげで、キタダケヨモギ、タカネマンテマなどの北岳特産種や希少種といわれるものを写真に撮ることができた。

 北岳山頂は標高日本第2位にしては、わりと穏やかな感じだが、展望はさすがに抜群で、北には、ドーンと甲斐駒と仙丈岳がカッコよく迫り、その向こうには八が岳が見えるのだが、北アルプスから見える姿よりはずっとカッコよい。そしてそのはるか向こうには槍穂高が屏風のようにそびえている。南を向けば、富士山、南アルプス南部の山々(名前はあまり知らない)が連なる。下りるのが惜しくて、昼食時間も含めて1時間半も山頂にいたぐらいだ。

 ここまでは、ほんとにのんびり、ウォッチングと山歩きを楽しめ、最高だった。しかし、本日の宿泊予定、北岳山荘に着いて状況は一変した。貼紙を見れば、「本日、超満員につきふとん1枚につき3人」とのお知らせ。白根御池小屋もこんでいて二人でふとん1枚だったが、3人で1枚というのはきつい。それだけなら、まだいいのが、つづいて別の貼紙。「台風10号が接近しつつあり、明日から天候悪化の予測」。「ガーーン!」

 初めの予定では、今日北岳山荘に泊まって第三日目の明日は、北岳山荘ー間ノ岳ー農鳥岳ー大門沢小屋。第4日目=大門沢小屋ー奈良田という、山中三泊の、のんびり歩けるはずのものだった。だが、稜線上で悪天に見舞われては悲惨だ。天気のいい今日のうちに稜線を歩いておこうと、もう3時間がんばって次の農鳥小屋まで足をのばすことにした。小屋に着いてホッと気を抜いた後での予定変更だったんで、ホンマにしんどかった3時間だった。

 その日は、午後になっても珍しくガスがかからず、終日快晴。Tシャツ、半パンという姿で初めは左右の大展望と快適な稜線歩きを楽しんでいたのだが、標高3000mのおかげで、大量の紫外線を浴びて、腕と足が真っ赤に焼けてしまった。午前中は、体の左半分だけ焼けて(南に向かって歩いていたもんで)、変な具合だったけど、午後からも農鳥小屋まで足をのばしたおかげで残りの右半分も焼けて両面グリルみたいに体全体こんがり焼けたという次第。その晩は手足がひりひりして眠れなかった。歩いてるときは、なかなか快適で、ニッカボッカなんてダサいぜっていう感じで闊歩してたんだけど・・・

 山の夜は、さすがに星空が近く見える。星がいっぱい見えすぎて、見なれた星座がわからないほどだ。天の川なんか、ほんとにミルクをぶちまけたように真っ白く見える。真東に甲府の夜景が見えるのだが、そんなに星空には影響がなく、3時頃起きて見たときなど、その甲府から、オリオン座が上ってきつつある姿が印象的だった。なにしろ、自分より下に星が見えるんだもんね。 それに、流れ星の多さにはびっくり。寒いから、あんまり外にはいなかったんだけど、しょっちゅう流れいた。ふだんは、見えないだけで、実は、しょっちゅう流れているんだろうか。それとも、たまたま、多い時期だったのか?(農鳥小屋泊)

 

 

8/4

今日は天候が変わらないうちに一気に下山することにした。もともと、下りは苦手で、すぐ膝を痛めてしまうのに、今日のコースは標高差2200mを1日で下ってしまうというのだから、キツい。登りだけの山ってないかしら。ちなみに私は伊吹山に登ったときは、下りはいつもバスで帰ることにしている。

 しかし、この日は幸先がよかった。西農鳥岳に登ったところ、朝だから当然、東から日の光が射してくるのだが、西側が突然ガスってきたのだ。そして西側の谷を覗くと、ジャジャーン!!空中にまん丸い虹の輪ができ、その中に人影が・・・そう、生まれて初めてブロッケン現象を目撃したのであった。実は前夜の農鳥小屋も満員で、遅く着いたわたしなど、朝食の順番は最後で、小屋を出発したのも最後だったが、そのおかげでブロッケンを見ることができたというわけだ。

 農鳥岳から先は、ひたすら下るのみ。膝に爆弾をかかえているので、おそるおそる下る。この辺になると、カメラや双眼鏡はしまいこみ、ひたすら歩くのみだ。大門沢小屋へは、だいたい標準タイムで到着。安心してホッと息を抜いたのが悪かった。ここから、奈良田までの下りの3時間半が恐ろしく長いのだ。目標物も何もないダラダラした下りだからうんざりする。それに暑苦しい。だから、沢にぶつかるたびに味比べと称して、水をガブのみして、お腹はチャッポンチャッポン、しかも膝をかばって歩くので、疲労感は倍増。鳥の声も少しは聞こえていたが、聞く余裕なんてなかった。麓に近づいてきたころには案の定膝が痛くなり、ほとんど足をひきずる状態で発電所付近まできた。

 林の中から道路に出ると、奈良田の民宿や旅館の車が下りてくる登山者を待ちかまえていた。大門沢小屋で予約しようとしたのだが、いっぱいで行ってみないと部屋があるかどうかわからないという。とにかく車に乗せてもらって着いた先がたぶん奈良田で一番よさそうな旅館の「白根館」だ。結局、相部屋ならということで泊まることができた。相部屋でもなんでも、三人でふとん一枚にくらべりゃ上等だ。

 急いで下ったのに予想されていた台風10号の影響は全くなし。でも、一気に麓まで下りたおかげで、奈良田でゆっくり温泉につかり、旅館のひさしぶりにまともな食事をとることができて、よかったといえばよかったけどね。この「白根館」という旅館は総桧の立派なお風呂で24時間入浴OK。おかげで体の疲れがとれ、ゆっくり休むことができた。食事もなかなか豪華で(南アルプスの小屋の食事って質素だから余計にそう思えるんだけど)、これで1泊2食つき6000円というのは安い! (白根館泊)

 

8/5

奈良田には「奈良田の里」という施設があり、温泉にも入れるし、白籏史朗山岳写真記念館もある。とても感じのいい温泉だ。翌日は奈良田からJR身延駅にバスで行き、そこから東海道線に出て、また青春18切符で大阪へと各駅停車の旅を続けた。  初めての南アルプスだったけど、北アルプスなどに比べて、全体的に素朴さが残ってるという感じだ。山もダイナミックさには欠けるが、ひとつひとつが大きく、懐が深い。当然、自然もまだ残されているんだろう。今度行くときは、ただ通りすぎるんではなく、どこかに拠点をかまえじっくり自然観察をしたいものだ。

南アルプス(北岳周辺)の鳥

亜高山帯(広河原ー大樺沢ー小太郎尾根)

ウグイス、コマドリ、キクイタダキ、ミソサザイ、ヤブサメ、エナガ、
シジュウカラ、カケス、ハシブトガラス、コゲラ、オオアカゲラ、アカゲラ、
ルリビタキ、メボソムシクイ、カヤクグリ

高山帯 (稜線上 = 2800ー3100m)

イワヒバリ、アマツバメ


北岳の高山植物

【大樺沢 ー 白根御池 ー 小太郎尾根 間】

○ヤマホタルブクロ  ○ミヤマシシウド?○クガイソウ   ○ミソガワソウ
○キタダケトリカブト ○シモツケソウ  ○イブキトラノオ ○ミヤマハナシノブ
○タイツリオウギ   ○ヤマハハコ?  ○カラマツソウ? ○コガネギク
○トモエシオガマ   ○ヨツバシオガマ ○マルバダケブキ ○タカネナデシコ
○キタダケキンポウゲ ○センジュガンビ ○ミヤマアカバナ ○ハクサンフウロ
○タカネグンナイフウロ○シナノキンバイ(又はミヤマキンポウゲ?)
○ミヤマシャジン   ○カニコウモリ

【小太郎尾根 ー 肩の小屋 ー 北岳 ー 北岳山荘 間】

○チョウノスケソウ ○タカネスミレ   ○イワベンケイ  ○ハハコヨモギ
○キタダケヨモギ  ○タカネマンテマ  ○ミヤマオダマキ ○ミヤマシオガマ
○トウヤクリンドウ ○チシマギキョウ  ○イワギキョウ  ○コイワカガミ
○タカネツメクサ  ○イワツメクサ   ○シコタンソウ  ○コバノコゴメグサ
○ミヤマダイコンソウ○イワウメ     ○アオノツガザクラ


他にもたくさん見てるはずだけど、確認できたのは、これだけ。いやあ、ほんまに花の宝庫だった。白馬岳に匹敵するぐらいだ。特に、お花畑の中を縫って歩いた登山道は最高!


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