Anthony Moore (More)

 1970年、アンソニー・ムーアは、ピーター・ブレグヴァッド、ダグマー・クラウゼらとスラップ・ハッピーを結成する以前にドイツに移住し、実験音楽のサントラの制作を手伝うことから映像ジャーナリストのウーヴェ・ネッテルベックと前衛ロック・バンドのファウストのメンバーらとの交流が始まり、ネッテルベックのバック・アップで、ドイツ・ポリドールと契約し3枚の実験音楽アルバム(3作目は98年にCD化されるまで日の目をみなかった)を制作する。
 ソロ活動と並行する形で71年からスラップ・ハッピーの活動も始まり2枚のアルバムを制作した後、彼らは74年にヘンリー・カウのメンバーと合体し2枚のアルバムを制作するも、ダグマー・クラウゼが引き抜かれる形でピーター・ブレグヴァッドとアンソニー・ムーアはバンドから離れアメリカに渡る。しかし2ヶ月で英国に戻りスラップ・ハッピーとしてシングルのレコーディングもするが、その後メンバーそれぞれの活動へと移ることになる。
 76年にソロとしてヴァージンと契約したアンソニー・ムーアは、以前の前衛的なアルバムとはうって変わり歌入りのポップアルバム「OUT」を制作するが発売は中止される。その後スイスで、イエローのメンバーらと2枚のソロ・アルバムを録音したそうだが、これまた未発表となっている。しかしムーアは79年に名前を"Moore"から"More"と改名し「Flying Doesn't Help」、81年「World Service」84年「The Only Choice」と当時のオルタナティブやニュー・ウェイヴ・シーンからも評価されるような良質なポップ・アルバムを制作した。
 その後、彼のソロ名義のアルバムは発表されてはいないが、78年にケヴィン・エアーズの「Rainbow Takeaway」のプロデュースをしたのを皮切りにマンフレッド・マンズ・アースバンド「Watch」(78)「Angel Station」(79) にゲスト参加し、80年にはディス・ヒート「This Heat」をプロデュースするなど多くのアルバムに参加するようになり、ピンクフロイドの「A Momentary Lapse Of Reason」(87) へは歌詞を提供し、その後リック・ライト「Broken China」(96) では作詞・作曲・エンジニア・プロデュースとマルチな才能を発揮している。
 そして98年驚くことにスラップ・ハッピーが純粋なる新作「CA VA」を発表し、2000年ライヴ活動をほとんどしていなかった彼らが日本に来てすばらしい演奏を披露してくれました。

Anthony Moore「Pieces From The Cloudland Ballroom」

ムーアの1作目。テープ・ループ、ディレイ、逆回転に呪文のような肉声アンサンブル等、現代音楽やアンビエント・ミュージック的な実験音楽。唯一3曲目がミニマルなロック的ナンバー
[1971 Polydor]

Anthony Moore「Secrets Of The Blue Bag」

実験音楽2作目。「ド・レ・ミ・ファ・ソ」の5音階が延々と反復される、3つのバリエーションを収録したチェンバー音楽。

[1972 Polydor]

Anthony Moore「Reed, Whistle And Sticks」

72年に録音されたが98年にCD化されるまで日の目を見なかった極めつけの実験音楽3作目。竹筒などを転がしたディレイ音の反復のみが延々と続く作品。99のトラック数には意味があるのか?
[Blueprint 1998]

Anthony Moore「OUT」

77年に制作された彼の幅広い音楽性が垣間見られるポップなアルバム。デヴィッド・ベッドフォードがオーケストラ・アレンジを担当し、ピーター・ブレグヴァッドも参加している。
[Voiceprint 1997]

Anthony More「Flying Doesn't Help」

前作もお蔵入りしたため心機一転か?名前を「MORE」と微妙に変えて発表した良質なポップ・ロックアルバムですが、アレンジ等には彼のアヴァンギャルドな精神が感じられる。
[1979 Voiceprint 1994]

Anthony More「World Service」

CD化で内容がだいぶ変わっているらしいが、ファンクやエレ・ポップも取り込みさらに磨きのかかったカッコイイ、ポップなロック作品。

[1981 Blueprint 2000]

Anthony More「The Only Choice」

ヒップホップの影響もみられラップなども取り込みオルタナティブやニュー・ウェイヴ・シーンからも評価されるアルバム。ダグマー・クラウゼも参加

[1984 Blueprint 2000]

[ Slapp Happy & HENRY COW /Peter Blegvad & John Greaves/Dagmar Krause]

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