図2 腹面における検討箇所
セスジヒメハナカミキリの形質差
(日本海側タイプ/太平洋側タイプ)
1はじめに
姫川源流(長野県白馬村佐野)は分水嶺(姫川/千曲川)の姫川側である。姫川源流の畑脇にあったカラコギカエデに訪花していたセスジヒメハナカミキリ(以下カミキリは省いて記す)は表日本タイプ斑紋であった。驚くとともに,セスジヒメハナを調べてみたくなった。以前より上州武尊山付近では太平洋側タイプ(オモテセスジ)と日本海側タイプ(ウラセスジ)とが認められており,両者の分布境界に興味が持たれた。そこで手持ちのセスジヒメハナを中心に日本海側タイプ/太平洋側タイプの分布境界について整理することとした。そのために先ず,日本海側タイプ/太平洋側タイプの形質を抽出した。その上で地図上に両タイプの確認地をプロットした。
 
2形質比較箇所
日本海側タイプ/太平洋側タイプとは℃のようなものかを明確にするため,各地のセスジヒメハナについて比較した。
比較検討した箇所は次に示す部分である。図1は背面側,図2は腹面側である。
図には典型的太平洋タイプとして山梨県日川林道の個体と日本海タイプとして新潟県広堀川の個体によって比較箇所を示した。

 図1 背面における検討箇所
喉付近が白(褐色)か黒かの違いが認められます。
S紋が小楯板付近で大きさが異なること,Lp紋の有無に違いがあることがわかります。
 
 

 

3比較結果
日本海側タイプ/太平洋側タイプの形質差について図1および図2の箇所を調べた。
その結果以下の部分には明らかな違いがあることがわかった
 1)小楯板付近でのS紋の大小
 2) Lp紋の有無
 3)喉・頸の白/黒 に違いを認めた。

各地のセスジヒメハナについての比較結果を表1に示す。
 
4分布境界
ここでは形質差が顕著であるS紋とLp紋について表1の結果をもとに地図上にプロットしてみた。
以下の図では赤色ポイントが日本海側タイプ
緑色のポイントが太平洋側タイプを示す。
先ずS紋における日本海側タイプ/太平洋側タイプの分布を図3に示した。
また,図4にはLp紋での日本海側タイプ/太平洋側タイプの分布を示した。
 
5結  言
 1. 日本海側タイプ/太平洋側タイプの形質差は
  1) 小楯板付近でのS紋の大小
  2) Lp紋の有無
  3) 喉・頸の白/黒 に違いを認めた。
 2. 両者の分布境界は日本海海岸付近では富山/新潟県境→白馬→
   水上→武州武尊→福島県中通りあたりと推定された。
 3. 白馬周辺では親の原/白馬大池で異なる。
 
6今後の課題
 1. 境界を突き詰める,あるいは分布経路を考察するには
   未だデーター量が少なすぎる。
 2.北アでは標高差/時期による個体差について調査する必要がある。