メサイアってなんだ…!?


《その1》

 時は今を去ることおよそ260年前、ところは大英帝国の首都ロンドン。念願のオペラ上演が思いもよらぬ失敗つづきで、おまけに新しく始めた音楽学校も経営不振でポシャってしまい、この先どうしたものかと頭を悩ませている一人の初老の男がいました。彼の名はジョージ、ジョージ・フレデリック・ヘンデル。「もうオペラはこりごりだ!」当時ヨーロッパ全土でもてはやされていた、ブルジョワ趣味なイタリア・オペラは、高まりつつあったイギリス市民の啓蒙思想の流れにそぐわないシロモノとなっていました。「そうだ、英語で、英語の台本で作曲しよう。それも物入りなオペラではなく、もっと一般市民が気軽に楽しめ、それでいてドラマチックな出し物、そう、オラトリオだ!」と思ったかどうかは定かではありませんが、それ以降、彼は英語の歌詞によるオラトリオを多数作曲し、かつての栄誉と名声を取り戻したのでした。そして、その記念すべき代表作といえるのが〈メサイア〉なのです。

《その2》

 1742年4月、イースター(復活祭)の時期にあわせてダブリンで初演された〈メサイア〉は、以降今日に至るまで古典音楽の名曲中の名曲として連綿と歌い継がれてきました。その歴史の中には、この曲がお祭り向きの作品(!?)であるという性格からか、合唱が実に1万人を数えるという大時代的なものもあったと伝えられています。しかし20世紀も後半に入る頃には初演当時の演奏スタイルでやってみるのもイイんじゃない、というちょっとアカデミックな思潮もあらわれて、イギリスやオランダを中心にいわゆるオリジナル楽器(ピリオド楽器)と呼ばれる古楽器を使用し、オーケストラも合唱も当時の編成とピッチで、また女声のアルトパートはカウンターテノール、ソプラノは時によってはボーイソプラノに置き換えて演奏するプロフェッショナルなグループが登場し、日本でもCD等のメディアの流行も相まってバロック・ブームを引き起こしました。また、初回以来私達と共演してくれているテレマン室内管弦楽団も、その技法を採り入れ、コレギウム・ムジクム・テレマンの名で演奏活動を行っています。

《その3》

 ときは今を去ること20年前、ところは日本一のみずうみ、びわ湖を臨む滋賀県の大津市。東京やヨーロッパで学び、指揮者として活躍し、より良い音楽を広めるべくこの地にやってきた一人の青年がいました。彼の名は澤 正徳。びわ湖国体の記念オペラを指揮した彼は、それに参加した若手声楽家や合唱経験者達に呼びかけました。「メサイアをやろう!」当時の滋賀県はといえば、いくつかのアマチュア合唱団が年に一度の発表会を開いていたところで、一流のオーケストラやソリストを迎えて大作宗教曲の演奏会を開催するなんていうことは思いもよらないことでした。「やったろやないか!」彼の真意に共感したメンバーは無理を承知で奔走し、1982年4月、大津市民会館において第1回の〈メサイア演奏会〉が開催されました。以降、実行委員会としてはいろいろなこともありましたが、音楽を愛する人達の志と努力によって20回目となる今回の演奏会を迎えることになりました。〈びわ湖の春の訪れとともにメサイアを〉これからもこの言葉のもとに音楽大好き、合唱大好き人達が相集って湖国の春を謳歌しつづけていくことでしょう!


メサイアの歌詞(合唱部分)


《第T部 予言・降誕》

 4.

 そして主の栄光は顕れ、人類はみなともにこれを見る。それは主の口によって語られたからである。

 7.

 そして彼はレヴィの子等を清める。それは彼らが正義によって主に捧げものを捧げるからである。

 9.

 おお良い知らせをシオンに、エルサレムに伝える者達よ、声をあげよ。ユダの町々に告げなさい、見よあなた達の神を、見よ主の栄光があなた達の上に昇ると。

12.

 私達にひとりの子供が生まれた。私達にひとりの子供が与えられた。そして統治権は彼の肩におかれ、彼の名は驚嘆、助言者、全能の神、永遠の父、平和の君と呼ばれるであろう。

17.

 最も高いところでは神に栄光あれ、そして地上には平和、人類には親善あれ。

21.

 彼のくびきは容易く、彼の荷は軽い。

《第U部 受難》

22.

 見よ、世界の罪を取り除く神の子羊を。

24.

 まさに彼は私達の悲嘆を負い、私達の不幸を担う。彼は私達の罪のために傷つき、私達の不義のために打ちつけられる。私達の平安のために自ら懲罰を受ける。

25.

 そして彼の受けた鞭打ちによって私達は癒される。

26.

 私達は見な羊のように迷い、それぞれ自分の道を進む。そして主は私達全ての不義を自らの上に横たえる。

28.

 彼が、神が彼を助けると神が約束したのなら神に彼を救わせよ。もし神が彼を喜ぶのなら神に彼を救わせよ。

33.

 あなた達の頭を、門を、永遠の扉をあげなさい。そうすれば栄光の王が入ってくる。栄光の王とは誰か。力強く全能の主、戦いに全能の主、万軍の主である。彼は栄光の王である。

35.

 全ての神の天使達よ彼を崇めよ。

37.

 主は言葉を与えた。それを説く者の集団は非常に多い。

39.

 その声は全ての国々に響き渡り、そしてその言葉は世界の隅々まで行き渡る。

41.

 私達にその枷を粉砕させよ。そして私達からそのくびきを取り除かせよ。

44.

 ハレルヤ、全能の主たる神の統治に。この世界の王国は私達の主とキリストの王国となる。そして彼は永遠にそれを統治するであろう。王の中の王、主の中の主。ハレルヤ。

《第V部 復活・永生》

46.

 人によって死が訪れたのであるから、人によって死からの復活も来る。アダムによって全ての人が死ぬように、キリストによって全ての人が生かされるからである。

51.

 しかし神に感謝せよ。私達の主、イエス・キリストを通して私達に勝利を与えた神に。

53.

 その価値ある者は、屠られ、その血によって神に私達を救い出させ、力と、富と、知恵と、威力と、名誉と、栄光と、讃美を受ける子羊である。祝福と栄誉と栄光と力は、神の御座に座した者と子羊の上に永遠にありますように。アーメン。


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