* CEM3340 VCOの実験 * |
まずは評価ボード的な回路を組んで見ます。 回路は CES の CEV3301評価ボードのVCO回路と同様な回路としましたが手持ち部品の都合上値の違うものをいくつか使用。 写真のように 秋月の細長い基板に組んでみました。 この程度の部品規模で三角波、鋸波、矩形波出力,Sync, LineaFM OK、 scale, spanの温度補償内蔵,10octaveくらいは安定して発振できるフル仕様のVCOののコア部分が完成してしまいます。 この回路であればこの基板に2VCO分が搭載できます。 丹念に配線チェックはしたので一発で動きはしましたがどうも動作が変です。 CVを0Vから15Vまで可変している割には周波数変化が鈍いです。 配線に間違えはないようなので一部の抵抗の抵抗値を手持ちの抵抗で置き換えたことが原因かと思いましたがそういうことではないようです。 30年以上も前のパーツでは正常に動かないのかとも思いつつ回路図を再度眺めてみるとLinea 入力(Iref抵抗付近)から GNDにつなぐ抵抗470Ωを1Mと間違えて配線したことに気づき抵抗を交換したら正常に動くようになりました。 VCOの実験をするのに万能基板を使ったら老眼がけっこう来ててつらかったです。基板裏が銀メッキをしてある物は疲れました。 銅箔の方が疲れませんので今後は秋月の紙フェノール基板を使うようにします。 評価回路は上図のようなものになります。 なによりこのIC 1つだけで他にOPAMP等もとりあえずは必要ないというのはかなりのメリットだと思います。 消費電流もプラス側が4mA, マイナス側が5mA程度なで手軽です。 大まかにスケール調整をしてCVを0Vから15V入力してみたところ CV-0Vで約1Hz、 CV=14.3Vで約14KHzの発振を確認しました。 推奨回路では Iref用の抵抗がVcc=15Vで1.5MΩだったのでIref=10uAだったのですが1.5Mの金皮が無かったので1Mを使用したのでIref=15uAとなります。 Irefは3uAから15uAの範囲で設定されていればよいようなのでその範囲には入っていますが実用時には推奨阿値の1.5MΩにした方がよさそうです。 moduleとして実際に使用する場合は scale設定の半固定を多回転にした方がよいかとか、 固定 CVを与える時の方法としてOctave切り替えをつけるのか連続可変で Coase tuneとするか悩むところです。 また外部CV=0V時のOFFset電圧すなわちinitialの発振周波数の設定を決める必要が出てきます。 A4=440HzとしてC1のキーで65Hzとするとこの時 Key CV=0Vとすれば この実験回路ではinitialのOFFset電圧は6V程度(6octaveのoffset)あればよいのでしょう。 上の写真に出力波形を示します。 CEM3340は三角波を源波形として発振し、それを元に鋸波を得るタイプのVCOですが写真をよく見ると三角波を折り曲げて鋸波を得る際の継ぎ目が確認できます。 写真の波形は14KHzくらいの発振波形なのですが鋸波の立下りが結構ゆるやかです。 発振周波数が小さい時の波形は立下りがそれほど気になりはしませんので実用面ではあまり問題はないでしょう。
困ったことにPWの値を動かすとピッチがわずかですが変動してしまいます。 原因を探って見るとPAIAのKITのまねをして外部電源入力端子に CとRでCRfilter(C=10u, R=100Ω)を構成しておいたのですがPWを可変するとCEM3340に内蔵のコンパレータの消費電流が変化するらしくRによる電圧降下が変化してしまうためで、 そこからVref電圧を取っていたためIrefがわずかに変動してしまうです。Rを取り外したらこの現象はなくなりました。 うっかりしていましたが実験して気づいたこととしてこのようなCRfilterをつけるのならVrefは独立して用意しなければならないと言うことです。 さらに基板を押すと発振周波数が変化してしまい、押すのをやめると元に戻るという現象が発生。 どうもOffset電圧を与えている部分の半田付けがあやしい。 その部分の半田を盛りなおしたら解決しました。
CEM3340の各機能 CEM3340は antilog ampの前段にあたるsumming ampのGAIN(multiplierの倍率)を温度に対して可変する(*1)ことで antilog ampのscale 補償を行う方式ですのでこの設定がなれないとわかりにくいです。以下に summing amp周りと antilog ampまわりの構成図を示します。
Pin 1と Pin2につける抵抗によって Summing AMPに内蔵されている multiplierのGAINを調整するようです。 抵抗Rtに流れる電流は、 Irt= 22* Vt/Rtで求まります。 Irtを100uAとするとRtは 5.72KΩになります。 次にRzですがRzに流す電流をIrtと同じ100uAにするには、 IRz-3.0/Rzなので Rz=30KΩとなります。 MultiplierのGAINを1にするためには Irt=Irzにすればいいよいうです。 Irz,Irtの設定に -電源の電圧は影響しないようです。 このsumming AMPの出力電流がantilog AMPの入力Q1のベースに入力されるわけですが、 ベース- GND間につながっている抵抗Rsを1.8Kとするとsumming AMPのsumming nodeに接続される抵抗を100KΩにすることで 1oct/Vの関係が得られます。 外部CV=0V時この100uAのIrtがRsに流れることになり、CVを上げっていってIcvが流れるとIRt-Icvの値がRsに流れるようになるのでIcv=100uAの時 Multiplier出力Iomは0となります。 Iom=(22*Vt/Rt)(1-(Ic*Rz/3)) 一方antilog AMP側は RrでIrefが決まります。 15番端子Vcc間に1.5MΩのRrをつなぐとIref = 10uAとなり Q1のVb端子(antilog amp入力)が0Vの時 antilog AMP出力は10uAになります。 Iexp=Iref*e^(1Vb/Vt) ベース電位Vbは Icv=0Vで最大値(*1)でIcが増えるに従って電位が低下,Ic=Irtで0Vそれ以降はマイナスとなります。 このため antilog 用のトランジスタの VbeはIcの上昇と共に増大します。 Icvの値は通常0から143uAまでだそうです。 Iexpの範囲が50nAから100uAの範囲が高リニアリティ区間なようで、 たとえばIref=10uAとするとCV=0Vで Iexpは10nA程度まで低下しますのでCV, Icvをマイナスにすることはあまり意味が無いということでしょうか。 Icvの入力範囲は 0から 143uAと言うことで、よってIom=100uAから-43uAなりますので 電圧Vbは CV=0V時 180mV、 CV=10V時 0V ,CV=14.3V時 -77.4mVとなります。 13番端子につながるTimmnig capactor Cfと発振周波数の関係は F=(3*Iexp)/(2Vcc*Cf) Cf=1000P、 Vcc=+15Vとすると F=Iexp/10*1000P となり Iexp=100uAで10K Hz Iexp=50nAで 5Hkzとなります。 すなわちCV=10Vで1KHz CV=0Vで1Hzとなります。
Iexpは MAX 500uAまでは出力できるそうです。 また Irefは 3uAから15uAの範囲で使用するように書かれており10uAに設定するのが推奨されていますので Vcc=15V時 Rr=1.5MΩとなるようです。
3: マイナス電源入力 6.5Vのツェナーダイオードが内部にあるのでこれを利用する場合はマイナス電源と この端子間に電流制限抵抗をつける。 印加電圧が-6V以下の場合はツェナーが無効 となり印加電圧が直接有効。 すなわち元々CEM3340は+/-同じ電源電圧のICではないが一般的な+/-同じ電圧の電源でも対応OKになるような仕様になっているということでしょう。 ですから評価ボード回路においても-5Vが使えるのならそれを使ってくれということで+15V/-5Vになっているのでしょう。 4: 矩形波出力 0--12V (Vcc15V時) この出力はNPNのオープンエミッタなのでプルダウン抵抗をつける。 ちなみに三角波は 0-- 5V、鋸波は 0 --10V出力。 07:高域誤差補償用の電流出力 高域補償が必要なのは antilog トランジスタの エミッタバルク抵抗の影響および コンパレータの高域でのON/OFF時間の影響なのでそれを補正するためこの端子出力(*1)をsumming nodeに入力することによって補正する。 この端子とGND間に半固のVRをいれて半固の真ん中の端子に抵抗をつけて summing nodeに入力。 おおむね5KHzあたりから高域誤差の影響があるらしい。 *1:データーシートの図にはantilog用のトランジスタとパラって付けてあるもう一つのantilog トランジスタの電流出力がこの端子になっています。
+10Vから+18Vまでとなっていておおむね +12Vか+15Vを使用しているようです。 15Vが使えるなら推奨値に従って15Vにするのが無難でしょう。
CEM3340は+電源端子 -電源端子間でMAX24Vなので +15V, -5Vで使うか +/-15Vとしてマイナス端子は電流制限抵抗を入れて実質-6.5Vで使うような場合が各社の回路図を見ても多いようです。 datasheetや service manualを見た限りではおおむねdata sheet 準拠の回路、定数で よい感じがします。
CEM3340の動作 CEM3340は 一般的なVCOがSAW波を源波形として発振するのに対して、三角波を 源波形として生成し、TRI-SAW converterにより SAW波を得るVCOとなっています。 (下図において2っのSWにより、定電流源の方向と、コンパレータの比較基準電圧を 5Vと0Vに切りかえる)
CEM3340のantilogは capacitorから電流を吐き出す(放電)方向が正方向なので、capacitorを充電する時はカレントミラー(CM)を介してantilogに接続されている端子とは反対のカレントミラーの端子がcapacitorを充電するような構造になっています。 放電時はCMは動作せず antilog に直接 capacitorが接続されるように SWで切り替えることによりcapacitor電圧が上昇、下降します。 SWのコントロールは2段構成のコンパレータの後段のコンパレータ出力で行われます。 三角波上昇時は1段目のコンパレータのしきい値が+5Vで、capacitorの充電が5Vを超えるとコンパレータの極性が反転してそれを受けて後段のコンパレータ出力が上記 SWを切り替えるとともに1段目のコンパレータ自身のしきい値を0Vにします。
soft sync: 三角波が上昇カーブの状態時、soft sync inに矩形波の立下りの波形が入るとコンパレータの閾値が一瞬マイナスになるので三角波が下降カーブに遷移します。 すなわち三角波が5Vに達していないままで下降に向かうのでその分、周期が短くなるということです。 上昇カーブ時ならどんなタイミングでもOKというわけではなく実測では三角波の振幅がおおよそ4V(*1)くらいより大きい時だけコンパレータが稼動するようです。 データーシートには波形が示されていませんが、soft syncは波形が変化しないのが前提だからでしょうか。 実際はたとえば相手のmaster VCOの周波数が若干高ければ3340の三角波が5Vまで達しない位置で方向反転が起きるので三角波の振幅が小さくなります。 その時、三角波の場合は波形の変形はありませんが、鋸波は形が変形し、矩形波はパルス幅が少し変わります。 *1:立下りの矩形波が0.001uFのcapacitorを介してsoft sync端子に加わった時、通常5Vの閾値電圧が瞬間4V程度に落ちるということなのでしょうか?。 データーシートの回路からは単純には0V程度に落ちそうなのですが.....
図のようにsoft syncがかかっているということはmaster VCOの矩形波の立下りのタイミングとslave VCOの3340の三角波の方向転換タイミングが一致するということで、位相もロックされます。 鋸波は波形が変形しています。 時間が短縮された分、垂直上昇し同じ傾きで上昇するので 鋸波のスロープがずれています。 またmaster VCOとの周波数の関係、位相関係によっては部分的に三角波の振幅が不揃いな波形になる場合もあります。
下図にhard syncをかけた時の三角波の波形を示します。 syncをかけたタイミングで基本、三角波の方向反転をするだけです。 hard sync inにプラスのパルスを与えるとpositive sync,マイナスのパルスを与えるとnegative syncですが、上昇区間でのみしかpositive syncはかからないし下降区間でのみしか negative syncはかかりません。
modular synthを除くメーカー製のsynthでCEM3340のsoft syncを搭載した機種はみたことがありません。 またCEM3340のhard syncは三角波の方向転換という少々特殊な方式なので、普通のhardsyncを実現したい場合はnegative syncのみが有効になり、かつsync パルスで三角波の振幅を強制的に0に落とす回路を付加してconventional hard syncを実現するようにします。
|
K.T
|