OTAのVCR接続


analog synthにおいてVCAはOTAの定電流出力を使いますが、VCFは単に電圧制御可変抵抗(VCR)として使いますのでそのように動作させるためには負帰還によるVCR接続が必要になります。


* 1次LPFの例

単純にOTAとCapacitorを接続させただけでは積分器になってしまうので出力を(-)入力に 戻して負帰還をかけて直列回路の電流変化と同様の作用を作り出しています。

すなわちcap.が定電流で充電されるほどOutputは増加しようとしますが、負帰還がかってLimiterがかかっていく状態。 直流印加においては cap.が定電流充電されていこうとしますがout put Levelが増加で負帰還が強くかかりoutputの増加を抑えます。いわゆるEGに対するGATE ON時のCR回路の反応。

交流の場合も定電流でCap.に流入する電流は一定なので高域ほど積分値は小さく負帰還量も小さいが低域ほど積分値は大きくなろうとするがその分負帰還が多くかかりよりLimtterが働くことになりLPF特性を有するわけです。

直列接続が負帰還の要素を内包しているので同様にOTA OUTPUTを入力に負帰還することでその状態をシミュレートすることになります。


より簡単なケースとして上記回路のCap.を抵抗に変えた場合で負帰還をかけない場合を考えます。Rを100ΩとしてOTAの+入力に2Vを印加したとしてIabcを調整してOTA出力が10mA出力したとするとOut Putは1Vになります。 OTAのinput電圧固定でIabcも固定でRを200Ωにしたらoutputは2VになってしまいOTAは当然、定電流動作なので抵抗としては動作していない。抵抗として動作させる為には上記のように負帰還をかける必要があります。

通常の抵抗の直列接続ではRを100Ωから200Ωにすれば抵抗値が上がるので電流は減って印加電圧を2V固定とした場合 10mAから6.8mAに低下します。上記の負帰還がかっていないOTAの場合は電流値が変わらないのでOTAは抵抗動作にはならないということになります。 それに対してoutputをinputに100%負帰還をかけた場合のケース。

負帰還をかけた回路においてR=100Ωで入力2VでOTA outが10mAの時outは1Vとなり真の入力電圧は2-1=1Vなので負帰還をかけていない回路にくらべてIabcは2倍にして10mAを得たことになります。 ここでInput電圧とIabc固定でRを200Ωに変えた場合を考えます。抵抗体であるのならOTA出力は6.8mAとなり出力は1.32V、入力の真も電圧は2 - 1.32 = 0.68Vで真の入力電圧が1Vから0.68Vに減ったことによってOTA outは6.8mAに低下して抵抗の直列接続として動作していることになります。当然負帰還をかえているので定電流出力時と同じOTA出力を得るにはIabc側の電流は真の電圧が増えた分増加させる必要はありますが。 OTAは定電流動作なのでそれを抵抗の直列接続の電流と同じにするためには真の入力電圧を負帰還で低下させつじつまを合わせるイメージ。(実際は + と - 端子にには抵抗分圧して入力します)

これは抵抗の直列接続がそもそも負帰還作用であること、たとえばR1とR2の直列回路においてR2の値が大きくなるほど電流は低下していく作用でこれは R2*I分のR1に印加される電圧が減ることがR2*Iの100%の負帰還作用です。すなわち定電流出力のOTAを抵抗(VCR)化するためには負帰還を用いて入力電圧とIabcの値は同じでもOTAへの真の印加電圧を下げることによってRの増加に対する出力電流の低下をうながすことでOTAがVCRとして動作する。


ではHPFのようにVCRがGND側にあるときはどう接続すればよいでしょうか。 まずはより単純な例として2個の直列抵抗の片方ををOTAでシミュレートする場合を考えます。


図1の場合は上記のLPFのCap.がRに変わっただけで同じですから問題無いとして図2の場合はちょっと奇妙に感じます。 見方によっては OTAのOutにR1を介して信号を入力しているように見えてしまいます。

図2のような回路を考えます。

図からはOTAの (+)端子がGNDでOTAのOUTが分圧位置なのでOUTからGNDに向って単純抵抗のように電流の流出入があるように見えてしまいますがそうではありません。 あくまでOTAのOutに対して電流が流出入する際の外から見た変化が図の抵抗の直列回路と同じという意味です。


具体的に上のような回路を考えます。 上図の左上の図において、信号源から3Kの抵抗を介して電流の流出入が OTA OUTに向って起こるように見えるが実際はOTAの(-)inに加わる電圧変化がこの電流を誘発しています。

図の3K + 3Kの抵抗の直列回路の例において印加電圧SIN 200mVppを印加して2本の抵抗は3Kなので電流変化は34uAppになります。 上のOTA回路は出力電流の変化が直列抵抗回路と同じになるようにIabcの値と(-)端子の帰還量を調整したもので Iabc=10mAとNFBの負帰還率3.7% とした時に3Kの抵抗と等価になりました。

これでOTAのoutputから34uAppの電流の入出がありますので 外部からみればOTAとしては3Kの抵抗と同じ作用になります。

通常の(+)(-) inに電圧をかけてout putから電流を取り出す使用法ではOTAの(+)inは 差動対の右側になりますが、この使用法では左側のoutputを(-)端子にoutputをFBしま す。ここもポイントです。

これによりOUT putから信号を入れているように見える印加信号電圧変化と、output 電流変化が同位相で変化してつじつまが合います。 すなわち通常は(+)inに + 電圧をかけると OTA outは吐き出し動作ですがこの回路では(-)inに+ 電圧をかけるとoutから電流の吸い込みがおきます。(右上のOTA内部回路の電流変化と外部の電圧変化を参照)

またbufferoutは 抵抗直列回路の分圧点と同じで (印加電圧) - (R1の電圧降下) です。 定電流源のoutput電圧は相手しだいですが、これはみかけ上 VCRの電圧降下になります。  このbuffer outの電圧を(-)端子に対してFBしていることによりOTAの定電流性をみかけ状 殺してOTAが単に抵抗と等価になる作用を作りだしています。

OTAは内部の能動素子によるカレントミラーで電流が制御されていますが見かけ上この回路では抵抗素子として外部からはふるまっているということです。能動回路を用いてPassveな抵抗をシミュレート。

OTAはあくまで(+)(-)端子に印加された電圧変化とIabcで設定される gmによって電流gainが決定される乗算器であり、この例では outputに向って信号が印加されるように見えますがそうではなくOTAの(-)に印加されている電圧でOTA内部電流が変化し、出力電流を発生します。OTAのおしりに信号を与えているように見えますが単に負荷のGND電位が印加信号によって動いているというイメージ。

IabcをさらにあげればOTAのoutput電流は増えるのでVCR値は下がりIabcを下げればVCR値は上がり、R2を可変した時の電流変化と同様に表れます。 ここで重要なのはOTA outは基本定電流出力なので負帰還がかかっていなければ3Kの抵抗を30KにかえてもOTA out電流は変化しないので直列抵抗接続と等価にはならなくなってしまいます。すなわち定電流ならばR1の電圧降下が10倍になってしまう。

OTA がoutput電圧を(-)入力にFBしているので30Kにかえても電流がへらなければ30Kの電圧降下が増大するのでOTAの(-)端子に加わる電位は下がりIabcは固定なので結果OTA out電流は減って一定値でバランスします。これがこの回路のMAGICです。

単純抵抗の直列接続のように印加電圧固定で 3K + 3Kであったものが 30K + 3Kになれば電流が減るのと同様、OTAの(-)端子に印加される電圧は減るので電流は減り外からみればOTAの定電流性はくずれ抵抗を流れる電流の反応と同じになります。

* Iabcが10mAと変化していないのでgm自体は変わらないが(-)端子の印加電圧は減るので電流もへって見かけ上定電流ではなくなって見えるというマジック。

さらには本来 OTAのgmは Iabcで決まり 1/gmが OTAの等価抵抗ですが(-)端子に加わる電圧は分圧されているので分圧具合で等価抵抗値変化し小さいです。 図の場合でも(-)端子の分圧比をあげて150Kの分圧Rを50Kにすれば電流は増えますので等価抵抗は 3Kより下がります。

OTAは動作としては定電流出力であって動作的には上記の場合もそうなのですが(-)IN端子にOTA out電圧を印加することによってPassivな抵抗直列接続同様の負帰還がはたらき、見かけ上は定電流動作をしていないようにふるまいます。なかなか難しい回路ですが analog synthにとっては有用な概念。


図2のR1をCapacitorに変えればOTAによる1次HPF回路になります。synthの回路図では下図のようなかかれ方をしますので少々混乱したりしますがよく見ると抵抗がCap.になっただけで上の抵抗直列回路でR2にOTAを配した場合と分全く同じ物ですので逆になれてくればこちらの方が回路図としてはわかりやすいでしょう。




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